2023年7月に本ブログで「VTOL型固定翼ドローンのメーカー及びモデル」という記事を書いた。垂直離着陸(マルチコプター)と長距離巡航(固定翼)を両立するこのタイプの機体は、当時は各社とも「試作・実証実験」の段階にあり、エアロセンス、空解、Wingcopter、日本鯨類研究所の4社を紹介した。あれから3年が経ち、この分野はどこまで進んだのか、あらためて追跡調査してみた。
結論から言えば、4社はいずれも「試作・実証」段階から「型式認証の審査・実運用」段階へと明確に移行していた。特に2025〜2026年は、第三者上空飛行(レベル4)を可能にする第一種型式認証の申請、離島物流航路の構築、大規模航空測量の実用化検証がほぼ同時に進行しており、VTOL型固定翼ドローンが「制度に位置づけられた正式な航空機」へと成熟していく転換点にあるように見える。加えて、2023年の記事では触れなかった新規プレーヤーも登場している。
本稿では、既存4社の最新状況、新たに注目すべきメーカー・機種、規制・型式認証の動向、そして実用化までのロードマップと今後の見通しを整理する。
1. エアロセンス:測量機「AS-VT02K」から災害救援用大型機「AS-H1」へ
主力の測量・点検機「エアロボウイング」は、2025年6月18日に後継モデル「AS-VT02K」の受注を開始した。2024年6月にVTOL型ドローンとして国内で初めて第二種型式認証を取得した「AS-VT01K」の後継にあたり、機体ケースを2分割して軽ワゴン車でも運搬できるようにしたほか、耐風性能を従来比約2倍に強化。防塵・防滴規格IP43を備え、従来機では飛べなかった少雨下でも運用できるようになった。LiDAR測量では国土交通省が公共測量で求める±5cmの精度を達成しており、道路や河川などの線状インフラを対象とした長距離測量・点検業務を主用途とする。同機は2026年6月の「Japan Drone 2026」で「Japan Drone & AAM Awards 2026」ハードウェア部門を受賞した。なお、AS-VT02K自体の第二種型式認証は取得予定の段階にある。
2023年当時「開発構想」の段階だった大型機は、災害救援用VTOL「AS-H1」として2025年6月のJapan Drone 2025で初公開された。プロペラを除く機体サイズは3.9m×2.7m×1.0m、機体重量57kg、最大積載重量13kg(2Lペットボトル1ケース相当)、飛行距離は高度100m・ペイロードなしで250km、高度1,000m・ペイロード10kg搭載時で120km。垂直離着陸用と水平飛行用あわせて10基のBLDCモーターに加え、フライトコントローラーの2系統化、バッテリーの4並列化など重要部品を冗長化しており、機体前方には250m先の障害物を検知するレーダーを搭載する。横風20m/sの雨天下でも安定飛行が可能という。
開発はJST(科学技術振興機構)が推進する経済安全保障重要技術育成プログラム(Kプログラム)の一環として2023年の採択以降進められ、2025年6月4日に試作機の完成が発表された。同月2日には国土交通省が第一種型式認証の申請を受理し、現在審査中である。最大離陸重量25kgを超える大型無人機の型式認証は業界全体にとっても前例が少なく、認証基準や審査手法そのものを航空局と関係者間で議論しながら進めている段階だ。現在は飛行試験機と製造中の改良機の2機体制で、飛行試験機はホバリングや上昇・下降、8の字飛行などを含む数十時間規模の飛行実績を積み重ねている。
実運用面での進展も大きい。エアロセンスは東京都「東京宝島事業」の一環である「東京宝島チャレンジプロジェクト」に2024年10月に採択され、2025年4月から「物を繋ぎ、人を繋ぎ、命を繋ぐ」をテーマに取り組みを開始した。開始に合わせて式根島―新島間で書類等を積んで往復するドローン物流飛行会が予定されたが、強風で延期となり2025年6月28日に実施されている。現在は式根島で2名、新島で1名がエアロボウイングを運用し、定期パトロールや森林・海洋・密漁の監視、島の魅力を伝える空撮映像の配信などを行っている。物流については日本航空(JAL)の協力を得て、式根島・新島・利島・神津島の4島間で航路の構築を進めており、行政間の交換便、処方箋、郵便物などの事業化を目指す。まずAS-VT02Kで軽量の運搬物から運用を開始し、AS-H1も2026年度中の運用開始を予定。物流事業が軌道に乗り次第、他の伊豆諸島へも対象範囲の拡大を検討するという。2023年の記事で提案した「伊豆諸島・小笠原諸島へのドローン配送」というアイデアは、まさにこの東京都との協業として現実のものになりつつある。
| 項目 | AS-VT01(2020年) | AS-VT02K(2025年〜) | AS-H1(2025年公開) |
|---|---|---|---|
| 主用途 | 測量・点検 | 測量・点検(広域・少雨対応) | 災害救援・物流 |
| 最大積載重量 | 1kg | 1.6kg | 13kg |
| 飛行距離 | 50km | 最大80km | 250km(ペイロードなし)/120km(10kg搭載時) |
| 型式認証 | なし | 第二種を取得予定(前身のAS-VT01Kが2024年6月にVTOL機初取得) | 第一種を2025年6月に申請・審査中 |
2. 空解:ガソリンハイブリッド機と火山災害を想定した実証測量
フラッグシップ機「QUKAI MEGA FUSION 3.5」は、新開発のセルモーター付き61cc4サイクル水平対向2気筒ガソリンエンジンを水平飛行用パワーユニットに採用し、最大航続距離は500kmに達する。100km飛行時のガソリン消費量は700ccと燃費が良く、CO2排出量は電動機とほぼ同等だという。離着陸用のパワーユニットは電動のままで、飛行中にエンジンが停止してもセルモーターで再始動できるフェールセーフ機構を備える。水平飛行用も電動を選ぶことができ、その場合の航続距離は120kmとなる。全幅3.5m/全長2.48m/重量約12kg/最大積載10kg、巡航速度80km/hというスペックだ。
2025年10月22日には、北海道・有珠山周辺で火山噴火災害を想定した長距離レーザー測量を実施した。QUKAI MEGA FUSION 3.5にRIEGL製の高性能LiDAR「VUX-120-23」(LiDAR用バッテリー込みで7kgペイロード)を搭載し、標高差約400mを含む往復30kmのフルオート飛行に成功。北海道大学広域複合災害研究センターや札幌開発建設部河川整備保全課などとの共同実証で、火山噴火を想定した条件下でレベル3.5飛行によるレーザー測量を行ったのは日本初の事例だという(空解調べ)。操縦は一等無人航空機操縦者技能証明(飛行機)の保有者が担当した。
その資格取得自体も同社の成果である。空解は2025年8月20日、代表取締役の森田直樹氏が一等無人航空機操縦者技能証明(飛行機、基本・目視外)を国内で初めて取得したと発表した。後述するようにVTOL機の操縦資格は制度上の難所であり、この分野で長距離飛行を社会実装するうえで不可欠な資格と位置づけている。2023年10月の伊豆―伊豆大島70km海上横断以降、同社は災害・測量用途で着実に実績を積み重ねている。もう一方の小型機「QUKAI FUSION 2.4」については、大きなアップデートは確認できなかった。
3. Wingcopter:外国製・固定翼ドローンとして国内初の型式認証審査
Wingcopter 198は、2024年4月に伊藤忠商事の支援のもと、外国製無人航空機として初、かつ固定翼ドローンとしても国内初となる第一種型式認証の申請受理が公表された。約2年の作業を経て、2026年3月5日にJCAB(国土交通省航空局)が同機の認証計画(Certification Plan)を正式受理し、計画段階から適合性実証の段階へと移行したことがWingcopter社から発表されている。米国でもFAAが特別クラス耐空性基準を発行済みで、型式証明プロセスが並行して進んでいる。
用途面では2026年1月7日、伊藤忠商事・パスコ・イエロースキャンジャパンの3社が、航空測量における固定翼式ドローンの実用化に向けた協業の基本合意書を締結した。Wingcopter 198にイエロースキャンジャパンのUAV搭載型レーザースキャナー「Voyager」を搭載したテストフライトでは、対地高度100m・14コースで350ha(3.5km²)を27分で計測し、安定した静音性の高い高速飛行性能と高密度なデータ取得を確認したという。航空機・ヘリコプターとマルチコプターの中間を埋める広域測量手法として、従来手法を補完する形での実用化を目指す構図だ。医療分野では血液製剤や医療機器の輸送への活用が検討されており、2024年6月には北海道・内浦湾を横断する片道48kmの医療機器輸送実証も実施されている。
4. 日本鯨類研究所:南極海での実用機運用と水素燃料電池機の行方
実用機「飛鳥改五二型」(航続100km以上、最大風速15m/sで航行中の船舶から離着陸可能、20m/sで飛行維持可能)は、2023/2024年度の南極海鯨類資源調査(JASS-A)に投入され、飛行回数20回(数回のテスト飛行を含む)・総飛行時間11時間12分・総飛行距離638kmの自律飛行を成し遂げた。船舶から離発着する無人航空機による大規模調査としては、南極観測・調査史上例のない成果だという。2024年6月にはオホーツク海や北西太平洋でナガスクジラ、ニタリクジラの親仔などの空撮にも活用された。
もっとも、直近の2025/26年度JASS-A(第三勇新丸・第二勇新丸が2025年12月3日に塩釜港を出港し、2026年1月5日から2月7日まで南緯60度以南で34日間調査)の終了報告では、「ドローンを利用した調査」としてシロナガスクジラ1体の映像撮影に成功したと記されるにとどまり、前回のような飛行回数・時間・距離の実績や機体名は公表されていない。詳細な運用実績については今後の続報を待ちたいところだ。
2023年の記事で紹介した水素燃料給電システム搭載の次世代実験機「飛鳥改五丙二型」(F.T.B. ASUKA Mark V H2)は、2026年6月5日にJFEコンテイナー製の高圧水素ガス容器を搭載する経済産業大臣特別認可を取得し、法規制面でのハードルを一つ越えた。高圧ガス保安法に基づき、高圧水素ガス容器を無人航空機に搭載して使用するために必要な認可で、安全性評価を経たものだ。ただし研究所の位置づけはあくまで「飛行実験機」であり、認可取得の発表時点で飛行試験の実施は公表されていない。飛行距離の伸長、搭載能力の向上、飛行時の直接CO2排出ゼロを目指して開発が続く一方、当初「2025年春まで」とされていた実用化目標は過ぎており、更新後の時期は明示されていない。
5. 新たに登場した注目メーカー・機種
2023年の記事では触れなかったが、この3年で存在感を増したメーカーもいくつかある。
- テラ・ラボ(日本) — Japan Drone 2026で固定翼VTOL「Terra Dolphin VTOL」(全長2,900mm×全幅4,300mm、機体重量55kg、エンジンはレシプロ/ジェットから選択、航続1,000km)を披露した。滑走路不要で被災地へ即時展開できる長距離機で、既存の大型機「Terra Dolphin 8000」(全幅8,000mm、機体重量120kg、最大高度6,000m、最長20時間飛行)や統合地上管制システム「Terra GCS」とあわせ、C4ISR(指揮・統制・通信・コンピュータ・情報・監視・偵察)を支えるデュアルユース機としてもアピールする。興味深いのは、機体は完成したものの国内では飛行試験のハードルが高く、2026年6月にタイの国防技術研究局(DTI)と協定を締結し、高度2,000mまで使えるラチャブリー県の飛行場で実証を進めるという点だ。日本の制度が長距離VTOLの検証にまだ追いついていない現実を示す事例でもある。
- 日本無人航空機製造(NUAM/日本) — 前述の「飛鳥」開発で中核を担った技術陣を母体に、横浜市で設立された純国産VTOL-UAVメーカー。代表は日本鯨類研究所で無人航空機開発を率いた人物で、同研究所の技術顧問も兼ねる。海洋運用を前提とした後継機VTOL「飛翔」(電動型で全長1.75m×全幅3.185m×全高0.64m、本体重量29.0kg)を手がけ、ガソリン/水素/JP-5燃料エンジンなど用途に応じたカスタマイズにも対応するという。船上離発着の実運用経験を持つ数少ない国産勢として注目される。
- Wingtra(スイス) — テールシッター型の測量用VTOL「WingtraOne GEN II」。1フライトで広範囲をカバーでき、PPKによる高精度測量に対応する。国内でも複数の販売代理店を通じて流通しており、測量分野ではエアロセンスや空解と直接競合する。
- Quantum-Systems(ドイツ) — 主翼を外してトライコプター形態にも変形できる2in1のVTOL固定翼機「Vector」シリーズなど。防衛・偵察用途が中心だが測量転用も可能で、市場調査各社が固定翼VTOL市場の主要プレーヤーとして名前を挙げる常連である。
なお、国内の型式認証制度全体で見ると、レベル4対応の第一種型式認証の第1号はACSLのマルチローター機「PF2-CAT3」(2023年3月13日取得)であり、固定翼VTOLに限らない無人航空機全体の制度形成をリードしてきた点も付け加えておく。
6. 型式認証・操縦資格制度の動き
2022年12月の改正航空法でレベル4飛行(有人地帯上空の目視外飛行)が解禁されて以降、型式認証制度が本格的に動き出した。第一種型式認証は立入管理措置を講じない第三者上空飛行(レベル4)を目的とする最高レベルの認証で、国が直接検査し有効期間は3年。第二種型式認証は立入管理措置を前提とした特定飛行向けで、日本海事協会などの登録検査機関が検査を担う。以下は主な機体の取得・申請状況である。
| 機体 | メーカー | 認証区分 | 状況(2026年8月時点) |
|---|---|---|---|
| ACSL式PF2-CAT3型 | ACSL | 第一種 | 2023年3月取得(国内初、マルチローター機)。2026年3月に国内初の更新も完了 |
| Airpeak S1(ARS-S1) | ソニーグループ | 第二種 | 2023年12月22日取得 |
| エアロボウイング(AS-VT01K) | エアロセンス | 第二種 | 2024年6月取得(VTOL型ドローンとして国内初) |
| Wingcopter 198 | Wingcopter | 第一種 | 2026年3月に認証計画が受理され適合性実証段階へ(外国製・固定翼機として国内初の審査対象) |
| AS-H1 | エアロセンス | 第一種 | 2025年6月に申請が受理され審査中(国産大型VTOL機) |
注目すべきは、制度開始から3年以上を経た2026年時点でも、第一種型式認証を取得した機体はACSLのPF2-CAT3ただ1機という点だ。イームズロボティクスやプロドローンの機体も申請中で、審査には相応の時間がかかっている。VTOL固定翼機についてはWingcopter 198が外国製・固定翼機として国内初の第一種審査対象、AS-H1が国産大型VTOL機の申請機としてこの分野の制度形成を実質的にリードしているが、どちらもまだ審査段階にあり、VTOL固定翼機によるレベル4の商用飛行は実現していない。実運用の多くは、レベル3(無人地帯目視外・補助者なし)やレベル3.5(一等・二等資格と保険加入、機上カメラによる監視を条件に立入管理措置を省略できる飛行方法)で行われているのが実情である。
操縦者の資格制度にも動きがある。VTOL機は制度上「飛行機」区分に該当するため、実地試験では滑走路を使った離着陸の技能が求められ、垂直離着陸するVTOL機には実態と合わないという「ねじれ」が指摘されてきた。マルチローターと飛行機の2つの資格取得で対応する事業者もおり、負担が大きいとの声が上がっていた。これを受けて国土交通省は規制改革推進会議のワーキンググループなどに提出した資料で、技能証明の無人航空機の種類「飛行機」を垂直離着陸型(VTOL)とそれ以外に分けることを検討する必要があると示している。航空法施行規則の改正により新区分が誕生すれば、操縦者育成のボトルネック解消につながりそうだ。
7. 実用化へのロードマップ
各社の発表を時系列で並べると、おおむね次のような流れが見えてくる。
- 〜2023年(達成済み):測量・点検・医薬品輸送の実証実験フェーズ。空解の伊豆―伊豆大島70km海上横断、飛鳥の南極海での船上発着運用、レベル3.5飛行の新設(2023年12月)など。
- 2024〜2025年(達成済み):AS-VT01KがVTOL機初の第二種型式認証を取得(2024年6月)、Wingcopter 198の第一種型式認証申請受理(2024年4月公表)、AS-VT02K受注開始とAS-H1試作機完成・第一種申請受理(いずれも2025年6月)、東京宝島プロジェクトでの島しょ間の取り組み開始(2025年4月)、空解が国内初の一等(飛行機)技能証明を取得(2025年8月)、空解の火山災害想定レーザー測量(2025年10月)。
- 2026年(進行中):Wingcopter 198の適合性実証段階への移行(3月)、伊藤忠・パスコ・イエロースキャンによる固定翼ドローン航空測量の実用化検証(1月)、JALと連携した伊豆諸島4島間の物流航路構築、AS-H1の離島間物流を想定した実証実験(秋予定)と2026年度中の運用開始予定、飛鳥H2の高圧水素容器の特別認可取得(6月)、VTOL専用技能証明区分の制度化議論。
- 2027〜2028年(各社の計画・見立てベース):AS-H1やWingcopter 198の第一種型式認証取得とレベル4商用飛行の実現、伊豆諸島での物流事業化と他島への拡大、大規模航空測量サービスの本格展開、飛鳥H2の飛行試験・実用化などが見込まれる。ただし大型機の型式認証は前例に乏しく審査基準の確立に時間を要するため、これらの時期はあくまで現時点の計画であり、後ろ倒しになる可能性も十分にある。
実用化に向けて残るハードルとしては、大型VTOL機の第一種型式認証の審査基準・手法がまだ確立していないこと、VTOL専用の操縦資格制度が未整備であること、運航管理(UTM)や1対多運航といった運用体制の社会実装が途上であること、そして水素など新しい推進系に対する高圧ガス保安法をはじめとする横断的な法規制対応が挙げられる。エアロセンスによれば、機体販売は着実に伸びている一方で「VTOL機は運用が難しそう」「制度対応のハードルが高そう」といった声も依然多く、技術開発と並行した市場形成そのものも課題になっている。
8. 今後の市場見通し
国内ドローンビジネス市場全体で見ると、インプレス総合研究所の調査では2025年度の市場規模が4,973億円(前年度比13.8%増)、2026年度は5,501億円(同10.6%増)と推計され、2025〜2030年度に年平均13.9%で成長し2030年度には9,544億円に達すると予測されている。2025年度の内訳ではサービス市場が2,711億円と最大で、機体市場1,227億円、周辺サービス市場1,036億円が続く。ドローン利用企業の7割以上が実装フェーズに入り、土木・建築や点検用途での普及が顕著だとされる。
一方、世界の固定翼VTOL市場の予測は調査会社によって大きく食い違う。Mordor Intelligenceは2025年の13.2億米ドルから2030年に37.9億米ドル(CAGR23.48%)へ拡大すると見るのに対し、MarketsandMarketsは2025年6.9億米ドルから2030年12.0億米ドル(CAGR11.7%)とより保守的だ。しかも後者は2022年時点では「2030年に46.3億米ドル」と予測しており、自社の見立てを大幅に下方修正している。この種の数字は単独で鵜呑みにできないが、複数の調査が防衛・監視用途を中心に高成長を見込んでいる点自体は共通している。
用途面では、測量(LiDAR広域計測)、インフラ点検(送電線・河川・砂防・鉄道斜面)、離島・中山間地物流、災害対応、洋上・環境調査という広がりが確立しつつある。ガソリンハイブリッド(空解)や水素燃料給電(日本鯨類研究所)による航続距離の延伸、冗長化による高信頼設計(AS-H1)、C4ISR用途への広がり(テラ・ラボ)といった技術的な分化も進んでいる。
まとめ
2023年から2026年にかけての最大の変化は、各社が「試作・実証」段階から「型式認証の審査」段階へ移行し、離島物流の航路構築や広域測量の実用化検証が始まったことだ。次の2〜3年は、大型機の第一種型式認証取得とVTOL専用操縦資格の制度整備という「制度の壁」を越えられるかどうかが最大の焦点になる。これを乗り越えられれば、VTOL型固定翼ドローンは人口減少・高齢化と多島嶼という日本の社会課題に応える「空の広域インフラ」として本格的に普及していく可能性がある。逆に大型機の認証基準確立や資格制度改正が遅れれば、レベル4の商用飛行の実現は2028年以降にさらにずれ込むことも考えられる。テラ・ラボが国内での飛行試験を断念してタイに実証の場を求めた事実は、この「制度の壁」が単なる手続きの問題ではないことを示している。この分野の動きは今後半年〜1年で大きな続報が出る可能性が高く、引き続き追いかけていきたい。