2026年6月2〜3日、米サンフランシスコの Fort Mason Center で Microsoft Build 2026 が開催された。キーワードは「エージェント(Agentic AI)」。自社シリコン(Maia 200/Cobalt 200)からOS(Windows・Project Solara)、開発ツール(GitHub Copilot app)、クラウド(Foundry・HorizonDB・Fabric)、そして自社モデル群(MAI 7種)まで、スタック全層をひとつの物語で束ねた2日間だった。本記事は公式ブログ・各製品チームの Dev Blog を一次情報として、カテゴリ別に技術的詳細と実務インパクトをまとめる。
1. 開催概要とキーノート
会場はサンフランシスコの Fort Mason Center(例年の Moscone Center は別イベントが入っていたため変更)。基調講演は CEO Satya Nadella が約2時間半にわたって登壇し、ゲストとして NVIDIA CEO Jensen Huang(台北/Computex からライブ中継)、Qualcomm CEO Cristiano Amon、Mayo Clinic CEO Gianrico Farrugia らが登場した。
公式ブログ「Microsoft Build 2026: Be yourself at work」(著者:Kyle Daigle、GitHub COO 兼 Developer 部門 CMO)は3つのテーマを提示している。
- Intelligence that's truly yours(本当にあなたのものである知能)
- The full stack built your way(あなたのやり方で組み上げるフルスタック)
- What comes next(次に来るもの)
今年の Book of News に相当する公式リアルタイムブログ Microsoft Build Live(news.microsoft.com/build-2026-live-blog)に100件超の発表が集約されている。
2. AI・Copilot 関連の発表
2-1. Microsoft IQ:エージェントの「コンテキスト層」
今回の最重要概念が Microsoft IQ だ。GitHub Copilot・Microsoft Foundry・Copilot Studio をまたいでエージェントを「仕事の知識」と「世界の知識」の双方に接地(グラウンディング)させるコンテキスト層として、全体的に GA(一般提供)となった。4つのコンポーネントで構成される。
| コンポーネント | 概要 | 提供状況 |
|---|---|---|
| Work IQ | メール・会議・ドキュメント・組織構造など M365 全体の「仕事の進み方」を捉える職場インテリジェンス層。Work IQ API は Chat/Context/Tools/Workspaces の4ドメイン。課金は Copilot Credits の従量制。 | API:6/16 GA予定 |
| Fabric IQ | 構造化業務データに対する共有セマンティック基盤。オントロジー・グラフ・Power BI セマンティックモデルを通じて自然言語クエリを可能にする。 | GA |
| Foundry IQ | Work IQ・Fabric IQ・Azure SQL・File Search・MCP を1つのSLA付き検索エンドポイントに統合する知識層。Serverless 階層がプレビュー。 | GA(Serverless はプレビュー) |
| Web IQ | 今回新発表。AIファースト・MCPネイティブの Web 検索スタック。公式ブログは「次点の代替手段の約2.5倍速で関連パッセージを返す」と主張(比較対象は匿名。第三者検証なし)。Microsoft Copilot と ChatGPT のグラウンディングを支えると説明。 | GA |
2-2. MAI モデル群:自社製7モデルを一挙発表
Microsoft AI チーム(Mustafa Suleyman が率いる Microsoft AI Superintelligence Team)が自社開発の新モデル7種を発表した。いずれも OpenAI データを一切使わず、商用ライセンス済みデータでフルスクラッチ学習した点を強調している。
| モデル | 種別 | 概要 | 主要ベンチ/スコア | 提供状況 |
|---|---|---|---|---|
| MAI-Thinking-1 | 推論 Reasoning |
アクティブ35B(総計約1T)sparse MoE。256K コンテキスト。商用ライセンスデータのみ・蒸留ゼロで学習。Surge の盲検人間評価で Claude Sonnet 4.6 より選好。 | AIME 2025: 97.0% AIME 2026: 94.5% SWE-Bench Pro: Opus 4.6 相当 ※自社ベンチ |
Foundry プライベートプレビュー |
| MAI-Code-1 | コーディング | GitHub・VS Code 向けにチューニングされた推論効率重視のコーディングモデル。公式ブログではこの名称で案内。 | — | Copilot・ VS Code でGA |
| MAI-Code-1-Flash | コーディング (軽量) |
5B パラメータの軽量コーディングモデル。VS Code のデフォルトとして6/2からロールアウト開始。 | SWE-Bench Pro: 51% (Haiku 4.5 比 +16pt) IF Bench: +28.9pt ※自社ベンチ |
VS Code でGA |
| MAI-Image-2.5 (+Flash) |
画像生成 | text-to-image と image-to-image の両方に対応。PowerPoint に搭載済み、OneDrive に展開中。 | t2i: Arena #3 i2i: Arena #2 (Nano Banana 2 超え) |
PowerPoint GA Foundry展開中 |
| MAI-Transcribe-1.5 | 音声認識 | 43言語対応(日本語含む)。ストリーミング対応が近日予定。 | FLEURS 平均WERで GPT-4o-Transcribe・Scribe v2・Gemini 3.1 Flash Lite 超えと主張 ※自社ベンチ |
Foundry 展開中 |
| MAI-Voice-2 (+Flash) |
音声合成 | 15言語以上に対応。新しい音声オプションを追加。音声クローニングへの不正使用防止機能を内蔵。 | — | Foundry 展開中 |
※ 7モデルの内訳は MAI-Thinking-1・MAI-Code-1・MAI-Code-1-Flash・MAI-Image-2.5・MAI-Image-2.5 Flash・MAI-Transcribe-1.5・MAI-Voice-2(+Flash)の構成と報道されている。Flash バリアントの扱い方で数え方が異なる記事もある。
Maia 200 上での最適化により、GB200 比で性能/電力比が1.4倍改善したと Mustafa Suleyman が言及。モデルは Foundry 経由に加え、Open Router・Fireworks AI・Baseten でも提供される。
2-3. エージェント基盤:Microsoft Foundry Agent Service
Foundry Agent Service では本番運用向けの「ホステッドエージェント(hosted agents)」がプレビュー登場(GA は2026年7月初頭予定)。各セッションが専用コンピュート・メモリ・ファイルシステムを持つサンドボックスで動作し、Microsoft Agent Framework・GitHub Copilot SDK・LangGraph などフレームワーク非依存でデプロイできる。
主なアップデートは以下の通り。
- Toolboxes(プレビュー):全ツールを単一のMCP互換エンドポイントに集約し、認証・ライフサイクル・ガバナンスを Foundry が肩代わりする。
- Microsoft Agent Framework 1.0:Python と .NET でGA。
- Frontier Tuning(プライベートプレビュー):コンプライアンス境界内で強化学習を適用し、エージェントが自社の業務スタイルを学習する。
- Agent Optimizer(プライベートプレビュー):観測→評価→最適化→デプロイのループを実現する可観測性機能。OpenTelemetry 経由で LangChain・LangGraph・OpenAI SDK 等に対応。
- Microsoft Scout:OpenClaw と Work IQ を基盤とする常時稼働の個人用エージェント(「Autopilots」カテゴリ)。Frontier プログラム経由で提供開始。
2-4. Microsoft 365 Copilot:Cowork とエージェントモードの拡大
Word・Excel・PowerPoint・Outlook で Agent Mode が拡大。Copilot Cowork は長時間・複数ステップのタスクを委任できるエージェント体験で、iOS/Android対応・再利用可能な Skills・Fabric や Dynamics 365 等 Plugins に対応する。タスクは「何を送信・投稿・スケジュールするか」を事前プレビューしてから実行する設計で、ユーザーが制御を維持できる。Frontier プログラム経由で提供。
2-5. セキュリティ:Agent 365 と MDASH
Agent 365 for local agents は Entra・Defender・Purview を単一のコントロールプレーンに拡張し、ホスト場所やフレームワークに依存せずエージェントを観測・統治・保護する。オープンソースとして ASSERT(ポリシー駆動の安全性評価)と Agent Control Specification(エージェントループ制御の標準化)も公開された。
Codename MDASH は100以上のエージェントを展開してデータフロー・ビジネスロジック・エクスプロイトチェーンを推論し、Defender Portal に文脈対応の修正を直接届けるマルチモデル型エージェントセキュリティシステム。Agent 365 と MXC(後述)との統合は2026年7月開始予定。
3. Azure 関連の発表
3-1. 自社シリコン:Azure Cobalt 200 と Maia 200
Azure Cobalt 200 は Arm Neoverse V3(CSS V3)、TSMC 3nm(N3P)採用で SoCあたり132コア構成(VMは最大128 vCPU)。Cobalt 100 比で最大50%のパフォーマンス向上を謳い、早期アクセスプレビューとなった。設計に35万超の構成候補を評価するデジタルツインシミュレーションを活用。Azure Boost 統合でネットワーク・ストレージ性能を底上げする。
Maia 200(2026年1月発表・本番稼働済み)は TSMC 3nm、216 GB HBM3e(7 TB/s)、FP4 で10ペタFLOPS超の AI 推論アクセラレータ。現行フリート比でパフォーマンス/ドルが30%優れるとされ、MAI モデルとの共同設計で性能/電力比がさらに1.4倍向上。最大6,144アクセラレータまで標準 Ethernet でスケール。米中部(アイオワ)に展開済みで米西部3(アリゾナ)が続く。
3-2. Azure HorizonDB:AI 時代の PostgreSQL 互換サービス
マネージド PostgreSQL 互換サービス Azure HorizonDB がパブリックプレビューとなった。コンピュートとストレージを分離するスケールアウト型アーキテクチャで、主な特徴は以下の通り。
- 最大128 TB のデータベース規模
- 読み取りスケールアウト:最大15のリードレプリカ
- 可用性ゾーン間サブミリ秒コミットレイテンシ(フェイルオーバー5秒未満)
- コンピュートは最大3,072 vCore までスケール
- 自己管理型 PostgreSQL 比で最大3倍高速と主張(Microsoft 内部ベンチマーク。第三者検証なし)
- DiskANN による高度フィルタリング付きベクトル検索、DB内 AI モデル管理などネイティブ AI 機能
VS Code 用 PostgreSQL 拡張機能(インストール数50万超・Oracle→PostgreSQL の AI スキーマ変換含む)もGAとなった。プレビュー開始リージョンは Australia East・Central US・Sweden Central・West US 2・West US 3 の5つ。Japan East を含む追加リージョン(East US・Canada Central・Indonesia Central・Italy North・Japan East・Korea Central・Poland Central)が数週間以内に追加予定と公式エンジニアリングブログが明記している。
3-3. Microsoft Fabric のアップデート
Fabric IQ がGA、グラフ機能がGA。GPU 高速化 Fabric Data Warehouse(早期アクセス)が登場し、NVIDIA アクセラレーテッドコンピューティング上でクエリを書き換えなしに実行、内部ベンチマークで主要クラウド DWH 比最大7倍速を謳う(この研究「CoddSpeed」は SIGMOD 2026 Best Industry Paper を受賞)。
Database Hub(プライベートプレビュー)は HorizonDB・Azure Database for PostgreSQL・Cosmos DB を一元管理し OneLake にミラーする。また Anyscale on Azure(Ray on AKS)パブリックプレビュー、PostgreSQL flexible server の V6 コンピュート SKU(最大192 vCore・PostgreSQL 18対応・エラスティッククラスタ)、Intel TDX を用いた Confidential Live Migration なども発表された。
4. 開発者ツール関連の発表
4-1. GitHub Copilot app:エージェントネイティブなデスクトップ
GitHub Copilot app(テクニカルプレビュー、Windows 11/Mac/Linux 対応)が最大の目玉の一つ。「My Work」ビューから接続リポジトリ全体のアクティブセッション・Issue・PR・バックグラウンド自動化を一望できる「エージェント司令塔」を志向する。
- 各セッションは独立した git worktree で動作し、並列エージェントが互いに干渉しない
- Agent Merge:CI監視・必須レビュアー追跡・失敗チェック対応でレビュー〜マージを伴走
- Canvas:人とエージェントの双方向作業面
- ローカル/クラウドのサンドボックスに対応
- 利用には Copilot Pro/Pro+/Business/Enterprise が必要。ヘビーユーザー向け Copilot Max も用意。Free 向けにはウェイトリストが開設
あわせて GitHub Copilot SDK(Node.js/TypeScript・Python・Go・.NET・Rust・Java でGA)、Copilot CLI 刷新(タブ式UI・/every 定期実行コマンド)も発表。LaunchDarkly・Amplitude・Sonar・PagerDuty・Miro などのパートナー製エージェントアプリも統合される。なお GitHub は週次の Actions が20億分超、月間コミットが14億件超に達したと述べている。GitHub Universe は2026年10月28〜29日(San Francisco・Fort Mason)開催予定。
4-2. Visual Studio / VS Code のアップデート
Visual Studio は AI 統合の基盤を GitHub Copilot SDK へ移行。Copilot がチャット・補完を超え、デバッグ・プロファイリング・テストに能動的に参加するエージェントへ進化する。主な発表は以下の通り。
- ビルド開始前のエラー・警告チェック
- AI支援によるマージコンフリクト解決
- モダナイゼーション機能(Web Forms→Blazor 移行・既存アプリへの Aspire 追加)
- BYOK/BYOM(ローカル/クラウドの任意モデルを利用可能に)
VS Code では MAI-Code-1-Flash がデフォルトモデルとしてロールアウト開始。Foundry Toolkit for VS Code(GA)によりエディタを離れずにエージェントの作成・ローカルデバッグ・デプロイが可能になった。また Project Rayfin(プレビュー)が Microsoft Fabric 上のマネージド backend-as-a-service を提供し、Replit との連携でプロトタイプから本番展開への高速パスを実現する。
5. Windows・プラットフォーム関連の発表
5-1. 開発プラットフォームとしての Windows 強化
| 機能 | 概要 | 提供状況 |
|---|---|---|
| Coreutils for Windows | Rust 製 uutils ベースの75以上のUNIX系コマンドラインユーティリティをWindowsネイティブで提供。winget install Microsoft.Coreutils で導入可能。 |
GA |
| WSL containers | サードパーティツール不要で CLI/API から Linux コンテナを直接扱える。WSL は Build 2025 でOSS化以降、月200超のPRを集めている。 | 近日パブリックプレビュー |
| Windows Developer Configurations | WinGet で VS Code・GitHub Copilot・WSL・PowerShell 7 等をワンコマンド構築。Windows 365 にも同構成(プレビュー)を提供。 | GA |
| Intelligent Terminal | ACP(Agent Communication Protocol)を用い、ターミナル内に AI エージェントペインを統合。既定エージェントは GitHub Copilot。 | 実験的プレビュー |
| Windows Development Skills | WinUI 3 と winapp CLI を使い、エージェントがネイティブ Windows アプリをエンドツーエンドで構築するための構造化知識。 | GA |
5-2. エージェントランタイム:MXC(Microsoft Execution Containers)
MXC(プレビュー)は Windows と WSL をまたぐポリシー駆動のエージェント実行層。開発者がエージェントのアクセス範囲(ファイル・ネットワーク等)を宣言すると OS が実行時に境界を強制する。高速プロセス分離からセッション分離まで、ワークロードに応じた分離レベルを単一の SDK/ポリシーモデルで提供。NVIDIA の OpenShell(自律エージェント向けセキュアランタイム)も MXC を利用し、ポリシー管理・推論ルーティング・PII 難読化を追加する。Agent 365 との統合は2026年7月開始予定。
5-3. オンデバイス AI:Aion 1.0
Windows 向けの新世代オンデバイス小規模言語モデル(SLM)Aion 1.0 が発表された。
- Aion 1.0 Instruct:要約・書き換え・意図検出などのテキスト処理向け。CPU でも動作し対応PC の裾野が広い。Edge Insider チャネルでプレビュー。2026年7月に Hugging Face でオープンウェイト公開予定。
- Aion 1.0 Plan:推論・ツール呼び出し対応モデル。ユーザー意図の推論・ツール起動・ファイル管理・サブエージェント統括をローカルで実行する。対応デバイスに同梱(in-box)予定で、今後数か月での提供を予告。
Aion 1.0 Plan は AMD・Intel・Qualcomm の CPU/NPU と NVIDIA RTX Spark に対応。Windows AI APIs も拡張され、NPU/CPU 上での音声認識(新 Speech Recognition API・プレビュー)、対応 dGPU 上での SLM テキストインテリジェンス、CPU 上での Video Super Resolution なども追加された。
5-4. Surface RTX Spark Dev Box
開発者向けの新ハードウェア Surface RTX Spark Dev Box が発表された。NVIDIA RTX Spark(Grace CPU 20コア + Blackwell GPU 6,144 CUDA コア)を搭載し、最大1ペタFLOPS の AI 演算と128 GB のユニファイドメモリ(CPU・GPU 間で共有)を備える。クラウド GPU なしで120B パラメータ超の LLM をローカル実行可能。WSL 2+ネイティブ GPU パススルー(CUDA 対応)、VS Code・GitHub Copilot・Python・Git・Node.js・PowerShell 7 などがプリインストールされた開発即戦力構成。
⚠️ 注意:Microsoft Build Live ブログは「Surface RTX Spark Dev Box は FCC 認可を未取得であり、認可取得まで販売・リースはできない」と明記している。米国での販売開始時期は認可取得後となる見込み。
5-5. Project Solara:エージェントファースト・デバイスの新プラットフォーム
Microsoft Applied Sciences Group の CVP・Technical Fellow Stevie Bathiche が率いるチームが、アプリではなく AI エージェントを動かす「エージェントファースト」デバイス向けの chip-to-cloud プラットフォーム Project Solara を発表した。
- OS:Windows ではなく MDEP(Microsoft Device Ecosystem Platform)=AOSP ベースのエンタープライズ Android。理由は小型・低消費電力デバイスへの対応と、Intune・Entra ID・Defender などエンタープライズ管理機能の維持を両立するため。
- Just-in-time UI:エージェントがデバイスやタスクに応じて動的にUIを生成する設計。
- 概念デバイス:据置型デスクコンパニオンとウェアラブルバッジの2種(Qualcomm・MediaTek がリファレンス設計に協力)。
- パイロット参加予定:AccuWeather・Best Buy・CVS Health・Levi's・Target 等が数か月以内に参加予定と発表。
なお、これらはリファレンスデザインであり、Microsoft が自ら製品として販売するものではない。
6. 科学・量子コンピューティング
Microsoft Discovery がGAとなった。Azure 上に構築された科学ワークフロー全体のためのエージェント型 AI プラットフォームで、BHP(銅の浸出ソリューション)・Syensqo(半導体R&D)・GSK(創薬)などが活用している。GitHub Copilot アカウントだけで使える無料の Discovery ローカルアプリもプレビュー提供され、Mayo Clinic とはヘルスケア向けフロンティアモデルの共同開発が発表された。
次世代量子チップ Majorana 2 も披露された。前世代(Majorana 1)比で1,000倍超の信頼性向上、平均クォービット寿命20秒・最大1分を達成(別ソースでは平均29秒とも報告。公式ブログの「20秒」表記を優先するが、計測条件が異なる可能性がある)。手のひらサイズのチップで100万クォービットへの道筋を謳い、エージェント型 AI の助けを借りて2029年までにスケーラブルな量子マシンを実現するとのロードマップが示された。ただし独立した物理学者による Majorana 2 の性能主張への異議申し立てが複数報道されており、peer review 結果を待ちたい。
7. 日本市場・日本語対応
- Azure HorizonDB:プレビュー開始時のリージョンに日本は含まれないが、公式エンジニアリングブログは Japan East を「数週間以内に追加されるリージョン」の一つとして明記している。
- MAI-Transcribe-1.5:43言語対応に日本語が含まれることを Foundry のモデルカタログで確認できる。
- MAI-Voice-2:公式ブログは「15言語以上」と記載するが、日本語が含まれるかの公式明記は現時点では確認できていない(未確認)。
- Microsoft 365 Copilot の日本語対応:Copilot は日本語(ja-JP)を公式サポート済み。Agent Mode も標準 Copilot 言語サポートに準じる見込みだが、機能名指しでの公式明記は確認できていない。
- 日本マイクロソフト公式イベント:「Best of Microsoft Recap Day Japan 2026」が開催され、公式日本語抄訳(news.microsoft.com/source/asia)も公開されている。
8. まとめ・総評と実務アクション
Build 2026 を一言で表すなら「エージェントのためのフルスタック」だ。Microsoft は (1) 自社シリコン(Cobalt 200/Maia 200)、(2) OS とローカルランタイム(MXC・Aion・Surface RTX Spark Dev Box)、(3) クラウド基盤(Foundry・HorizonDB・Fabric)、(4) 開発ツール(GitHub Copilot app・Visual Studio)、(5) 自社モデル(MAI 7種)、(6) ガバナンス(Agent 365・MDASH)という全層を「エージェントを開発・運用・統治する」という一本の物語で束ねた。単一モデルへの依存を避け、モデル多様(model diverse)・オープン・ヘテロジニアスを強調した点も際立っていた。
実務面での重要度が高い発表は以下の4点だ。
- Microsoft IQ/Work IQ API による「コンテキスト層」の標準化
- Foundry Agent Service のフレームワーク非依存ホスティングと OpenTelemetry 可観測性
- MXC(Windows エージェントサンドボックス)と OS 強制ガバナンス
- GitHub Copilot app による並列エージェント管理
一方、多くの機能はプレビュー/プライベートプレビュー段階であり、Copilot Credits の従量課金・ガバナンス・モデルロックインの観点で慎重な評価が求められる。HorizonDB の「3倍」、Web IQ の「2.5倍速」、Cobalt 200 の「50%向上」といった性能値も Microsoft 自社ベンチマークであり、本番採用判断前の自前検証を推奨する。
| タイミング | アクション |
|---|---|
| 今すぐ(GA済み) | Coreutils for Windows・Windows Developer Configurations を開発環境に導入。VS Code の Foundry Toolkit でエージェントをローカル実行。MAI-Code-1-Flash を VS Code モデルピッカーで試す。 |
| 近い将来(評価フェーズ) | Work IQ API を1コール試験し、Copilot Credits の消費量を測定。Japan East での HorizonDB GA を待ちつつ、他リージョンでベクトル検索・DB内モデル管理をPoC。 |
| 採用判断の閾値 | プレビュー機能はSLA・課金体系・日本リージョン提供が明示された段階で本格採用を検討。Copilot Credits は M365 管理センターで上限・アラートを設定してから有効化。 |
出典・注記:The Official Microsoft Blog「Microsoft Build 2026: Be yourself at work」(Kyle Daigle)、Microsoft Build Live(news.microsoft.com/build-2026-live-blog)、Microsoft AI 公式ブログ「Introducing MAI-Thinking-1」「Microsoft Build 2026: MAI keynote transcript」、Windows Developer Blog「Build 2026: Furthering Windows as the trusted platform for development」、Microsoft Foundry Blog、GitHub Blog、Azure Blog/Microsoft Community Hub(HorizonDB・PostgreSQL・Cobalt 200)、Microsoft 365 Blog(Work IQ API・Cowork)、Command Line「Composing a new platform for agent-first devices」(Project Solara)、GeekWire「Inside Microsoft's Project Solara」ほか、公式一次情報および主要技術メディアの報道に基づく。性能数値の多くは Microsoft 内部ベンチマークであり第三者検証は未実施。多数の機能はプレビュー段階のため、提供状況・名称・課金は今後変更され得る。Majorana 2 については独立した研究者による反論が報告されており、peer review の結果を参照することを推奨する。