「答えを出す」検索から「代わりにやってくれる」エージェントへ — Perplexity・GenSpark・Feloは今どこにいるのか
Googleが90%超の検索シェアを守り続ける一方で、「質問すれば引用付きの答えが返ってくる」「プロンプト一発でスライドや調査資料が完成する」AIサービスが急成長している。本稿では代表格であるPerplexity(米国)、GenSpark(米国・中国系創業者)、Felo(日本発)の3社を軸に、立ち位置・資金調達・日本市場での動き・今後のリスクと機会を整理する。
■ まず結論:3社は「同じ土俵」にいない
- Perplexity=アンサーエンジンの代名詞。検索の正確性・引用の透明性が核。評価額は2026年1月9日時点で226億ドル(Tracxn)、ARR(年間経常収益)は2026年3月時点で4.5億ドル超(Gradually.ai調べ、複数ソースで一致)。
- GenSpark=「スーパーエージェント」でワンプロンプトから成果物(スライド・シート・動画・電話代行)を自律生成。2026年3月に評価額16億ドルだったが、わずか3か月後の6月17日には26億ドルに再上昇(Emergence Capital主導のSeries B追加ラウンド)。
- Felo=日本発の多言語AI検索+資料生成。2025年7月に約15億円(1,000万ドル)のSeries Aを調達。日本語文脈理解とデータ国内保管を武器に、大手が手薄な「日本語×セキュリティ」ニッチを狙う。
1. 各社プロフィール
Perplexity AI — 資本と規模で独走
2022年8月設立。創業者はAravind Srinivas(CEO、元OpenAI/Google Brain/DeepMind)、Denis Yarats(元Meta AI)、Johnny Ho、Andy Konwinskiの4名。サンフランシスコ本社。
評価額は2023年4月の1.21億ドルから、2024年12月90億ドル、2025年9月200億ドル、そして2026年1月のSeries E-6で226億ドルに到達(Tracxn調べ、ラウンド自体の調達額は非開示)。累計調達額は17.2億ドル(11ラウンド、63投資家)。Nvidia、Jeff Bezos個人、SoftBank Vision Fund 2、Accel、IVPなどが主要投資家で、2025年12月にはCristiano Ronaldoも出資したと報じられている。
主力製品は検索エンジン本体(月間クエリ約7.8億件、2025年5月時点のCEO発言)に加え、Chromiumベースのエージェンティックブラウザ「Comet」(2025年7月にMax限定でスタートし、同年10月に無料開放)、デスクトップ操作エージェント「Perplexity Assistant/Computer」(2026年2月、最大19モデルを並列オーケストレーション)。2026年2月には広告事業を完全に廃止しサブスクリプション一本化。Free/Pro(20ドル/月)/Max(200ドル/月)/Enterprise Pro(40ドル/席/月)という価格体系で、MAU(月間アクティブユーザー)は3,400万〜4,500万人(出典により差あり)、リテンションは85%とされる。
※ 2026年1月にMicrosoft Azureと3年・7.5億ドルのGPU調達契約を締結、2025年8月にはGoogle Chromeへ345億ドルの非公式買収提案を行うなど、資金力を背景にした大型の動きが目立つ。
GenSpark(法人名:MainFunc Inc.) — 最速で成長するエージェント企業
2023年設立、パロアルト本社。CEOのEric Jing(金運)は元Baidu副社長・Xiaodu CEOで、Microsoft Bingでの勤務経験も持つ。共同創業者はKay Zhu(Kaihua Zhu、元Google Principal Architect・Baidu)、Lenjoy Lin、Wen Sang(MIT PhD)の4名体制。
2025年4月に「Super Agent」を発表して検索からエージェントへ明確にピボットし、成長速度は業界最速クラス。ARRは5,000万ドル(5か月)→1億ドル(9か月)→2億5,000万ドル(12か月、2026年4月時点)と伸び、2026年第1四半期だけで新規ARR1.5億ドルを追加したと報じられている。評価額は2025年11月のSeries B(2.75億ドル、評価額12.5億ドル)→2026年3月に16億ドル→2026年6月17日のSeries B追加ラウンドで26億ドルまで急伸(Emergence Capital主導、Sozo Ventures・Korea Mirae Asset等が参加)。累計調達額は6.45億ドル。
プロダクトは「Genspark Claw」(2026年3月、"初のAI社員"を謳うクラウド常駐エージェント)、AI Workspace(スライド/シート/文書/動画/コード生成)などがあり、独自の「Mixture-of-Agents」アーキテクチャで70以上のAIモデルと80以上のツールをオーケストレーション。2026年4月にはMicrosoft Word/Excel/PowerPoint/Agent 365への統合を含む世界的戦略提携を発表した。
Felo(開発元:Sparticle株式会社) — 日本発・多言語特化
Feloブランドの製品を開発したのはSparticle株式会社(2019年8月設立、東京・日本橋、CEO 金田達也。元Microsoftエンジニアで、中国Xiaomi(小米)の幹部を経て起業)。2024年7月に「Felo Search」をリリースし、1か月で15万ユーザーを突破。同年8月にはProduct Huntのデイリーランキングで初日1位を獲得した。
資金調達面では、Felo事業を担う法人として2024年7月に別途設立された会社が、2025年7月9日に約15億円(1,000万ドル)のSeries AをPeak XV Partners(旧Sequoia Capital India & SEA)とMirae Asset Venture Investmentsから調達している。Sparticleが2019年から積み上げてきた製品開発と、2024年設立の資金調達主体という2つの法人的側面が併存する点は、他の2社に比べて情報が錯綜しやすいので留意されたい。
Series A時点(2025年7月)でユーザー数120万人(日本・韓国・台湾中心)、1日30万クエリ超。同年10月には全世界300万ユーザー突破を発表している(直近の更新は未確認)。製品はFelo Search(多言語AI検索)、Felo Enterprise(2025年5月)、Felo LiveDoc(2025年11月、複数AIエージェント協働型文書ワークスペース)など。AWS日本リージョンでのデータ保管、SSO対応、「企業データをモデル学習に利用しない」ことを明言しており、企業向けにはデータガバナンスを前面に出している。
2. 3社比較
| 項目 | Perplexity | GenSpark | Felo |
|---|---|---|---|
| 評価額(時点) | 226億ドル(2026年1月) | 26億ドル(2026年6月) | 非開示(Series A:約15億円) |
| 累計調達額 | 17.2億ドル | 6.45億ドル | 約15億円(約1,000万ドル) |
| コア製品 | アンサーエンジン検索+Cometブラウザ+Computerエージェント | スーパーエージェント(成果物自律生成) | 多言語AI検索+資料生成+LiveDoc |
| 日本での動き | ソフトバンクがPro無料提供+Enterprise Pro再販第一号 | ソースネクストが独占代理店、2026年1月日本法人設立 | SB C&Sと販売代理店契約(2026年6月、全国約1.5万社網) |
| LLM戦略 | 複数モデルをルーティング(Computerは最大19モデル並列)、自社Sonar(Llamaベース)も保有 | Mixture-of-Agents(70以上のモデル+80以上のツール) | マルチLLM+RAG/クロス言語検索ハイブリッド |
出典:Tracxn、Sacra、Silicon Valley Investclub、各社プレスリリース、Reuters、TechCrunch等(2026年7月時点。詳細出典は本文参照)
機能・能力の違い
- 検索品質:Perplexityは引用の正確性・透明性で評価が高い。GenSparkは要約・網羅性、Feloは日本語文脈理解に強みがあるとされる(第三者ベンチマークは方法論が不透明なため参考値扱い)。
- エージェント能力:GenSparkが最も先行(マルチステップ自律実行、電話代行、専用クラウドコンピュータ)。PerplexityはComet/Computerで追随。Feloは検索エージェント+LiveDocで文書生成に特化。
- ブラウザ/OS統合:Perplexity Cometが先鋭的だが、OpenAIのChatGPT Atlas(MAU 500万超)には数で劣後。GenSparkはMicrosoft 365ネイティブ統合で存在感。
- 日本語対応:Feloが最適化度で優位とされるが、Perplexity・GenSparkも実用十分な日本語対応を備える。
3. 日本市場での実際の動き
Perplexity×ソフトバンク:2024年6月からSoftBank/Y!mobile/LINEMOユーザー向けにPro(通常2,950円/月)を1年間無料提供。2025年にはソフトバンクが日本初のEnterprise Pro認定リセラーとなった(SK Telecom、Deutsche Telekomに続く)。
GenSpark×ソースネクスト:2025年11月に日本初の公式パートナー契約を締結し、2026年1月28日に日本法人を設立。米国・韓国に次ぐ最重要市場と位置づけ、Team版(月額4,800円/ユーザー)を全国2,000社超のリセラー網で展開。2026年1月時点で日本の月間訪問数は1,496万件、前月比22%増という急成長を見せている。SBI Investmentも出資者に名を連ねる。
Felo×SB C&S:2026年6月、ソフトバンクグループのIT流通会社SB C&Sと販売代理店契約を締結。全国約1.5万社・約4.7万拠点の販売網でFelo Enterpriseを展開。ISO27001・SOC2 Type I取得、AWS日本リージョンでのデータ保管を訴求している。
3社に共通するのは「ソフトバンクグループ経由の日本参入」という構図だ。ソフトバンク本体(Perplexity)、SBI Investment(GenSparkへの出資)、SB C&S(Felo)と、グループ内の異なる窓口がそれぞれ異なるAI検索・エージェント企業と提携している点は興味深い。
日本の政策動向としては、2025年9月に「AI推進法」が全面施行(罰則なしの推進型)、2025年12月に「AI基本計画」が閣議決定された。デジタル庁は政府向けAI基盤「Gennai(源内)」を2026年5月から展開し、国産7モデルを採用してガバメントクラウド上でデータ国外流出を防ぐ設計としている。ソブリンAI(NTT tsuzumi 2、富士通Takane、NEC cotomi等)志向の高まりは、海外AI検索・エージェントの政府・機微領域への浸透に一定の制約となる一方、「国内保管・データ主権」を訴求するFeloのような企業には追い風となり得る。
4. 今後の見通しとリスク
市場予測
Gartnerは2025年6月25日のプレスリリースで、「コスト増大・不明確な事業価値・不十分なリスク統制により、2027年末までにエージェンティックAIプロジェクトの40%超が中止される」と警告している(Anushree Verma上級ディレクターアナリスト、2025年1月の3,412名調査に基づく)。同時にGartnerは「2028年までに日次業務判断の少なくとも15%が自律的にAIエージェントによって行われる」「エンタープライズソフトの33%がエージェンティックAIを組み込む」とも予測しており、短期的な淘汰と長期的な構造転換は両立し得るとしている。
※ この「40%」統計は2025年6月の予測であり、一部メディアで日付を落として「最新の2026年予測」であるかのように引用される傾向がある点には注意したい(Forbes、2026年7月7日の再検証記事が指摘)。
リスク:地政学と無料バンドル化
2026年4月27日、中国国家発展改革委員会(NDRC)は、MetaによるシンガポールのAIエージェント企業Manus(中国系創業者、2025年6月にシンガポールへ本社移転)の買収(約20億ドル、2025年12月発表)について、外国投資安全審査弁法に基づき初めて差し止めを命令し、両社に取引の巻き戻しを要求した。この一件は「シンガポール・ウォッシング」(中国発企業がシンガポールに籍を移すことで規制回避を図る手法)に対する初のレッドラインとされ、クロスボーダーAI買収の先行きに強い警戒感を与えている。
独立系AI検索・エージェント企業にとって最大のリスクは、Google・OpenAI・Microsoftが同等機能を主力製品に無料で組み込むこと(コモディティ化圧力)である。Perplexityは売上倍率が100倍を超え、GenSparkは急成長中とはいえ組織規模はまだ小さい。著作権訴訟(Forbes、NYTなど)も継続的なリスクとして残る。
機会
エンタープライズ検索の刷新、エージェンティックブラウジング/タスク自動化、金融・法務・医療・日本語などの垂直特化型AI検索は、いずれも独立系企業が差別化を図れる領域として期待されている。
まとめ:導入検討における実務的な視点
- 用途で使い分ける:Perplexity=正確性重視のリサーチ・引用、GenSpark=成果物の自律生成、Felo=日本語・多言語リサーチ+資料化。単一ツールでなく「マルチAI検索」の使い分けが2026年時点の現実的な選択肢。
- エンタープライズ導入ではデータ主権が分岐点:国内データ保管、SSO/SAML対応、SOC2/ISO27001取得、円建て請求などが日本企業の導入判断を左右する。3社とも日本の販売代理店ルート(ソフトバンク、ソースネクスト、SB C&S)を整備済み。
- 段階的検証を推奨:無料枠での日本語検索品質比較→30日間の業務パイロットで工数削減効果を計測→ROIが確認できれば有料・エンタープライズプランへ拡大、という段階を踏むのが妥当。Gartnerの「40%が中止される」という警告を踏まえ、ガバナンス整備(利用範囲の明確化、権限管理、撤退基準)を前提条件とすべきである。
本記事のために実施した調査は2026年7月16日時点の情報に基づく。評価額・ARR・ユーザー数は情報源により数値に幅があり、特に非上場企業の評価額は「公式発表」と「二次情報・推計」が混在する点に留意されたい。Gartner等の将来予測は予測であり確定事実ではない。急速に変化する市場のため、導入検討の際は各社公式サイトでの最新情報確認を推奨する。