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金曜日, 5月 23, 2025

川崎重工が開発するK-RACER量産型の価格予想と同等スペック機の比較

 ChatGPTのDeep Researchで調査、検討してもらいました。

K-RACER量産型の価格予想と同等スペック機の比較

実際には単体売はせず、サービス提供とするという話なので、価格が公表されることはなさそうなんですけどね。(防衛向けは除く)


一部抜粋

価格の予想: K-RACER量産型の正式な価格は未公表ですが、1機あたり約1億円前後(数百万ドル規模)になると予想されます。これは同程度の積載能力を持つ小型ヘリコプターの価格帯や、大型ドローンの開発動向を踏まえた推定です。例えば、4人乗り小型ヘリ「ロビンソンR44」の新造機価格が約7200万円helidata.net、最新の小型タービンヘリ「ベル505」が約2億円helidata.netであることを考えると、K-RACERは有人ヘリより安価であることが望ましいものの、高出力エンジンや自律飛行システム、型式認証コスト(小型ドローンの10倍以上の費用とも言われるdrone.jp)などを反映すれば1機数億円規模は避けられないでしょう。実際、中国の2人乗り電動ドローン「EHang 216」は1機あたり約3,000万円~5,000万円で販売されていますtrafficnews.jpehang.comが、K-RACERはそれより大型で航続距離も長いため、価格も倍以上になる可能性があります。

月曜日, 3月 31, 2025

Hondaの開発中eVTOLに関する包括的分析:技術、市場、競合、将来展望

 技術面:Honda eVTOLの設計と技術的特徴

Hondaが研究開発中のeVTOL(電動垂直離着陸機)は、ハイブリッド方式を採用している点が大きな特徴です。電動モーターとガスタービンエンジンを組み合わせたハイブリッド電動推進システムにより、既存の純電動eVTOLが抱える航続距離の制約を克服し、**約400km(250マイル)もの長距離飛行を可能にする設計になっています​。これは市街地内の短距離移動にとどまらず都市間移動(inter-city)**を視野に入れたもので、Honda自身も「ガスタービン搭載ハイブリッドで航続距離を延ばし、将来的に都市間輸送を可能にする」と述べています​。また、ハイブリッド機は燃料補給が迅速でインフラ面でも既存の航空燃料を活用できるため、運用上の利点もあります(ただし環境面では燃料消費に伴う排出が課題となります)。

設計面では、HondaのeVTOLは固定翼付きのリフト+クルーズ方式を採用しています。他社に多いティルトローター式(離陸時と巡航時でプロペラ角度を変える方式)ではなく、垂直離着陸用と巡航用のプロペラを分離することで機構を簡素化し、安全性と静粛性を高めています​。具体的には8基の垂直離着陸用プロペラ2基の前進用プロペラを機体に搭載し、垂直離着陸時には8基の小型プロペラで揚力を得て、巡航時には後部の2基のプロペラで固定翼による揚力のもと高速巡航する設計です​。この機構により、ティルトローター機のような複雑な可動部分を避けつつ、ヘリコプターより静かな飛行が可能になります。Hondaによると、小径の多数のプロペラを用いることでヘリコプターよりも騒音を大幅に低減でき、市街地での離着陸でも騒音問題を起こしにくいとされています​。実際、eVTOL全般の特徴として、電動によるシンプルな構造と小型プロペラの分散配置により、騒音や振動が従来ヘリコプターより小さいメリットがあります​。

搭乗定員はパイロット1名+乗客4名の計5名規模で、機内は快適性と展望に配慮した設計になる見込みです​。客室は大型の窓を備え景観を楽しめるよう工夫され、座席4名分+荷物のスペースが確保されます​。機体構造にはカーボンファイバー複合材が用いられ、強度と軽量化を両立しています​。前後にタンデム配置された主翼(前翼は後翼より短い)を持ち、それぞれの翼にブーム(桁)が伸びてプロペラを支える独特の外観となっています​。着陸装置も格納式の三輪脚を備え、空気抵抗低減と実用性を両立しています​。

安全性の確保はHonda eVTOL開発の重要テーマであり、技術的にも冗長性を高めています。分散電動推進(DEP: Distributed Electric Propulsion)により複数のプロペラ・モーターで揚力を分散して担うため、仮に一部のプロペラやモーターが故障しても残りで飛行継続・安全着陸が可能です​。制御系や電源系など重要サブシステムにも多重化が図られ、単一故障点(single point of failure)を極力排除する設計としています​。Hondaは「eVTOLはシンプルな構造と分散型推進により、商用旅客機並みの安全性を実現し得る」と述べており​、航空機メーカーとして培った安全技術を投入していることがうかがえます。また、非常時のパラシュートや自動着陸システムの搭載など、他社eVTOLで検討されている安全策も今後盛り込まれる可能性があります。

以上のように、HondaのeVTOLはハイブリッド方式による長距離飛行能力分散電動推進による安全・静粛性を両立し、1人乗員+4人乗客を乗せて都市間を結ぶ次世代航空機となるよう開発が進められています。​

現時点で巡航速度は公表されていませんが、固定翼を持つことから巡航速度は200~300km/h程度を目指すと推測されます(参考までに他社同規模機では約240~320km/h程度​)。これら技術的特徴により、Honda eVTOLは都市内の短距離移動だけでなく、より長距離の移動ニーズに応える乗り物として位置付けられています。

市場分析:ターゲット地域・用途と規制動向

Hondaが参入を目指すeVTOL市場は、世界各地で立ち上がりつつある**先進空のモビリティ(Advanced Air Mobility: AAM)分野です。その中でHonda eVTOLは特に都市間移動(Inter-city)**を視野に入れていることから、北米やアジアの大都市圏など、都市間の移動需要が高い地域を主なターゲットにすると考えられます。​

実際、Hondaはプレス発表で「都市間交通の市場が将来拡大する」としており​、広域都市圏を結ぶサービスを想定しています。以下では、地域別の市場環境とユースケース、規制やインフラ動向について分析します。

  • 北米市場: 北米(特に米国)はeVTOL開発・導入の先行地域と目されています。多数のスタートアップ企業(JobyやArcher等)が拠点を置き、FAA(米連邦航空局)も型式認証の基準作りや実証に着手しており、2024~2025年にも初の商用eVTOLが認可される見通しです​。例えばJobyやArcherは2024年のFAA型式認証、2025年のサービス開始を目標に掲げています​。こうした状況下、Hondaも米国カリフォルニアに研究拠点(Honda Research Institute)を置き、2024年には小型試験機の飛行実験に向けFAAの特別許可を取得するなど、北米で開発を進めています​。北米では都市部~郊外・近隣都市間のエアタクシー需要や、企業のシャトル移動需要が見込まれ、また広大な国土ゆえ地方と都市を結ぶ新たな移動手段としても期待されています。規制面ではFAAが新カテゴリ「Powered-Lift」としてeVTOLをヘリコプター等とは別枠で扱う方針を打ち出しており、耐空性基準の策定や運航ルールの整備が進行中です。インフラ面では、既存のヘリポートやビル屋上を転用したバーティポート(垂直離着陸場)の整備計画が各都市で検討されています。社会受容性については、空飛ぶクルマへの期待は高い一方、安全性への不安も残ります。ある調査では約80%の消費者が空のタクシーの安全性に懸念を示したとの結果もあり​、北米でも当初は富裕層や企業ユーザーから徐々に受け入れられていき、大衆的な利用には時間を要する可能性があります。

  • 欧州市場: 欧州もまたeVTOL開発の主要地域です。ドイツを中心にVolocopterやLilium、英国のVertical Aerospaceなどが開発をリードし、欧州航空安全機関(EASA)は世界に先駆けてeVTOL向け特別規則(SC-VTOL)を策定するなど積極的です。初期の商用サービスはフランス・パリでの2024年オリンピックにおけるデモ飛行や、シンガポール・ロンドン間のテスト計画などが話題となっています。欧州の都市は歴史的景観や騒音規制に厳しい面がありますが、eVTOLの静粛性が評価されれば市街地観光や空港アクセスへの活用が期待されます。法規制面ではEASAの主導のもと各国で空域管理や運航ルールの調和が図られており、安全性への社会の関心も高いです。そのため初期は有人パイロット付きで安全を確保しつつ、小規模路線から開始する見込みです。インフラについては欧州企業が主導するバーティポート網構想があり、Skyports社などが各都市で屋上ポートの設計を進めています。HondaのeVTOLが欧州展開する場合、まずは規制の整った国(例えば英国やドイツ)でパートナー企業と提携し実証する可能性があります。社会受容性の面では、環境意識の高い欧州ではゼロエミッション飛行への期待があり、Hondaのハイブリッド機についてはカーボンフットプリント低減策(例えばSAF=持続可能航空燃料の使用など)を講じることが受容の鍵となるでしょう。

  • アジア市場: アジアでは日本と中国が二大マーケットになる潜在性があります。日本では政府が「空の移動革命」に力を入れており、2025年の大阪・関西万博での空飛ぶクルマ実用化デモを目標に掲げています。トヨタ系や三菱系企業も出資するSkyDrive社など国内スタートアップが開発中で、また海外勢ではJobyがANAと提携、VolocopterがJALと協業するなど、大手航空会社も参入準備を進めています。規制面では国土交通省が航空法の枠組みを調整し、安全基準や試験飛行許可の制度化を進めています。社会的にも日本は新技術への期待が高く、特に過疎地域の医療搬送や観光振興など公益性のある用途から受け入れが始まると予想されます。Hondaにとって本国市場である日本は重要であり、ゆくゆくは国内でのサービス提供も視野に入れるでしょう(例えば地方都市間や離島アクセスへのeVTOL活用など)。一方、中国ではEHang社が自律飛行型2人乗り機(EH216)で先行し、すでに幾つかの都市でデモ飛行や観光運航を行っています。中国当局も自国企業の技術開発を奨励しており、航空法規の整備を進めています。EHangは2023年に中国民航局から型式認証に近い承認を取得したと報じられており、中国市場では比較的早期に空飛ぶタクシーが営業する可能性があります。Hondaが中国市場を狙う場合、現地企業との提携や中国規制当局との協調が必要となるでしょう。その他アジアではシンガポールや中東ドバイなど富裕層や観光需要のある都市も有望視されています。特に観光地では遊覧飛行やリゾート送迎としてeVTOLが活用される見込みで、すでにインドネシアのバリ島でEHangが観光飛行デモを成功させています。

想定ユースケース(利用用途): eVTOLの用途は多岐にわたり、Hondaも自社eVTOLを幅広いモビリティ生態系の一部として位置付けています​。主なユースケースには以下のようなものがあります。

  • 都市内エアタクシー: 都市の中心部と空港や郊外を結ぶ短距離のエアタクシーサービス。渋滞回避による時間短縮が最大のメリットで、Archer社は約20~50km程度の都市内ルートを想定しています。HondaのeVTOLも垂直離着陸・低騒音を活かし、都市部ビル屋上-空港間などのシャトル輸送に投入可能です。

  • 都市間シャトル/リージョナル航空: 離れた都市間(例えば東京-名古屋間など)の移動にeVTOLを用いるケースです。Honda機のように航続距離が長ければ200~300km圏内の都市間移動に利用でき、従来新幹線や在来小型航空機が担っていた市場を補完・置換する可能性があります​。高速道路網で数時間かかる距離を短時間で移動できる点から、ビジネス出張や週末レジャー移動に新たな選択肢を提供します。

  • 観光・遊覧飛行: 観光地上空の遊覧やリゾート地への送迎など、レジャー用途も期待されています。例えば離島リゾートへのアクセスや、都市上空からの観光フライトです。静音で景観を楽しめるeVTOLは観光客の体験価値を高めます。EHang機はすでに観光客向け遊覧飛行を実施しており、Honda機も大きな窓を備えるなど観光用途を意識した設計となっています​。

  • 医療搬送・救急: 離島や山間部への緊急医療搬送、臓器移送、災害時の物資輸送などのケースです。ヘリコプターに比べ運用コストが低減できれば、地方自治体や医療機関による導入も進む可能性があります。特にHonda機のように航続距離が長ければ、遠隔地病院間の患者搬送にも利用できるでしょう。ただし緊急用途では即応性や全天候性能が求められるため、今後の技術改良(自動飛行や耐候性能向上)が鍵となります。

  • 貨物輸送・物流: 人を乗せない貨物専用eVTOL(ドローン大型版)の分野も期待されています。初期は重量物輸送よりも緊急小口貨物(医薬品や電子部品など高価値品)輸送から商用化される見通しです​。Hondaも自社VTOLを物流や緊急搬送に活用できると示唆しており​、将来的には旅客型から派生した貨物型の開発も考えられます。

以上のように、各地域の市場環境想定用途は多様ですが、Honda eVTOLは比較的長距離を移動したい乗客(都市間移動)公共目的(救急・物流)にも対応できる点でユニークです。一方で、実用化には各国の規制整備社会受容性の向上が不可欠です。空の移動への不安を和らげるため、段階的な試験運用や安全実証、既存交通との連携(例えばHondaが提唱するように車・電車と接続するマルチモーダルなサービス提供​)が重要となるでしょう。またインフラ面では、各都市に離着陸スポットや充電・給燃設備を整備する必要があります。特にHonda機は燃料補給を要するため、空港やヘリポートでの燃料サービスとの両立や、将来的な電動化率向上(電池技術進歩による純電動飛行時間延長)なども検討課題です。

競合との比較:他社eVTOLおよび他方式VTOLとの違い

世界中で多数の企業がeVTOL開発レースを繰り広げており、Hondaは比較的新規参入ながら、自社のコア技術を活かして競争力を発揮しようとしています。ここでは主要な電動eVTOL開発企業との比較と、**電動以外のVTOL(ハイブリッドや水素燃料型)**との比較を行います。

主なeVTOL競合企業との比較

現在、主なeVTOL開発企業には米国のJoby AviationやArcher Aviation、英国のVertical Aerospace、中国のEHangなどがあり、それぞれ機体性能やビジネスモデルで特徴を打ち出しています。Hondaの機体仕様をこれら競合と比較すると以下の通りです(表):

企業(機体)推進方式搭乗人数航続距離主な設計特徴・備考
Honda(試作機コンセプト)ハイブリッド(ガスタービン+電動)1名+乗客4名​
約400km​
固定翼付き、垂直用8プロペラ+前進用2プロペラ​
(分離推進); 静音・長距離で都市間移動を想定​
Joby Aviation(S4試作機)完全電動(バッテリー)1名+乗客4名​
約240km(150マイル)​
6枚のティルトプロップによるVTOL機構; 最大速度約320km/h(200mph)​
; トヨタが出資・量産協力
Archer Aviation(Midnight)完全電動(バッテリー)1名+乗客4名​
約160km(100マイル)​
12基プロペラ(6基を離着陸専用、6基を巡航時前方傾斜); 1フライト約20マイル想定で高速再充電運用​
Vertical Aerospace(VX4)完全電動(バッテリー)1名+乗客4名​
約160km(100マイル)​
4枚の大型ティルトプロペラ×両翼計8基搭載; V字尾翼付き近未来的デザイン; 英国発、航空各社からプレオーダー多数
EHang(EH216)完全電動(バッテリー)乗客2名(自動操縦)
約35km​
16プロペラのマルチコプター型; パイロット不在の自律飛行設計; 中国にて試験運航・観光利用が進展中

※航続距離や速度は公称値または目標値。搭乗人数はパイロット含む最大定員。

上記比較から分かるように、Honda eVTOLの強みは航続距離の長さにあります。他社の電動機が概ね100~250km程度の航続を目標としている中、Hondaはハイブリッド方式を採用することで約400kmという飛躍的に長い距離を飛べる点で差別化しています​。これは、都市中心部~郊外といった短距離の都市内モビリティに留まらず、都市間を結ぶリージョナルな移動に対応できることを意味します​。一方で、ハイブリッドであるが故に機構が複雑(発電用エンジンの搭載)である点や、排出ガス・燃料補給が発生する点は、純電動機に比べて劣る部分と言えます。騒音に関しては、Honda機は小型プロペラ多数による静音性を謳っています​。JobyやVerticalも「ヘリコプターより100分の1の騒音」といった低騒音をアピールしており​、静粛性は各社とも都市で運航する上での必須要件です。

乗客定員はいずれも4~5人規模(操縦者含む)で大きな差はありません。これは現在のバッテリーエネルギー密度等から見て、機体サイズ・重量的に約5人乗りが経済性と実現性のバランスが良いためです。EHangのみは2人乗り・完全自動運転という特殊な位置付けですが​、これは技術リスクを抑え早期実用化を図った結果と言えます。HondaやJoby、Archerなど西側の機体は当面有人パイロット操作で運航開始し、将来的に段階的に自動化を進める計画です(Deloitteの予測では2030年以降に自律飛行機体が普及するとされています​)。

設計コンセプトを見ると、Hondaはリフト+クルーズ方式(垂直離着陸用と巡航用を分離)ですが、JobyやVerticalはプロペラを傾けて兼用するティルト式、Archerは両方式を組み合わせたような配置です。それぞれ一長一短がありますが、Honda方式は垂直離着陸用プロペラを巡航時には停止させて抵抗軽減できるため高速・長距離巡航に有利です。他社ティルト式はプロペラ兼用で機体構造を簡素化できる利点があります。Hondaはエンジン発電機を搭載するぶん機体重量増が懸念されますが、Honda自身F1レースで培った高出力エンジン技術や軽量構造技術を活かし克服するとしています​。

電動以外のVTOL機との比較(ハイブリッド・水素燃料型など)

Honda eVTOL自体がハイブリッド方式ですが、eVTOL市場全体を見ると他にも電動以外のエネルギー源を検討する動きがあります。代表的なのがハイブリッド型および水素燃料電池型です。それらの特徴を、Honda機および純電動機との対比で整理します。

  • ハイブリッド型VTOL: Honda以外にもハイブリッド方式を採用する試みとして、米XTI社の「TriFan 600」や英企業との提携で開発中の機体などがあります。XTI TriFanは従来型タービンエンジンに発電機を繋いだハイブリッドで、6人乗りビジネス機として航続約1100kmを目指すとされています。ハイブリッドVTOLの強みはHonda機と同様に航続距離や搭載量の大幅な向上です。燃料から得られる高エネルギー密度を利用できるため、長距離飛行や大型機体へのスケールアップが可能になります​。一方でエンジンや燃料を積む分、機構が複雑化・重量増加し、整備コストや環境負荷(CO2排出)が課題となります。もっとも、エンジンにはバイオ燃料や合成燃料など持続可能航空燃料(SAF)を使うことで環境対応も可能です。Hondaのハイブリッド機はガスタービンエンジンを採用していますが​、その継続運転で発電し電動プロペラを回すため、飛行中にバッテリー残量を心配せず済む利点があります。従来のヘリコプターなど**純粋な燃料燃焼VTOL(例:ベル社のティルトローター機)**と比べれば、推進系統の一部電動化によって制御性や冗長性が高まる点で安全・効率面のメリットがあります。

  • 水素燃料型VTOL: バッテリーに代えて水素燃料電池を電力源とするタイプも研究されています。オーストラリアのAMSL社が開発中の「Vertiia」はその一例で、燃料電池版では航続800~1000kmという極めて長い飛行距離を謳っています​。水素は重量当たりのエネルギーがバッテリーより高く、補給も短時間で済むため、将来的に長距離AAMの本命となりうる技術です。Vertiiaはまず電池版で約250km航続の試験機を飛ばし、次段階で水素版に移行する計画です​。水素型の利点は航続距離とゼロエミッションですが、課題も多くあります。燃料電池システムの重量・複雑さや高圧水素タンクの安全管理、そして何より水素燃料インフラの未整備がボトルネックです。都市部で水素を供給できる設備を整えるには相当の投資が必要であり、まずは空港など限定された拠点での運用になるでしょう。Hondaは現状ハイブリッド路線ですが、将来的に水素エネルギーの動向次第では燃料電池ハイブリッドへの発展も考えられます(Hondaは自動車で燃料電池車を開発した実績もあり、関連技術を持ちます)。

  • 純電動型VTOL: 改めて純電動(バッテリー)型の利点を述べると、運航コストの低さと機構簡素性があります。電気代は燃料代より安価で、モーターはエンジンより整備頻度が低く、長期的には運用コスト優位と期待されています。また飛行中の排出ガスゼロで環境負荷が低い点も重要です。反面、現在の電池技術ではエネルギー密度が限られるため航続距離や搭載量が制約されます​。例えばJobyが達成した150マイル飛行は業界記録ですが​、これは高度な電池マネジメントと軽量化の結晶です。電池性能が今後劇的に向上すれば、Hondaのようなハイブリッドに頼らずとも長距離飛行が可能になるかもしれません。現にHondaは全社戦略として全固体電池の開発を進めており​、2020年代後半には高性能電池を投入予定です。そうなればeVTOLにも新電池を搭載し、将来的に純電動化を図る余地もあります。従ってHondaのハイブリッド戦略は「現時点の電池技術を踏まえた現実解」ですが、長期的には技術進歩に応じ柔軟に見直す可能性があります。

コストとインフラ面で見ると、初期のeVTOL運航コストは高め(ヘリコプターと同等かそれ以上)と予想されますが、規模経済と技術進展で徐々に低下すると期待されています。完全電動機は電力さえあれば稼働できますが、急速充電設備や予備バッテリーが各拠点に必要です。ハイブリッド機や燃料電池機は燃料補給設備(航燃スタンドや水素ステーション)の整備が課題です。ただ、燃料補給の速さではハイブリッド機・水素機が勝り、回転率向上による1日あたり飛行回数の多さが収益に寄与する可能性があります。一方、電動機は充電待ち時間が発生しますが、Archer機のように「10分充電で次の20マイル飛行」という運用モデル​でカバーしようとする動きもあります。

競合の観点では、自動車業界からの参入も活発です。Hondaと同様にトヨタ自動車はJobyに大型出資し製造支援を約束、韓国・現代自動車も子会社Supernalで独自開発を進めています​。米GMもVTOLコンセプトを発表するなど、自動車メーカーは空の移動を次の成長領域と見据えています。Hondaはこの競争環境で自社の強み(航空機HondaJet開発の経験、エンジン技術、電動化技術)を活かしつつ、他社ともエコシステム構築で協業するとしています​。例えば、インフラ整備や運航サービスでは外部企業と提携し、自社は機体開発に注力する戦略が考えられます。競合他社と比べ開発着手が遅れたHondaですが、その分成熟した技術を採用できる利点もあります。総じて、Honda eVTOLは競合ひしめく市場で「長距離ハイブリッド」というユニークなポジションを取り、既存電動機との差別化を図ろうとしていると言えます。

将来展望とタイムライン:市場の成長予測とHondaの計画

eVTOL市場全体の成長予測: 空の個人移動(空飛ぶタクシー)は、今後数十年で大きな市場を形成すると見込まれています。ただし予測には幅があり、控えめな予測では2040年に世界市場規模約32億ドル(約3.2ビリオン)との試算​もあれば、非常に楽観的な予測では2040年に数千億ドル規模や「全世界で数百万機のエアタクシーが需要に応じる」​との見方もあります。例えばAviation Weekの分析では2030年までに累計1,000機、2040年までに1万~1.2万機のeVTOLデリバリーがありうるとされ​、米国市場についてDeloitteは2035年に年1150億ドル規模(米国内)に達する可能性を示しています​。このように長期の数値予測には振れ幅がありますが、共通しているのは2020年代後半から2030年代にかけて本格的な商用サービスが立ち上がり、以降指数関数的な成長を遂げるシナリオです。Deloitteのロードマップによれば、2020年代前半は試作機開発と規制整備、2025~2030年で貨物用途の普及とともに初期の旅客サービスが始まり、2030年以降は自律飛行機の投入も含めて市場が拡大する段階と整理されています​。特に2030年代には都市の空飛ぶタクシーが一般化し始めるとの見方が強く、既存の地上交通を補完・代替する新インフラとして定着していくと期待されています。

Hondaプロジェクトのマイルストーン: Hondaは2021年に公式にeVTOL開発計画を発表して以来、着実にステップを踏んでいます。以下に主なマイルストーン(計画および達成事項)をまとめます。

  • 2021年9月: HondaがeVTOL開発参入を発表。ガスタービンハイブリッド方式による都市間eVTOLコンセプトを公表​。将来のモビリティエコシステム構想も示されました​。

  • ~2024年: 研究開発フェーズ。Honda Aircraft Company(米国)傘下やHonda R&Dの主導で設計検討・風洞試験などが進められました。社内では2030年頃の実用化を視野に検討が行われています​。

  • 2024年10月: 小型サブスケール試験機の飛行許可取得。 米国FAAがHonda Research Instituteに対し、試験的なサブスケール機の飛行を2024年~2026年に行う特例を承認​。この試験機(尾番号N241RX)は実寸より小さいモデルで、基本的な飛行制御や安定性の検証に用いられます。

  • 2025年: デモフライトおよびGo/No-Go判断。 報道によれば、Hondaは2025年までに実証機(デモンストレーター)の飛行試験を行い、その結果を踏まえて商用化に向けた本格開発の是非を判断するとされています​。このタイミングで技術の実現性や市場性を評価し、ゴーサインが出れば量産試作機開発に移行すると見られます。

  • 後半2020年代(~2030年): フルスケール試作機の開発・試験飛行。 商用モデルの試作機を製造し、有人での飛行試験・認証試験を行うフェーズです。想定されるシナリオでは、2020年代後半に型式証明取得プロセス開始、2030年前後に認証取得・初号機デリバリーという流れです。実際、Hondaは「2030年頃のサービス実用化」を目標に掲げており​、eVTOLニュースの取材でも**「2030年以降にサービス投入予定」**と伝えられています​。

  • 2030年代前半: 商用サービス開始。 2030年ごろにまず限定的なルート・規模で商用運航を始め、その後生産規模を拡大しつつ路線網やサービスを拡充していくと考えられます。ホンダは自社で運航サービスまで手掛けるか、あるいは機体供給に徹し航空・交通事業者と組むかは未定ですが、前述のエコシステム構想からすると他企業と連携したマルチモーダルサービスとして世に出す可能性が高いです​。

Hondaが競争優位を築ける要素: Honda eVTOLプロジェクトの強みとしては、まずHondaブランドと技術蓄積が挙げられます。HondaはHondaJetで小型ジェット機の型式証明を取得し世界市場に投入した実績があり、航空機開発・認証のノウハウを社内に有しています。約250機のHondaJet生産で培われた品質管理や量産技術は、eVTOL製造にも活かせるでしょう​。また、Hondaはエンジン技術(F1での高効率エンジン開発など)電動化技術(ハイブリッド車やEV、ロボティクス)を持ち、異分野の融合で独自の機体開発が可能です​。さらに、自動車・バイクを含む総合モビリティ企業として資金力・開発投資力があり、長期的視野で事業を進められる点も有利です。他社スタートアップが資金繰りに苦心する中、Hondaは5兆円規模の研究開発投資計画の一環としてeVTOLに取り組んでおり​、腰を据えた開発が期待できます。

もう一つの優位性は、Hondaが描く**「地上と空をつなぐモビリティ生態系」です​。自動車メーカーならではの発想で、eVTOL単体ではなく、自動運転車や公共交通と連携してドアツードアで移動を最適化するサービスを構想しています​。例えば、利用者はスマホで目的地までの経路を一括予約すると、自宅から空港までHondaの自動運転車、そこからHonda eVTOLで空路移動、着陸後はロボットシャトルで目的地へ…というようにシームレスな移動体験が提供できるかもしれません。このような統合モビリティサービス**を実現できれば、単に機体を売るだけでなく新たな付加価値を生み出し、競合他社との差別化や収益源の多様化につながるでしょう。

Hondaプロジェクトの課題: 一方、Honda eVTOLが直面する課題も多々あります。まず開発スピードと競合優位性です。競合のJobyやVolocopterは既にフルサイズ試作機を飛ばし、認証審査に入っています​。Hondaが2030年前後の商用化を目指す間に、市場は先行組によって開拓されてしまう可能性があります。後発のHondaは、安全性や航続距離といった性能面でアドバンテージを示し、市場参入時に**「選ばれる理由」を創出する必要があります。また、ハイブリッド方式ゆえの環境対応**も課題です。航空業界は2050年カーボンニュートラルを掲げており、長期的にはゼロエミッションが求められます。Honda機も短期的には燃料燃焼を伴うため、カーボンオフセットやSAF利用など環境施策が欠かせません。将来的に電池性能向上や水素技術の台頭があれば、設計の電動化率を上げていく柔軟性が問われるでしょう。

技術開発面では、ハイブリッド機特有のシステム複雑性の克服が挙げられます。エンジン+電動の二重システムを統合制御し、安全基準を満たすのは容易でなく、認証当局との綿密な調整が必要です。もっともHondaJetでターボファンエンジンを扱った経験が助けになるはずです。さらに、インフラとの同期も課題です。せっかく長距離飛べても、離着陸場(バーティポート)が各都市になければサービスは成り立ちません。自治体や他企業と協力し、就航地域での地上インフラ計画にコミットすることが求められます。Honda自身も「他社と協調してエコシステム構築」と述べており​、この点は認識していると言えます。

最後に社会的課題として、安全性への信頼醸成があります。航空機メーカーとして「安全第一」は当然ですが、一般利用者に新しい乗り物への安心感を持ってもらうには時間がかかります。Hondaは長年培った品質と技術力で信頼性の高い機体を提供するとともに、デモ飛行やパイロット訓練、安全管理体制の公開などを通じて透明性を高めることが重要でしょう。日本企業であるHondaの参入は日本国内では安心材料になるかもしれません。例えばトヨタが投資するJoby機より「自国メーカーのHonda機のほうが安心」という心理も働く可能性があります。そうしたブランド力の活用も含め、Hondaが安全・安心のイメージを構築できれば、それ自体が大きな競争優位となるでしょう。

以上、Honda開発中のeVTOLについて技術・市場・競合・将来性の観点から包括的に分析しました。Honda eVTOLはハイブリッド方式による航続距離延長という独自路線で、都市間モビリティ市場を切り開こうとしています。他社との差別化ポイントは明確で、今後その強みを活かせるかが成功の鍵となります。市場全体はこれから飛躍的成長期に入ると予想され、Hondaにとっても自動車に次ぐ新たな柱を築くチャンスです。もっとも競争は激化しており、技術開発の遅れや社会受容性の壁など克服すべき課題も存在します。Hondaが持つ総合技術力と信頼ブランドを武器に、適切なパートナーシップを結びながら、この空飛ぶクルマ革命で競争優位を確立できるか注目されます。その動向次第では、2030年代にはHonda eVTOLが世界各地の空を飛び、人々の生活様式に新たな「移動の喜び」を提供している未来が期待できるでしょう​。

金曜日, 2月 07, 2025

eVTOLの技術と普及に関する総合レポート

 主にChatGPT o1を利用して作成しています。

1. はじめに

eVTOL(electric Vertical Take-Off and Landing)とは、電動モーターによって垂直離着陸を可能とする航空機の総称です。近年、バッテリー技術・モーター技術・制御技術の急速な進歩により、都市部や地方の移動手段、さらには軍事・災害支援など、従来のヘリコプターや小型機に代わる新たなモビリティとして世界各地で注目されています。本レポートでは、eVTOLに関する技術的背景、市場の展望、電動化モデルと燃料利用モデルの比較、軍事利用の可能性などを総合的に考察し、さらに近年の動向として重要な要素である「搭乗員数」による機体規模の違いにも着目して論じます。


2. eVTOLの技術開発の背景

2.1 ドローン技術と電動化の進展

もともと小型無人機(ドローン)が普及する中で培われた飛行制御技術・軽量高性能モーター・バッテリー技術が、有人飛行へスケールアップされる形で誕生したのがeVTOLです。従来の航空機やヘリコプターと比較して以下の特徴が挙げられます。

  • 排出ガスの削減またはゼロエミッション
  • 騒音の低減(マルチローターなどの新しいプロペラ配置により、比較的静粛な飛行が可能)
  • 機体構造の簡易化(内燃機関よりも部品点数が少ないモーター駆動)

一方で、大型のバッテリーを搭載して垂直離着陸を行うには、まだ技術的にいくつもの課題が残っています。

2.2 課題と制約

  1. バッテリーのエネルギー密度
    • 現状のリチウムイオン電池では、1回の充電あたりの飛行距離(航続距離)が数十〜数百km程度と限られます。
  2. 安全規制と認証
    • 航空当局(FAA、EASAなど)の認証基準が整備途上で、試験や認証に時間とコストがかかる。
  3. インフラ整備
    • 都市内・地方を問わず、離着陸場(Vertiport)や充電ステーションの設置が必要。
  4. 騒音・住民理解
    • 小型ドローンよりは音量が大きく、ヘリコプターよりは静かだとされるが、実際の運用時に都市部での騒音規制をどうクリアするかが懸念点。

3. 世界市場の展望

3.1 アメリカ市場

  • スタートアップの活況: Joby Aviation、Archer、Beta Technologiesなどが大規模な投資を受け、近い将来の商用運航を目指しています。FAAの認証作業が進むにつれ、2025〜2030年頃には大都市(ロサンゼルス、ダラス、マイアミ等)での“空飛ぶタクシー”が試験運用される見込みです。
  • 普及シナリオ: 渋滞の緩和やVIP輸送としてのニーズが高く、短距離の都市内移動から徐々に拡張し、2030年代にはインフラ整備が進んだ都市を中心に実用化が進むと期待されています。

3.2 ヨーロッパ市場

  • 環境規制とグリーン政策: EUは2050年カーボンニュートラルに向けた目標を掲げており、エアバスやVolocopter、Liliumなどの企業が実証実験を活発化しています。
  • EASAの認証: ヨーロッパの認証基準は騒音や安全面で厳しく、導入には慎重なプロセスが必要。しかし環境負荷低減の視点から政策的支援も強く、2030年頃から都市部・観光需要向けに拡大が見込まれます。

3.3 中東市場

  • 先進都市の象徴として: ドバイやサウジアラビアのNEOMプロジェクトなど、資金力とインフラ開発の柔軟性を背景に早期導入が期待されています。
  • 高所得層・観光利用: 当初は富裕層や観光客向けのプレミアムサービスとして始まり、2020年代後半には商用運航が本格化するシナリオが有力です。

3.4 その他の地域(アジア、アフリカ、中南米)

  • アジアの先行都市: シンガポールや韓国などは技術的・政策的にも先導的で、小規模な都市型モビリティとしてeVTOLを取り入れる可能性が高い。
  • インフラ未整備地域の可能性: アフリカなどでは交通インフラが脆弱な地域ほど、医療物資輸送や緊急輸送手段としてeVTOLの導入メリットが大きい。しかし、機体コストや整備費用を誰が負担するかの課題が残ります。

4. 日本市場の展望

日本は国土交通省・経済産業省主導で「空の移動革命に向けた官民協議会」を設立し、法整備・インフラ整備を進めています。2025年の大阪・関西万博での実証飛行が注目され、トヨタやANA、JALなど大手企業がスタートアップとの連携を強化しています。

  • 島しょ部・山間部での活用: 離島や過疎地での医療搬送、物流輸送などの有用性が大きい。
  • 都市交通の補完: 大都市圏の混雑緩和や新観光コンテンツとしても期待。
  • 課題: 都市部は人口・建物の密集度が高く、安全面や騒音問題への住民理解が必要。行政プロセスが複雑な日本固有の事情もあり、一気に普及するのは2030年代以降と見られます。

5. パワートレイン選択と航続距離

eVTOLの技術開発では、搭載するパワートレイン(推進システム)の選択が大きなテーマです。航続距離環境規制インフラ整備などによって採用される方式が変わります。

5.1 完全電動(フル電動)モデル

  • 特徴: バッテリーとモーターのみで推進力を得る。排出ガスゼロ・騒音低減。
  • 航続距離: 現在は1回の充電で150〜200km程度が多い。高出力離着陸時の電力消費が大きく、実効的にはやや短くなる。
  • インフラ: 充電ステーションやバッテリー交換設備が必要。都市部の短距離・中距離需要には適しており、2030年代にはバッテリーのエネルギー密度向上が期待される。

5.2 ハイブリッドモデル

  • 特徴: 内燃機関(ジェット燃料など)とモーター+バッテリーを組み合わせる。
  • 航続距離: フル電動より長く300〜500km以上も可能。燃料補給ができればインフラが整わない地域でも運用しやすい。
  • 課題: ゼロエミッションではなく、構造も複雑化する。騒音や排ガスを都市部でどう扱うかがポイント。

5.3 水素燃料モデル(燃料電池/水素タービン)

  • 燃料電池方式: 水素から発電しモーター駆動。排気は水のみ。高圧タンクや安全管理の課題が大きい。
  • 水素タービン方式: ジェットエンジンを水素燃料向けに改良。高出力で長距離にも対応可能だがNOx排出やエンジン複雑化などの問題がある。
  • インフラと将来性: 水素のサプライチェーンが確立すれば大きく普及する可能性。2030〜2040年代にかけてはまだ過渡期と予想される。

6. 軍事利用の可能性

eVTOLは軍事面でも、偵察・監視や兵員輸送、医療搬送など多様な役割が期待されます。

  • 利点: 垂直離着陸による展開の速さ、騒音や熱源の低減によるステルス性。
  • 課題: バッテリーの寿命やハイブリッド機構の耐久性、過酷な環境下での運用実績が乏しい。重量物(兵器など)の搭載にはパワー不足の懸念も。
  • 将来像: まずは軽装備・偵察から導入が進み、技術が成熟すれば中型〜大型機へと広がるシナリオが考えられる。

7. 搭乗員数による機体規模の違いと普及シナリオ

搭乗員数(乗客数+操縦士数)は機体設計や運用モデルに大きな影響を与えます。

7.1 小型機(2〜4名乗り)

  • 実用化最前線: 現行バッテリー技術でも比較的実現しやすく、都市内エアタクシーや観光、VIP輸送で早期に市場投入される。
  • メリット: ペイロードが軽いため必要なバッテリー・モーター出力が抑えられ、離着陸場もコンパクトでOK。
  • デメリット: 1回の運航あたりの収益性は限定的。

7.2 中型機(5〜9名乗り)

  • 航続距離の課題: 搭乗人数が増えるほど機体重量が増え、航続距離の確保が難しくなる。ハイブリッドや次世代電池の導入が鍵。
  • 用途: 都市間移動やグループ旅行、コミューター路線など、利便性が高いが、安全認証のハードルは小型機より厳しくなる。

7.3 大型機(10名以上)

  • 技術とインフラの成熟が必要: 大容量バッテリーや水素燃料などが本格運用に耐えるまで時間がかかる。
  • 想定用途: 大人数の移動や軍事輸送、災害支援。離着陸ポートの大型化や高度な航空管制が必要になる。

8. 総合的な普及シナリオと展望

8.1 短期(〜2025年)

  • 認証と実証実験フェーズ: アメリカを中心に試験運用やデモ飛行が始まる。中東や日本の万博などイベントでも注目度が高まる。
  • 小型フル電動機が先行: 2〜4名乗りのeVTOLが認証取得を目指し、限定ルートでの営業運航が試行される。

8.2 中期(2025年〜2030年代)

  • 都市部での限定的な実用化: アメリカやヨーロッパ、中国の主要都市、中東の先進都市でエアタクシーや観光フライトが一部普及。日本では大阪・関西万博を皮切りに地方での物流・医療活用も進む。
  • ハイブリッド導入やバッテリー進歩: 航続距離を伸ばすためにハイブリッド機が一定シェアを得る一方、電池のエネルギー密度向上でフル電動の適用範囲も拡大。

8.3 長期(2030年代後半〜2040年以降)

  • 本格的普及期: 規制や認証が整備され、インフラも相応に充実。中型〜大型機が登場し、都市間シャトルや地方への移動手段として機能し始める。
  • 水素社会との連動: エネルギーシステム全体の脱炭素化が進めば、燃料電池eVTOLや水素タービンeVTOLが市場に参入し、さらに長距離航行や大型輸送にも対応。
  • 軍事・特殊用途の拡大: 技術的課題がクリアされ、偵察・輸送のみならず、災害支援や国際平和維持活動など多方面に活用が広がる。

9. まとめ

  1. 技術面

    • バッテリーや水素技術の進歩、制御システムや騒音対策などがeVTOL普及の鍵。特にバッテリーのエネルギー密度が上がるほど、フル電動機の航続距離と搭載量が伸び、普及速度に大きく寄与する。
  2. 市場面

    • アメリカと中東では投資と規制緩和のスピードが速く、商用運航の立ち上がりが早いと予想。ヨーロッパは環境規制が厳しい反面、政策的後押しも強力。日本は万博をきっかけに都市部・地方での実用化が進み、2030年代以降に拡大期へ。
  3. 軍事・防衛分野

    • 軽量・省エネ・静粛性の利点を活かした偵察・兵員輸送に徐々に導入される。長距離・大型輸送にはまだ技術的課題が多い。
  4. 搭乗員数と機体規模

    • 小型(2〜4名乗り)のフル電動が先行普及し、次第に中型(5〜9名乗り)へ拡大、大型(10名以上)は2040年前後に本格化する可能性。
    • 搭乗員数が増えるほどエネルギー需要が高まり、航続距離・安全基準・インフラ要件が厳しくなるため、ハイブリッドや水素モデルも並行して開発が進む。
  5. 将来ビジョン

    • 2040年代にかけて、短距離の都市内移動から中長距離移動まで、eVTOLが交通手段の一角を担う。将来的には自動運転・AI制御技術を用いた無人運航もあり得る。
    • 地域ごとの需要やインフラ整備状況、規制動向によって普及ペースが異なるが、世界的には2030〜2040年代に大きな市場が形成されるとの予測が一般的である。

結語

eVTOLは、現代の交通革命として大きな可能性を秘める一方、技術・規制・インフラ・社会受容といった複合的な要因が絡み合い、その普及は段階的に進むと考えられます。特に「搭乗員数」「航続距離」「パワートレインの選択」という三つの要素は、それぞれがトレードオフを生じるため、最適解は用途や地域によって異なるでしょう。

  • 小型機は早期実用化→中型・大型は2030年代後半以降
  • 都市内・短距離はフル電動優位→長距離・未整備地域はハイブリッドや水素
  • インフラ整備とバッテリー技術革新が進めば、2040年代以降はさらなる拡大へ

このように、eVTOLの普及は10〜20年単位の長期視点で捉える必要がありますが、それだけの時間と投資をかけるだけの価値がある分野とも言えます。最終的には、eVTOLが地上交通と航空交通のギャップを埋め、私たちの暮らしと社会を大きく変える潜在力を持っていると結論付けられます。

火曜日, 7月 11, 2023

大阪・関西万博で飛行予定のeVTOL4機種と現在の状況

 2025年に開催する大阪・関西万博(以下大阪万博)では目玉の1つとしてeVTOLの飛行が計画されており、今年の2月に運行事業者が決定しました。今回は2025年に運行を予定しているeVTOLの現在の開発状況と今後の予定を整理しておきます。


まず、万博で飛行する予定のeVTOLは以下の4つの機種となります。
  • Joby S4(運行事業者:ANA及びJoby Aviation)
  • VoloCity(運行事業者:JAL)
  • VX4(運行事業者:丸紅)
  • SD-05(運行事業者:SkyDrive)

それぞれ、解説していきます。
なお、紹介している仕様は開発中のものとなり、最終的に変わる可能性があります。

Joby S4(Joby Aviation S4)
Joby S4は米国Joby Aviation社が開発する、ベクトル推進タイプのeVTOLです。Joby Aviationにはトヨタが多額の出資をしており、現在外部筆頭株主となっており、取締役も出しています。先日、FAAよりJoby S4の量産初号機の飛行テスト許可を取得しており、現在最も型式証明取得に近いeVTOLです。今のところ2024年に米空軍での運用を開始、2025年に商業運航を開始する予定です。


主な仕様
  • パイロット:パイロット1名
  • 乗客数: 4名
  • 最高速度: 200 マイル/時 (322 km/h)
  • 航続距離: 150 マイル (241.4 km)
  • タイプ:ベクトル推進
  • 電源: リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物バッテリー
  • 翼幅: 35 フィート (10.7 m)
  • 長さ: 24 フィート (7.3 メートル)
  • 最大離陸重量: 4,000 ポンド (1,815 kg)
ベクトル推進(ティルトローター)タイプのeVTOLのため、バッテリーのみの割に最高速度が速く、航続距離がそれなりに長いモデルです。価格は現時点で不明ですが、本モデルがeVTOLとして世に出る最初期の機種となりますので、価格を含め本モデルのスペックが今後登場するeVTOLとの比較のベースラインになると考えます。



VoloCityはドイツVolocopter社が開発する、マルチコプタータイプのeVTOLです。Joby S4が固定翼を持つベクトル推進、リフト&クルーズタイプのeVTOLの代表だとすると、VoloCityはマルチコプタータイプのeVTOLの代表です。今のところ2024年夏、パリオリンピックに合わせてパリで商業運航を開始する計画となっています。


主な仕様
  • 乗組員: 1名
  • 乗客数: 1名
  • 最高速度: 110 km/h
  • 航続距離: 35 km
  • プロペラ:18個
  • モーター:18個 Brushless DC electric motor (BLDC)
  • 電源: リチウムイオンバッテリー
  • ペイロード:200kg
  • 最大離陸重量:900 kg
マルチコプタータイプのため、速度、航続距離ともに控えめです。この航続距離30km程度というのが、バッテリーのみを動力とするマルチコプター型のeVTOLでは多くなっています。VoloCityの特徴の1つに9つのバッテリーパックを5分程度で載せ替えることが可能となっている、という点があります。充電が速くできます、というモデルは多いですが、このバッテリーを素早く載せ替えることで運航回転数を上げる、というアプローチをしているeVTOLは意外と他にない気がします。
ペイロード的に2名しか乗ることができないため、パイロット1名、乗客1名となってしまっているのがネックですね。パイロットレス運航(遠隔操作を含む)が実現化しないと、なかなか普及は難しそうです。むしろVoloCityを荷物運搬用にしたVoloDroneの方が売れるかもしれません。
Joby S4と同様に、VoloCityは商業運航を始める最初期のモデルとなると思いますので、価格を含め、このモデルの仕様がマルチコプタータイプeVTOLのベースラインになると考えられます。



VX4は英国Vertical Aerospace社が開発する、ベクトル推進タイプのeVTOLです。元々2022年に商業運航を計画していましたが、2021年には2024年の開始目標となっています。その後情報を見つけることが出来ませんでしたが、少なくとも万博が開催される2025年には商業運航開始を目標としていると考えられます。

主な仕様
  • パイロット:1 名
  • 乗客:4 名
  • 巡航速度:241 km/h
  • 最大速度:320 km/h
  • 航続距離:160 km以上
  • ペイロード: 450 kg
  • プロペラ: 8 基(前方プロペラ x4、後方プロペラ x4)
  • 電気モーター: 8 基
ベクトル推進タイプであること、乗員数がパイロット含め5名であることなど、Joby S4とかなりスペックが近いモデルです。最高速度はJoby S4と同じですが、航続距離は短くなっています。価格やその他事項を含め、Joby S4との差別化が実現できるかが、今後の成功可否を分けるポイントになると考えます。



国内ベンチャーであるSkyDrive社が開発する、マルチコプタータイプのeVTOLです。このeVTOLについては本ブログでも何度か取り上げています。

元々2025年に型式証明を取得する予定でしたが、2025年の万博は機体ごとの耐空証明で飛ばし、2026年の型式証明取得を目標としています。

主な仕様
  • パイロット:1名
  • 乗員:2名
  • 最大巡航速度:100km(対気速度)
  • 航続距離:約15km
  • 電源:バッテリー
  • 駆動方式:12基のモーター・ローター
  • 主要構造素材:複合材(CFRP)やアルミ合金など
  • 最大離陸重量:1,400kg
マルチコプタータイプですので比較対象はVoloCityとなります。元々パイロット含め2名でしたが、3名に仕様変更したため、そこはVoloCityと比較し優位性があります。ただ、なんといっても航続距離が短いことがネックになりそうです。往復を考えると片道5km程度しか飛ばすことが出来ませんので、現在のスペックでは使い所が限られそうです。航続距離が30-50km程度になれば、活躍の場が増えそうなのですが。

※動画は3人乗りに見直し前のデザインとなっています。

今回、2025年に開催される大阪万博で飛行予定のeVTOLをまとめましたが、こうやって整理してみると、リフト&クルーズタイプのeVTOLが無いですね。リフト&クルーズタイプを開発しているベンチャーも多いのですが、最初に型式証明を取得するのはBeta Technologiesあたりでしょうか。国内もホンダが開発を検討しているeVTOLはリフト&クルーズタイプですし、先日取り上げた国内ベンチャーであるHIEN Aero Technologiesが開発しているのも同タイプですね。

大阪万博で飛行予定のeVTOLは現在開発されている中では先頭を走り、最初に商業運航を行うことを目指している機種たちになります。この先頭集団が2024年、2025年のスタートを現在目指していますので、大阪万博が開催される2025年のタイミングがeVTOL元年になりそうですね。

日曜日, 7月 09, 2023

eVTOL開発の国内ベンチャー企業「HIEN Aero Technologies」

 以前「eTVOLの主なメーカー」という記事を書き、国内ベンチャーを含めeVTOLのメーカーを紹介しました。国内企業でeVTOLの有人テスト飛行を成功し、販売を計画しているのは、今のところSkyDriveteTra aviationの2社です。なお、teTra aviationは現在一人乗りのeVTOLのみとなっています。
一方で、まだ有人テスト飛行までたどり着いてはいませんが、eVTOLの開発を進めている国内のベンチャー企業はいくつかあります。今回はそのうちの1社である「HIEN Aero Technologies」を取り上げたいと思います。

正式名称は「HIEN Aero Technologies株式会社」で、2021年に設立した東京都小金井市に拠点を持つ新しい企業です。法政大学初のベンチャー企業で、同社の代表取締役である御法川学氏は法政大学理工学部機械工学科の教授でもあります。法政大学って、こういう学科もあるんですね。

同社が開発を進めているeVTOLは以下の特徴があります。
  • バッテリーのみではなく、ガスタービン発電を利用したシリーズハイブリッド方式とすることで長い航続距離を確保する
  • マルチコプタータイプではなく、リフト&クルーズタイプ
この2つの特徴はホンダが進めているeVTOLと同じなんですよね。しかも、同社は最終的にHIEN 6という6人乗りのeVTOLを2030年に市場投入することを目標としていますが、このスケジュール感もホンダのeVTOLの計画と同じです。ただ、ホンダの場合は2025年に事業化するか判断、となっているため、まだどうなるかは分かりません。
ちなみに、2030年にeVTOLの市場投入を目指しているベンチャーはもう1社神戸のスカイリンクテクノロジーズがあります。こちらも同じハイブリッド方式ですが、タイプはベクトル推進(ティルトローター機)です。

今回HIEN Aero Technologiesを取り上げたのは、いつの間にかホームページがリニューアルされ、今後の開発する機体、マイルストーンが明確に公表されているからです。今後開発が予定されている機体について、紹介します。

ガスタービンハイブリッド長距離大型UAV
  • 寸法:5000 x 3200 x 900 mm
  • 最大離陸重量:90kg
  • ペイロード:25kg
  • 最大速度:180km/h以上
  • 飛行時間:60分程度
  • 航続距離:150km以上
  • 給電能力:20kWh
  • 燃料:灯油(Jet-A1 / B)
  • デリバリー目標:2023年?
こちらは有人のeVTOLではなく、VTOL型固定翼ドローンとなります。昨年開催された「Japan Drone 2022」では2023年4月にデリバリー予定、とされていましたが、まだデリバリー開始とはなっていなそうなので、現時点で開発中、という感じでしょうか。

先日本ブログで「VTOL型固定翼ドローンのメーカー及びモデル」という記事を書きましたが、ペイロード25kgというのは以前の記事で取り上げたどのドローンよりもペイロードを持っており、航続距離150km以上、最大速度180km/h以上とマルチコプター型、バッテリー式のドローンよりも高い性能を持つため、製品化したらそれなりに活躍の場がありそうです。最大離陸重量90kgというのも所謂ドローンの範囲(150kg未満)に収まっているので、そこも良いですね。

2人乗りパーソナルeVTOL
  • 寸法:6000 x 9000 x 2500 mm
  • 最大離陸重量:600kg
  • ペイロード:150kg
  • 最大速度:180km/h以上
  • 航続距離:180km以上
  • 給電能力:50kWh
  • 燃料:灯油(Jet-A1 / B)
  • デモフライト目標:2025年
HIEN Dr-Oneの次は2人乗りの有人eVOLです。仕組みなどはほぼ変わらず、人が乗れるくらい大型化した、という感じですね。こちらは2025年の大阪万博でのデモフライトを目標に設定しています。あと2年しかありませんので、頑張って無人でデモフライト、という感じでしょうか。
こちらのモデルは正式に型式証明を取得して製品化を目指す、というよりも、後述する6人乗り開発のためのステップ、という位置づけだと考えられます。ただ、「川崎重工の無人ヘリK-RACERは飛び立てるのか?」でも取り上げていますが、最大離陸重量600kg以下の無人航空機向けに新たな型式証明の制度が制定されそうなので、これを無人機として活用する、というのも手かもしれません。

6人乗りコマーシャルeVTOL
  • 寸法:10000 x 16000 x 3200 mm
  • 最大離陸重量:2000kg
  • ペイロード:500kg
  • 最大速度:180km/h以上
  • 航続距離:180km以上
  • 給電能力:400kWh
  • 燃料:灯油(Jet-A1 / B)
  • デリバリー目標:2030年
HIEN Aero Technologiesが最終的に目標としているのが、このHIEN 6のデリバリーです。これはHIEN 2を更に大型化し、6人乗りとしたモデルです。最高速度、航続距離は一旦HIEN 2と同じ記載になっていますが、少なくとも航続距離はもっと長くすることを目標にしていると考えられます。もうすぐFAAの型式証明を取得しそうな「Joby Aviation S4」がバッテリーのみで5人乗り航続距離が240km程度なので、流石にそれは超えないと、という感じです。

コンセプトのeVTOL
  • 寸法:?
  • 最大離陸重量:?
  • ペイロード:1000kg
  • 最大速度:?
  • 航続距離:?
  • 給電能力:?
  • 燃料:灯油(Jet-A1 / B)
最後はコンセプトeVTOLです。結構eVTOLのベンチャー企業はこのようなコンセプトを提示しており、その企業の方向性が分かります。例えば国内で最もデリバリー開始に近いeVTOLベンチャーであるSKYDRIVEのコンセプトeVTOL「SD-XX CONCEPT」は2人乗りとなっています。これは多くの場所で離着陸可能な小型eVTOLを提供していく、というSKYDRIVE社の方針を感じさせますね。一方でこの「HIEN X」はペイロード1トン、10人乗りということで、より大型なeVTOLを開発、提供していく、という方針を感じさせます。個人的にはある程度のペイロードが必要なのでは?と思っている方なので、良いと思います!

ということで、今回はeVTOL開発に取り組むHIEN Aero Technologies社を紹介しました。ヘリコプター、固定翼機とも航空機は新規参入が難しく、世界的にも企業数が多くない業界です。特に日本はメーカーとして存在感はあまりありません。一方でeVTOLは新しいジャンルの航空機なので、これから恐らくこれから2030年代半ばにかけて様々なモデルが登場し、その後メーカーが統廃合されていくと予想されます(航空機メーカーの歴史的に)。1社でも多くの国内ベンチャーに有人eVTOLのリリースまでたどり着いて欲しいと思っているので、HIEN Aero Technologies社にも頑張って頂きたいと思います!大阪万博でデモフライトをするようであれば、ぜひ見に行きたいですね。

最後に、HIEN Aero Technologies社のPVです。

水曜日, 6月 21, 2023

SkyDriveがeVTOLの仕様変更(2人乗り→3人乗り)や今後の計画を発表

SKYDRIVE社が今週月曜日に3つのプレスリリースを出しました。

この中で注目は2つ目と3つ目のプレスリリースです。

まず2つ目のプレスリリースですが、これまで操縦士を含め2人乗りとしていた搭乗員数を3人乗りに仕様を変更すると発表しました。この変更に伴い、サイズ感なども変わってきています。
変更前後のスペックの違いをまとめます。
  • 機体サイズ(全長×全幅×全高):9.4m×9.4m×2.7m→約13m×13m×3m
  • 最大搭乗人数:2名→3名
  • 燃料:バッテリー(電動)→変更なし
  • 駆動方式:12基のモーター・ローター→変更なし
  • 主要構造素材:複合材(CFRP)やアルミ合金など→変更なし
  • 最大離陸重量:1,100kg→1,400kg
  • 最大巡航速度:100km(対気速度)→変更なし
  • 航続距離:5-10km→約15km
エンドユーザーからの要望を受けて3人乗りにしたとのことですが、これはとても良い判断だと思います。eVTOLも当面操縦士が必要になる見込みの中で、2人乗りだと1人しか輸送できないわけですからね。やはり商業運用を考えると、乗客を2人は運びたいところです。
ただ、多少伸びたものの、eVTOLとして競合しそうなモデルと比較して半分程度しか航続距離がありません。そこは引き続きこのモデルの課題だと考えます。

ここで競合モデルの仕様を確認してみます。

  • 開発元:億航智能(EHang)※中国
  • 機体サイズ(全長×全幅×全高):不明
  • 最大搭乗人数:2名
  • 燃料:バッテリー(電動)
  • 駆動方式:16基のモーター・ロータ
  • 最大離陸重量:不明(ペイロード220kg)
  • 最大巡航速度:100km/h(最高速度は130km/h)
  • 航続距離:35 km(飛行時間21分)
  • 開発元:Volocopter ※ドイツ
  • 機体サイズ(全長×全幅×全高):11.3m×11.3m×2.5m
  • 最大搭乗人数:2名
  • 燃料:バッテリー(電動)
  • 駆動方式:18基のモーター・ロータ
  • 最大離陸重量:900 kg (ペイロード200kg)
  • 最大巡航速度:90km/h(最高速度は110km/h)
  • 航続距離:35-65 km
EH216は中国メーカー製なので型式証明がどうなるか不透明です。ただ、国が主導するeVTOL関連の有識者会議に開発元のEHangが参加している状況なので、そのうち普通に証明を取りそうです。EHangは欧州でも実証実験を行っているので、EASAから型式証明が出て、国交省がそれを追証する形になると予想しています。米国で取るのは今の米中関係を見ると難しそうですし。
VoloCityはSKYDRIVEと同じく2025年の万博で飛行する予定のeVTOLで、先に2024年のパリオリンピックでも飛行する予定です。eVTOLの中では最も早く型式証明を取得する可能性がありますね。

比べてみると、恐らくですが元々もSKYDRIVEが一番重いですね。重いというのはバッテリーを多く積んでいるのからかなとも思いますが、航続距離は最も短いということで、その辺りはよくわからないです。なお、全てのスペックは開発中のものなので、今後変わる可能性があります。

この2つ目のプレスリリースにはもう1つ注目すべき記載があり、それは以下の部分です。
当社の空飛ぶクルマ”SKYDRIVE”は、大阪・関西万博での運航に向けて、2025年に耐空証明を取得し、続いて、2026年に型式証明を取得し量産およびデリバリーの開始を目指します。
元々は2025年(万博開始前)までの型式証明取得を目指していたはずですが、それを諦めて2025年の万博で耐空証明のみで飛ばすという判断に切り替えたようです。型式証明というのは航空機のモデルに対する安全性の証明で、取得のハードルが非常に高いです。耐空証明は航空機それぞれに対する証明で、型式証明を取得しているモデルであれば、一部検査が不要になります。一方で型式証明を取得していないモデルの場合、1台づつ項目を証明(検査)していく必要があります。本来、商用航空機モデルは型式証明を取得するものですが、2025年の万博までに間に合わないと判断し、個々の検査は大変になるもののハードルが少し下がる耐空証明のみで万博は飛ばすという形ですね。

以前このブログでも以下の記事で万博に間に合わないのでは?ということを書きましたが、なるほど、こう来たか、という感じです。

ちょっと変なことを書きますが、日本は「航空の安全に関する相互承認協定(BASA)」を米国、欧州と締結しています。これは今はなき三菱重工の民間ジェット機MRJ輸出のために締結されたと言われていますが、片方が発行した航空機の型式証明をもう片方が受け入れる(認定プロセスを大幅に縮小する)という協定です。つまり、SKYDRIVEのeVTOLに対して国土交通省が型式認証を発行してしまうと、協定に基づき米国、欧州の認証機関がそれを受け入れる必要が出てきてしまうんですよね。そのため国土交通省も型式認証をおいそれと発行できません。
その点、耐空証明のみであれば、この協定外の話で済むので、影響範囲は小さくて済みます。流石に事故などがあると耐空証明を出した国交省側の責任問題にもなるので簡単には出すとは思いませんが、順調に行けば2025年の万博にギリギリ間に合うように耐空証明は出るのではないでしょうか。一方で2026年に型式証明、というのは難しいかもしれません。国交省側としてはイベントも終わったし、じっくりやろうよ、となりそうですよね。

さて、次に3つ目のプレスリリースです。

こちらはeVTOLをスズキの工場で作るよ、という発表になります。詳細はこれから詰めるとのことですし、実際に稼働するのは型式証明取得の目処が立ってからになりますので、2026年以降です。
スズキは元々SkyDriveに出資をしていましたが、お金を出すだけではなく製造や人材など、もっと深く関わるつもりのようです。実は似たようなことをすでにトヨタは米国eVTOLベンチャー大手であるJoby Aviationに対して実施しています。こちらの方が大規模な感じですが。
ホンダは自分たち自身でeVTOLを作ろうとしていますが、自分たちで作らないにせよ、各社eVTOL事業に関わろうとしていますね。eVTOLは国内では「空飛ぶ車」とも呼ばれています。実際には車とは全く異なる乗り物ですが、従来の航空機と自動車の間に位置する、従来の航空機よりも気軽に乗れる乗り物にはなりそうです。そういった意味で乗り物(モビリティ)の多様化に従来の枠に囚われずに関わっていこう、としているのかもしれません。

火曜日, 4月 18, 2023

SkyDrive社製eVTOL「SD-05」の個人販売開始について

 eVTOL国内ベンチャーの雄SkyDriveが2人乗りeVTOL「SD-05」の個人販売を開始したと発表しました。

空飛ぶクルマ「SD-05」の個人向け予約販売も開始!第一号機は千葉功太郎氏が予約購入 SkyDrive 2023.04.13


この「SD-05」は大阪万博で商用運航をする予定の機種ですね。

報道によると150万ドル(約2億円)だそうです。この価格が本当だとすると、ちょっと高すぎる気がします。前回の記事「eVTOLに必要なもの」にも記載しましたが、マルチコプタータイプ2人乗りeVTOLの価格上限は1.2億円(100万ドル程度)だと思っています。150万ドルというのが本体価格だけかどうかは分からないのですが、本体価格だけであればかなり強気ですね。ちなみにEHangの同じくマルチコプタータイプ2人乗りeVTOL「EH216」は34万ドル弱です。ただこちらは中国メーカーなので、型式証明などで今後ゴタゴタするかもしれませんが。

更に同じタイプ2人乗りeVTOLにはVolocopter社(ドイツ)のVolocityがあるのですが、こちらの価格は情報がなくよく分かりません。ただ、Volocityは大阪万博で飛ぶ予定なので、近いうちに判明すると思います。


というか、そもそもなのですが「SD-05」が残り2年を切った大阪万博開幕に間に合う気がしません。情報が出ていないだけかもしれませんが、まだ飛んでないですよね?航空機の開発は飛んでからが本番と言われているのに、まだ実機が飛んでいないのであればまだまだ道のりは遠い気がします。

技術的な観点で言えば、1人乗りの実証機「SD-03」をもっとしっかり作り込んで経験を積んでから2人乗りに手をつけたほうが良かったのでは?と思うところです。別のeVTOL国内有力ベンチャーであるテトラ・アビエーションはそういうアプローチをしています。

ただ、SkyDrive大阪万博で飛ばすぞ!商用運航するぞ!という話が先に来てしまっているので、最低限でも乗客を乗せることが可能な2人乗りに着手せざる得なかった、という状況かとは思います。現場はかなりキツイ事になっているかもしれませんが、既に最低限デモ飛行できれば、などの落とし所は調整しているのかもしれませんね。


SkyDrive については開発が間に合うのか、という話とは別に資金切れも気になるところです。報道によると2022年9月時点で累計約147億円を調達しています。

SkyDrive、総額96億円の資金調達により空飛ぶクルマの開発を加速 ドローンジャーナル 2022年9月28日

更に今月、シリーズC追加調達を実施しています。(金額は不明)

シリーズC追加調達を実施 「100 年に一度のモビリティ革命」実現のために、『空飛ぶクルマ』と『物流ドローン』の開発を強化 SkyDrive 2023年4月6日

eVTOLの開発は800億円〜1000億円程度の費用がかかると言われています。それと比較すると圧倒的に資金不足です。今回の先行販売も資金繰り、もしくは資金集めのアピールのために前倒しで実施したのかもしれません。今後も実機が飛んだ、型式証明登録が見えてきたなどのタイミングで資金調達が加速しそうです。ただ、あまり良いことだけ言って資金を集めると、後々訴訟問題になりかねません。そのあたりのバランスが難しいですね。


eVTOLに挑んでいる国内ベンチャーは意外と多くあるのですが、その中で有人飛行ができるレベルの機種を実際に完成させているのは、私が確認した範囲ではSkyDriveとテトラ・アビエーションくらいです。(別で空飛ぶバイクなどはありますが。)なんとか頑張って実用化、販売開始を目指して欲しいと思います。それとは別でHondaのeVTOLには期待していますけどね。

月曜日, 4月 17, 2023

eVTOLに必要なもの

 自分はeVTOLについてかなりポジティブに捉えているのですが、世間では結構批判的な意見が多いですね。その中でもなるほど、と思う意見も結構あります。

こちらの方の記事などは根拠がしっかりあり、分かりやすいですね。

有人ドローンに未来はあるのか(前編)

有人ドローンに未来はあるのか(後編)


結局のところ、垂直離着陸機としてはヘリコプターという歴史の長いものがあるわけで、それに対してはっきりとしたメリットがないと意味がないよ、という話です。eVTOLの特徴として電動(モーターを利用する)、自律飛行というものがありますが、別にこれらはヘリコプターでやれば良いわけですし。


ということで、eVTOLに必要なものを少し考えてみます。eVTOLにも種類があるので、以下の記事を参考にマルチコプター型とリフト&クルーズ/ベクトル推進の2パターンに分けて考えてみました。

Vol.1 新たなモビリティ「空飛ぶクルマ」の定義と将来像 ドローンジャーナル 2022年5月27日


マルチコプター

マルチコプタータイプは、ホビー用などの無人ドローンを大きくしたような作りのものです。比較的作りやすいということで、ベンチャー企業はこのタイプが多い気がします。ヘリコプターと同様に固定翼機と比較すると速度が遅いなど、飛行特性はヘリコプターとほぼ同じとなります。つまり、ヘリコプターで良いじゃない?なんでeVTOLなの?という疑問に真っ向からさらされるタイプです。

このタイプで必要なヘリコプターとの差別化ポイントは、静粛性経済性の2つになるのではないかと思います。

上空を飛んでいるヘリは結構うるさいですよね。ヘリコプターの騒音の原因はいくつかあるようですが、ローター関連が騒音の要因のようです。(当たり前か。)

機内騒音の低減(5)ヘリコプターとプロペラ機の騒音の実態とは マイナビニュース 2019/12/10

マルチコプターをはじめとするeVTOLは、ヘリコプターと比較し静粛性に優れていると言われています。実際のところまだあまり飛んでもいないので実態は分からない、というのが正直なところです。ただ、実際に静粛性に優れているのであればメリットは複数あります。例えは離発着場をヘリコプターと比較して柔軟に設置できる(騒音の考慮が減る)、夜間飛行時の苦情が減る(夜間飛行はまだその他にも課題がありますが)、などです。

経済性については複雑なヘリコプターのローターと比較し、モーターでシンプルに動かすマルチコプターは作りやすく、点検、部品交換費用などのランニングコストも下がると言われています。ただ、ヘリコプターも歴史がある乗り物なので、既に結構コストが落ちているんですよね。例えば以下のヘリコプター価格情報を参考にすると、

タービン単発ヘリコプター機種別価格比較表

2〜4人乗りで5千万円〜8千万円、4〜6人乗りで1億〜4億といったところでしょうか。マルチコプタータイプは2人乗りが多いので、初物価格ということを考えても上限の1.5倍の1.2億円くらいまでが上限価格になるのではないでしょうか。更にそこから価格を落としていく必要があると考えます。そう考えると、EH216は2人乗りで5千万円弱なので、良い線をいっているのかもしれません。中国製なのでFAAなどが認定許可証を出すか不明ですが。ランニングコストについては航空機のランニングコストは保守コストよりも定期点検、保管、保険などが占める割合のほうが高いようなので、正直メリットを出せるかは分かりません。


リフト&クルーズ/ベクトル推進

こちらはマルチコプター型と比較すると固定翼機があるなど、単純なマルチコプター型の無人ドローンとは違いがあります。これらのタイプのヘリコプターとの差別化ポイントは静粛性飛行速度だと考えます。

静粛性についてはマルチコプタータイプと同じ話なので割愛しますが、こちらのタイプのポイントは飛行速度ですね。ヘリコプターは大型や軍用を除くと概ね150〜250km/hの速度です。一方でベクトル推進(固定翼があるタイプなど)は300km/h以上の速度を出すものが多く、そのあたりが差別化ポイントになるかなと考えています。結局、こちらのタイプのeVTOLはオスプレイのようなティルトローター機の小型版のような機種も多いですからね。

ということで、こちらのタイプは経済性はそこまで求められないかなとは考えています。もちろん、ヘリコプターと比較してあまりに価格が乖離すると話にならないとは思いますが。こちらのタイプは4人~6人乗りが多いので、上限価格は4億円の1.5倍、6億円までになると思います。


ということでここまで色々と書きましたが、なんかマルチコプタータイプの未来は暗い気がします。リフト&クルーズ/ベクトル推進の方は価格、航続距離がこなれてきたら流行る気がします。航空機は開発にも購入、維持にも多額の費用がかかるため、やはり価格勝負のようなものを複数企業が開発、販売するのは難しいと考えます。マルチコプタータイプはグローバルで精々2,3社、リフト&クルーズ/ベクトル推進の方は複数社から出るものの、こちらのタイプは元々開発するのも大変なので、やはりeVTOLを手掛けているベンチャー企業は今後5年以内にかなり淘汰される気がしますね。

日曜日, 4月 02, 2023

eVTOL関連の今後の予測

 前回に引き続きですが、eVTOLに関連するニュースなどの情報を色々と見た結果を踏まえ、今後の動向を予想してみます。

  1. 2025年に向けてeVTOL(空飛ぶクルマ)が盛り上がる
  2. 2025年-2030年にかけて実証実験が進む一方、航空機の型式証明がなかなか取れず倒産するベンチャー、撤退する企業が続出する
  3. 2025年-2030年にかけて型式証明が取得できないため、eVTOLを無人ドローンに転用し、物流用途に利用しようという流れが生まれる
  4. ただし、完全EVのeVTOLは航続距離が短い、バッテリーが痛みやすい等の課題が多く、実際に利用されるのはハイブリッド、エンジン搭載型となる
  5. 2030年前後に商業化が始まるが、パイロット不足のため細々としたスタートとなる
  6. 一方で、2025年頃からeVTOLの離発着場、所謂空の道の整備が進み、環境は整う
  7. 2035年-2045年?eVTOLの自動運行の実現により普及が進む


1.2025年に向けてeVTOL(空飛ぶクルマ)が盛り上がる

これは言わずもがなですが、大阪万博が2025年に開催され、その目玉の1つがeVTOLです。ですので、政府、大阪府含め、制度など環境が25年までに急速に進められ、マスコミなども大きく取り上げると考えられます。

25年の大阪万博で空飛ぶクルマ4機種が舞う、ANAやJALが運用 日経XTECH 2023年2月22日

また大阪万博での採用も決まっているJoby Aviation S4も2020年頃から米国連邦航空局(FAA)による型式証明のプロセスに入っており、2023年-2024年の型式証明取得を目標としています。三菱重工のスペースジェットの事例からも分かるように、型式証明取得は簡単には行きませんが、Joby Aviation S4はNASAも入っているプロジェクトなので、まあ2025年にはなんとかなるのではないでしょうか?

このように先行して型式証明を取得するeVTOLも現れ始めるので、2025年頃までは盛り上がると予想されます。


2.2025年-2030年にかけて実証実験が進む一方、航空機の型式証明がなかなか取れず倒産するベンチャー、撤退する企業が続出する

eVTOLは既に実証実験や個人用途で飛んではいます。が、旅客用に利用するためには型式証明取得が必須となります。先行している企業何社かは2025年前後よりパラパラと型式証明を取得していくと考えられますが、現在数多くいるeVTOLに取り組んでいるベンチャー企業はこのあたりで多くがギブアップするのではないでしょうか?

2025年から2030年あたりにかけて倒産、買収等々が進み、業界が再編されると予想します。また、旅客機としてのeVTOLを断念し、個人の趣味用途(ホームビルド航空機)や、荷物を運ぶ用のドローンへの転用で生き残りをかける企業も一定数あると考えられます。


3.2025年-2030年にかけて型式証明が取得できないため、eVTOLを無人ドローンに転用し、物流用途に利用しようという流れが生まれる

eVTOLは言ってしまえば人が乗れるドローンです。FAAなどの型式証明取得のハードルは旅客用の航空機だと非常に高いですが、無人機であればハードルが下がる可能性があります(正直、このあたりは今後どのような扱いになるのかが不明瞭な部分で、現時点ではハードルが下がると言い切れないところはあります)。そのため、旅客用の型式証明取得が難航した場合、無人機としての利用に活路を見出すというのは自然な流れです。

ドローンのレベル4飛行については2022年12月5日より解禁となっており、既に1機種認定されており、今後も増えていくと考えられます。

無人航空機レベル4飛行ポータルサイト 国土交通省


4.ただし、完全EVのeVTOLは航続距離が短い、バッテリーが痛みやすい等の課題が多く、実際に利用されるのはハイブリッド、エンジン搭載型となる

バッテリーだけのeVTOL、特に小型の1-2人乗りのものは航続距離が極めて短い(数キロレベル)ものが多いです。このレベルだと河を渡るレベルの用途であれば問題ありませんが、離島や山岳部への物流には対応できないと考えられます。往復もありますし、充電時間も課題になりそうです。既に現時点でもeVTOL、ドローンともにハイブリッド型やエンジン搭載型が次々に発表、実際に開発されていますので、実際に物流ドローンとして活躍するのはEVではなく、これらを動力とした機種になると考えられます。


5.2030年前後に商業化が進むが、パイロット不足のため細々としたスタートとなる

盛り上がった2025年以降、型式証明を取得し、実運用に入ることができる機種も現れます。しかし、実際の運行はそこまで多くないと予想されます。というのも、そもそも現時点においてヘリなどのパイロットの高齢化、不足が問題になっているからです。

それでなくても人手不足のパイロットを、従来のヘリなどから搭乗人数が少ないeVTOLの運行に多く割り当てることは話が矛盾している気がしますよね。一方で無人ドローンについてはそういった課題はありませんので、eVTOLより先に普及する気がします。ただし、こちらも都心部では安全性上の懸念からなかなか進まず、離島、山岳地域など既存の物流に課題が多い場所からの活用となると考えられます。


6.一方で、2025年頃からeVTOLの離発着場、所謂空の道の整備が進み、環境は整う

こういった事業は手の出しやすいところから始まると推測されるため、eVTOLの離着陸場は早々に整備される気がします。またeVTOL、無人ドローン用の空の道の整備は進むと思いますので、2030年頃にはかなり環境は整うのではないでしょうか。


7.2035年-2045年?eVTOLの自動運行の実現により普及が進む

どこのタイミングで実用化が進むのかというのもありますが、eVTOL最大の魅力は自動運転だと考えています(eVTOL以外の乗り物もそうなのですが)。これが技術的にも制度的にも確立され実用化されると、一気に普及が進むと考えられます。もしかしたらその頃にはバッテリー技術も向上し、バッテリーのみの機種でも十分な航続距離が出ているようになるかもしれません。

こうなってくると費用的な問題はあるものの、人の流れが大きく変わり、医療、観光など、大きな変革がありそうですね。

火曜日, 3月 28, 2023

無人航空機(ドローンなど)の重量に関する制限事項

 eVTOLがマイブームなのですが、色々と調べるうちにドローンの活用、課題も色々とあることが分かりました。今回は無人航空機の重量に関する制限事項をまとめてみます。


100g未満(小型無人機)

こちらは法律上は航空機ではなく、「小型無人機」です。小型無人機であり、航空機ではないため「航空法」の対象となりません。元々は200g未満だったのですが、2022年6月20日の航空法改正に伴い100g未満となりました。

航空法の対象ではありませんが、どこでも飛ばして良いというわけではなく、飛ばす場所の定められたルールを守ることが重要です。

この重さのドローンだと基本的にホビー用途になると考えられます。もちろん撮影等もできるモデルはありますが、性能が限られているため本格的な用途は難しいと考えられます。


100g以上(無人航空機)

2022年6月20日の航空法改正により、100g以上の無人航空機は登録が必要になりました。これは利用する個人、団体を登録するわけではなく、機体を登録する制度になります。従って従来趣味でラジコン飛行機を複数台持っていた人は全て登録する必要があり(飛ばす場合)、結構大変なことになったと思われます。

ドローンとしてのレンジはこのあたりからが多いのではないでしょうか。また、無人航空機に対する規制事項が航空法で定められています。

 全ての無人航空機の機能及び性能に関する規制 すぎな行政書士事務所

【具体的な機種】

Airpeak S1

  • 概要:SONY製空撮用ドローン
  • 製造元:SONY
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:約7.0kg
  • 最大ペイロード重量:約2.5kg
  • 最大飛行時間:約22分 ※ペイロード無しの場合
  • 最大速度:25m/s(90km/h)※ペイロード無しの場合
  • ホバリング限界高度:2,500m
  • 価格:110万円

AirTruck(エアートラック)

  • 概要:国産ドローンメーカーACSL製の物流用途向けドローン
  • 製造元:ACSL
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:25kg
  • 最大ペイロード重量:5㎏
  • 航続距離:20㎞ ※ペイロード3.5kg時と思われる。
  • 最大速度:10m/s(36km/h)
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:300万円

25kg以上(無人航空機)

最大離陸重量25kg以上(本体、バッテリー・燃料など、荷物を含め25kg以上離陸させる能力がある無人航空機)については、前述の規制に更に追加の規制があります。具体的には堅牢性、耐久性やフェールセーフ機能です。

最大離陸重量25kg以上の無人航空機の機能及び性能に関する規制 すぎな行政書士事務所

【具体的な機種】

FAZER R G2(衛星通信仕様)

  • 概要:ヤマハ発動機の大型無人ヘリ
  • 製造元:ヤマハ発動機
  • 動力:エンジン(レギュラーエンジン)
  • 最大離陸重量:110g(120kgのモデル有)
  • 最大ペイロード重量:33kg(50kgのモデル有)
  • 航続距離:90km
  • 最高速度:72km/h
  • ホバリング限界高度:2,800m
  • 価格:不明(レンタル/業務委託のみ 2017年4月〜)

Hybrid Drone i-Gryphon

  • 概要:ロケット開発などを手掛けるIHIエアロスペースが開発中の大型ドローン
  • 製造元:IHIエアロスペース
  • 動力:エンジン(ハイオクガソリン)
  • 最大離陸重量:149kg
  • 最大ペイロード重量:47kg
  • 航続距離:50km
  • 巡航速度:60km/h
  • ホバリング限界高度:3000m
  • 価格:不明(開発中)

SkyLift

  • 概要:eVTOLを開発している国内ベンチャーSKYDRIVE開発の運搬用ドローン
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:85kg?
  • 最大ペイロード重量:30kg
  • 航続距離:2km(1km往復の運用)
  • 巡航速度:36km/h(10m/s)
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:不明

150kg以上(無人航空機)

最大離陸重量が150kg以上を超えると、今度は航空法ではなく航空機製造事業法の規制対象になります。航空機製造事業法では航空機の製造、修理を行う事業、設備が許可制となり、航空検査技術者による確認も行われます。ということで、製造、運用についてかなりハードルが上がるわけですね。そのため、物流用ドローンなども基本的に150kg未満を目安に開発されています。

なお、元々は100kg以上だったのですが、平成25年度に農業用無人ヘリなどの活用推進のため150kg以上に緩和されました。また、本規制については既に規制緩和が多数要望されており、今後見直しが行われる可能性があります。

【具体的な機種】

K-RACER-X2

  • 概要:川崎重工が開発中の無人ヘリ/2026年に量産予定
  • 製造元:川崎重工(川崎重工業航空宇宙システムカンパニー)
  • 動力:エンジン
  • 最大離陸重量:650kg
  • 最大ペイロード重量:200kg
  • 航続距離:100km程度
  • 巡航速度:不明
  • ホバリング限界高度:3,100m
  • 価格:不明(開発中)

EH216(Logistic)

  • 概要:EHang開発のeVOLT「EH216」の物流輸送用版
  • 製造元:億航智能(EHang)
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:不明
  • 最大ペイロード重量:250kg
  • 航続距離:30km ※設計飛行距離
  • 最高速度:130km/h
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:約4,800万円


(参考資料)

無人航空機を巡る状況と航空機製造事業法の制度について 2023年1月 製造産業局航空機武器宇宙産業課

火曜日, 3月 21, 2023

eTVOLの主なメーカー

 国内では「空飛ぶクルマ」とも呼ばれるeVTOLですが、最近マイブームです。実用化まではもう少しかかりそうですが、一旦現在の情報を色々とまとめてみたいと思います。

まずは、主要なメーカーです。(他にもたくさんあるので、余裕があれば更新していきます。)

アメリカのメーカー

Joby Aviation

  • 2009年eVTOLのメーカーとして創業
  • 5人乗りeVTOL「JAS4-1」を開発中
  • 2018年米国連邦航空局FAAと認証プログラムをスタートし耐空証明審査を開始
  • 2020年1月にトヨタが取締役を派遣し、生産の協業パートナーに
  • 2022年2月にANAホールディングスと覚書を締結
  • 2022年7月に英国民間航空局CAAに対して型式証明を申請
  • 2022年10月に国土交通省に対して型式証明を申請
  • 2023年2月大阪・関西万博に「JAS4-1」の採用が決定(運用事業者はANA及び米Joby Aviation)

Archer Aviation

  • 2018年創業
  • 4人の乗客とパイロットが搭乗可能なeVTOL「Midnight」を開発中、航続距離は32kmで10分の充電で飛行可能
  • 2024年後半にFAA認証を得て、2025年にも運航を開始
  • ユナイテッド航空が同社eVTOL100台を購入する契約済み

BETA Technologies

  • 2017年、バーモント州バーリントンで創業
  • BETA Technologiesは、乗客向けの「ALIA-250」(6人乗り)と貨物向けの「ALIA-250c」を開発中(航続距離は約460km)
  • 米物流大手のUPSが10機のeVTOLを購入する契約を締結しており、2024年までに納入される見込み

Wisk Aero

  • 2010年に創業したeVTOL開発会社Kittyhawkと大手航空機メーカーであるボーイングとの合弁会社として2019年に創業
  • Kittyhawkが事業停止となったので、その後を継いでいる
  • 開発中eVTOLの第6世代は4人乗り、時速200kmで約144kmを航行、充電時間は15分

LIFT AIRCRAFT

  • 2017年創業
  • 同社が開発するeVTOL「HEXA」は1人乗りで巡航速度が100km/h
  • 日本国内でも飛行デモを実施している

ASKA

  • 起業家のカプリンスキー夫妻が2018年に創業
  • 4人乗り最大時速240kmで航続距離400kmの計画
  • 2026年の発売を目指しており、78万9,000ドル(約1億500万円)で予約販売中


ヨーロッパのメーカー

Volocopter(独)

  • 2011年に創業
  • 2人乗りの「VoloCity」と約200キロの貨物を運ぶことができる「VoloDrone」を開発中
  • 2016年よりドバイ、シンガポール等の都市を含む欧州、米国、アジアでの試験飛行を実施
  • 2017年に欧州航空安全庁(EASA)に型式証明の申請を提出
  • 2021年10月にJALが最大100機導入予約とアナウンス
  • 2024年のパリ・オリンピックで運行を開始し、その後シンガポールでサービス開始した上で、大阪・関西万博での運行を目指す
  • 2023年2月大阪・関西万博に「VoloCity」の採用が決定(運用事業者はJAL)

Vertical Aerospace(英)

  • 2016年に創業
  • 5人乗りのeVTOL「VX4」を開発中
  • 2025年に英国民間航空局より型式証明取得を目指す
  • 米国、EASA、ブラジル、日本と並行して型式証明の審査を希望
  • アメリカン航空、ヴァージンアトランティック航空、航空機リース会社のアボロンなどから、合計1,350機の条件付き予約を受注
  • 丸紅から最大200機の条件付き予約を受注
  • JALはアボロンと最大100機購入、またはリースできる契約を締結
  • 2023年2月大阪・関西万博に「VX4」の採用が決定(運用事業者は丸紅)

Lilium (独)
  • 2015年に創業
  • 7人乗りのeVTOL「Lilium Jet」を開発中
  • デンソーがHoneywell Internationalと開発しているモーターを採用


中国のメーカー

億航智能(EHang)

  • 2014年創業
  • ドローン、及びeVTOLの開発、製造を行っている
  • 2019年NASDAQに上場
  • 既に販売を開始しているeVTOL「EH216」は2023年2月に日本で初めてeVTOLの有人飛行実験に成功した

XPENG AEROHT

  • 中国EVメーカーXpeng Motorsの傘下
  • 2人乗りeVTOL「XPENG X2」は230km/hで25分航行可能

Autoflight

  • パイロットと最大3人の乗客が搭乗可能なモデル「Prosperity I」を開発
  • 巡航速度200km/hで航続距離250km
  • 欧州航空安全機関(EASA)の認証を取得し2025年までにエアタクシーを実現する計画


日本のメーカー

SkyDrive

  • 2018年トヨタ、航空機メーカーなどの出身者により設立
  • 2025年を事業開始目標として搭乗人数2名の機体を開発中
  • 2021年10月29日に型式証明申請が国土交通省に受理され、型式証明活動を開始
  • 2023年2月大阪・関西万博の運用事業者に決定

teTra aviation

  • 東京大学発のスタートアップ企業
  • 2020年3月に「Mk-3」で日本企業で初めて米国での試験飛行許可を取得
  • 2021年7月に1人乗り最新機種「Mk-5」を米国で公開し、個人顧客向けの予約販売を開始

HONDA

  • 国内大手自動車メーカーであり、小型ビジネスジェット機であるHondaJetも2015年より製造、販売している
  • 2021年9月30日ガスタービンとのハイブリッドによる「Honda eVOLT」の開発着手を発表
  • 2023年より米国で試験飛行を開始し、2025年に事業化判断、その後事業化を進める場合は2030年開始を目標とする

  • 神戸のベンチャー企業
  • 6人乗りで、最大時速650kmで1,400kmの航行を可能にする長距離飛行可能なeVTOLの開発を進めている
  • 2024年までに製作し、2029年までにFAAの認証を取得し、2030年にリリースする計画

【参考サイト】