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土曜日, 7月 04, 2026

南海トラフ巨大地震はITシステムをどう襲うか──2025年新想定で読み解くクラウド・通信・BCPの防災設計

2025年3月31日、内閣府の南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループが約13年ぶりに被害想定を全面改定した。最大クラスの地震が発生した場合、直接死は最大29万8000人、経済被害は約292兆円に達するという、日本社会がこれまで経験したことのない規模の災害想定である。

本稿では、この新想定を踏まえ、データセンター・クラウド基盤、通信インフラ、企業のBCP、政府系システムという4つの切り口から、南海トラフ巨大地震がITシステムに与える影響を整理する。エンジニア・IT企画担当者が自組織の防災設計を見直す際の参考になれば幸いである。

1. 2025年新被害想定の要点

新想定の最大の特徴は、2012〜2013年の前回想定から死者数(前回32万3000人→今回29万8000人、約1割減)が若干改善した一方で、経済被害額(前回約220兆円→今回約292兆円)は建設費高騰や被害評価手法の高精度化により大幅に増加した点である。また今回初めて、避難生活に伴う体調悪化等で生じる「災害関連死」を試算し、2万6000〜5万2000人という数字が示された。これは直接死とは別枠のカウントであり、両者を合算した報道も見られるため注意が必要である。

項目 2012〜2013年想定(前回) 2025年3月新想定
死者数(直接死・最大) 約32万3000人 約29万8000人
災害関連死 試算なし 2万6000〜5万2000人(今回初試算)
経済被害額 約220兆3000億円 約292兆3000億円
震度7の市町村数 143市町村 149市町村
停電(最大) 最大約2950万軒
断水(最大) 最大約3690万人

なお、南海トラフ地震の30年以内発生確率については、2025年1月時点で「80%程度」とされていたが、その後、政府の地震調査委員会が不確実性を考慮した見直しを行い、2025年9月には「60〜90%程度以上」(算出方法によっては「20〜50%」という幅も存在)という表現に改められている。ブログや資料で「80%」という数字を引用する際は、この見直しの経緯を併記するのが望ましい。

2. データセンター・クラウド基盤への影響

2-1. 東京圏・大阪圏への一極集中という構造的リスク

総務省・経済産業省の有識者会合資料によれば、国内データセンターはサーバー面積ベースで約150万平方メートル(東京ドーム約30個分)存在するが、その8割強が東京圏・大阪圏に集中しており、この傾向は今後も続く見込みとされている。資料によって関東6割強・関西2割強程度という内訳も示されており、合計すると8〜9割が東京・大阪の2大都市圏に偏っている状況である。

この一極集中の背景には、インターネットサービスプロバイダーが相互接続を行うIX(インターネットエクスチェンジ)拠点が東京・大手町と大阪・堂島に集中しているという事情がある。IX接続数は関東が7割前後、関西が2割前後を占めるとされ、通信の遅延(レイテンシ)を抑えるためにデータセンターもこの2拠点周辺に立地する構造が続いてきた。

ここで重要なのは、南海トラフの想定震源域が静岡から九州にかけての太平洋沿岸に広がっており、大阪圏はこの震源域にきわめて近いという点である。新想定でも大阪府内の広い範囲で震度6弱以上、沿岸部では津波被害が想定されている。つまり「東京と大阪の2拠点に分散していればBCP的に安全」という従来の発想は、南海トラフ地震に関しては必ずしも成立しない。東京は首都直下地震、大阪は南海トラフ地震という異なる災害リスクにそれぞれ晒されているが、南海トラフが「全割れ」パターンで発生した場合、大阪圏のリスクは東京圏よりも直接的に高くなる可能性がある。

2-2. 主要クラウド事業者のリージョン構成

事業者 国内リージョン構成 備考
AWS 東京・大阪 ガバメントクラウドでも東京・大阪に限定
Microsoft Azure 東日本(東京・埼玉)・西日本(大阪) ガバメントクラウド認定
Google Cloud 東京・大阪 ガバメントクラウド認定
Oracle Cloud(OCI) 東京・大阪 ガバメントクラウド認定
FJcloud-V(富士通) 東日本4リージョン・西日本2リージョン 北米リージョン(us-east-1)は2025年9月30日にサービス提供終了、現在は国内6リージョン構成
さくらインターネット 石狩(北海道)・東京 2026年3月27日にガバメントクラウド正式認定。国産クラウドとして唯一かつ5番目の認定事業者

見ての通り、政府認定クラウドはAWS・Azure・Google Cloud・OCIの4社に加え、2026年3月27日にさくらインターネットの「さくらのクラウド」が正式認定を受け、5社体制となった。国産クラウドとしては唯一の存在であり、外資系4社が軒並み東京・大阪の2拠点構成であるのに対し、さくらインターネットは石狩(北海道)と東京という組み合わせを取っている点が構造的に異なる。

外資系4クラウドの東京・大阪2拠点構成は、通信遅延やデータ主権要件を満たす現実的な選択ではあるが、前述の通り大阪が南海トラフの震源域に近接している以上、「東京・大阪の2リージョン運用=広域災害対策として十分」とは言い切れない構造である。その意味で、震源域から遠い石狩を含むさくらインターネットの構成は、南海トラフ地震という単一災害シナリオに対する耐性という観点では、外資系4社の東京・大阪構成よりもむしろ有利に働く可能性がある点は付記しておきたい(ただし、石狩・東京の組み合わせは首都直下地震と北海道地震という別の複合リスクを内包する点には留意が必要である)。

2-3. ガバメントクラウドの地理分散要件

この課題は政府側も認識しており、デジタル庁が公表しているガバメントクラウド調達仕様書(令和8年度募集分)には、データセンターは地理的に離れた日本国内の複数の地域(例えば、関東と関西、北海道と関東、関西と九州など)に設置するなど、大規模地震や電力供給障害を想定した災害対策を講じることという要件が明記されている。「関東と関西」だけでなく「北海道と関東」「関西と九州」という組み合わせも例示されている点は重要で、南海トラフの震源域から離れた北海道・九州を含めた分散が政府調達レベルでは想定され始めていることを示している。

実際の事例として、ガバメントクラウド先行事業に採択された神戸市では、東京リージョンと大阪リージョンの間でDR環境を構築した例が報告されている。ただし、これも本質的には「東京・大阪の2点間分散」であり、南海トラフの全割れシナリオに対する耐性という観点では、北海道・九州など震源域から十分離れた第三のリージョンを組み合わせる設計が今後より重要になると考えられる。

3. 通信インフラへの影響

3-1. 海底ケーブル陸揚局の太平洋側集中

総務省資料によれば、国際海底ケーブルの陸揚局は約5割が関東(房総半島・北茨城)、約3割が関西(志摩半島)に集中している。志摩半島は三重県、まさに南海トラフの想定震源域の直上に位置する。南海トラフ地震で志摩半島周辺の陸揚局が被災した場合、国際通信の分岐点としての機能が損なわれるリスクがあり、国内のインターネット接続全体への波及も懸念される。政府はこのリスクを踏まえ、国際海底ケーブルの多ルート化や陸揚局の分散を「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」の一環として進めている。

3-2. 過去の大規模災害から見える通信インフラの限界

東日本大震災(2011年)では、非常用電源の枯渇等により通信各社合計で約2万9000の基地局が停波した。復旧には約1カ月半を要し、4月末時点でようやく福島第一原発周辺の対応困難エリアを除きほぼ復旧した。音声通話については輻輳対策としてNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの主要3社が最大70〜95%の通信規制を実施している。

北海道胆振東部地震(2018年)では、日本初となる全域停電(ブラックアウト)が発生し、約6500基地局が停波、停電は最大295万戸に及んだ。北海道電力の全域停電は約64時間後まで続いた。この際、さくらインターネットの石狩データセンターは非常用発電機で稼働を継続したものの、商用電源喪失を検知して非常用電源へ切り替える制御回路が正常に作動せず、一部ゾーンのサーバーが約5時間停止するというトラブルも発生している。自家発電設備を備えていても、切替機構そのものの信頼性検証(実負荷試験等)が欠かせないことを示す実例といえる。

両震災に共通する教訓は、①非常用電源の燃料備蓄量(東日本大震災当時は基地局の電源容量が不足し長時間停電に耐えられなかった)、②電源切替機構の信頼性、③通信規制による輻輳回避と業務影響の両立、の3点に集約される。NECや富士通のデータセンターが胆振東部地震で72時間分の燃料備蓄により無停止運用を実現した実績は、南海トラフ地震のような広域・長期停電(新想定では電柱被害による停電復旧に1〜2週間を要すると想定)に対しては、72時間備蓄でも不十分となり得ることを示唆している。燃料の追加供給契約や自治体・自衛隊との連携も含めた計画が必要である。

4. 企業のBCP・事業継続への影響

新想定では、停電の復旧について、需給バランスに起因するものは数日で復旧する一方、電柱等の設備被害による停電は復旧までに約1〜2週間を要するとされている。断水についても、東海3県で復旧率95%に達するまで約8週間かかるとの想定である。IT部門がBCPを検討する上では、「停電=数日で復旧する」という楽観的な前提ではなく、地域によっては1〜2週間規模の長期停電・断水を前提とした計画が必要になる。

また、南海トラフ沿岸には製造業・小売業が集積しており、新想定でも生産・サービス低下に伴う被害は45兆4000億円と見積もられている。サプライチェーンの寸断は、直接被災していない地域の企業にとっても、部材調達・物流の停止という形でIT基盤以外の側面からも事業継続に影響を与える点に留意したい。

5. 政府系システムへの影響

政府は2025年度末までに地方自治体の基幹システムをガバメントクラウドへ移行する方針を掲げてきたが、令和7年12月末時点で標準化対象約3万4592システムのうち特定移行支援システムに該当する見込みは約26%にとどまっており、移行は依然として進行中の段階にある。南海トラフ地震が今後30年以内に高い確率で発生し得ることを踏まえると、移行完了前の過渡期における自治体システムの災害耐性(オンプレミス環境の耐震性、ガバメントクラウドへの接続経路の冗長性等)も論点となる。

ガバメントクラウドの調達仕様書に明記された地理分散要件(前述)は、今後の自治体システム設計における重要な指針になる。特に、東京・大阪の2点間DRだけでなく、震源域から離れた北海道・九州を組み合わせた構成が推奨される方向性がうかがえる。

6. IT視点での対策の方向性

  • 3拠点以上への地理分散:東京・大阪の2リージョン運用に加え、震源域から離れた北海道・九州リージョンを組み合わせた3-2-1的なバックアップ設計を検討する。
  • 長期停電を前提とした電源設計:72時間の自家発電備蓄を基本としつつ、新想定が示す1〜2週間規模の停電復旧期間を踏まえ、追加燃料供給契約や複数系統からの調達を確保する。
  • 電源切替機構の実負荷試験:胆振東部地震の教訓として、UPS・自家発電への自動切替回路そのものの定期的な実負荷試験を行う。
  • RPO/RTOの数値化と定期的な検証:「クラウドだから大丈夫」という前提を避け、復旧目標時点(RPO)・目標時間(RTO)を具体的な数値で定義し、実際のフェイルオーバー訓練で検証する。
  • 通信手段の多重化:衛星通信(Starlink等)や複数キャリア回線の併用により、特定地域の基地局・海底ケーブル陸揚局の被災に備える。

まとめ

2025年の新被害想定は、死者数こそ微減したものの、経済被害額の増加や災害関連死の新規試算など、南海トラフ巨大地震の深刻さを改めて示すものとなった。ITシステムの観点で特に注意すべきは、国内データセンターの8割強、そして政府認定クラウドのうち外資系4社の国内リージョンが東京・大阪の2拠点に集中している一方、大阪が南海トラフの震源域にきわめて近いという構造的な脆弱性である。2026年3月に正式認定された国産唯一のさくらインターネットが石狩・東京という異なる組み合わせを取っている点は、分散の選択肢として注目に値する。ガバメントクラウドの調達仕様に見られるように、政府側でも北海道・九州を含めた分散の重要性が認識され始めている。「東京・大阪2拠点分散=十分な災害対策」という従来の常識を見直し、震源域から十分離れた第三・第四の拠点を組み込んだ設計へと移行することが、今後のIT防災における重要な論点になるだろう。

参考文献・出典

  • 内閣府 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ「南海トラフ巨大地震 最大クラス地震における被害想定について」(2025年3月31日)
  • 内閣府 中央防災会議「南海トラフ巨大地震対策について(報告書)」(令和7年3月)
  • 総務省・経済産業省「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」事務局説明資料(2024年5月)
  • 内閣官房 GX実現に向けた専門家ワーキンググループ(第8回)「データセンター等のデジタルインフラ整備の現状と課題について」(2024年10月)
  • デジタル庁「デジタル庁におけるガバメントクラウド等の整備のためのクラウドサービスの提供-令和8年度募集-調達仕様書」
  • 総務省北海道総合通信局「平成30年北海道胆振東部地震・ブラックアウト 通信・放送の被害状況と当局の対応」(2019年1月)
  • 参議院 総務委員会調査室「東日本大震災における情報通信分野の主な取組」
  • さくらインターネット「石狩データセンター10周年-挑戦の軌跡-」
  • 日経クロステック「データセンターと通信への影響、北海道地震で生かされた経験」
  • さくらインターネット株式会社「令和5年度および令和8年度 ガバメントクラウドサービス提供事業者に採択」(2026年3月27日)
  • ITmedia NEWS「さくらインターネットのクラウドサービス、ガバメントクラウド正式認定 技術要件満たす」(2026年3月27日)
  • FJcloud-V「北米リージョン(us-east-1)の提供終了について」

木曜日, 6月 18, 2026

ソブリンクラウドとOracle Alloy 徹底解説 ― 日本の「データ主権」競争で何が起きているか

地政学リスク・経済安全保障・生成AIの台頭を背景に、企業・官公庁の「データ主権」意識が急速に高まっている。その中核を担う概念がソブリンクラウドだ。日本ではNRI・富士通・NTTデータ・ソフトバンク・日鉄ソリューションズの5社がOracle Alloyを採用し、国内ソブリンクラウド市場の事実上の基盤になりつつある。本記事ではソブリンクラウドの本質からグローバル動向、Oracle Alloyの仕組み、日本国内の各サービス比較、そして「Alloyは本当にソブリンクラウドか」という本質的な問いまで徹底解説する。

1. ソブリンクラウドとは何か

1-1. 定義:主権は多層構造

ソブリン(Sovereign)は「主権・独立性」を意味する。ソブリンクラウドとは、特定の国・地域の法律・規制に準拠し、データ主権を確保することを目的としたクラウドサービスの総称だ。重要なのは、これが新技術ではなく「概念・運用形態」であることである。

国際的に統一定義は存在せず、各社が必要に応じて以下の主権概念を組み合わせて定義している:

主権の種類 内容 関連リスク
データ主権 データの所在地を制御し、外部への強制開示・越境リスクを排除する 米CLOUD Act、GDPR違反
運用主権 クラウドの管理・運用を国内で完結し、運用担当者を自国民・自国居住者に限定する 外国人スタッフによる不正アクセス
法的主権 自国の法律・規制のみが適用され、外国法(米CLOUD Act等)の域外適用を排除する 米国政府による令状・召喚
セキュリティ主権 セキュリティポリシーを自社で策定・運用し、外部監査を受け入れる ベンダー側の構成ミス・バックドア
技術(テクノロジー)主権 基幹技術・供給部品の選定を自社で行い、特定ベンダー製品に依存しない ベンダーロックイン、サービス停止リスク

この5つの主権すべてを満たすことを「完全なソブリンクラウド」と呼ぶ場合もあるが、実際には各組織の要件・予算・運用能力に応じて、どの主権をどの程度確保するかをトレードオフで決める。後述するOracle Alloyは「技術主権を除く4主権」を実現できる「準ソブリン」に位置する。

1-2. 通常クラウドとの違い

パブリッククラウドは利便性・最新機能・グローバルスケールで優れる反面、データの所在や適用法が不透明になりがちだ。プライベートクラウドは専用環境を確保できるが、基盤技術・運用ツールを海外ベンダーに依存するケースも多い。ソブリンクラウドは「どの国・地域をターゲットとし、どの法制度に準拠するか」をあらかじめ明示して設計・認定を受ける点が決定的に異なる。

またガバメントクラウド(行政クラウド)とソブリンクラウドは別概念だ。ガバメントクラウドは政府・自治体の業務効率化が主眼であるのに対し、ソブリンクラウドは「主権確保」が主眼。日本のガバメントクラウドにはAWS・Google Cloud・Azure・OCI・さくらのクラウドが選定されているが、これ自体は「ソブリン認定」ではない。

2. なぜ今、ソブリンクラウドか ― 規制・地政学・AIの三重圧力

2-1. 地政学リスクが現実化した瞬間

ソブリンクラウドが絵に描いた餅でないことを証明した出来事がある。2022年3月、ロシアのウクライナ侵攻から約3時間後、Oracleは全ロシア事業の停止を一方的に発表した。現地利用者のクラウド可用性が一夜にして失われた。米国企業のクラウドサービスは、地政学的判断で停止しうるという事実が明白になったのだ。これは「ロシアだから起きた」のではなく、外国企業に依存するすべての国・企業にとってのリスクである。

2-2. 規制強化:EU・日本の動向

規制・法令 地域 重要時期 ソブリンクラウドへの影響
GDPR EU 2018年適用 EU市民データのEU域外移転制限、違反時制裁金最大全世界売上4%
DORA(デジタル運用強靭性法) EU 2025年1月17日全面適用 金融機関にICT第三者リスク管理・出口戦略の厳格化を義務付け
EU AI Act EU 2026年8月本格適用 高リスクAIシステムの透明性・説明責任を要求。学習データの所在管理が焦点
米CLOUD Act 米国 2018年制定 米国企業は、サーバーが海外にあっても令状に応じてデータを米当局に提供する義務。外資クラウド利用の最大リスク
経済安全保障推進法 日本 2022年制定 クラウドプログラムを特定重要物資に指定。電力・金融・運輸等15分野の基幹インフラ事業者に主権要件対応を促進
FISC安全対策基準 第13版 日本 2025年3月公表 経済安保・オペレーショナルレジリエンス対応、AI利用安全対策を新設。第12版から全体の約3割を改訂

CLOUD Act問題の深刻さを象徴するのが、2025年6月の仏上院調査委員会における証言だ。Microsoft France公共・法務担当のAnton Carniaux氏が宣誓下で、「仏市民データが米政府の命令により仏当局の明示的同意なく移転されないことを保証できるか」との問いに「Non, je ne peux pas le garantir(いいえ、保証できない)」と明言した。外資系クラウドが「法的主権」を完全に保証できないことが公式に認定された瞬間だ。

2-3. 生成AIが「ソブリンAI」需要を生む

生成AIの急速な普及は、ソブリンクラウド需要をさらに加速させている。LLMの学習・ファインチューニングには企業の機密データが利用される可能性があり、「学習データを国内の法制度下でのみ扱う」というソブリンAIの需要が急増している。NRIのNVIDIA H100搭載Alloy環境、ソフトバンクの国産LLM「Sarashina」搭載ソブリンクラウドは、まさにこの需要を取り込む動きだ。

3. グローバルのソブリンクラウド動向

ハイパースケーラー4社はいずれもソブリンクラウド戦略を本格化させている。特に欧州市場は、規制の厳格さから最も競争が激しい。

プロバイダー ソブリンサービス名 主要ポイント 状況(2026年時点)
AWS AWS European Sovereign Cloud 78億ユーロを投資。EU市民経営の新法人をドイツに設立。Stéphane Israël(元Arianespace CEO)がMD就任。Nitro Systemで物理的分離 2026年1月14日GA(独ブランデンブルク州)。約90サービスで提供開始
Microsoft Bleu(仏)、Delos Cloud(独) Bleu:Capgemini+OrangeがMS技術でcloud de confianceを提供。Delos:SAP子会社が独公共向けに運用 Bleuは2024年1月商用活動開始、SecNumCloud取得を目標
Google Cloud S3NS(仏)、T-Systems(独) S3NS:Thalesとの合弁PREMI3NSがSecNumCloud 3.2を2025年12月17日取得。独ではThales/T-Systemsと提携。2025年11月ミュンヘンにSovereign Cloud Hubを開設 稼働中(欧州主要国)
Oracle EU Sovereign Cloud、Alloy EU専用パブリッククラウドは独フランクフルト・スペインマドリードの2拠点、7つのEU法人、130超の運用チーム・EU居住者1,500名超が担当。Alloyは分散クラウド戦略 EU Sovereign Cloudは2023年7月GA。日本Alloyは5社(NRI・富士通・NTTデータ・ソフトバンク・日鉄ソリューションズ)が提供中または提供予定

⚠️ 重要な限界:前述の仏上院証言が示す通り、米系プロバイダーがどれほど技術的・組織的分離を謳っても、CLOUD Act・FISA 702に基づく法的強制に応じる可能性を完全否定できない。「ソブリン」を名乗るサービスの法的独立性は、常に精査が必要だ。

欧州クラウド市場の現実は厳しい。Synergy Research Groupの調査によれば、米系3社(Amazon・Microsoft・Google)が欧州クラウド市場の約70%を占め、欧州地場プロバイダーの合計シェアは15%にとどまる(2017年の29%から半減)。欧州独自の技術主権確保がいかに困難かを物語っている。

アジア太平洋では、タイのAIS(モバイル加入者4,500万超)がOracle Alloyを採用し「AIS Cloud」を構築(2024年8月発表、2025年第1四半期提供開始)。2030年まで最大80億バーツを投資し、タイ初の地場所有・運用ハイパースケールクラウドを実現している。主権クラウドの新興市場での展開が加速している。

4. Oracle Alloyとは何か ― クラウドの民主化

4-1. Oracle Alloyの定義と仕組み

Oracle Alloyは2022年10月18日のOracle CloudWorld(ラスベガス)で発表された、「パートナー企業がOCIの技術を使って自らクラウド事業者になれる」完全なクラウドインフラプラットフォームだ。

従来のクラウド提供モデルとの最大の違いは、「パートナー自身がクラウドベンダーになる」点にある。パートナーのデータセンターにOCI同等のインフラ(ハードウェア+ソフトウェアが事前統合された「クラウド・イン・ア・ボックス」)を展開し、200以上のOCIサービスを自社ブランドで提供できる。

パートナーが独自に管理できる要素:

  • ブランド・価格設定・課金(Oracle Fusion基盤)
  • SLA・サポート・顧客ライフサイクル管理
  • 独自サービスや独自ハードウェア(メインフレーム等)の追加
  • アクセスを許可するユーザー・国籍・所在地の制限

Oracleは、重大な技術問題が発生した場合のエスカレーション対応とプラットフォーム更新のみを担う。

4-2. 競合の「箱」との根本的な違い

サービス 提供モデル データ完全分離 パートナーの自律性
Oracle Alloy パートナーが自社DCでフルスタックをホスト、パートナー自身がクラウド事業者化 ✅ 国外にデータが出ない設計 ✅ 高(価格・SLA・ブランドを自社管理)
AWS Outposts AWSが顧客DCに機材を設置・運用、AWSの一部 ⚠️ コントロールプレーン・バックアップがAWSパブリッドに流れる設計 ❌ 低(AWS主導)
Azure Stack Hub Microsoftの技術を顧客DCで展開 ⚠️ 切り離し設定に高コストが必要 △ 中程度
Google Distributed Cloud エアギャップ構成が可能な分散クラウド ✅(エアギャップ版) △ サービス範囲が限定的

Oracle Alloyが競合と根本的に異なるのは発想の転換にある。AWS Outpostsが「AWSの出張所を顧客DCに置く」モデルであるのに対し、Alloyは「パートナー自身がAWSになる」モデルだ。パートナーは単なる再販業者ではなく、フルスタックのクラウド事業者として顧客と直接向き合う。

技術面ではベアメタル中心でハイパーバイザーのオーバーヘッドがなく、Oracle Databaseを含むSaaS全スタックが利用可能な点が強みだ。一方、ハイパーバイザー非採用のため、他社との比較でリソース動的分配の柔軟性に劣る場面もある。

5. 日本のOracle Alloy 5社を徹底比較

日本ではNRI・富士通・NTTデータ・ソフトバンク・日鉄ソリューションズ(NSSOL)の5社がOracle Alloyを採用し、それぞれ異なる強みとターゲット市場で競争している。2026年は日本オラクル社長の三澤智光氏が「ソブリンクラウドが本格的に普及する元年」と宣言したとおり、採用パートナーの拡大が続いている。

5-1. NRI(野村総合研究所)― 金融SaaS基盤の先駆者

NRIはOracle Alloyの文脈で日本最重要プレイヤーだ。世界で初めてOCI Dedicated Regionを採用(2020年)し、国内でも最初にAlloyを稼働させた実績を持つ。

  • 拠点:東京(2024年2月稼働)・大阪(2024年12月稼働)の自社DC、DR構成
  • サービス:「NRIクラウド OCI区画」(2024年4月提供開始)。atlaxマネージドサービスと組み合わせ
  • 金融SaaS実績:BESTWAY(2021年7月)、T-STAR(2022年4月)、THE STAR(2023年4月)をAlloy環境へ移行
  • AI:2024年12月よりNVIDIA H100搭載GPU提供。2025年2月に「NRIデジタルトラスト(仮称)」「NRI金融AIプラットフォーム(仮称)」を発表。金融特化型LLMはNRI・日本オラクル・カナダCohereの協業
  • 差別化:証券・銀行・保険向けSaaS基盤の運用実績と金融規制対応(FISC等)の深い知見

5-2. 富士通 ― ミッションクリティカルとUvance連携

富士通は2025年4月14日に「Fujitsu クラウドサービス powered by Oracle Alloy」の提供を東日本から開始した(西日本リージョンも順次提供予定)。

  • サービス内容:OCIの150以上のサービス+日本のソブリン要件向け106機能を実装。2024年4月の協業発表以降、200社超の問い合わせ。3年で100社導入目標
  • ソブリン体制:日本国籍・日本居住者のみによるサポート体制。富士通は「運用・データ・法的・セキュリティの4主権」を確保するソブリンクラウドと位置づけている(執行役員専務 古賀一司氏)
  • コンプライアンス対応:経済安全保障推進法の15基幹産業に対応。PwC Japanと共同で特定社会基盤役務制度対応のリファレンスガイドを2025年12月に公表
  • 差別化:Uvance(マルチクラウド一元運用)との統合、グローバルSI実績、金融・製造・公共向けのミッションクリティカルシステムへの深い知見

5-3. NTTデータ ― 公共・金融の大規模実績

NTTデータは2024年10月23日にOracleと協業を発表し、「OpenCanvas Type-Oracle Alloy」を2025年12月18日に正式提供開始した。

  • 拠点:東日本は2025年12月末から稼働。西日本は2027年3月末までに提供開始予定(Oracle公式・NTTデータ公式の正式発表。なお2026年3月のOracleウェビナー資料では「2026年末」と記載されており、前倒しの可能性もある)
  • 採用顧客:発表時からNTT東日本・NTT西日本がエンドースメント。金融・通信・公共・公益向けに展開
  • 事業目標:OpenCanvas全体(非Alloy部分含む)で2030年までに1,000億円の売上目標
  • 将来展望:IOWNおよびNTT版LLM「tsuzumi」との連携も検討中
  • 差別化:NTTグループの通信インフラ・データセンター網と高セキュリティクラウドの組み合わせ。公共・大規模金融システムの豊富な実績

5-4. ソフトバンク ― GPU・生成AI基盤に特化

ソフトバンクは2025年10月8日にOracleとの協業を発表。「Cloud PF Type A」を東日本2026年4月・西日本2026年10月から提供している。

  • サービス特徴:OCIの200以上のサービス。Oracle KMS(OCI Vault)+独自KMSの多層鍵管理。SLA稼働率99.9%以上
  • GPU:NVIDIA HGX B200搭載のベアメタルサーバー(サーバー1台から専有)を2026年6月1日提供開始
  • AI:SB Intuitions開発の国産LLM「Sarashina」を搭載した生成AIサービスを2026年6月から順次提供
  • 採用事例:システナがノーコード基盤「Canbus.」で採用(2026年4月)
  • 差別化:国内通信事業者の強みを活かした閉域網(OnePort、SmartVPN)接続オプション、GPU・生成AI基盤としての尖った特化

5-5. 日鉄ソリューションズ(NSSOL)― 製鉄・製造・九州に強い重厚長大SIer

日鉄ソリューションズは2026年1月30日にOracleとの協業を発表した国内5社目のAlloyパートナー。マネージド型IaaS「absonne(アブソンヌ)」をAlloyで刷新し、2026年度下期に次期サービスを提供開始予定だ。

  • 拠点:東京+九州(日鉄ゆかりの地)の2拠点。地理的分散でBCP対応。九州展開ではQsol・QTnet(九電グループ)と2026年4月15日に3社協業を開始
  • サービス内容:OCIの200以上のサービス(Oracle AI Database・OCI AI Agent Platform等含む)。NSSOLの運用サービス「emerald」・サイバー攻撃対策「NSSIRIUS」・コンサルティング「xSource」をAlloy環境に最適化してオプション提供
  • Oracleとの関係:30年超のパートナーシップ。Oracle Kudos for Support Qualityを2年連続取得(2025年)、Oracle Partner Awards「Japan Technology/Cloud Service Partner Customer Success Award」受賞(2025年)
  • 差別化:製鉄・電力・製造分野の大規模ミッションクリティカルシステムの運用実績(18年)。九州という地方都市での展開は「首都圏・関西圏以外でのソブリンクラウド」という新市場を開拓
  • ターゲット:製造・電力・公共・自治体。特に九州地域の半導体・製造業集積(TSMC熊本工場周辺)向けの需要を狙う

5-6. 5社 比較サマリー(先行4社)

項目 NRI 富士通 NTTデータ ソフトバンク
Alloy稼働開始 2024年4月(東京) 2025年4月(東日本) 2025年12月(東日本) 2026年4月(東日本)
強みの業界 金融(証券・銀行・保険) 製造・金融・公共 公共・通信・金融 通信・小売・生成AI
GPU・AI H100(2024年12月〜) OCIベースのGPU tsuzumi連携検討中 B200ベアメタル(2026年6月〜)+Sarashina
LLM提携 Cohere(金融特化) マルチベンダー tsuzumi(NTT) Sarashina(SB Intuitions)
経済安保対応 △(検討中) ✅(PwCと共同ガイド)
2拠点DR ✅(東京・大阪) ✅(東日本・西日本) ✅(東・西、2027年3月末まで完成予定) ✅(東・西、2026年10月)

※ 上記は先行4社。日鉄ソリューションズ(NSSOL)は2026年度下期に提供開始予定。東京・九州の2拠点、製造・電力・公共向け特化。

6. AlloyはソブリンクラウドたりうるかのWill分析

6-1. 主権適合度の精査

富士通は「ソブリンクラウドに必要と考える4つの主権(運用主権・データ主権・法的主権・セキュリティ主権)をAlloyで実現できる」と公式に主張している(執行役員専務 古賀一司氏)。一方、「技術(テクノロジー)主権」―特定ベンダー製品に依存しないこと―については、OCI技術に依存するAlloyでは実現できないと認めている。これはAlloyが「準ソブリン」であることを当事者自身が認めた重要な証言だ。

主権の種類 Alloyの達成度 評価根拠
データ主権 ✅ 達成可能 パートナーDC内にデータが留まり、国外転送が設計上発生しない
運用主権 ✅ 達成可能 パートナーが日本国籍・日本居住者のみで運用管理チームを構成できる
法的主権 △ 部分的 パートナーは日本法人だが、基盤はOracle(米国企業)の技術。米CLOUD Actリスクを完全排除できるか否かは法的解釈次第
セキュリティ主権 ✅ 達成可能 パートナーが独自セキュリティポリシーを策定・適用できる。各社ISO27001・ISO27017取得
技術主権 ❌ 達成困難 基盤はOCI(米Oracle技術)に完全依存。富士通自身も「技術主権はAlloyでは実現できない」と認めている

6-2. ISMAP・ガバメントクラウドの壁

標準のOCIはISMAP登録済み(2021年6月)かつガバメントクラウドに選定されているが、Alloy版(NRI・富士通・NTTデータ・ソフトバンク・日鉄ソリューションズが提供するサービス)としてのISMAP登録・ガバメントクラウド認定は2026年6月時点で確認されていない。各社は経済安全保障推進法対応を前面に出すが、ISMAP登録が政府調達の前提条件となる場面では、現状Alloy版は対象外となりうる。

Alloy版のISMAP登録は別途監査・登録プロセスが必要で、今後の重要注視ポイントだ。

6-3. AlloyのリスクとロックインへのRAR

Alloy最大の構造的リスクはOracleへのライセンス・技術依存だ。

  • ライセンス紛争リスク:OracleのソフトウェアライセンスはBroadcomによるVMware買収と同様の急激な価格改定が起きうる。Dedicated Region同様のコミットメントモデルには長期拘束が伴う
  • 出口条項(Exit Clause):契約段階で乗り換え条項を明文化しないと、契約終了時に長期コミットへ転換するリスクがある
  • ベンダーロックイン:200以上のOCIサービスへの依存度が高まるほど、他クラウドへの移行コストは増大する

契約上の必須チェックポイント:①コミット期間と解約違約金の上限、②Oracleライセンス価格改定への対応条項、③サービス終了時のデータポータビリティ保証、④ISMAP登録・認証取得に失敗した場合の解約権。

7. Alloy以外の国産ソブリンクラウド全マップ

Alloy系が注目を集める一方、日本には独自のソブリンクラウド基盤が複数存在する。これらをアーキテクチャ別に整理する。

7-1. さくらのクラウド ― 国産唯一のガバメントクラウド認定

国産ソブリンクラウドの象徴的存在がさくらインターネット(さくらのクラウド)だ。

  • ガバメントクラウド正式認定:2026年3月27日、デジタル庁が305項目の全技術要件充足を確認し正式認定(国産唯一)。令和5年度の条件付き採択から正式採択へ格上げされ、複数年度採択も国産初
  • インフラ:石狩データセンター中心(2025年9月に石狩第3ゾーン開設)。すべての施設・運用が国内完結
  • 料金:時間・日・月の最安が自動適用されるサブスク型。円建て(為替影響なし)。通常利用の転送量は実質無料
  • GPU:高火力GPUクラウド(NVIDIA H100専有プラン)を2026年1月開始。東大開発の医療特化LLMを2026年3月から研究者へ無償提供
  • ソブリン特性:技術スタック・ハードウェア・運用要員・データセンターがすべて国内完結。「技術主権」を含む5主権すべてに対応可能な国内唯一の大規模パブリッククラウド

7-2. 富士通 FJcloud-V / FJcloud-O ― 国産VMware・OpenStack

  • FJcloud-V(旧ニフクラ):VMware vSphere基盤の国産パブリッククラウド。7,000社超の実績。オンプレからのリフト&シフトが容易。ISMAP登録済み(ISO27001・ISO27017取得)
  • FJcloud-O:Red Hat OpenStack基盤でベンダーロックイン回避を志向。FJcloud-OとFJcloudベアメタルが2021年3月12日にISMAP初回登録
  • Broadcom買収への対応:Broadcomが2023年にVMwareを買収し、VCPPからVCSPへのライセンス移行で価格改定リスクが生じたが、富士通は2025年8月にVCSP認定パートナー継続を発表。既存顧客は継続利用可能
  • 位置づけ:Alloyが「4主権のソブリンクラウド」ならFJcloud系は「5主権すべてに対応」(技術主権を含む)の位置づけ。ただし機能・サービス数ではAlloy(OCI同等200+)に劣る

7-3. NEC Cloud IaaS ― 公共・製造向け純国産

  • ISMAP登録:2021年3月12日(ISMAP初回登録組)
  • SLA:サーバー稼働率99.99%保証、金融機関安全対策基準対応の建物・設備
  • ソブリン戦略:「包括的主権確保」(国内完結)と「部分的主権確保」(既存クラウド+NECセキュリティ機能)の両モデルを提供する方針を公表

7-4. 日立製作所 ― VMware Sovereign Cloud+Lumada

  • 認定:エンタープライズクラウドサービスG2が日本国内初のVMware Sovereign Cloud Initiative参画
  • ISMAP登録:2021年6月。ISO/IEC27001・27017取得
  • 特徴:国内DC保管・日立スタッフによる管理でデータ主権・管轄権を確保。Lumadaによるデータ利活用と組み合わせた重要インフラ向けソリューションが強み

7-5. IIJ(インターネットイニシアティブ)

  • ISMAP登録:IIJ GIO インフラストラクチャーP2が2021年12月20日に登録。その後クラウドネットワーク(2024年4月)、Cloud Proxy+Managed WAF(2025年7月)、IIJ IDサービス+政府向けSecure Web Gateway(2026年1月)と範囲を継続拡充
  • 特徴:通信事業者の強みを活かしたネットワーク統合型ソブリン環境。政府クラウド獲得を視野にISMAP対応を強化中

7-6. KDDI ― Google Cloud×ソブリン鍵管理

  • サービス:「KDDI暗号鍵管理サービス for Google Cloud」を2025年7月30日提供開始
  • 仕組み:Google Cloud Assured Workloads(データ所在地を国内限定)+KDDIによる暗号鍵代行管理を組み合わせ、クラウド事業者と鍵管理組織を分離するソブリン設計
  • 特徴:完全な国産クラウドではなくパブリッククラウド+日本の鍵管理という「ハイブリッドソブリン」モデル

7-7. 国産ソブリンクラウド全体マップ

事業者 サービス アーキテクチャ ISMAP状況 主な対象業界
さくらのクラウド さくらのクラウド フル国産 ✅ 登録済み・ガバクラ正式認定 政府・自治体・研究機関・中堅企業
富士通 FJcloud-O / FJcloud-V OpenStack/VMware系 ✅ 登録済み 金融・公共・製造・グローバル企業
富士通(Alloy) Fujitsu powered by Oracle Alloy OCI Alloy系 ⚠️ Alloy版は未確認 ミッションクリティカル系全般
NTTデータ OpenCanvas(非Alloy) 独自高セキュアクラウド ⚠️ 範囲確認中 公共・金融・通信
NEC NEC Cloud IaaS 独自IaaS ✅ 2021年3月登録 公共・製造・重要インフラ
日立 エンタープライズクラウドG2 VMware Sovereign Cloud ✅ 2021年6月登録 重要インフラ・製造・金融
IIJ IIJ GIO P2 独自IaaS ✅ 2021年12月登録 公共・通信・教育
KDDI 暗号鍵管理 for Google Cloud ハイブリッドソブリン ⚠️ 当サービス自体は別途 企業全般(Google Cloud利用者)

7-8. 政府主導の「計算資源主権」基盤

個別クラウドサービスの上流に位置する「インフラ層の主権」確保に向けた政府主導施策も進んでいる。

  • GENIAC(経産省/NEDO):国産基盤モデル開発向けの計算資源補助・実証・コミュニティ形成。フェーズ3(2025年7月選定)では24件を支援。Sakana AI、Preferred Networks、楽天、Mercariなどが採択。2026年は「GENIAC-PRIZE 2026」(賞金最大約6.3億円+計算資源最大約4億円)とフィジカルAIテーマを展開
  • FugakuNEXT(富岳後継機):富士通(CPU・システム)とNVIDIA(GPU)が協業開発。CPUは2nmのFUJITSU-MONAKA後継、NVIDIA NVLink FusionでGPUと高速接続。2030年頃稼働予定、富岳比で最大100倍のアプリ性能を目標
  • Rapidus(2nm半導体、北海道千歳):2022年8月設立(デンソー・キオクシア・MUFG・NEC・NTT・ソフトバンク・ソニー・トヨタの8社)。2025年7月に2nm GAAトランジスタ動作確認。2027年量産目標。半導体の国産供給能力確保という「最深層の技術主権」を担う

GENIAC(モデル開発資源)+FugakuNEXT(計算主権)+Rapidus(半導体主権)という3層構造が、Alloy系・国産クラウドというサービス層を下支えする「国家インフラ」として機能する設計だ。

8. 日本企業・官公庁のソブリンクラウド採用戦略

8-1. 政府・デジタル庁の動向

ガバメントクラウドは2026年度の対象サービスとしてAWS・Google Cloud・Microsoft Azure・OCI・さくらのクラウドの5サービスを選定している。国産はさくらのみだが、デジタル庁は選定基準を見直し、複数サービスの組み合わせによる要件充足を認める方針で、NEC・IIJ・日立など第2グループの参入可能性が高まっている。

自治体の基幹業務システムは2026年3月末を期限として標準準拠システムへの移行が求められており、ガバメントクラウドの利用システム数は急増している。

8-2. 金融業界

FISC安全対策基準第13版(2025年3月)の改訂は、金融機関のソブリンクラウド採用を加速する。改訂の核心は「経済安全保障上のリスク」の明文化と「オペレーショナル・レジリエンス」の強化で、外資クラウドへの依存が直接的な審査対象になった。NRIの金融SaaS基盤(BESTWAY・T-STAR・THE STAR)はAlloyベースのソブリン環境で稼働しており、証券・銀行向けのリファレンスモデルとなっている。

8-3. 製造業・重要インフラ

経済安全保障推進法の対象15分野(電気・ガス・石油・水道・鉄道・貨物自動車運送・外航貨物・航空・空港・電気通信・放送・郵便・金融・クレジットカード・石油コンビナート)の基幹インフラ事業者は、主権要件対応が事実上の義務となった。富士通がPwC Japanと共同作成したリファレンスガイドはこれら企業の採用判断を支援するための資料だ。

8-4. 日本のクラウド市場規模と外資依存の現実

IDC Japanの調査(2025年2月20日発表)によれば、2024年の国内パブリッククラウド市場は前年比26.1%増の4兆1,423億円、2029年には8兆8,164億円(CAGR16.3%)に達する見通しだ。この巨大市場の大半を米系3社が占め、国産クラウドは小シェアにとどまる。GENIACなどの政策支援は「技術的競争力の確保」より「国産基盤の体力づくり」にとどまるという厳しい評価もある。Alloyは「外資技術を国内で適合させる現実的な折衷案」として、国産育成政策と並走する存在だ。

9. 採用判断フレームワーク:3層分類で選べ

ソブリンクラウドの採用判断に迷ったときは、ワークロードを以下の3層に分類することから始めるべきだ。

レイヤー ワークロード特性 推奨選択肢 判断の基準
Tier 1
最高機密・技術主権必須
防衛・国家機密・最重要インフラの制御システム 純国産(さくらのクラウド、FJcloud-V/O、NEC Cloud IaaS、日立G2) 外国法域外適用で事業継続が脅かされる、またはOracleライセンス依存を許容できない
Tier 2
機密・ミッションクリティカル
金融コアシステム・顧客PII・基幹業務・特定重要インフラ Alloy系(NRI/富士通/NTTデータ/ソフトバンク/日鉄NSSOL)または純国産 データ・運用・法的・セキュリティの4主権が必要。技術主権はOracleへの依存を許容できるか否かで判断
Tier 3
一般業務
メール・グループウェア・非機密データ分析・開発環境 パブリッククラウド(AWS/Azure/GCP/OCI) 主権要件が法的に課されておらず、コスト・機能・速度を優先できる

パートナー選定の指針:

  • 金融統制・金融AI基盤 → NRI(BESTWAY等の金融SaaSの運用実績)
  • マルチクラウド一元運用・ミッションクリティカル → 富士通(Uvance連携、経済安保ガイド整備済み)
  • 公共・大規模システム・NTTグループ連携 → NTTデータ(OpenCanvas、tsuzumi連携)
  • GPU・生成AI基盤・国産LLM活用 → ソフトバンク(B200ベアメタル、Sarashina)
  • 製造・電力・九州地域・Oracle DB集約 → 日鉄ソリューションズ(absonne次期、東京・九州の2拠点)
  • ガバメントクラウド・円建て・転送量コスト削減 → さくらのクラウド(国産唯一の正式認定)

✅ Alloyを選ぶ際の契約必須チェック:①コミット期間と解約違約金の上限を明記、②Oracleライセンス価格改定への対応条項、③サービス終了時のデータポータビリティ保証、④ISMAP登録・認証取得が失敗した場合の解約権。これらを契約段階で確保しないと、ベンダーロックインのリスクが残る。

10. 2026〜2030年の展望

今後4〜5年でソブリンクラウド市場を変える可能性のある重要イベントを整理する。

時期 イベント・指標 採用判断への影響
2026年中 EU AI Act本格適用(高リスクAIシステム)、ソフトバンクB200ベアメタル本格展開、日鉄NSSol absonne次期サービス開始(2026年度下期) 生成AI基盤のソブリン要件が明確化。GPU搭載Alloyの需要が加速
2026〜2027年 Alloy版ISMAP登録の可否判明(各社が検討中と推察)、Rapidus 2nm量産開始(2027年目標) ISMAP登録実現なら公共調達でのAlloy解禁。Rapidus量産なら「真の半導体主権」への道が開く
2027〜2028年 EUCS(欧州クラウドセキュリティ認証)確定、Oracle日本への10年80億ドル超投資の中間点 EU要件が日本のISMAP見直しに波及する可能性。Oracle国内運用体制の強化でAlloy版ISMAP登録環境が整備されるか注目
2029〜2030年 FugakuNEXT稼働(2030年頃)、NTTデータOpenCanvas 1,000億円目標達成時期 国産計算資源とAlloy系サービスが両輪として日本のソブリンAIを支える構図が確立するか

ベンチマーク(判断を変える指標):

  • Alloy版がISMAP登録・ガバメントクラウド認定を取得 → 公共調達での採用判断を根本から見直す機会
  • EUCSの「主権要件」が日本のISMAP基準にフィードバック → 外資依存リスクの再評価トリガー
  • ガバメントクラウドの「複数サービス組み合わせ容認」が正式化 → NEC・IIJ・日立など第2グループの参入加速
  • 富士通MONAKAやFugakuNEXT技術がAlloy/国産クラウドに統合 → 技術主権評価の再設計

11. まとめ

📌 本記事のキーポイント

  1. ソブリンクラウドに統一定義はない。データ・運用・法的・セキュリティ・技術の5主権のうち、何をどの程度確保するかをワークロードごとに設計することが出発点
  2. CLOUD Actは「対岸の火事」ではない。2025年仏上院証言で明らかなように、外資系クラウドは法的主権の完全保証を約束できない。機密ワークロードの主権設計は必須
  3. Oracle Alloyは「準ソブリン」。4主権(データ・運用・法的・セキュリティ)は達成可能だが、技術主権はOracle依存が残る。さらにISMAP登録がAlloy版では未確認という公共調達上の制約がある
  4. 日本のAlloy 5社は役割が異なる。NRI=金融SaaS、富士通=ミッションクリティカル、NTTデータ=公共大規模、ソフトバンク=GPU/生成AI、日鉄NSSOL=製造・電力・九州地域。業界・用途で選択先が決まる
  5. さくらのクラウドは「技術主権」の孤独なフロンティア。国産唯一のガバメントクラウド正式認定(305項目全充足)。最高機密ワークロードと国家主権要件では参照点となる
  6. Alloyは完全な答えではなく、現実的な折衷案。機能の豊富さ・運用実績・パートナーの信頼性を評価しつつ、ロックインリスクへの出口戦略を契約前に確保することが経営上の必須事項

ソブリンクラウドは「流行のバズワード」ではなく、地政学リスク・規制強化・生成AIが交差する現実の課題への解答だ。2026〜2030年に向けて、Alloy系(NRI・富士通・NTTデータ・ソフトバンク・日鉄ソリューションズ)と純国産(さくら・FJcloud・NEC・日立)、そして計算資源主権(GENIAC・FugakuNEXT・Rapidus)の三層が日本のデジタル主権を形成していく。その全体構造を理解したうえで、自組織のワークロード特性に応じた「主権の設計」に取り組んでほしい。


本記事は2026年6月時点の公開情報を基に作成しています。各社サービスの詳細・価格・ISMAP登録状況は変動する場合があります。最新情報は各社公式サイトおよびISMAPポータル(ismap.go.jp)でご確認ください。

火曜日, 5月 26, 2026

【2026年5月版】クラウド環境でOracle Databaseを利用するには

以前、クラウド環境でのOracle Database利用についてまとめた記事(2018年9月)を書きました。 それからかなりの時間が経ち、状況が大きく変わったので、2026年5月時点の最新情報に更新します。

まず前提として、Oracle Database(以下、Oracle)を冗長化された仮想環境で利用することのハードルの高さは変わっていません。 OracleのライセンスカウントはSoft Partitioning(VMware、Hyper-Vなど)の場合、Oracleがインストールされた仮想マシンが稼働する可能性のある物理サーバ全台分のプロセッサに対してライセンスが必要です。 HCI(ハイパーコンバージドインフラ)の普及でクラスタが1つのリソースとして管理されるようになった現在、この問題はさらに深刻化しています。

Soft PartitioningとHard Partitioningの違いについては以下のOracleパーティショニング・ポリシー(最終更新2022年2月)を参照してください。
Oracle Server Partitioning Policy(PDF)

ということで、冗長化された仮想環境上のOracleライセンス問題はオンプレミスでも変わらず厄介ですが、2024〜2026年にかけてクラウド側の選択肢が劇的に広がりました。 ここではその最新状況を整理します。 なお、ここで記載している内容は2026年5月時点のものです。特にライセンスの考え方は変わることがあるため、必ず購入元にご確認をお願いします。


1.Oracleが承認したクラウド環境(AWS・Azure・GCP)でのライセンス

OracleはAWS・Azure・Google Cloud Platform(GCP)を「承認済みクラウド環境(Authorized Cloud Environments)」として公式に認めており、仮想マシン上でのOracle利用についてvCPUベースのライセンスカウントルールが適用されます。
Licensing Oracle Software in the Cloud Computing Environment(Oracle公式PDF、2024年6月12日版)

最大の変化:2024年6月12日にGCPが正式追加
2018年時点ではAWSとAzureの2社だけでしたが、2024年6月12日付のポリシー改訂でGoogle Cloud Platformが正式に承認済みクラウドに追加されました。 これにより、AWS・Azure・GCPの3社が横並びで同一のライセンスカウントルールの対象となっています。

承認済みクラウド3社共通のライセンスカウントルール(Enterprise Edition)は以下の通りです。

  • マルチスレッディング(ハイパースレッディング)が有効の場合:2 vCPU = 1 Processor License
  • マルチスレッディングが無効の場合:1 vCPU = 1 Processor License
  • Oracle Processor Core Factor Table(コア係数表)は適用されない
  • カウント対象はインスタンスタイプの最大vCPU数(実際の使用コア数ではない)

Standard Edition 2については、4 vCPU以下のインスタンスが1ソケット(1 Processor License)扱いとなり、4 vCPU超は4 vCPU単位で切り上げてソケット数を計算します。

なお、上記のポリシーPDF末尾には「This document is for educational purposes only and provides guidelines regarding Oracle's policies... It may not be incorporated into any contract」と明記されています。あくまでガイドラインであり、実際の契約はOracle Master Agreement(OMA)等が優先します。


2.Oracle Database@AWS(2025年7月GA・東京2025年12月GA)

2025年最大のトピックの一つがOracle Database@AWSの正式提供開始です。 これはAWSのデータセンター内にOracle Cloud Infrastructure(OCI)のExadataハードウェアを物理設置し、AWSのネットワークと接続してOCIのマネージドサービスとして提供するサービスです。

  • 2025年7月8日:US East(N.Virginia)・US West(Oregon)の2リージョンでGA
  • 2025年12月22日:東京(AP-Northeast-1)・Ohio(US-East-2)でGA
  • 2025年12月23日:Frankfurt(EU-Central-1)でGA、計5リージョン
  • 2026年4月8日:Dublin・London・Mumbai・Hyderabad・Seoulが追加され計12リージョンに拡大(うち東京・Sydney・Canadaは2AZ対応)

提供サービスはOCI Exadata Database Service、Oracle Autonomous AI Database on Dedicated Infrastructure、Oracle Autonomous Recovery Serviceの3種類です。 RACもそのまま利用でき、Oracle AI Database 26aiにも対応しています。 Amazon S3・Bedrock・SageMaker・Redshiftとのゼロ-ETL連携も可能で、AWS Marketplaceから購入でき、AWSのコミットメント(EDP)消化にも充当できます。 BYOL・Oracle Support Rewardsも適用可能です。

なお従来のAmazon RDS for Oracleは引き続き提供されています。 RDS for OracleはフルマネージドでSE2のLicense Included(EEはBYOLのみ)を選べる唯一のサービスですが、対応バージョンは19cおよび21cのみです(2026年5月時点)。 26ai/23aiは未対応で、マネージドサービスで最新バージョンを利用したい場合はOracle Database@AWSのAutonomous Databaseが選択肢となります。 また、RDS Custom for Oracleでは2025年7月にMulti-AZサポートが追加され、ベアメタルインスタンス対応も拡充されています。


3.Oracle Database@Azure(2025年2月日本GA・ISMAP対応)

Oracle Database@AzureはOracleとMicrosoftが2023年9月に発表したサービスで、AzureのデータセンターにOCI Exadataを物理設置してOracle側がフルマネージドで運用します。

  • 2023年12月13日:US East(East US)で初GA
  • 2025年2月13日日本(Japan East)で国内初GA
  • 2025年中:Japan West(大阪)もDR用途で追加
  • 2025年10月時点:28リージョンで提供(AI World 2025発表)、その後11月に31リージョンへ拡大

日本における重要な進展として、ISMAP(政府向けクラウドサービス安全性評価制度)への対応が2025年中に完了しました。 また、Azure Key Vault統合・Microsoft Sentinel/Purview連携・Microsoft Fabric Open Mirroringも提供されており、エンタープライズおよび公共・金融向けの実績も生まれています。 たとえば2025年10月には、日本オラクルがネオファースト生命保険(第一生命グループ、保有契約件数100万件超)が保険契約管理システムのデータベース基盤にOracle Database@Azure(Exadata Database Service)を採用したと公表しています。

利用可能なサービスはExadata Database Service、Autonomous Database、Base Database Service(19c/26ai選択可)、GoldenGate、Oracle Exadata Database Service on Exascale Infrastructure(ExaDB-XS)などです。 Azure Marketplaceから購入でき、Azureのコミット(MACC)消化が可能です。


4.Oracle Database@Google Cloud(2025年6月東京GA)

OracleとGoogleは2019年に相互接続の連携を発表していましたが、2024年6月に大幅に提携を拡張し、Google CloudのデータセンターにOCI Exadataを物理設置するOracle Database@Google Cloudを発表。同年9月9日にAshburn・Salt Lake City・London・Frankfurtの4リージョンでGAしました。

  • 2025年6月13日東京(Asia-Northeast 1)で国内初GA
  • 2026年2月:大阪(Asia-Northeast 2)でExadata Database ServiceがGA
  • 2026年4月22日時点:15リージョンで提供(東京・大阪含む)

提供サービスはExadata Database Service、Autonomous AI Database、Base Database Service(26ai対応)、Exadata Database Service on Exascale Infrastructure(ExaDB-XS)、Oracle AI Lakehouse(Apache Iceberg対応)などです。 Google Cloud Marketplace経由での購入・パートナー販売が可能で、Google Cloudのコミット消化にも充当できます。 Gemini・Vertex AIとOracle DBの統合(同一データセンター内)が最大の特徴であり、AI活用を検討する企業にとって大きなメリットとなります。

なお2025年6月時点では東京リージョンのみGAで大阪は未対応だったため、DR構成が必要な場合はOCI大阪リージョン+FastConnect構成との組み合わせが現実的でした。現在は大阪も対応済みです。


5.Oracle Cloud Infrastructure(OCI)を利用する

Oracle DBを利用するうえで、ライセンスコストの構造的優位があるのがOCIです。 OCI東京リージョン(ap-tokyo-1)は2019年4月30日に開設、大阪リージョン(ap-osaka-1)は2020年12月に開設され、日本国内に2拠点の本番・DR構成が可能です。 Oracleは2024年4月に「今後10年間で日本のクラウド・AIインフラに80億ドル以上を投資する」と発表しており、引き続き日本での投資を強化しています。

BYOLのライセンス計算(OCI vs. AWS/Azure/GCP の差)

環境 1 Processor Licenseで使えるvCPU/OCPU コア係数表
AWS・Azure・GCP(HT有効) 2 vCPU = 1 Processor License 適用なし
OCI 2 OCPU = 1 Processor License(EE)
4 OCPU = 1 Processor License(SE2)
適用なし
(OCI独自の有利なルール)

OCIではOCPU(1 OCPU = 2 vCPU相当)単位で課金するため、同じProcessor License数でAWS/Azure/GCPの2倍のvCPU相当の処理能力が得られます。 さらにOracle Support Rewards(OCI利用料金1ドルあたり0.25〜0.33ドルをオンプレのOracleサポート費から控除)により、TCO面でOCIが構造的に有利です。

OCI上のデータベースサービスとしては、Autonomous Database(サーバーレス)、Base Database Service(19c/26ai)、Exadata Database Service、Exadata Database Service on Exascale Infrastructureなどが揃っています。 RAC構成も組め、高可用性が必要な大規模Oracleもカバーできます。


6.国産ソブリンクラウド(Oracle Alloyベース)

Oracleは「Oracle Alloy」というプログラムを通じて、パートナー企業が自社のデータセンターにOCI相当の環境を構築・提供できる仕組みを整備しています。 日本では以下の4社がOracle Alloyを採用したソブリンクラウドを提供・計画しています。

  • NRI(野村総合研究所)atlax2024年4月16日に日本国内で初めてOracle Alloyが稼働開始した事業者。東京・大阪の自社DCの2拠点にOracle Alloyを導入し、OCI IaaS・PaaSのフルサービスと100以上のOCIサービスを提供。以前から自社DCにOCI Dedicated Regionを導入し、金融SaaS(BESTWAY・T-STAR・THE STAR等)の基盤として実績があったことが背景にある。マネージドサービス「atlax」との組み合わせにより、金融・小売などの顧客のマルチクラウド環境をトータルで運営・監視できるのが特徴。2025年2月にはセキュリティサービス・AI実行環境の提供も拡充。
  • 富士通クラウドサービス powered by Oracle Alloy:2025年4月14日に国内提供開始。富士通DCからOCI相当の150以上のサービスを提供。経済安全保障推進法の基幹インフラ事業者向けの主権クラウドとして位置づけ。なお旧「FJcloud-O」上のDB powered by Oracle Cloudは2024年に新規申込終了。
  • NTTデータ OpenCanvas:Oracle Alloyベースのソブリンクラウドを、東日本リージョンから段階的に展開予定。
  • SoftBank Cloud PF Type A:2025年10月に発表、Oracle AlloyとGPU環境を組み合わせた国内ソブリンクラウド。

これらのサービスは、クラウドへの移行を希望しつつもデータ主権・セキュリティ要件が厳しい公共・金融・医療分野の企業にとって、現実的な選択肢となっています。 特にNRIは日本国内のOracle Alloy第一号として2024年4月に稼働開始しており、金融業界を中心に最も実績が豊富です。


7.Oracle AI Database 26ai(2026年1月オンプレGA済み)

2024年5月にOracle Database 23aiがGAとなり、AI Vector Search・JSON Relational Duality・Raft Replication・SQL Firewall・Select AIなどAI時代向けの300超の新機能が搭載されました。 そして2025年10月14日、Las Vegasで開催されたOracle AI World 2025にてLarry Ellison会長がOracle AI Database 26aiを発表。23aiをさらに進化させたAIネイティブDBとして、名称・バージョン番号が改められました。

26aiの仕組みとしては、Oracle Database 23aiに「October 2025 Release Update(バージョン23.26.0)」を適用するだけで移行でき、データベースのアップグレードやアプリケーションの再認定は不要です。 AI Vector Search・Unified Hybrid Vector Search・Agenticフレームワーク統合・AI Lakehouse(Apache Iceberg対応)などの機能が追加料金なしで利用できます。

クラウドおよびオンプレミスの提供状況

  • OCI(Autonomous DB、Base DB、Exadata等)、Oracle Database@Azure・AWS・Google Cloud:提供中
  • Oracle Exadata、Oracle Database Appliance(ODA):提供中
  • 汎用オンプレミス(Linux x86-64):2026年1月27日GA済み(バージョン23.26.1、EEのみ。SE2は2026年内の他プラットフォームリリースと同様に順次対応予定)

長らく「次のLTSリリース(23ai/26ai)はいつオンプレで使えるのか」が注目されていましたが、2026年1月27日にLinux x86-64向けEEが正式提供されたことで、オンプレ環境でも最新のAI機能(Vector Search、Select AI等)が利用できるようになりました。 19cからの移行先として、オンプレ継続企業にとっても大きな選択肢が加わったと言えます。

なお26aiはLong-Term Supportリリースで、Premier Supportは2031年12月31日まで(23aiと同一のサポート期間を継承)です。


8.その他:オンプレとのハイブリッド・ハウジング構成

高可用性・高信頼性が求められ、すぐにはクラウド移行が難しいOracle環境については、Oracle部分だけオンプレ(データセンターのハウジングやホスティング)に残しつつ、他のシステムはクラウド化するハイブリッド構成も依然として有効です。 具体的なオプションとしては以下があります。

  • OCI Exadata Cloud@Customer:顧客のDCにExadataハードウェアを設置し、OCIのマネージドサービスとして運用。ハイブリッドクラウドの中でも最もOracleとの親和性が高い。
  • OCI Compute Cloud@Customer / Dedicated Region:OCIを顧客DC内で動かす別オプション。
  • 専用線接続(Oracle FastConnect / AWS Direct Connect / Azure ExpressRoute):オンプレOracle環境とクラウドを低遅延・高帯域で接続。

また、さくらのクラウドなどOracleの承認済みクラウドに含まれない国産クラウドのIaaS上でOracleを稼働させることは、ライセンス的にはSoft Partitioning扱い(物理サーバ全台分のライセンスが必要)となるため、コスト面で現実的ではありません。 さくらインターネット自身も公式に「Oracle Database直接利用不可、専用サーバPHYまたはOCI経由でのマルチクラウド構成を推奨」と案内しています。


まとめ(2026年5月時点)

2018年の記事執筆時からの最大の変化は、Oracle DatabaseがAWS・Azure・GCP(Google Cloud)すべてのメジャークラウド上で、「Oracle社がフルマネージドで運用するExadataサービス」として利用できるようになったことです。 以前はハイパースケーラー上でのOracle利用はライセンスカウントの煩雑さとRAC不可という制限がありましたが、Oracle Database@系のサービスを使えばRACも使えてライセンスもBYOL・Support Rewardsが適用されます。

各クラウドの選択ポイントを整理すると:

  • AWSをメインに使っている企業:Oracle Database@AWSが東京GAで選択肢に。AWSのコミット消化も可能。
  • Azureをメインに使っている企業:Oracle Database@AzureがJapan EastでISMAP対応済み。公共・金融・医療向けに最も実績あり。
  • Google CloudやGemini AIと組み合わせたい企業:Oracle Database@Google Cloudが東京・大阪両リージョン対応済み。
  • TCOを最大化したい企業(OracleライセンスをBYOLで活用):OCI直接か富士通Alloyなどの国産ソブリンクラウドがライセンス効率で有利。
  • 小〜中規模でフルマネージドをリーズナブルに:Amazon RDS for Oracle(SE2 License Included)が依然として唯一の選択肢。ただし対応は19c/21cのみ。
  • オンプレ継続だが23ai/26aiの機能を使いたい:2026年1月27日に26aiオンプレ版(Linux x86-64 EE)がGA済み。ExadataやODAは不要。

Oracleのライセンスポリシーは変わりやすく、また各ポリシー文書は「non-contractual(契約書ではない)」と明示されています。 移行や新規導入の判断にあたっては、必ず最新のOracle公式ドキュメントおよびOracle営業・販売店に確認することをお勧めします。

最後になりますが、Oracleがある環境のクラウド化を進める一番わかりやすい方法が「Oracleをやめる」であることは2018年から変わっていません。 ただ、DBの移行は大変な作業ですし、特にストアドプロシージャが多い環境やOracleを前提としたパッケージ製品では容易ではありません。 そんな環境でも、上記のようにOracle Database@系サービスやOCIを活用することでクラウドのメリットを享受する選択肢が格段に広がっています。 この記事が少しでも参考になれば幸いです。

月曜日, 5月 25, 2026

〖2025年5月版〗国産クラウド(IaaS)最新動向まとめ

 〖2025年7月版〗国産クラウド(IaaS)最新動向まとめを公開してから約10ヶ月が経ちました。この間、国産クラウドとしては初めて「さくらのクラウド」がガバメントクラウドに正式採択されるという歴史的な出来事があり、富士通やソフトバンクがOracle Alloyを基盤とするソブリンクラウドを相次いで立ち上げるなど、国内クラウド市場の地図が大きく塗り替わりました。また、MicrosoftやGoogleが日本への大規模投資を相次いで発表し、AI対応型インフラの整備が急加速しています。本稿では2026年5月時点の主要IaaS事業者の動向を、2025年7月版との差分を意識しながら整理します。対象は2025年7月版とは異なり、国内外を問わず日本市場で存在感を持つIaaSを広くカバーします。

日本のクラウド市場概況(2025〜2026年)

矢野経済研究所が2026年に発表した調査によると、2025年の国内クラウド基盤(IaaS/PaaS)市場規模は前年比約19%増の2兆7,100億円で、2029年には5兆2,200億円に達するとしています(CAGR約18%)。IDC Japanの集計ではIaaS・PaaS・ホスティング型プライベートを合算した2024年の国内パブリッククラウド市場は4兆1,423億円(前年比26%増)で、2029年には8兆8,164億円に拡大する見通しです。また、IDCは2026年の国内AIインフラ市場を約55億ドル(約8,300億円)と試算しており、2030年には1兆円を突破するとみています。成長を牽引するのは生成AI需要、基幹系のクラウド移行、そしてBroadcom傘下となったVMwareのライセンス体系見直しに伴う代替需要の三本柱です。

ガバメントクラウドとISMAP — 2025年7月版からの最大の変化

2026年3月27日、デジタル庁は「さくらのクラウド」がガバメントクラウドの全技術要件305項目を充足したことを確認し、令和5年度・令和8年度の双方でガバメントクラウドサービス提供事業者として正式採択したと発表しました。これにより2026年度のガバメントクラウド対象はAmazon Web Services・Google Cloud・Microsoft Azure・Oracle Cloud Infrastructure・さくらのクラウドの5サービスとなり、国産クラウドはさくらのクラウドが唯一の座を占めます。さくらインターネットの田中邦裕社長は「日本の行政におけるクラウドの選択肢を広げるとともに、日本のデジタル基盤の自律性と持続性を高める一歩」とコメントしています。

2023年11月に条件付きで採択されてから約2年半、さくらインターネットが国内各所から「ぜひ実現してほしい」という声を受けながら開発を続けてきた成果です。正式採択と同時に、石狩第3ゾーンを活用した法人向けキャンペーンも開始されました。ISMAPクラウドサービスリストはデジタル庁が2025年11月・2026年3月に更新し、Salesforceの「Agentforce」を含む複数製品が新規追加されています。

〖ハイパースケーラー〗

AWS(Amazon Web Services)

AWSジャパンは2024年1月に発表した「2023〜2027年で2兆2,600億円を東京・大阪リージョンに投資する」計画を継続中です。2011〜2022年の累計1兆5,100億円と合わせると、2027年までの国内クラウドインフラ投資総額は約3兆7,700億円に達する見込みです。2024年11月には長崎忠雄前社長に代わり白幡晶彦氏が代表執行役員社長に就任し、2026年1月には「For Japan, For Society Leaping Ahead」を2026年の新戦略として打ち出しました。

サービス面では2025年12月、Oracle Database@AWSが東京リージョン(ap-northeast-1)で一般提供(GA)を開始しました。東京リージョン内のapne1-az1とapne1-az4で利用でき、Oracle ExadataデータベースをAWSのインフラで動かしながら、データを日本国内に置き続けることが可能になりました。生成AI向けのAmazon Bedrockも日本リージョンで提供済みで、引き続き先行投入が続いています。障害面では2025年4月に東京リージョンで約1時間の一時的な接続障害が発生し、同年10月には米国バージニア北部を震源とするグローバル規模の障害が起きています。いずれも長期化は免れましたが、グローバルコントロールプレーンに依存するサービスを利用している場合のリスクとして改めて意識されました。

Microsoft Azure

Microsoftは2026年4月3日、「技術」「信頼」「人材」の3本柱を軸に2026〜2029年の4年間で日本に100億ドル(約1兆6,000億円)を投資する計画を発表しました。副会長兼社長のブラッド・スミス氏が来日し、高市早苗首相を表敬訪問した際に公表されたものです。2024年4月の29億ドル投資発表に続く追加コミットメントで、規模は3倍超に拡大しています。

技術面では、さくらインターネットおよびソフトバンクと連携し、日本国内にデータを置いたままAzure経由でGPU計算資源を利用できる「主権AIスタック」の整備を進めます。信頼面では国家サイバー統括室や警察庁との官民連携によるサイバー防衛強化を明示しています。人材育成では、NTTデータ・ソフトバンク・NEC・日立・富士通の5社と協力し、2030年までに日本で100万人のエンジニア・開発者育成を目指します。なお、2024年4月の投資発表以降、同社は日本で340万人以上のAIスキル習得を支援しており、当初の目標300万人を超過達成しています。

Google Cloud

千葉県印西市に国内初のGoogle Cloud専用データセンターが2024年に稼働し、東京・大阪リージョンでのサービス品質が向上しています。2025年6月にはOracle Database@Google Cloudが東京(Asia-Northeast 1)で提供を開始し、Google Cloud Marketplace経由のリセラー販売にも対応しました。生成AI分野では2026年4月のGoogle Cloud Nextでベルリン・セメラー型AIエージェント基盤と新型チップTPU 8(学習用8t・推論用8i)を発表し、クラウド収益は前年同期比48%増(Q4 2025、177億ドル)と急成長しています。

設備投資は急拡大しており、2025年通期CapExは約900億ドル(前年比約2倍)、2026年は当初1,750〜1,850億ドルのガイダンスを示しましたが、2026年4月29日のQ1 2026決算で1,800〜1,900億ドルに上方修正されています。Alphabet年次報告書(2026年4月)では「2025年の約900億ドルの2倍」と表現されており、AIインフラ需要が旺盛なことを裏付けています。

Oracle Cloud Infrastructure(OCI)

東京・大阪の2リージョン体制を継続強化しており、2025〜2026年にかけてWebLogicマネジメント、Compute E6 Standardシェイプ、Batchサービスなどを国内リージョンで順次提供開始しています。Oracle Database@AWSが東京でGAとなったことでマルチクラウドDB移行がより現実的な選択肢となりました。国内における大型導入事例では長野県信用組合や荏原製作所、ニッセイ・ウェルス生命などの勘定系・基幹系移行案件が続いています。2024年4月に発表した「向こう10年で80億ドル超の日本投資」計画は継続中で、Oracle Alloyを通じたソブリンクラウドパートナー戦略の拡大も進んでいます(後述)。

〖国内クラウド事業者〗

さくらインターネット — さくらのクラウド(歴史的な転換点)

2026年の国内クラウド市場における最大のニュースは、3月27日のさくらのクラウドのガバメントクラウド正式採択でしょう。2023年11月の条件付き採択から約2年半を経て305項目すべての技術要件を充足し、国産クラウドとして初めて本番環境での提供が可能となりました。政府・自治体のシステムをさくらのクラウド上に構築する選択肢が事実上解禁されたことは、これまで外資4社が独占していた公共クラウド市場の構造を変える出来事です。日経Xテックや時事通信は「国産AI推進という政府方針との親和性が高い」と評価しています。

GPU基盤の「高火力」シリーズも急速に拡充されました。2024年8月にNVIDIA H100を2,000基整備し、2025年8月にはBlackwell世代のNVIDIA B200を搭載した「B200プラン」を提供開始(初期400基・最終1,500基規模を計画)。2025年9月にはマネージドスパコン「さくらONE」(H200×55台)を、同10月にはB200×48台(384 GPU)構成も追加しました。2025年9月には石狩データセンターに第3ゾーンを新設し、ガバメントクラウド向けの大規模受け入れに備えています。2024年度〜2030年度で1,000億円規模のGPU投資を計画しており、経済産業省のクラウドプログラムが50%助成しています。

富士通 — FJcloud-VとFujitsu Alloyの並列体制

2024年4月にニフクラをFJcloud-Vに統合済みで、VMware vSphereベースのIaaSとして継続提供されています。2025年7月にBroadcom社によるVCSPパートナー契約の見直しが行われましたが、富士通は継続認定を受けています。既存のVMware資産を抱える企業の移行先として引き続き有力な選択肢です。

最大の新展開は、2025年4月14日に「Fujitsu クラウドサービス powered by Oracle Alloy」(富士通ソブリンクラウド)の国内提供を開始したことです。富士通のデータセンター内に置いたOracle Alloy基盤上で、OCI互換の100以上のサービスを利用できます。日本のソブリン要件に合わせ既存OCIの機能に加えて106の機能を実装しており、データ・運用・法的・セキュリティの4つの主権に対応します。今後3年間で100社への導入を目標としており、発表以降200社超から問い合わせがあったとしています。2025年7月24日にはグランドオープンイベントを開催し、経産省AI産業戦略室の渡辺室長が講演しました。同年10月にはPwC Japanと協業し、経済安全保障推進法「基幹インフラ役務」制度に対応するリファレンスガイドを2025年12月に公開しています。なお、FJcloud-VとFujitsu Alloyは「後継・先代」の関係ではなく、用途が異なる並列ラインアップです。FJcloud-VはVMware既存資産の移行に、Fujitsu Alloyはミッションクリティカルなソブリン要件対応に、それぞれ重点を置いています。

NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)— Smart Data Platform(SDPF)

2025年7月1日、NTTコミュニケーションズはNTTグループの組織再編に伴い「NTTドコモビジネス株式会社」に社名を変更しました。同時にNTTコムウェアも「NTTドコモソリューションズ」に改称しています。クラウドサービスはSmart Data Platform(SDPF)クラウドとして継続提供されており、ISMAPへの登録も継続しています。

2025年6月にはNTTドコモビジネス・ゲットワークス・NTTPCの3社が「AI-Centric ICTプラットフォーム構想」として戦略的業務提携を締結し、水冷GPUサーバーを活用したAI計算基盤の整備を進めています。NTTグループ全体では、2026年4月27日にデータセンターの消費電力容量を2033年度に現在の約3倍超(約1GW)へ拡張する計画を発表しました。NTTの島田社長は「推論用途の裾野が広がっている」とAIインフラ拡張の理由を説明しています。

KDDI — KCPS刷新とGPU Cloud

2025年12月19日にKDDIクラウドプラットフォームサービス(KCPS)を全面リニューアルし、フラッシュドライブへの移行によるストレージ性能向上、最大32vCPU/512GBのハイスペックメニュー追加、PaaS機能の拡充を図りました。ただしKCPS Ver.2は2026年3月31日をもって新規申込受付を終了しており、現在は後継の「KDDI GPU Cloud」への移行を推進しています。KDDI GPU Cloudは大阪堺データセンターにNVIDIA GB200 NVL72を採用した構成で、2026年4月から申込受付を開始しました。KCPSとの閉域連携に対応しており、既存KCPSユーザーからのスムーズな移行を支援します。ISMAP登録(C21-0010-2)は継続しており、KDDIアイレットを通じてガバメントクラウドの運用管理補助者の役割も担っています。

ソフトバンク — Cloud PF Type A(Oracle Alloy採用)

ソフトバンクは2025年10月8日にOracle Alloyを採用したソブリンクラウドサービス「Cloud PF Type A」を2026年4月から提供すると発表し、2026年4月1日に東日本リージョンでの提供を正式開始しました。西日本リージョンは2026年10月開始予定です。OCI互換の200種類以上のサービスに対応し、日本国内のソフトバンクデータセンターでデータの所在・管理・運用を完結させます。セキュリティ面ではOracle KMS VaultとソフトバンクKMSの組み合わせ、ネットワーク面ではOnePort・SmartVPNによる閉域接続を提供します。

2026年4月16日には、SB Intuitionsが開発した国産LLM「Sarashina」を活用した生成AIサービスを同年6月から順次提供開始すると発表しました。Sarashina AIサービスの提供開始は4月ではなく6月からである点に注意が必要です。また、MicrosoftとはAzure経由でソフトバンクのGPU計算基盤を利用するソリューションの共同開発を2026年4月3日に発表しており、主権AIスタック構築の観点からも注目されています。既存のホワイトクラウドASPIREはISMAP登録・VMware Sovereign Cloud認定を継続しています。

IDCフロンティア — IDCFクラウド

国内15ゾーン・SLA 99.999%の体制を継続しています。GPU基盤では2025年から推論用GPUクラスタの提供事例が増えており、デジタルダイナミックやモルゲンロットとの事業提携を通じてIDCフロンティアのデータセンターを活用したGPU環境の導入が進んでいます。2025年12月には大規模な推論AI向けGPUクラスタの導入事例を公開しました。AWS・Azure・Google Cloud等との閉域接続サービスは継続提供しており、マルチクラウド構成の「ハブ」としての役割も担っています。

ソブリンクラウドの競合構図

2025〜2026年にかけて最も急速に立ち上がったのがソブリンクラウド(データ主権クラウド)の市場です。大きく分けると、Oracle Alloyを基盤とした陣営(富士通・ソフトバンク・NTTデータ・NRI)と、さくらのクラウド(完全国産)、そしてMicrosoftの「主権AIスタック」(さくら・SBと連携)の三極構造が形成されています。富士通・NTTデータ・NRIはそれぞれミッションクリティカル系・SI系の既存顧客基盤を持ちながらOracle Alloyを採用しており、中央省庁・金融・製造業の基幹系クラウド移行を主なターゲットとしています。一方、さくらのクラウドはガバメントクラウド正式採択という裏付けを持ち、地方自治体や省庁のシステム基盤として純国産という訴求力を最大の武器としています。

AI規制の動向 — AI推進法の施行

日本初のAI分野特化法となる「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(令和7年法律第53号、通称:AI推進法)が2025年5月28日に成立し、6月4日に公布・一部施行、9月1日に全面施行されました(内閣府公式)。同日、内閣総理大臣を本部長・全閣僚を構成員とするAI戦略本部が設置され、9月12日に初会合が開かれています。石破総理(当時)は「国家戦略として省庁横断でAIによるイノベーションを本格的に推進する」と述べ、AI基本計画の策定を指示しました。

同法は罰則を伴わない基本法的性格で、EU AI Actのような直接規制とは異なります。活用事業者の責務(第7条)や国による調査・指導・助言の仕組みを規定し、「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」を目指す方向性を明示しています。クラウド事業者にとっては、AIサービスを提供する際の透明性確保や不適切利用への対応体制が今後のガイドラインで具体化されていく可能性があるため、動向を注視する必要があります。

まとめ

2026年5月時点の国内IaaS市場は、「AI対応」「データ主権」「ガバメントクラウド」の三つのキーワードで動いています。さくらのクラウドのガバメントクラウド正式採択、富士通・ソフトバンクのOracle Alloyソブリンクラウド提供開始、MicrosoftやOracleの巨額の日本投資、そしてAI推進法の全面施行と、2025年7月版からの10ヶ月間は国内クラウド史上でも有数の変化の多い期間でした。

選定の指針としては、公共・自治体システムには5社体制となったガバメントクラウドの中でさくらのクラウドも有力な選択肢として評価すること、ミッションクリティカルな機密系システムにはFujitsu Alloy・ソフトバンクCloud PF Type A・NTTデータAlloy・NRIAlloyなどOracle Alloy系を本命として検討すること、生成AI・LLM基盤にはさくら高火力PHY B200・KDDI GPU Cloud(GB200)・ソフトバンクCloud PF Type A(Sarashina、6月〜)を比較すること、が実務的なアプローチとなりそうです。VMwareの既存資産を抱える場合は、BroadcomのVCSP認定を継続しているFJcloud-V・IIJ GIO P2 Gen.2・ホワイトクラウドASPIREを優先候補とすることも引き続き有効です。

なお、本稿は2026年5月25日時点の公開情報をもとに作成しており、Microsoftの100億ドル投資の詳細な実施内容、ガバメントクラウド要件緩和の最終ルール(複数サービス組み合わせによる充足を許容する方向性が打ち出されているが最終確定前)、各社GPU調達状況など、今後の公式発表で変わる可能性がある事項を含みます。引き続き最新の公式発表を確認してください。

火曜日, 9月 17, 2019

[Oracle OpenWorld 2019]Oracle Cloudに関する発表色々

現在サンフランシスコで開催されている「Oracle OpenWorld 2019」にて、Oracle Cloudに関する興味深い発表がいくつかありました。

1つ目
[速報]Oracle CloudがSQL ServerやWindows Serverをサポート。Azureとの相互接続も欧州とアジアへ拡大。Oracle OpenWorld 2019 Publickey 2019年9月17日

早ければ来年にも、日本国内でOracle CloudとAzureの相互接続が実現しそうです。先日東京で開催された「Modern Cloud Day Tokyo」でもこれに関して年内になにか発表できれば、という話だったので、正式に発表されるのも意外と近いかもしれません。

Oracle Cloudイベント『Modern Cloud Day Tokyo』が開催されていました  8月 12, 2019

2つ目
[速報]OracleとVMwareが提携。VMware環境でのOracleをサポート開始。「Oracle Cloud VMware Solution」も発表。Oracle OpenWorld 2019 Publickey 2019年9月17日

これはOracleがVMware環境上でのOracle Databaseの動作を正式サポートする、という発表と、Oracle Cloud上でVMware Cloud Foundationを利用したVMware環境を利用できるようにする、という2つの発表です。前者についてはまだサポートしてなかったのかよ!という話ですが、後者は興味深いですね。これでAWS、Azure、GCPに続き、Oracle Cloud環境でもVMwareを利用できるようになります。まだ正式にサービスを開始しているのはAWSくらいですが、このクラウド時代にこれだけ存在感を残しているVMwareは凄いと思います。自社クラウドを捨てた戦略が正しかったのかもしれません。VMware Cloud Foundationを利用したクラウド環境でのVMware利用については、別途記事にしようと思っています。(ずっと思っているけれど、出来ていない...)

3つ目
[速報]Oracle Cloudを期限なく無料で使える「Always Free」発表。1GBのVM2つ、Autonomous Database 2つなど提供。Oracle OpenWorld 2019 Publickey 2019年9月17日

仕事抜きにすると、これが一番興味深いかもしれません。無期限無料でVMが利用できるのはGCPくらいですが、それでも1台でメモリ600MB、ディスク30GBです。AWS,AzureについてはVMの無期限無料枠はありません。そこをメモリ1GBのサーバ2台まで、ディスクも合計100GBを無期限無料枠というのは大盤振る舞いと言えるのではないでしょうか。更に、他のクラウドでは永久無料枠にないRDB(20GB)も2つ利用できます。凄いですね!
ただ、Oracleなのでいつサービスを止めたり仕様を変えたりするかわからない、というリスクは伴います。細かい情報は分からないのですが、利用できるようになったとしても暫くは開発環境にでも使わせて頂ければ、という感じでしょうか。

4つ目
[速報]Oracle Autonomous Linuxリリース。ダウンタイムなしで自律的にパッチ適用、チューニング実行、RHELと100%互換など。Oracle OpenWorld 2019 Publickey 2019年9月17日

Oracleは以前からAutonomous Databaseで運用の自動化を謳っていましたが、今度はOSの運用自動化ツールを提供するようです。なんか凄い気はしますが、OSってユーザが色々弄れてしまうので、本当にどこまでできるのかな?というのが気になるところです。仕事で本番環境にすぐに利用する気は起きないですが、個人的には興味深いですね。コンテナが流行っている状況ではありますが、まだまだサーバOSをそのまま利用している環境はたくさんあります。こういった技術が広がると、サーバOSの位置づけ自体がまた変わるかもしれませんね。

木曜日, 8月 29, 2019

2019年8月23日に発生したAWS東京リージョンの大規模障害について

先週の金曜日(8月23日)にAWS東京リージョンで大規模な障害がありました。まあ、皆さん話題にしていますし、数多くニュースでも取り上げられているので今更感はありますが、忘れないようにこのブログでも触れておきたいと思います。

原因についてはAWSのレポートに纏められていますので、抜粋していきたいと思います。
東京リージョン (AP-NORTHEAST-1) で発生した Amazon EC2 と Amazon EBS の事象概要 AWS
日本時間 2019年8月23日 12:36 より、東京リージョン (AP-NORTHEAST-1) の単一のアベイラビリティゾーンで、オーバーヒートにより一定の割合の EC2 サーバの停止が発生しました。この結果、当該アベイラビリティゾーンの EC2 インスタンスへの影響及び EBS ボリュームのパフォーマンスの劣化が発生しました。このオーバーヒートは、影響を受けたアベイラビリティゾーン中の一部の冗長化された空調設備の管理システム障害が原因です。日本時間 15:21 に冷却装置は復旧し、室温が通常状態に戻り始めました。室温が通常状態に戻ったことで、影響を受けたインスタンスの電源が回復しました。日本時間 18:30 までに影響を受けた EC2 インスタンスと EBS ボリュームの大部分は回復しました。少数の EC2 インスタンスと EBS ボリュームは、電源の喪失と過大な熱量の影響を受けたハードウェアホスト上で動作していました。これらのインスタンスとボリュームの復旧には時間がかかり、一部につきましては基盤のハードウェアの障害によりリタイアが必要でした。 
私に近い環境(変な表現ですが)で障害に気付き出したのは13時半近くだったと記憶しているのですが、障害はその1時間前から発生していたようです。しかし、冷却システムの障害ってまあ聞かないことはないのですが、あまりデータセンタで発生しているのに遭遇したことはないんですよね。電源装置障害はありますが。。。
あくまで推測ですが、超大手のクラウド環境だと冷却システムも高度化していて、逆に障害が発生しやすいのかもしれません。普通のハウジング環境とかだと、単純に冷やしているだけですもんね。

さて、この25日に出たレポートは最後の方でこう締めくくられています。
この度の事象発生時、異なるアベイラビリティゾーンの EC2 インスタンスや EBS ボリュームへの影響はございませんでした。複数のアベイラビリティゾーンでアプリケーションを稼働させていたお客様は、事象発生中も可用性を確保できている状況でした。アプリケーションで最大の可用性を必要とされるお客様には、この複数アベイラビリティゾーンのアーキテクチャに則ってアプリケーションを稼働させることを引き続き推奨します(お客様にとって高可用性に課題を生じ得る全てのアプリケーションのコンポーネントは、この耐障害性を実現する方法の下で稼働させることを強く推奨します)。
これがちょっと違うんじゃない?ということで、色々なところで話題になっていました。ALBを使ってマルチAZ構成にしている環境とか、マルチAZ構成のRDSでも正常に動作しなくなり、長時間復旧できない状態が続いた環境があったからです。つまり、今回の障害はAWS推奨のマルチAZ構成でも可用性を担保できなかったのに、単一AZ障害だったからマルチAZにすれば大丈夫、というレポートはおかしくない?ということです。

それを受けてかは分かりませんが、28日にレポートが更新されます。
2019年8月28日(日本時間)更新:
最初の事象概要で言及した通り、今回のイベントは、東京リージョンの1つのアベイラビリティゾーン(AZ)の一部に影響を与えました。この影響は当該 AZ の Amazon EC2 および Amazon EBS のリソースに対するものですが、基盤としている EC2 インスタンスが影響を受けた場合には、当該 AZ の他のサービス(RDS、 Redshift、 ElastiCache および Workspaces 等)にも影響がありました。お客様と今回のイベントの調査をさらに進めたところ、 個別のケースのいくつかで、複数のアベイラビリティゾーンで稼働していたお客様のアプリケーションにも、予期せぬ影響(例えば、 Application Load Balancer を AWS Web Application Firewall やスティッキーセッションと組み合わせてご利用しているお客様の一部で、想定されるより高い割合でリクエストが Internal Server Error を返す)があったことを AWS では確認しております。AWS では、個別の問題についての詳細な情報を、影響を受けたお客様に直接、共有を行う予定です。
マルチAZ構成でもダメだった環境もあるよ、ということを正式に認めるレポートに変わりました。しかし、マルチAZ構成でも影響を受けたユーザについては個別対応するといった内容になっているため、その他のユーザには詳細はAWSからは公表しないようです。取り敢えず、現時点ではですが。

とは言いつつ、これほど大きな影響が出た障害ですし、シェアを1番持っているサービスなわけですから、今後更なる障害についての情報はどこからか出てくると思います。そして、そのうちAWSから正式に今回の障害を踏まえてのサービス改修や、可用性設計に関するベストプラクティスが出てくるでしょう。それをまた、(言い方は悪いですが)信者たちが喝采するのです。
例えばマイクロソフトがAzureで同じ障害を起こすとそんな味方は出てこないと思うので、このAWS特有のユーザ文化については個人的になんとも言えない気持ちになります。が、AWSは大規模な障害が発生してもそうやって成長してきたので、これがAWSという文化圏なんだ、という理解をしています。それはまあ、それでありなんでしょうね。

なんにせよ、今回障害に遭われた方、AWSの中の方々、お疲れさまでした。
因みに私は障害当日、AWS利用のお客様ではなく、全然違うIaaSを利用されているお客様から「今回のAWS障害を踏まえてどうすれば良いですか?」という質問を頂き、回答にかなり頭を悩ませたことだけ付け加えておきます。「障害発生は完全になくすことはできないので、システムが利用できない場合のオペレーション(コンティンジェンシープラン)を事前にしっかり決めておく、ということは必ず必要ですよね。」といったニュアンスのことを、個別の事情を加味して回答しておきました。。。

関連ニュース
AWS障害、“マルチAZ”なら大丈夫だったのか? インフラエンジニアたちはどう捉えたか、生の声で分かった「実情」  ITmedia 2019年08月28日
AWS障害、複数のアベイラビリティゾーン利用でも影響 AWSが説明を修正 ITmedia 2019年08月29日

月曜日, 8月 12, 2019

Oracle Cloudイベント『Modern Cloud Day Tokyo』が開催されていました

日本オラクル主催のOracle Cloudイベント『Modern Cloud Day Tokyo』が8月6日、7日に開催されていました。私も基調講演等々聞きに行く予定だったのですが、大変残念ながら仕事の都合で参加できなかったんですよね。。。ただ、多少報道されたのと、当日の資料が一部公開されましたので、その内容を踏まえて少しご紹介しておこうと思います。

当日の資料は以下のサイトで公開されています。
Modern Cloud Day Tokyo

今回のイベントでは5月に開設したOracle Cloud東京リージョンを踏まえて、改めてその紹介、他社(AWS,Azureなど)との比較、先行ユーザの取り組みの紹介、といった内容が中心になっていたようです。サービスの紹介はやはり、Oracle Cloud一番の売りであるAutonomous DB関連が多く、後はその他データ分析やAI,チャットボット、そしてネットワーク周りが多い気がします。個人的にはIaaS(VM)の情報が欲しかったのですが、これに関しては価格比較くらいしかないですね。VMのバックアップベストプラクティスや、ロードバランサ周りなどは、改めて紹介するまでもない、もしくは他のサービスと比べて劣るから紹介しない、といった判断でしょうか?

もう一つ、今回のイベントで注目すべき内容がありました。これは、先日発表されたAzureとOracle Cloudとの連携に関する内容です。

このブログでも、発表時に取り上げました。
マイクロソフト、オラクルがMicrosoft AzureとOracle Cloudの相互接続サービスを発表 6月15日

6月に米国で発表して8月なので、今回のイベントでは多少触れるくらいかな、と考えていましたが、注目度が集まると踏んでかそれなりに言及されていたようです。

Oracle Cloud、日本市場攻略の鍵は「データドリブン」と語る TECH.ASCII.jp 2019年08月07日
 今年6月に米国で発表された、Oracle CloudとMicrosoft Azureの提携についても話が及んだ。 
 両社ではデータセンター間の相互接続(現在は北米地域のみ)のほか、両クラウドにおけるActive DirecrotyベースのID連携(シングルサインオン化)、Oracle Cloud上のOracle DBとAzure上のアプリケーションを組み合わせたシステムのサポートなどを推進する。サザーランド氏は、両社によるこの取り組みは「顧客ドリブン、マーケットドリブン」の動きだと説明した。 
 「顧客によっては、アプリケーションをマイクロソフト環境で開発し、それがODBC経由でOracle DBにつながっているというケースもある。それらが現在、AzureやOracle Cloudに移行しつつある。それならば、われわれがそうした動きに対応するのは自然の流れだ」(サザーランド氏)

 またオーバーマイヤー氏は、クラウドベンダー間のパートナーシップは「業界にとっても大切なこと」だと述べ、マイクロソフトとのパートナーシップも「まだ始まりにすぎない。両社の顧客であるエンタープライズのニーズにより最適化していく」方針だと説明した。 
 なお両社のデータセンター間相互接続は、現在のところ北米地域(Oracle Cloudのバージニア州アッシュバーン・データセンターとAzure US East)のみで実現している。オーバーマイヤー氏は、意味のあるかたちで相互接続を行うためにはデータセンター間の通信遅延が小さい、つまり物理的距離が近い必要があり、まずはその要件を満たす北米でスタートしたと説明した。この取り組みは今後グローバルに展開していく計画で、日本においても年内には何らかのアナウンスをしたいと考えているが、検討事項も残っているため「現時点で具体的に確約できることはない」としている。
まあ、どうなるか分かりませんが、年内あたりに発表があることを期待し、待ちましょう。ちなみに、講演資料にも多少記述がありました。
オラクルクラウド移行を完了したゲストに聞くOracle Cloudを選択する理由&次世代インフラ/データベースクラウド最新情報

AzureとOracle Cloudの接続ですが、それぞれの閉域接続サービスを使って接続するという形になるようです。(ExpressRoute、FastConnect)
クラウド管理ポータルからの操作だけで接続できるようになれば、便利ですね!後は遅延がどの程度になるかが気になるところです。

Oracle Cloudに関しては次の2年くらい、つまり20年から21年中頃までにどこまでシェアを拡大できるかが、ポイントになるでしょうね。ただ、Oracle Cloudはデータベース関連の技術以外は特段新しいものがない気がします。価格が安い、という理由だけでシェアを取ると、どこかのタイミングでAWSなどがガッツリ対抗値下げをしてくる気がします。そう考えると、オラクルにとっては主導権を握れない難しい戦いを強いられることになりそうです。

競争があってコストが下がるのは、それはそれでユーザとしてはありがたい話なのですよね。でも、負けたほうが撤退や新規機能への投資をやめてしまうというのは、ユーザにとっては大きなリスクです。そう考えると、やはりクラウドサービスは強いものにユーザが集まり、強いものがますます強くなって行くのではないでしょうか。

日曜日, 7月 14, 2019

日本政府共通プラットフォームにAWSを採用との報道

日本政府の共通プラットフォームにAWSが採用されると報道されています。
[独自記事]政府が共通プラットフォームにAWSを採用へ、来秋稼働 日経 xTECH 2019/07/12
 政府は2020年10月に運用を開始する予定の「政府共通プラットフォーム」に米アマゾン・ウェブ・サービスのクラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」を採用する方針であることが分かった。日経 xTECHの取材に複数の政府関係者が明らかにした。
 政府共通プラットフォームは政府情報システムのプライベートクラウド基盤である。政府は民間クラウドサービスの利用を前提に次期基盤となる「第二期整備計画」を進めており、現行の政府共通プラットフォームに比べて5割超の運用コスト削減を目指す。 
 政府は2018年度から政府共通プラットフォームの整備に向けた入札を実施し、このうち設計・開発などの請負業務の一般競争入札について、アクセンチュアが19年5月に4億7520万円で落札して受託契約を結んだ。政府関係者によると、アクセンチュアはAWSの利用を前提に設計・開発を進めている。
 これまで自治体などの行政機関が個別にAWSなどのクラウドサービスを利用する事例はあったが、政府がAWSを大規模に採用するのは初めてと見られる。
現行の政府共通プラットフォームは2013年から稼働していますから、7年ちょっとで次世代に交代となりますね。元々クラウド化していくと宣言していたので、まあそうなりますよね、くらいの感想ですが、AzureではなくAWSか、という気もします。きっとマイクロソフトのハイタッチも頑張ったんでしょうけどね。今回はAWSに軍配が上がったようです。

米国のみならず国内も政府系システムがメジャークラウドに行く流れですから、まずます民間もメジャークラウドに流れていきそうです。国産クラウドはますます苦しい状況になりそうですね。もう少ししたら、統廃合が進むようになるかもしれません。次の2,3年でまたプラットフォームとしてのクラウドの状況が変化しそうです。目が話せませんね。

土曜日, 6月 15, 2019

マイクロソフト、オラクルがMicrosoft AzureとOracle Cloudの相互接続サービスを発表

先週のニュースですが、マイクロソフトとオラクルがMicrosoft AzureとOracle Cloudを相互に接続して利用できるようにすると発表しました。

マイクロソフトとオラクル Microsoft Azure と Oracle Cloud の相互接続を発表 日本マイクロソフトJapan News Center 2019年6月10日
Microsoft and Oracle to Interconnect Microsoft Azure and Oracle Cloud Oracle Jun 5, 2019

まずは米国(Azureで言うところのUS Eastリージョン)からサービスがスタートし、その後、他のリージョンにも広げていく計画のようです。
両社はクラウドの相互接続に関連して、次の協業を明らかにした。 
  • AzureとOracle Cloudにまたがる統合的なアイデンティティ/アクセス管理(IAM)。これにより、シングルサインオンと、ユーザープロビジョニングの自動化が図れるという。また、Oracleのアプリケーションが、AzureのActive Directoryをアイデンティティプロバイダーとして利用できる機能を、早期プレビューとして提供開始したという。 
  • Oracle Cloudで動作するOracleのデータベース(RAC、Exadata、Autonomous Database)と、Azure上で動くカスタムアプリケーションあるいはOracleのパッケージアプリケーション(JD Edwards EnterpriseOne、E-Business Suite、PeopleSoft、Oracle Retail、Hyperion)の組み合わせに対するサポートの提供。これらのOracleアプリケーションは、Oracle Cloud上のOracleデータベースとの組み合わせを前提としたAzure上での動作について、Azure側から認証されることになるという。
MicrosoftとOracle、AzureとOracle Cloudを相互接続 @IT 2019年06月06日

ということなので、WEB/APサーバ、もしくはAppServiceなどで構築したフロントはAzureに配置、データベースはOracle Cloud内の各DBaaSを利用するという構成がサポートありで作れるようになるわけです。これは一定のニーズがあると思います。相互接続がどのくらいのネットワークになるのか、特にレイテンシーがどうなるかが気になるところではありますが、まずは米国での展開の状況を見つつ、情報収集をしたいと思います。

Oracle Cloudについてはこのブログでも何度か取り上げています。
クラウド環境でOracle Databaseを利用するには
2018-19年クラウド動向所感まとめ
Oracle Cloud日本リージョン開設!&Oracle社に対する不満

Oracle Cloudは他のメジャークラウドと比較するとOracle Databaseくらいしか強みがなかったので、このAzureとの提携は良い判断だとは思います。Oracle側から見るとデータベースも後からAzure側に持っていかれるリスクもあるわけです。しかし、プラットフォームとしてのクラウドについては勝負がつきつつあるので、手遅れになる前に決断をしたのでしょうね。この辺り、米国の企業は凄いですよね。日本企業だとまだ現状維持で行けると判断し、対応を始めた頃には手遅れになっていることが多い気がします。

一方でマイクロソフトは最近自社のサービスのみに囚われないで、サービスの拡充を進めています。
Microsoft、Azure環境上でVMware基盤を構築できる「Azure VMware Solutions」を発表!
今回のOracle Cloudとの提携もその一環でしょう。

Oracleにしてもマイクロソフトにしても、シャアトップのAWSへの対抗策としての提携、という側面も大きいと思います。シェアトップのAWSに2位のマイクロソフトがどこまで追いつけるのか、そこにどれだけOracleが関われるのかというのが今後のクラウドプラットフォームレースの注目ポイントですね。

1点懸念としては、こうなってくるとOracleがOracle CloudのIaaS部分の開発に力を入れなくなると考えられます。(そういうところも決断が早いので。)そのため、日本でも早めに相互接続を実現して欲しいですね!

土曜日, 9月 01, 2018

クラウド環境でOracle Databaseを利用するには

以前、一度IaaS環境でのOracle利用について纏めました。
【クラウドサービス動向その3】IaaS環境上でOracleを利用するには 2016年10月24日

それからかなり時間も立ったので、再度最新の状況について整理しておきたいと思います。

まず前提として、Oracle Database(以下、Oracle)を冗長化された仮想環境で利用することはなかなかハードルが高いです。というのも、Oracleのライセンスカウントは基本的に物理プロセッサにかかるため、冗長化された仮想環境の場合、Oracleがインストールされている仮想マシンが稼働する可能性のある全ての仮想ホスト(物理サーバ/プロセッサ)に対してライセンスの購入が必要になります。

サーバー仮想化ソフトウェア( Oracle VM 、VMware、Hyper-Vなど)を使用した場合のライセンスカウントはどのようになりますか? 日本オラクル 製品価格/ライセンス情報 FAQ
Q.サーバー仮想化ソフトウェア( Oracle VM 、VMware、Hyper-Vなど)を使用した場合のライセンスカウントはどのようになりますか? 
A.VMware、Hyper-VなどはSoft Partitioningの分類となり、Oracle製品がインストールされる(又は稼働する)物理サーバーに搭載されている全ての物理プロセッサがライセンスカウントの対象となります。
※Oracle製品がインストールされる(又は稼働する)仮想マシン(VM)の数は、必要ライセンス数には関係ありません。
 この稼働する可能性のある仮想ホストというのが厄介です。例えば、5台の仮想ホストがそれぞれ2プロセッサ搭載しているとします。この仮想ホスト5台でクラスタを組んだ場合、1台でもOracleをインストールした仮想マシンが配置されると、5台✕2プロセッサ分のライセンスを購入する必要があります。これはSE2の場合で、EEだとコア数で計算するので更に高額になります。ただ、これはまあ分かります。(納得はいきませんが)

では、このOracleライセンス問題があるので、仮想ホスト5台ではなく2台と3台でクラスタ構成にし、仮想ホスト2台の方でOracle仮想マシンを稼働させた場合はどうでしょうか?この場合、2台✕2プロセッサライセンスで良い気がしますよね?ところがどっこい、例えばこの仮想ホスト5台が1セットのストレージで接続されていたりすると、HA以外の方法、例えばVMwareの場合はStorage vmotion等々で移動することできるよね、ということでやはり5台✕2プロセッサ分必要になるのです。ただ、これはOracle側の承認のさじ加減もかなりあるのですが、正直最近はとても厳しいです。段々と主流になりつつあるHCIなどは更に構成が1つとして見なされる可能性が高いと思われます。

ということで、そもそも冗長化された仮想環境でOracleを利用することが難しくなっています。なお、このルールはSoft Partitioning(VMware、Hyper-Vなど)に適用され、、Hard Partitionin(Oracle VM Server、SAN Boot構成など)には適用されません。
Oracle社の俺様ルールな気もしますが、そうなっています。

Soft PartitioningとHard Partitioningの違いは以下の資料をご参照下さい。
Oracle Partitioning Policy

ここまでの説明で、冗長化された仮想基盤の塊であるクラウド環境でOracleを利用することのハードルの高さをご理解頂けたのではないでしょうか。では、ここから本題のクラウド環境でOracleを利用する方法を纏めていきます。
なお、ここで記載している事項は2018年9月1日現在の内容となります。特にライセンスの考え方については変わることがあるので、必ず購入元にご確認をお願いします。

1.Oracleが承認したクラウド環境(AWS、Azure)を利用する

クラウドに関わっている方であればご存知かとは思いますが、超メジャークラウドであるAWSとAzureについてはOracleを仮想マシン上で利用することが可能です。AWSに至っては、DBのマネージドサービスであるRDSでOracleも提供しています。
なぜこの2つのクラウドがOracleを利用することが出来るのかというと、Oracle社が認めているからです。

クラウド・コンピューティング環境における Oracle ソフトウェアのライセンス Oracle
本資料は、以下のベンダーが提供するクラウド・コンピューティング環境に適用されます:
Amazon Web Services  Amazon Elastic Compute Cloud (EC2), Amazon Relational Database Service (RDS)
Microsoft Azure Platform
(以下、これらを「承認されたクラウド環境」と表記します)
本ポリシーは、これらのOracle製品プログラムに適用されます。
承認されたクラウド環境におけるOracleプログラムのライセンス許諾の際には、以下のようにカウントする必要があります。
  •  Amazon EC2 and RDS  ハイパースレッディングが有効の場合 2 vCPU = 1 Processor,ハイパースレッディングが無効の場合 1 vCPU = 1 Processor
  • Microsoft Azure  ハイパースレッディングが有効の場合 2 vCPU = 1 Processor,ハイパースレッディングが無効の場合 1 vCPU = 1 Processor
なお、承認されたクラウド環境において Oracle Processor ライセンスをカウントする場合、Oracle Processor Core Factor Table は適用されません。 
製品名称にStandard Edition One、Standard Edition 2もしくはStandard Editionが付くプログラムが許諾される場合、インスタンスのサイズに基づく価格設定がなされます。承認されたクラウド環境のインスタンスが4 Amazon vCPU以下の場合、もしくは、4 Azure vCPU以下の場合は、1ソケット、すなわち1 Processorとしてカウントされます。承認されたクラウド環境のインスタンスが4 Amazon vCPUもしくは4 Azure vCPUを超える場合は、Amazon vCPU数もしくはAzure vCPU数を4で割り、小数点以下を切上げてソケット数を計算します。
ハイパースレッディングが有効かどうかは、仮想マシンのインスタンスタイプによって異なりますので、確認が必要です。例えば、Azureの場合はDSv2までは無効でしたが、DSv3からハイパースレッディングが有効になりました。

このようにAWS、Azure環境上ではOracleを利用することが可能です。ライセンスの数え方が変わったり、AzureのOracleライセンス込みのイメージが急遽停止になったりなど色々騒ぎになったこともありましたが、現在はこの様になっています。ただ、RACなど一部の機能は利用できないため、大規模なOracle環境、高可用性が必要なOracle環境を動かすのはあまりオススメしません。

2.Oracle Cloudを利用する

Oracle社としての大本命は、Oracle社のクラウドサービスであるOracle Cloud環境でOracleを利用してもらうことでしょう。Oracle Cloud環境ではIaaS上でも勿論Oracleライセンスを持ち込み利用することができますし、Oracleのマネージドサービス(DBaaS)を利用することも可能です。Oracle CloudのDBaaSであるDatabase Cloud Serviceでは、なんとRAC構成も組むことができます(割高ですが)。更に以前このブログでも取り上げましたが、Autonomous Database Cloudという自動化されたOracleも提供されています。

【クラウドサービス動向その5】Oracle Innovation Summit Tokyo 2018に行ってきました①

Oracle Cloudで提供されるDBaaSであれば信頼性もパフォーマンスもでそうなので、大きなDBも動かせると思われます。(まだ大きい構成は触っていないので、思われますという表現ですが。。。)これまでは日本国内では富士通環境で提供されている第1世代のOracle Cloudだけしか利用できませんでしたが、近々Oracle社が提供する第2世代が利用できるリージョンが国内でオープンします。そうなると、Oracleを多く利用しているユーザのクラウド化の向き先が変わるかもしれません。

少し余談ですが、Oracle Cloud IaaS環境でのOracleライセンスの数え方はAWS、Azureとは変わります。

Oracle Processor Core Factor Table 補足資料 Oracle

Oracle Cloud 上で稼働する Oracle ライセンスについて:
Oracle Cloud 上に永久ライセンス、もしくは期限付きライセンスを持ち込み、インストールする場合
例: Oracle Java Cloud Service 上にインストール/稼働する Oracle SOA Suite for Oracle Middleware ライセンス(Oracle Cloud ドキュメント上で認定されたプログラムリスト参照)
Oracle Cloud 上での使用を満たす数量の契約ライセンスが必要です。
具体的には、Processor ライセンスは以下の比率で Oracle Cloud に持ち込むことが可能です。
- 1 Processor ライセンスあたり 2 OCPU 上で当該プログラム使用可能 (1 Processor:2 OCPU)Named User Plus(NUP) ライセンスを Oracle Cloud に持ち込む場合、Cloud でプログラムを使用するために十分な数の NUPライセンスが必要です。つまり、実際のユーザー数か、Processor ごとの最少ユーザー数の、どちらか多い方の数量の NUP ライセンスが必要です。
- 1 Processor あたりの最少ユーザー数が 25 のプログラムの場合、2 OCPU ごとに 25 NUP ライセンスが必要
- 1 Processor あたりの最少ユーザー数が 10 のプログラムの場合、2 OCPU ごとに 10 NUP ライセンスが必要 
契約ライセンス名称に Standard Edition One, Standard Edition 2、もしくは、Standard Edition が含まれる場合(WebCenter Enterprise Capture Standard Edition、Java SE Support, Java SE Advanced、Java SE Suite 各製品を除く) 、 Oracle Compute Units(OCPU)上におけるライセンスは以下比率が適用されます。
- Processor ライセンスはソケットとしてカウントしているとみなし、1 Processor ライセンスあたり 4 OCPU 上で当該プログラム使用可能(1 Processor: 4 OCPU)
1 Sever あたりの最少ユーザー数が 10 NUP ライセンスである Standard Edition 2 の NUP 最少ユーザー数については、a) 実際に使用しているユーザー数 b) 8 OCPU ごとに最少ユーザー数 10 NUP ライセンス のどちらか多い方の数量の NUPライセンスが必要です。また、インスタンスが 8 OCPU を下回る場合も、最少ユーザー数は 10 NUP が必要です。
1OCPU=2vCPU(ハイパースレッディング有効)なので、AWS、Azureの半額ということになりますね。なんかずるい気もしますが、各社自分たちの強みを生かして自社クラウドへの囲い込みを行っている流れなので、仕方がないのかもしれません。

3.Oracle部分だけハウジング、もしくはホスティングにする

最後の方法としてはOracle部分はクラウドではなく、データセンタに置いておく、という作戦です。クラウド環境でOracleを利用するには、というタイトルと反する方法な気もしますが、これはこれで有効な方法です。というのも、国産クラウドの多くはクラウド環境を提供しているデータセンタでハウジングやホスティングも提供しており、構内接続をすることで容易にハイブリッドクラウド環境を利用できるようにしています。勿論、AWS、Azureも専用線接続サービスを提供しているので、ネットワーク通信費用を度外視すればこれらのサービスとの組み合わせでも実現可能です。

Oracle Cloudで大きなDBを構築できるとご紹介したものの、だ新しいサービスであるため、高可用性や高信頼性が求められる環境をいきなり実績のないサービスに移行できるのか、という課題があります。その場合、一旦DBに関しては従来型の物理Oracleでというのも検討する価値はあるかと思います。

ちなみに、Oracleを持ち込むことができないGoogle Cloud Platform(GCP)ですが、アクセンチュアのOracleサービスにGCP環境を接続させることで、Oracleが利用できるようになるよ、というサービスを始めます。これも似た考え方ですよね。

GCPでOracleが実行可能に、Googleが発表した「3つのハイブリッドクラウド」 TECH.ASCII.jp 2018年08月06日

最後になりますが、Oracleがある環境のクラウド化を進める一番わかり易い方法はOracleをやめる、ということなのかもしれません。Oracleは高コストですし、ライセンスの考え方が変わるリスクもありますからね。しかし、DBを変えるのはかなり大変な作業です。特にOracleの場合はたくさんのストアドプロシージャが組み込まれていたりして、簡単に変えられないことも多いかと思います。また、Oracleを利用する前提のパッケージもたくさんあります。そんな環境でも、ぜひクラウドのメリットを享受するため、クラウド化を勧めて頂ければと思いますし、この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。

日曜日, 7月 29, 2018

【クラウドサービス動向その6】Oracle Innovation Summit Tokyo 2018に行ってきました②

Oracle Innovation Summit Tokyo 2018に参加した所感を纏めておきます。

1.Oracle Autonomous Database Cloud
Oracleの最大の強みであり、最も力を入れているOracle Database、そのある意味究極の姿がOracle Autonomous Database Cloudなのかもしれません。まだ、Oracle Database In-Memoryに対応していないなど、機能が不足している部分はありますが、中級DBA程度の自動チューニングというのはなかなか魅力的だと思います。
Oracle Database CloudでRAC構成を取る場合、Extreme Performanceを選択する必要があります。これが結構高くて(月額150千円~)、正直オンプレで構成を組んだほうが全然安いんですよね。でも、Autonomous Database Cloudはそれよりか少し高いくらい(月額168千円~)で利用できるので、AutonomousのAutonomousっぷり次第ですが、お金をかけられるシステムであれば、価値を見出すことはできるかなとは思います。
パッチのオンラインでの自動適用については勝手に当たることがリスクと捉えることもできますが、今の時代適用しないことも大きなリスクなので、どう考えるかですよね。まあ、自分は当てたほうが良いと思う派です。本当にミッションクリティカルな環境を取り扱っている方々には悩ましい問題かとは思いますが。。。

上記で書いたことと逆のことを今度は書きますが、Oracle Databaseを利用しているのは予算をたくさん使えるシステムだけではありません。自分はコストを抑えられるStandard Editionの環境(月額24千円~)に関わることが多いのですが、そういったところにAutonomous技術の恩恵が受けれないのは残念な気もします。例えばどの程度やってくれるのかわかりませんが、Azure Database Serviceも自動チューニング機能がありますし、今後自律機能は商用Database、クラウドDatabase Serviceにとって当たり前の機能になっていく気がします。今後、Oracle Database Cloud Service自体がどうなっていくのか、気になるとことです。

2.Enterprise Cloud
Enterprise Cloudといっても、NTTコムのクラウドサービスのことではありません。企業向けのクラウド、という意味合いです。
今回参加したセッションの中で「我々はエンタープライズを知っている。エンタープライズに対応できるクラウドを提供できるのは我々だけだ。」というメッセージが何度か出てきました。これはまあ、AWSやGCPを意識しての発言ですね。
Oracleは実際、長く企業の基幹システムで利用されてきましたし、実際オンプレ環境で多くのOracle Databaseが稼働しています。なので、エンタープライズを知っているというのは、その通りでしょう。
実際Oracle Cloudは企業向け工夫を幾つかしています。例えば、月額定額の課金体系を用意していたり、ディスクもIOPSについては課金されなかったり、インターネット向けのネットワーク通信も10TB/月間まで無料です。まあ、日本企業の商習慣もあっている良い作戦だと思います。
でもこれって、国内クラウドがAWS、Azure、GCPに対抗するためにやっていることと、全く同じなんですよね。Oracle Cloudの国内リージョンが開設されたとき(近々開設されると思いますが)、国内クラウド陣営はより一層厳しい戦いを強いられるようになると思います。

3.富士通の存在
今回びっくりしたのは、全く富士通の存在感がなかったことです。一応スポンサーにはなっているんですけどね。富士通は富士通センター内にOracle Cloud環境を用意し、既にサービス提供を行っています。

国内データセンターからオラクルのパブリッククラウドサービスを提供開始、エンタープライズ・システムのクラウド化を推進 2017年4月20日 富士通株式会社

その後、2018年2月14日にOracleは独自に国内リージョンを開設すると発表しました。

 Oracle Cloudは、2016年から富士通の国内データセンターからも提供されてきた。新設データセンターと富士通データセンターそれぞれの位置付けについてオーバーマイヤー氏は、「新設データセンターは日本市場の顧客からの期待に応え開設するもの」と繰り返したうえで、「今後も(富士通と)協力しながら両立していくことは間違いない」と語った。

「Oracle Cloud」日本国内へのデータセンター新設計画を発表 2018年02月15日 ASCII.jp

Oracleのパートナーは富士通以外にもたくさん存在するわけで、Oracleのクラウド拡大戦略を考慮すれば独自国内リージョン開設は当然の流れではあります。今後富士通センターのOracle Cloudの位置付けがどうなるのか気になるところですが、まだ決まっていない、といったところでしょうか。富士通自身もクラウド全体の見直しを行ったばかりですし、まだまだ検討中なのかもしれません。
でも流石にOracle Cloud国内リージョン開設までには発表されると思いますので、動向に引き続き注目しておきたいと思います。

土曜日, 7月 28, 2018

【クラウドサービス動向その5】Oracle Innovation Summit Tokyo 2018に行ってきました①

久しぶりの投稿です。

最近はクラウド関連の仕事しかしていないのですが、その関連?ということで「Oracle Innovation Summit Tokyo 2018」に行ってきました。Oracle Cloudとはなっていませんが、基本的にOracle Cloudについてのイベントとなっていました。

Oracle Innovation Summit Tokyo 2018

基調講演を聞いたので、ちょっと纏めておきます。

【シッダールタ・アガルワル氏】
ちょっと言いにくい名前のアガルワル氏はOracle Cloud全体の話をしてくれました。特にAutonomous関連の話が多かったですが、チャットボットなども簡単に作れるよ、というデモがありました。デモはチャットボットの動作です。
どこまでOracle Cloudの機能でどの程度作り込みが必要なのかが分からなかったので、なんとも言えませんが、自分がイメージしているOracleっぽくないサービスの紹介だったので、面白かったですね。あとデモは英語だったので、日本語対応などはどうなるのでしょうか。
あとはAutonomousの話で、レガシーシステムをRPAを入れて自動化に組み込んだという海外事例の話がありました。Oracleの言っているAutonomousはクラウドサービスだけでなくて、ビジネスプロセス全体の自動化だよ、ということですよね。

【マリア・コルガン氏】
コルガン氏はひたすらAutonomous Database Cloudの話でした。まあ、Oracleの一番の売りですし、今回はこの話が聞きたかったので参加したみたいなところもあります。
AWS、Azure、なぜかMariaDB、PostgreSQLまで持ち出して、他のサービスとの優位性を話していました。こうやって躊躇なく競合他社と比較してくるのがOracleっぽいですよね。

【ローレント・ジル氏】
ジル氏は5ヶ月前にOracleに起業した会社を買収され、Oracleに参加したそうです。ジル氏の話はすべてOracle Cloud Infrastructure(OCI)に関連するものでした。AWSもAzureもGCPも良いものだからどうぞ使ってください、でもOracle Cloudも良いので使ってみてください。という自分的にはOracleらしからぬスタンスのセッションだったという印象です。スーツではなく、Tシャツでしたし。話の半分が既に国内に存在しているEdge Servicesについてでしたが、OCI自体もVery Very Very Soonに国内で提供されるとのことです。
実際にパフォーマンステスト結果などのスライドもありましたが、日本リージョンでのテスト結果とのことでしたので、まあ年内とかに開設されるんでしょう。

午後のセッションもいくつか聞いてきました。Oracleと繋がりの強いSIerは既に色々検証しているようで、その率直な感想が面白かったです。第一世代は酷かったよとか。使ってるんだけど(笑)
あとはNTTデータ先端技術のセッションは色々面白かったですね。AWSから人材を引き抜いているから、AWSのデザインパターンが適用できるという話もためになりました。

ちょっと長くなったので、一旦ここまでで区切っておきます。