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水曜日, 3月 20, 2024

VTOL型固定翼ドローン関連記事メモ

 VTOL型固定翼ドローン関連で気になる記事が2つ出ていたので、メモです。

1つ目

記事としては少し古いのですが、以前このブログでも取り上げた空解のドローンを利用した、ドローン物流の実証実験の記事となっています。

以前のこのブログでの記事はこちら

このニュースのポイントは以下の3つです。
1.佐渡⇔新潟間の56kmという比較的長距離を輸送
2.2026年に定期運用したいという目標がある
3.現段階では「1便あたり1.5~3万円を目指す」という具体的な価格設定の話が出ている

取り敢えずやってみました!という感じの実証実験だけではなく、実際に事業として成り立つかを本格的に検討し、目標設定をしていることが分かります。まだまだ課題はありますが、ドローン物流の社会実装も近づいてきた感がありますね!

2つ目

こちらはタイトルまんまなのですが、航続距離1000kmのドローンの量産化を目指す、というのが凄いですね。2025年から量産化を行う計画とのことです。

以前のこのブログでは取り上げませんでしたが、テラ・ラボもVTOL型固定翼ドローンで有名でしたね。

しかし、1000kmというと、東京都心部から小笠原諸島の父島までの距離です。凄いです!ただ、じゃあ小笠原諸島への物資運搬に使えるのか?というと恐らくそれはなかなか難しくて、実際には災害時の空撮、遭難者の捜索支援、海上、海岸線の監視、などに活躍しそうな気がしますね!


両方とも遠くない未来の話なので、また先の楽しみが増えた感じです!

月曜日, 2月 12, 2024

実用化への準備が進む川崎重工製無人ヘリ「K-RACER」

 このブログでも何度か取り上げている川崎重工無人ヘリ「K-RACER」ですが、実用化に向けた実証実験が進んでいるようです。

以前取り上げたこのブログの記事はこちら

川崎重工の無人ヘリK-RACERは飛び立てるのか?

川崎重工の無人ヘリK-RACERと類似する航空機を比較してみる


現在最新の「K-RACER-X2」はペイロード200kgと国産無人航空機(ヘリ・ドローンタイプ)としては最大級のサイズです。


実証実験は「K-RACER-X1」の時から実施している長野県伊那市で昨年秋に実施されたようです。

無人ヘリコプターの実証機「K-RACER-X2」 国内最大となる200kgの貨物搭載能力を実証 川崎重工 2024年01月12日

川崎重工、無人VTOL実証機「K-RACER-X2」の飛行試験およびデモ飛行を実施。ペイロード200kgの大型物流ドローン DRONE 2023年11月14日


更に今年1月には自衛隊での実証実験も実施しています。

自衛隊、川崎重工の無人ヘリコプター「K-RACER-X2」の実証実験動画を公開 DRONE 2024年2月11日



このように実証実験は着々と進んでいるようですね。民需だけでも採算が取れるようにという話ではあった気がしますが、はやり防衛費が増えていることもあり自衛隊向けの活用も進みそうです。

今年元旦の地震でも改めて迅速な空輸での支援物資展開、また観測などが重要であることが改めて認識されました。こういった用途には無人ドローン、ヘリの活用が欠かせませんので、いち早く実用化されることを期待しています。

実用化にあたっては制度の問題が大きいと考えられます。このあたり、政治主導で国交省などがスムーズに動けるようにして欲しいですね。安全第一ではありますが、無人機に関しては飛ぶ場所を選べばコストなどとのバランスをみることができると考えています。

日曜日, 7月 09, 2023

eVTOL開発の国内ベンチャー企業「HIEN Aero Technologies」

 以前「eTVOLの主なメーカー」という記事を書き、国内ベンチャーを含めeVTOLのメーカーを紹介しました。国内企業でeVTOLの有人テスト飛行を成功し、販売を計画しているのは、今のところSkyDriveteTra aviationの2社です。なお、teTra aviationは現在一人乗りのeVTOLのみとなっています。
一方で、まだ有人テスト飛行までたどり着いてはいませんが、eVTOLの開発を進めている国内のベンチャー企業はいくつかあります。今回はそのうちの1社である「HIEN Aero Technologies」を取り上げたいと思います。

正式名称は「HIEN Aero Technologies株式会社」で、2021年に設立した東京都小金井市に拠点を持つ新しい企業です。法政大学初のベンチャー企業で、同社の代表取締役である御法川学氏は法政大学理工学部機械工学科の教授でもあります。法政大学って、こういう学科もあるんですね。

同社が開発を進めているeVTOLは以下の特徴があります。
  • バッテリーのみではなく、ガスタービン発電を利用したシリーズハイブリッド方式とすることで長い航続距離を確保する
  • マルチコプタータイプではなく、リフト&クルーズタイプ
この2つの特徴はホンダが進めているeVTOLと同じなんですよね。しかも、同社は最終的にHIEN 6という6人乗りのeVTOLを2030年に市場投入することを目標としていますが、このスケジュール感もホンダのeVTOLの計画と同じです。ただ、ホンダの場合は2025年に事業化するか判断、となっているため、まだどうなるかは分かりません。
ちなみに、2030年にeVTOLの市場投入を目指しているベンチャーはもう1社神戸のスカイリンクテクノロジーズがあります。こちらも同じハイブリッド方式ですが、タイプはベクトル推進(ティルトローター機)です。

今回HIEN Aero Technologiesを取り上げたのは、いつの間にかホームページがリニューアルされ、今後の開発する機体、マイルストーンが明確に公表されているからです。今後開発が予定されている機体について、紹介します。

ガスタービンハイブリッド長距離大型UAV
  • 寸法:5000 x 3200 x 900 mm
  • 最大離陸重量:90kg
  • ペイロード:25kg
  • 最大速度:180km/h以上
  • 飛行時間:60分程度
  • 航続距離:150km以上
  • 給電能力:20kWh
  • 燃料:灯油(Jet-A1 / B)
  • デリバリー目標:2023年?
こちらは有人のeVTOLではなく、VTOL型固定翼ドローンとなります。昨年開催された「Japan Drone 2022」では2023年4月にデリバリー予定、とされていましたが、まだデリバリー開始とはなっていなそうなので、現時点で開発中、という感じでしょうか。

先日本ブログで「VTOL型固定翼ドローンのメーカー及びモデル」という記事を書きましたが、ペイロード25kgというのは以前の記事で取り上げたどのドローンよりもペイロードを持っており、航続距離150km以上、最大速度180km/h以上とマルチコプター型、バッテリー式のドローンよりも高い性能を持つため、製品化したらそれなりに活躍の場がありそうです。最大離陸重量90kgというのも所謂ドローンの範囲(150kg未満)に収まっているので、そこも良いですね。

2人乗りパーソナルeVTOL
  • 寸法:6000 x 9000 x 2500 mm
  • 最大離陸重量:600kg
  • ペイロード:150kg
  • 最大速度:180km/h以上
  • 航続距離:180km以上
  • 給電能力:50kWh
  • 燃料:灯油(Jet-A1 / B)
  • デモフライト目標:2025年
HIEN Dr-Oneの次は2人乗りの有人eVOLです。仕組みなどはほぼ変わらず、人が乗れるくらい大型化した、という感じですね。こちらは2025年の大阪万博でのデモフライトを目標に設定しています。あと2年しかありませんので、頑張って無人でデモフライト、という感じでしょうか。
こちらのモデルは正式に型式証明を取得して製品化を目指す、というよりも、後述する6人乗り開発のためのステップ、という位置づけだと考えられます。ただ、「川崎重工の無人ヘリK-RACERは飛び立てるのか?」でも取り上げていますが、最大離陸重量600kg以下の無人航空機向けに新たな型式証明の制度が制定されそうなので、これを無人機として活用する、というのも手かもしれません。

6人乗りコマーシャルeVTOL
  • 寸法:10000 x 16000 x 3200 mm
  • 最大離陸重量:2000kg
  • ペイロード:500kg
  • 最大速度:180km/h以上
  • 航続距離:180km以上
  • 給電能力:400kWh
  • 燃料:灯油(Jet-A1 / B)
  • デリバリー目標:2030年
HIEN Aero Technologiesが最終的に目標としているのが、このHIEN 6のデリバリーです。これはHIEN 2を更に大型化し、6人乗りとしたモデルです。最高速度、航続距離は一旦HIEN 2と同じ記載になっていますが、少なくとも航続距離はもっと長くすることを目標にしていると考えられます。もうすぐFAAの型式証明を取得しそうな「Joby Aviation S4」がバッテリーのみで5人乗り航続距離が240km程度なので、流石にそれは超えないと、という感じです。

コンセプトのeVTOL
  • 寸法:?
  • 最大離陸重量:?
  • ペイロード:1000kg
  • 最大速度:?
  • 航続距離:?
  • 給電能力:?
  • 燃料:灯油(Jet-A1 / B)
最後はコンセプトeVTOLです。結構eVTOLのベンチャー企業はこのようなコンセプトを提示しており、その企業の方向性が分かります。例えば国内で最もデリバリー開始に近いeVTOLベンチャーであるSKYDRIVEのコンセプトeVTOL「SD-XX CONCEPT」は2人乗りとなっています。これは多くの場所で離着陸可能な小型eVTOLを提供していく、というSKYDRIVE社の方針を感じさせますね。一方でこの「HIEN X」はペイロード1トン、10人乗りということで、より大型なeVTOLを開発、提供していく、という方針を感じさせます。個人的にはある程度のペイロードが必要なのでは?と思っている方なので、良いと思います!

ということで、今回はeVTOL開発に取り組むHIEN Aero Technologies社を紹介しました。ヘリコプター、固定翼機とも航空機は新規参入が難しく、世界的にも企業数が多くない業界です。特に日本はメーカーとして存在感はあまりありません。一方でeVTOLは新しいジャンルの航空機なので、これから恐らくこれから2030年代半ばにかけて様々なモデルが登場し、その後メーカーが統廃合されていくと予想されます(航空機メーカーの歴史的に)。1社でも多くの国内ベンチャーに有人eVTOLのリリースまでたどり着いて欲しいと思っているので、HIEN Aero Technologies社にも頑張って頂きたいと思います!大阪万博でデモフライトをするようであれば、ぜひ見に行きたいですね。

最後に、HIEN Aero Technologies社のPVです。

月曜日, 7月 03, 2023

VTOL型固定翼ドローンのメーカー及びモデル

 今回はVTOL型固定翼ドローン(垂直離着陸型固定翼ドローン)を開発、販売しているメーカー4社と代表モデルを紹介したいと思います。VTOL型固定翼ドローンというのは、ドローンと聞いてすぐに思い浮かべるマルチコプター型のドローンではなく、旅客機のように固定翼が付いている&垂直離着陸も出来る、いいとこ取りのドローンのことです。形としてはeVTOLのリフト&クルーズ型が多い気がしますね。

2015年に設立されたソニーとZMPの合弁会社です。主に産業用ドローンの開発、サービス提供を行っています。エアロセンスが開発しているドローンにはマルチコプター機が多いですが、VTOL型固定翼機も1機種あります。

  • 外形寸法:2150 x 1235 x 415 mm (プロペラ含まず)
  • 動力:バッテリーのみ
  • 最大離陸重量:11kg
  • 最大ペイロード重量:1kg
  • 航続距離:50km
  • 航続時間:40分
  • 最大速度:100km/h
  • 巡航速度:65km/h
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:500万円〜


代表的な国産VTOL型固定翼ドローンと呼んで良いモデルです。マルチコプター機と比較すると、バッテリーだけでも長距離、長時間飛行できることがVTOL型固定翼機の特徴です。
エアロボウイングはエアロセンス自体が出自がしっかりしている会社からか、多くの国、自治体の検証プロジェクトで活用されているイメージがあります。最大離陸重量は11kgとなっているので、最大離陸重量25kg未満のクラスですね。

以下はエアロセンス社のニュースリリースですが、ここ半年だけでも多くの発表をしています。

このように測量や空輸の検証事業などで活躍しているエアロボウイングですが、流石にペイロード1kgと小型なこともあり、大型モデルの開発が進められています。そして、この開発は経済安全保障重要技術育成プログラムに採択されています。

2年後を目標に開発する次期大型VTOL機のスペックは以下のようになっています。
  • 全幅:4500mm
  • ペイロード:10kg
  • 飛行時間:90分以上

サイズ感は2倍になり、ペイロードと飛行時間が伸びた、という感じですね。飛行時間90分以上ということなので、恐らくバッテリーのみではなく動力にエンジンを利用するのではないかと思います。

空解はラジコン飛行機エアロバティック競技のトップパイロット&エンジニアが2021年に設立した異色の、そして非常に新しい企業です。ただ、ラジコン飛行機は20年以上取り組んできたということで、他のドローンと比較してもかなり高性能なモデルを開発しています。

  • 全長: 1475mm
  • 全幅: 2100mm
  • 動力:バッテリーのみ
  • 最大離陸重量:不明
  • 重量: 2580g (バッテリー無)
  • 最大ペイロード重量:2.5kg (航続時間40分)
  • 航続距離:120km
  • 航続時間:120分
  • 最大速度:120km/h
  • 巡航速度:不明
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:不明


  • 全長: 2480mm
  • 全幅: 3500mm
  • 動力:バッテリーのみ/エンジン利用
  • 最大離陸重量:不明
  • 重量: 12kg (バッテリー無)
  • 最大ペイロード重量:10kg
  • 航続距離:400km(バッテリーのみの場合は120km)
  • 航続時間:350分
  • 最大速度:150km/h 
  • 巡航速度:不明
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:不明
これらは先日開催されたJapan Drone 2023(6/26-28)でも紹介されていたモデルです。(私は本展示会に行けていませんが😢)これらのモデルの特徴はともかく本体が軽いことです。バッテリー込みの重量、最大離陸重量が分からなかったのですが、これまでドローンのスペックはそれなりに見てきましたものの、ここまで軽いのはあまりないのでは?と思います。厳しい制限がある競技ラジコン飛行機のノウハウをもとに開発された、ということでしょう。
QUKAI FUSION®️ 2.4が最大離陸重量25kg未満、QUKAI MEGA FUSION®️ 3.5が最大離陸重量25kg以上150kg未満のクラスになると推測されます。どのくらいの高度を飛行する想定なのかも気になるところです。

ここまででお気づきになるかと思いますが、エアロセンスが次期大型VTOL機のスペックとして公開しているスペックを実はQUKAI MEGA FUSION®️ 3.5は既に達成してしまっているんですよね。実際には飛行高度や天候の話もあるようなのでそちらの達成度合いが不明なところではありますが、ドローン単体として重要なペイロードと飛行時間は達成済みです。まあ、高性能なモデルが多くあることは悪いことではありません。エアロセンス側には開発を進めていただき、空解側にはどんどん実証飛行を進めて行って頂ければと思います。もっと自治体を巻き込んだ方が良い気がしますね。航続距離も長いので、伊豆諸島で実証実験しましょうと東京都などを巻き込むのも良い気がします!東京都は予算があるし😁

いや、自分で書いておいて何ですが、東京都に売り込むのはとても良い気がしますね。以前書いた「東京愛らんどシャトル路線から考える無人航空機に必要な航続距離」で距離をまとめましたが、QUKAI MEGA FUSION 3.5であれば伊豆諸島の全ての島に既に荷物を届けることが可能な航続距離を保有しています。なんなら23区内から最も遠い青ヶ島も360km程度の距離なので、既に到達可能なんです。そして、QUKAI MEGA FUSION 3.5を改造して搭載燃料を増やし、ペイロードを減らせばもしかしたら小笠原諸島まで到達することも可能かもしれません。小笠原諸島の父島は基本的に空路はなく、海路も週1本の船だけです。本当に困った場合は自衛隊が活躍しますが、例えペイロードが1kgでも民間のドローンで空輸できるようになれば、薬などを発送から10時間以内程度で届けることが可能となり、利便性が向上するのではないでしょうか?
ということで勝手なことを書きますと、まず伊豆諸島の島々、特にヘリ便しかない島へのドローン配送に取り組み、実績を積みます。その結果を踏まえ、小笠原諸島向けの機体を開発(衛星通信でのコントロール、夜間飛行、長距離対応などなど)し、初の1000km規模のドローン配送を実現する(2-3年後)、というプランで東京都に企画を持ち込むのは如何でしょうか?😁

2021年創業の会社ですが、2021年の実証実験に関するニュースリリースが3件ほどありました。


WingcopterVTOL型固定翼ドローンを開発、製造するドイツ企業です。2021年にANAと業務提携、2022年に伊藤忠商事とパートナーシップ契約を行い、日本国内でもWingcopter製のドローンが実証実験に使われる様になっています。

  • 外形寸法:167cm x 198cm x 66cm
  • 動力:バッテリーのみ
  • 最大離陸重量:25kg
  • 最大ペイロード重量:最大5kg
  • 航続距離:110km(ペイロードなし)、75km(5kg)
  • 航続時間:不明
  • 最大速度:144km/h
  • 巡航速度:100km/h
  • 最大高度:5000メートル
  • 価格:不明


ドイツだけでなく、米国、そして日本など広く実証実験に利用されているモデルです。本モデルの特徴ですが、3つの荷物を別々の場所に落とすことができる機能があること、そして他のモデルと比較すると耐風性能が15m/s(突風20m/s)と比較的高くなっていることが挙げられます。一般的に耐風性能は10m/sとかですもんね。

最近だとこんなこともやっています。

何というか、グローバルで実績も多く手堅いモデルという感じですね。日本国内でも第一種型式認証を取得する、という記事もありました。固定翼を持つドローンで第一種型式認証取得しているものはなかったと思いますが、米国FAAの方でも認証を取るとのことなので、FAA側で先に認証が出れば国内の認証もスムーズに出る気がします。FAAがOKを出して、国交省がNGを出すことはないでしょう。

次世代機というかは微妙ですが、動力に水素を利用した航続距離が長いモデルの開発も進められているそうです。

最後はドローンメーカーではなく、日本国内でクジラなどの海棲哺乳類の研究、調査を行っている日本鯨類研究所です。日本鯨類研究所は従来目視で行ってきた調査にドローンを活用するため、独自のドローンの開発を進めています。そして開発されたドローンが先日開催されたJapan Drone 2023で展示されていたようです。

  • 全長:1.9m
  • 翼長:3.3m
  • 動力:モーター(バッテリー&水素)
  • 本体重量:21.3 kg
  • 最大ペイロード重量:不明
  • 航続距離:200km(ペイロード10kg時)
  • 航続時間:不明
  • 最大速度:不明
  • 巡航速度:不明
  • 最大高度:不明
  • 価格:不明


こちらは既に実績のある「飛鳥 改五」の改良版で、バッテリーのみから燃料電池方式を採用、航続距離を100kmから200kmに航続距離を長くする計画です。
※動画は「飛鳥 改五」の紹介動画となります。

まとめ
最後に簡単にまとめですが、やはりVTOL型固定翼ドローンはマルチコプター型のドローンと比較すると、開発しているメーカー、そしてモデルが非常に少ないですね。ただ、マルチコプター型と比べると航続距離、飛行時間が長いため、例えば捜索、測量や長距離配送には固定翼ドローンの方が向いている気がします。一方で基本的に静止していることが多い鉄塔やトンネルなどの構造物の点検、撮影位置があまり動かない上空からの撮影、短距離配送についてはマルチコプター型の方が向いている気がします。このあたりは有人のeVTOLと同じ感じですね。
有人のeVTOLと同じというように考えると、やはりネックになるのは構造の複雑性や価格がマルチコプター型と比較し、高価になってしまう、といった点でしょうか。ただ、今後ドローン向けの型式認証取得が進むようであれば、認証取得にそもそもコストが多くかかため、特に第一種型式認証取得ドローンモデルなどでは価格差(割合)は減るかもしれません。

もう1つ、スキャンイーグルのようなカタパルト発射式や滑走路が必要な固定翼タイプのドローンとの比較があります。これらのタイプと比較した場合、VTOL型固定翼ドローンはなんといっても垂直離着陸ができることが大きな強みです。陸上自衛隊はスキャンイーグルを導入していますが、絶対にVTOL型固定翼ドローンの方が便利だと思いますね。もちろん、現行のモデルでは飛行時間まだまだ敵いませんが、開発できない話ではないと思うので資金投入して欲しいところです。
有人のeVTOLではマルチコプター型で開発すると発表したベンチャーがかなりの数いましたが、結局は固定翼有りで開発しているところが多いです。一方で無人ドローンの場合はマルチコプター型であれば比較すぐに飛ばせるレベルに持っていけるため、実際出しているメーカーは多いです。が、社会実装という意味合いでは、目視外飛行ありの高度な用途の領域ではVTOL型固定翼型が4~5割程度、マルチコプター型が5~6割程度に落ち着くのかもしれません。

水曜日, 6月 28, 2023

三菱重工の中型ドローン

本日まで開催している「Japan Drone 2023」で展示されている、三菱重工のドローンが記事になっていました。

展示されているドローンは以前本ブログでも取り上げた2機種です。

本ブログでは大きい方のドローンを大型ドローンと表記したのですが、今回の記事、というか三菱重工の表示上は中型ドローンだそうです。ペイロードが200Kgということは、恐らく最大離陸重量は400~600kgなので、中型と言うには大きい気がしますが。。。まあ、人が乗れるサイズのeVTOLもドローンと言えばドローンなので、そちらを大型とするなら中型なのかもしれません。国交省などが早めに区分の呼称を決めて欲しいですね。

気になるスペックですが、公開されている情報は以下のとおりです。

三菱重工 中型ドローン
  • 動力:バッテリーのみ/ハイブリッドタイプ
  • 最大離陸重量:不明
  • 最大ペイロード重量:200kg
  • 航続距離:不明
  • 航続時間:2時間(ハイブリッドタイプ)
  • 巡航速度:60km/h(最大90km/h)
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:不明(開発中)
航続距離は不明ですが、巡航速度が60km/hで航続時間が2時間程度なので、航続距離は100km程度でしょうか。そうなってくると、川崎重工が開発している無人ヘリ「K-RACER-X2」とかなり似たスペックとなります。

K-RACER-X2
  • 動力:エンジン
  • 最大離陸重量:650kg
  • 最大ペイロード重量:200kg
  • 航続距離:100km程度
  • 巡航速度:不明
  • ホバリング限界高度:3,100m
  • 価格:不明(開発中)
想定用途が山岳部の物資輸送、トラックで現地まで運べる、というところまで同じです😁ヘリコプター型とマルチコプター型という大きな違いはありますが、ここまで同じにしなくても、という感じですね。恐らく新しい最大離陸重量600kgまでの無人航空機の認証制度を想定して設計すると、同じ感じになるのだとは思います。

なお、K-RACER-X2については何度か本ブログでも取り上げていますが、類似する航空機との比較なども行っています。

日経クロステックの記事の方に以下の記載があります。
実運用に向けた認証取得のハードルは高そうだ。この機体は通常のドローン(無人航空機)ではなく、より多くの積載量をより遠くへ運ぶ「無操縦者航空機」という新しいカテゴリーとして開発しているため、現状では有人航空機と同様、「型式証明」の取得が必要になる。「現在、国土交通省で詳細を検討しており、その動向を注視している」(三菱重工の説明員)としている。
ここで国交省で詳細を検討しており、というのがまさに川崎重工がK-RACERの型式認証について国交省と進めているやつですね。会議議事録を見る限り、23年度内に制度整備目標となっているので、もうしばらくかかりそうです。
詳細は以下の記事をご参照下さい。

川崎重工はK-RACERを利用した山岳部での物資運送サービスを2026年に開始したい、としています。一方で現時点では三菱重工の方は特にそういった目標はまだ公開されていませんし、ドローンのみ他社に提供するのか、それとも自社でサービスを始めるのかも分かりません。ただ、日本を代表する重工2社がこういう無人機を開発している、というのは今後の無人航空機市場の拡大を予感させますね。

火曜日, 6月 13, 2023

川崎重工が無人航空機の災害時活用のテストを開始

 川崎重工が和歌山県の南紀白浜空港を拠点に災害時の被害確認などのテストを目的に、無人航空機の飛行試験を11月から開始するとの報道がありました。

無人航空機の災害活用へ実験 南紀白浜空港と川崎重工 日本経済新聞 2023年6月12日

11月から月4回程度のペースで平日の昼間に約4時間飛行させ、4年間はテストを行うとのことです。このあたりは南海トラフ地震が発生するとされており、更に南紀白浜空港は標高が約90mもあり津波などによる浸水リスクがほぼないということで、確かに拠点にするならここだ!という感じですね。


で、気になる無人航空機のモデルについてはイメージ画像と「縦10メートル、横16メートル」というサイズ感の情報しかありません。画像とサイズ感を見ると、イスラエルのIAIが開発したヘロンではないかと思うのですが、どうでしょうか?

ヘロンのスペックは以下のとおりです。(Wikipediaより引用)

  • 全長:8.5m
  • 全幅:16.6m
  • 最大離陸重量:1,250kg
  • エンジン:ロータックス914 レシプロエンジン(115馬力)×1
  • 最大速度:222km/h
  • 運用高度:9,144m+
  • 航続時間:40時間+
  • ペイロード:250kg

サイズ感もほぼ同じですし、外見もそっくりです。

ちなみに、航空自衛隊が導入したRQ-4B グローバルホークは全長:13.52m、全幅:35.42m、海上保安庁が導入したRA MQ-9B シーガーディアンは全長:11m、全幅:20mと今回報道されている無人航空機のサイズよりも大きくなっています。

自衛隊に配備されている無人航空機のスペック

イスラエル製のヘロンはアメリカ製のグローバルホーク、シーガーディアンと比較すると安価で、性能も悪くないということでドイツ、カナダ、インド、韓国など様々な国で導入されている偵察用無人航空機です。今回は災害対応という名目ではありますが、偵察用の無人航空機はたくさん飛ばしてなんぼ、なところもありますので、今後の自衛隊、海上保安庁への導入に向けたファーストステップ、という位置づけかもしれませんね。


ただ、川崎重工には自社開発の無人航空機も頑張って貰いたいですよね。哨戒機や早期警戒機がなくなるわけではないとは思うものの、段々と無人機に役割の比重が移っていきそうです。そうなったときに無人航空機は全て外国製です、というのは悲しいですし、安全保障上の問題になります。陸上自衛隊に配備されているスキャンイーグルと同様のものは恐らくすでにフジ・インバック社が頑張ってそうですし、更には東南アジアに進出しようとしています。

防衛省に納入した「無人機」、フジ・インバックが東南アジアに拡販 日刊工業新聞 2023年6月10日

川崎重工や三菱重工、SUBARUなどの既存の防衛用航空機産業を担っている各社には、より大型の無人航空機に取り組んで頂ければと思います。無人戦闘機のテスト機は作ってましたけどね。

金曜日, 6月 09, 2023

ドローン型式認証申請・取得状況(2023年6月時点)

 先日、ドローンのレベル3、レベル4の飛行について纏めました。

無人航空機(ドローン)のレベル3、レベル4飛行について

これらの飛行を行うドローン機種にはレベルに応じて第一種型式認証、第二種型式認証を取得する必要がありますが、その取得状況について纏めておきます。

なお、拾い漏れの情報がある可能性はありますので、その旨ご了承下さい。

【第一種型式認証】

ACSL式PF2-CAT3型

  • 概要:目視外・補助者なし貨物輸送用小型ドローン(レベル4飛行用)
  • 型式認証取得日:2023年3月13日
  • 製造元:ACSL
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:9.8kg
  • 最大ペイロード重量:1.0kg
  • 最大航続距離:不明
  • 最大航続時間:20分(最低離陸重量時)/17.5分(最大離陸重量時)
  • 最高速度:10m/s(36km/h)
  • ホバリング限界高度:不明
  • 補助安全装置:日本化薬社製パラシュート搭載
  • 価格:不明

イームズ式E600-100型 ※開発中

  • 概要:目視外・補助者なし貨物輸送用ドローン(レベル4飛行用)
  • 型式認証取得日:申請中
  • 製造元:イームズロボティクス
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:24.9kg
  • 最大ペイロード重量:5.0kg
  • 最大航続距離:不明
  • 最大航続時間:20分(最大離陸重量時)
  • 最高速度:15m/s(54km/h)
  • ホバリング限界高度:150m
  • 補助安全装置:不明
  • 価格:不明(開発中)

【第二種型式認証】

  • 概要:目視外・補助者なし貨物輸送用ドローン(レベル3飛行用)
  • 型式認証取得日:申請中
  • 製造元:イームズロボティクス
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:24.9kg?
  • 最大ペイロード重量:10kg
  • 最大航続距離:不明
  • 最大航続時間:17分
  • 最高速度:約80km/h
  • ホバリング限界高度:150m
  • 補助安全装置:不明
  • 価格:不明(開発中)
  • ※スペックはベースとなっているE6150MPのものを記載

Airpeak S1 ※型式認証申請中
  • 概要:目視外・空撮用ドローン(レベル3飛行用)
  • 型式認証取得日:申請中
  • 製造元:SONY
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:7.5kg
  • 最大ペイロード重量:約2.5kg
  • 最大航続距離:15km
  • 最大航続時間:約30分(ペイロード無し時)/約17分(最大ペイロード時)
  • 最高速度:25m/s(90km/h)※ペイロード無し、障害物ブレーキ無効時
  • ホバリング限界高度:不明
  • 補助安全装置:不明
  • 価格:110万円 ※現行価格(型式認証取得後、変更の可能性あり)

木曜日, 6月 08, 2023

東京愛らんどシャトル路線から考える無人航空機に必要な航続距離

ここ数回、無人ヘリ、大型ドローンを始めとする無人航空機を取り上げています。川崎重工の無人ヘリK-RACERがその代表例ですが、このモデルは現在山岳地帯での荷物輸送を想定して開発が進められています。一方で、日本は島国ですので離島が数多くあります。こういった離島向けに物流サービスを提供するにはどの程度の航続距離が必要なのかを少し考えてみたいと思います。

離島と言っても様々な地域に様々な島があるのですが、ここでは一旦東京都の伊豆諸島をベースに考えてみます。伊豆諸島は空港がある島もあるのですが、ヘリポートのみの島も多くあります。これらの島を毎日ヘリコプターで運行しているのが、東京愛らんどシャトルです。

東京愛らんどシャトルの1日の運行路線は以下のとおりです。

  • 八丈島→青ヶ島
  • 青ヶ島→八丈島
  • 八丈島→御蔵島
  • 御蔵島→三宅島
  • 三宅島→大 島
  • 大 島→利 島
  • 利 島→大 島
  • 大 島→三宅島
  • 三宅島→御蔵島
  • 御蔵島→八丈島
こちらをベースに各路線の飛行距離を確認してみます。
そうすると、以下のようになります。

  • 八丈島→青ヶ島:70km
  • 八丈島→御蔵島:88km
  • 御蔵島→三宅島:24km
  • 三宅島→大 島:78km
  • 大 島→利 島:26km
片道100kmを超えることはない、という感じですね。ということで、航続距離が100kmあれば対応できそうな気もします。ただ、八丈島や大島、三宅島のように空港があり、ある程度設備が整っている島であれば良いのですが、それ以外はヘリポートのみなので、恐らく燃料補給が難しいと考えます。そうなると、100kmを往復できる航続距離200kmは必要になるのではないでしょうか。そうなると、現在開発中のK-RACERを始めとして、無人航空機は航続距離100kmのものが多いので、足りないですね。

最大離陸重量150kg未満の大型ドローンで最近話題になるペイロード50kg/航続距離50kmではないですが、K-RACERなど最大離陸重量600kg程度の無人航空機はペイロード200kg/航続距離200kmを目指せると思うんですよね。例えば有人ヘリではありますが小型ヘリのRobinson R22は最大離陸重量600kg強ですが、ペイロード233kg/航続距離324kmです。無人機になると遠隔操作用の装置やセンサー、カメラなどを搭載する必要があるため、その分本体重量が重くなるなどの課題はあります。しかし、1975年から販売が開始されているR22と比較すると技術も進んでいるわけなので、なんとかなる気がするんですけどね。

なお、離島は伊豆諸島以外にも数多くあります。例えば長崎の五島列島や瀬戸内海の島々です。これらの島々の中にはもっと距離が近いものもありますので、そういったところには航続距離100kmで十分かもしれません。航空機、特に費用対効果を求められるK-RACERのような無人航空機については、あまりオーバースペックになってもダメですし、一方でスペックが足りないのももっとダメです。将来を見越した正確な利用用途(ターゲット)の設定、これが腕の見せどころになるのかもしれません。

脱線しますが、参考で他の色々な島への距離を紹介しておきます。

東京都内→父島:986km
小笠原諸島の父島へは現在、船舶(おがさわら丸)で24時間かけて行く方法しかありません。都内からだと約1000km離れており、更に空港もありません。以前より空港の計画はあるのですが、なかなか実現しませんね。eVTOLなどの垂直離着陸機が普及すれば、と思わなくもないですが、航続距離1000kmはなかなかハードルが高そうです。民間向けオスプレイことAW609を就航させる、という話(案)もあるようです。

沖縄本島→波照間島:453km
沖縄本島→石垣島:400km
石垣島についてはすでに空路もあるのですが、~500km程度の距離なのでハイブリット方式のeVTOLが実用化されると、新たな旅客、無人機での空輸が行われるかもしれません。特に魅力的な観光地ですので、ニーズはありそうです。

石垣島→尖閣諸島:172km
こちらは民間のニーズではないのですが、防衛のニーズが高まっている地域です。石垣島を拠点にして尖閣諸島まで作戦行動範囲とするためには少なくとも500km程度の航続距離が必要だと考えますので、無人ヘリよりもハイブリット方式のeVTOLの方が活躍しそうです。小規模&迅速に補給するニーズはあると思うんですよね。

水曜日, 6月 07, 2023

三菱重工のドローン

 最近、川崎重工の無人ヘリK-RACERを本ブログで何度か取り上げましたが、三菱重工のドローンに関する記事が出ていました。

三菱重工が型式認証を視野に入れたドローンを開発!超大型機も登場か ドローンジャーナル 2023年6月7日

副題が「民間航空機関連事業で培った安全性・品質保証の知見を応用」というのがなんともですね。

国内重工メーカーでは川崎重工が無人ヘリのK-RACER、IHIは大型ドローンのi-Gryphonとそれぞれヘリコプター、マルチコプタータイプの無人航空機を開発中ですが、3大重工メーカーの中でも最大手の三菱重工でも、ドローン開発が進んでいるようです。

記事内には2つのドローンが登場します。

1つ目は、シングルローター型のドローン(ヘリコプタータイプ)で、これは国内ドローンベンチャーのプロドローンと共同開発しているやつですね。駆動はエンジンとバッテリーの2つを選択可能です。なお、プロドローンだとPDH-GS120という製品名になります。このモデルは最大離陸重量は30kgと小型ですが、エンジン駆動の場合、最大速度90km/h、巡航速度60km/hで2時間飛行できるので、恐らく航続距離は100km程度となかなかのスペックのものです。ヤマハ発動機の大型無人ヘリであるFAZER R G2と比較するとペイロードはもちろん敵いませんが、速度と(恐らく)航続距離は勝っているので少量の荷物の輸送、記事にあるような点検、監視業務などはこちらの方がメリットがありそうです。(小型な分、燃料も少なくて済みますし。)

ちなみに、この無人ヘリは今年の3月に開催された「DSEI Japan」で三菱重工が展示していた無人艦船を母艦にした無人ヘリによく似ており、バッテリータイプのモデルが展示されていました。やはり艦船上だと安全性の問題からガソリンの利用は難しいのかもしれません。全て無人化しようとしているので、燃料補給の自動化も課題になりそうですし。

三菱重工が沿岸監視の無人母艦、無人航空機/潜水艇を搭載 日経クロステック/日経エレクトロニクス 2023.03.28

次に、記事内に登場する2つ目のドローンは大型のドローンです。スペックの詳細は書かれていないのですが、最大積載量200kgでモーターとエンジンを組み合わせたハイブリッドタイプの場合、航続時間は約2時間だそうです。川崎重工の無人ヘリK-RACERとスペックが近く、最大離陸重量150kg以上となるのでドローンの枠組みからは外れます。

3トントラックに載せることができるとのことで、これも4トントラックに載せることができるK-RACERと似ています。ただ、スタンスですが、記事内に以下のコメントがあります。

この機体は、ドローンでなく無操縦者航空機として開発されており、航空機と同じ区分になる。ドローンであればレベル4飛行の運用を目指すため、「型式認証」を取得するところだが、無操縦者航空機は有人航空機が取得する「型式証明」の取得が必要となる。ドローンの型式認証に比べ、民間旅客機等が取得する型式証明は、アメリカ連邦航空局(FAA)や欧州航空安全機関・欧州航空安全庁(EASA)の世界的な基準に準拠する必要があり、ハードルが高く、多くのノウハウも必要とされる。

 同事業部の間畠 真嗣 氏は「このようなタイプの機体は新しいため、現時点では証明取得に高いハードルが待ち構えていると思いますが、今後も同じような機体が登場すると予測されていますので、世界的な基準の動向を見つつ、社会実装の機会を探っていきます。都市部での利用は証明取得のハードルが高いため、まずは人の少ない山間部や海上から運用を始め、実績を重ねながら発展できればと考えています」と語った。

ということで、型式認証取得については様子見のようです。国交省などに積極的に動くようアプローチをしている川崎重工と比べると、かなり消極的なコメントにも聞こえますが、まあK-RACER側の型式認証が進んだら2番手として流れに乗ってくる気がしますね。記事内にある「民間航空機開発で培った安全性・品質保証・認証取得のノウハウを応用し〜」ということで、実際航空機開発メンバーが多数所属しているのであれば、三菱重工こそ積極的に開発を進めれば良いのに、という気もします。まあ一度痛い目を見ているので、仕方がない部分もあるのかもしれません。


ということで、まだ詳細は分かりませんが、K-RACERのライバルがすでに国内にいることが分かりました。どちらも開発中の機体であり、実際に世の中に出てくるかは分かりませんが、あと2-3年後もすると少なくとも近しいものは社会実装されていくと思うので、楽しみにしています!

火曜日, 6月 06, 2023

川崎重工の無人ヘリK-RACERと類似する航空機を比較してみる

 先日以下の記事を書きました。

川崎重工の無人ヘリK-RACERは飛び立てるのか?

K-RACERは今後の展開は色々と考えられそうですが、まずは山岳地帯の物資輸送を目的として開発が進められています。このジャンル自体がニッチなのでそこまでの競合は現れなさそうではありますが、類似する航空機にどのようなものがあるのか、また違いは何かが気になったので、比較してみたいと思います。


まずは、川崎重工が進める無人機、K-RACER-X2です。

K-RACER-X2

  • 概要:川崎重工が開発中の無人ヘリ/2026年に量産予定
  • 製造元:川崎重工(川崎重工業航空宇宙システムカンパニー)
  • 動力:エンジン
  • 最大離陸重量:650kg
  • 最大ペイロード重量:200kg
  • 航続距離:100km程度
  • 巡航速度:不明
  • ホバリング限界高度:3,100m
  • 価格:不明(開発中)

K-RACER-X1からペイロードが増加し、200kgとなりました。ちなみに現在はK-RACER-X2ですが、量産機はK-RACER-X3とか4とかになったりするのでしょうか。この無人ヘリのポイントは最大離陸重量が600kg程度、ペイロードが200kg、航続距離が100km程度の3つです。この3つと類似するモデルを比較していきます。


eVTOLとの比較

ペイロードが200kgというと、ちょうどeVTOLの2人乗りくらいにあたります。そこで、まずは現在開発が進められている2名乗りのeVTOLと比較しています。このクラスのeVTOLはマルチローター機が多いので、ヘリコプターと性能は似たものになりそうです。またこのクラスのeVTOLは物流用途にも発展する計画がすでにあります。

K-RACERと比較した場合のeVTOLのメリットとデメリットを比較してみたいと思います。

メリット

  • eVTOL自体が有人航空機として型式認証を取得するため、飛行に制限がない(K-RACERは恐らく無人地帯のみなどの制限がかかる)
  • eVTOL自体の市場が大きくなると考えられ、出荷台数が多くなる見込み。そのため、K-RACERと比較し、機体単価を抑えることができると考えられる。

デメリット

  • 無人飛行について法整備、許可が出るのは恐らく2030年代(K-RACERは2026年のサービス開始を目指している)。
  • 基本的にバッテリー稼働なので航続距離が短く、充電のために電力が必要だが山岳部で電力を確保する(特に高速充電装置)ことが難しい。

具体的な機種(モデル)を上げてみます。

EH216(Logistic)

  • 概要:EHang開発のeVOLT「EH216」の物流輸送用版
  • 製造元:億航智能(EHang)
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:不明
  • 最大ペイロード重量:250kg
  • 航続距離:30km ※設計飛行距離
  • 最高速度:130km/h
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:約4,800万円

2人乗りのeVTOLであるEH216は実用化に向けて最も進んでいるeVTOLの1つです。実際、日本国内でも何度もテスト飛行しています。ただし中国メーカーということで、米国、欧州の航空当局が型式認証をスムーズに出すかが課題になりそうです。課題はあるものの、他社のモデルと比較すると圧倒的なコストパフォーマンスなので、エントリー機として、特に安全性にある程度妥協できる物流用途では普及しそうな気がします。

SkyDrive式SD-05型

  • 概要:国内ベンチャーSkyDriveが開発する2人乗りeVTOL
  • 製造元:SkyDrive
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:不明
  • 最大ペイロード重量:不明(2名)
  • 航続距離:10km
  • 最高速度:100km/h
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:2億円

国内ベンチャーSkyDriveが開発中のeVTOLです。2025年の大阪万博での飛行を予定していますが、現時点で開発状況がよく分からないので間に合うのか?というのと、海外製と比較しコスト、航続距離に課題があると考えられるモデルです。今のところ物流用としてのリリースはありませんが、人を運ぶ用途だけだと広がりが限られるので、無事開発が進んだ暁には物流用途も発表されると予想しています。

VoloDrone

  • 概要:ドイツのeVTOLベンチャーが開発する輸送用大型ドローン
  • 製造元:Volocopter
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:不明
  • 最大ペイロード重量:200kg
  • 航続距離:40km?
  • 最高速度:110km/h
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:不明
ドイツVolocopter社が開発する物流用大型ドローンです。同社が開発する2人乗りeVTOLのVoloCityは2025年の大阪万博で飛行予定ですが、そのVoloCityとほぼ同じで物流用なのがこのVoloDroneです。限界高度が2000mという情報もあったのですが、そちらが正しければ山岳地帯での物流は難しいかもしれないですね。

ここまでK-RACERと同じ程度の性能を持つeVTOLを纏めてみました。eVTOL自体がまだ開発中で仕様が確定していない部分も多いため、実際の開発完了時にどのようなスペックで世の中にリリースされるかはまだ分かりません。ただ、これらはやはり規模の強みが出そうではあります。K-RACERがこういった出自がeVTOLベースの搬送用航空機に負けないようにするには、eVTOLの無人飛行がスタートする2030年代より前に商用の無人飛行を成功させ、多くの事例を生み出しシェアを獲得できるかにかかっていると考えます。

有人ヘリとの比較
K-RACER自体が無人ヘリなので有人機と比較するのも少し変なのですが、同等サイズの有人ヘリがあるので比較してみます。

Robinson R22
  • 概要:ロビンソン・ヘリコプターが開発する小型ヘリコプター
  • 製造元:ロビンソン・ヘリコプター
  • 動力:エンジン
  • 最大離陸重量:1370Ib(622Kg)
  • 最大ペイロード重量:515lbs(233kg) ※乗員数2
  • 航続距離:324km
  • 最高速度:83kt(153.7km/h)
  • ホバリング限界高度:14,000f(4,267m)
  • 価格:4,500万円

Robinson R44
  • 概要:R22を拡大型として開発されたヘリコプター
  • 製造元:ロビンソン・ヘリコプター
  • 動力:エンジン
  • 最大離陸重量:2,400lbs(1088Kg)
  • 最大ペイロード重量:958lbs(434kg) ※乗員数4
  • 航続距離:621km
  • 最高速度:204 km/h
  • ホバリング限界高度:14,000f(4,267m)
  • 価格:6,400万円
両方ともロビンソン・ヘリコプター製の小型ヘリ(レプシロ単発)です。比較してみるとR22の方がほぼK-RACERと同等の最大離陸重量、ペイロードとなっています。そして、航続距離は長いと。もちろんこちらは有人機でパイロットが必要となりますので、単純な比較はできません。ただ機体価格を見てしまうと、R22やR44を改造して無人飛行ができるようにする、というアプローチの方がコストメリットがあるのでは?という気もしてきますね。(実際、米軍では既存航空機の自律飛行を実現するための技術開発が進んでいるようです。)川崎重工はヘリコプターメーカーでもありますので、ヘリ本体を自社開発して技術力を維持するということも非常に重要です。そういった意味では、K-RACER開発自体の意義は非常に大きいですよね。多少失敗してもMitsubishi SpaceJetと比べればかすり傷みたいなものですし、しっかりと取り組んで欲しいと思います。

大型ドローンとの比較
ドローンも大型化し、最大離陸重量が150kg以上を超えると航空機扱いになってしまいます。そのため現在、最大離陸重量が150kg未満の無人航空機がいくつか開発されています。そのあたりは以下の記事に纏めていますので、ご参照下さい。

最大離陸重量が150kg未満となると、ペイロードは頑張って50kg程度になります。ペイロード50kg、航続距離50kmを空飛ぶ軽トラと呼んだりするようですが、そのあたりの性能がドローンとしての枠組みの限界となります。もちろんペイロードを減らして航続距離を伸ばすアプローチもありますし、そういうニーズもあると思うのですが、そうなってくるとマルチコプターやヘリコプタータイプではなく、固定翼機タイプの方がメリットが多そうです。
ここではマルチローター機やヘリコプタータイプの無人航空機をいくつかご紹介します。

  • 概要:ヤマハ発動機の大型無人ヘリ
  • 製造元:ヤマハ発動機
  • 動力:エンジン(レギュラーエンジン)
  • 最大離陸重量:110g(120kgのモデル有)
  • 最大ペイロード重量:33kg(50kgのモデル有)
  • 航続距離:90km
  • 最高速度:72km/h
  • ホバリング限界高度:2,800m
  • 価格:不明(レンタル/業務委託のみ 2017年4月〜)
ヤマハ発動機はかなり以前より農業用などの無人ヘリを世に出しているパイオニア的な存在です。そのヤマハ発動機が出している最大サイズの無人ヘリがこのシリーズです。価格は不明なのですが、前モデルのFAZER R G1で1億3千万円~という価格だったので、こちらもかなり良い値段だと推測されます。K-RACER-X2の予定仕様と比較すると航続距離、高度は同等だけれど、ペイロードがかなり減る、ということになります。従ってK-RACERとは物流用途ではあまり競合しませんが、例えば測量など荷物を運ぶ以外の用途では競合となり得るモデルです。

  • 概要:ロケット開発などを手掛けるIHIエアロスペースが開発中の大型ドローン
  • 製造元:IHIエアロスペース
  • 動力:エンジン(ハイオクガソリン)
  • 最大離陸重量:149kg
  • 最大ペイロード重量:47kg
  • 航続距離:50km
  • 巡航速度:60km/h
  • ホバリング限界高度:3000m
  • 価格:不明(開発中)
IHIが開発中の大型ドローンです。まさにペイロード50kg/航続距離50kmという性能で、K-RACERをこじんまりさせた性能となっています。ただ、ドローンの枠にギリギリ入るモデルなので、K-RACERと比較した場合、価格的なメリットが出る可能性があります。

  • 概要:会沢高圧コンクリートが開発した大型ドローン
  • 製造元:アラセ・アイザワ・アエロスパシアル合同会社
  • 動力:エンジン
  • 最大離陸重量:310kg
  • 最大ペイロード重量:150kg(積載量+燃料重量で200kg以下)
  • 航続距離:不明(ペイロードなし:航続時間6時間以上/ペイロード150kg:航続時間2時間以上)
  • 巡航速度:不明
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:不明(開発中)
先程から最大離陸重量150kg未満、と説明していますが、それを無視したドローンもあります。それが会沢高圧コンクリートという土木系企業が開発した大型ドローン「AZ-1000」です。元々、最大離陸重量150kg未満のAZ-500というモデルを開発していたのですが、更に大型のモデルを作ってみました、という代物です。建設現場などでの利用を想定していると思われますが、型式認証とかどうするんだろう?と思うところです。まあ、その辺を気にしなければ、とても面白い機体ですよね。楽しく作ってます、という雰囲気を感じます。なお、性能的にはK-RACERとかなり近い気がしますね。実用化までこぎ着けることができれば、ですが。(K-RACERもまだ開発中ですけど。)
ちなみにですが、この機体のエンジンを開発したのはスズキのバイク「隼」のエンジンを開発された方だそうです。K-RACER もエンジンにカワサキのバイク「Ninja H2R」のエンジンを流用していますし、バイクのエンジンは軽くてハイパワーなので航空機のエンジンに通じるものがあるのかもしれませんね。

さて、ここまで色々と比較をしてみましたが、有人ヘリは置いておいて、eVTOL系と大型ドローン系はまだまだ開発中のものが多いですね。やはり実用化が早いものがシェアを取っていく気がします。K-RACERを含め様々なモデルが2020年代後半に実用化予定となっていますので、引き続き注目していきたいと思います。

月曜日, 6月 05, 2023

無人航空機(ドローン)のレベル3、レベル4飛行について

 先日以下の記事を書いたのですが、

無人ドローン レベル4飛行向け型式認証

一度現在の無人航空機の制度について整理しておきたいと思います。


まず、2022年12月5日に無人航空機の新制度が始まりました。詳細は国土交通省が作成しているポータルサイトで解説されています。

無人航空機レベル4飛行ポータルサイト


現在、ドローンの飛行レベルは4つに別れています。

レベル1:目視内での操縦飛行(有人地帯は条件あり)/空撮・橋梁点検など

レベル2:目視内での自律飛行(有人地帯は条件あり)/農薬散布・土木測量など

レベル3:無人地帯での目視外飛行/無人地域での荷物配送など

レベル4:有人地帯での目視外飛行/荷物配送・建設現場の測量など

※レベル1、2は有人地帯の飛行は禁止されていませんが、第三者が立ち入らないように「立入管理措置」を講じる必要があるため、実質第三者の上空を飛ばすことはできません。


まず前提として、現在100g以上の重さの無人航空機は国土交通省に登録しないと飛ばすことができません。

無人航空機登録ポータルサイト

そして更に特定飛行に該当する飛行を実施する場合は許可が必要になるのですが、機体認証を行うことで許可不要で飛行できる場合があります。

まず、特定飛行とは何か?という話なのですが、これは飛行レベル3,4にあたる目視外飛行や、夜間飛行などいくつかの条件に当てはまる飛行となります。飛行カテゴリごとにカテゴリーⅠ、Ⅱ、Ⅲと分類され、カテゴリーⅠは申請不要ですが、カテゴリーⅡ、Ⅲは申請が必要、または機体認証を取得しておく必要があります。こちらについては判断フロー図が公開されています。

飛行カテゴリー決定のフロー図

で、機体認証には第一種機体認証と第二種機体認証があります。レベル4飛行を行う場合は第一種機体認証を受けた無人航空機を一等無人航空機操縦士の資格を持つ人が飛行させる必要がある、という制度になっています。レベル3飛行の場合は単純に第二種機体認証があれば必ず許可不要、とはならなそうなのが少しややこしいところですね。

型式認証と機体認証についてですが、機体ごとに必要な認証が機体認証で、その機体の機種(モデル)が型式認証を持っていれば、機体認証を一部省略できますよ、という仕組みです。一般的には第一種機体認証を取る機種であれば、第一種型式認証を取得済みのモデルから選ぶよ、となると考えられます。


ここまで現在のドローンに関する制度を簡単に纏めました。制度化はされたものの、まだまだ普及に向けての道のりは長そうですね。そもそも物流ドローン、警備用ドローンなどは人手不足解消も目的の1つとなっていますが、そのドローンを1機飛ばすために高度な資格を持つ人材が必要になってしまうのであれば、あまり意味がありません。今後1操縦士で複数機を飛ばす技術開発なども進みそうではありますが、飛行ルートをある程度固定化できる場合は、完全自律飛行を認める必要があるのではないでしょうか?一方で、測量や災害時の活用などについては操縦士ありきで良いと思います。

日曜日, 6月 04, 2023

自衛隊に配備されている無人航空機のスペック

 以前より報道されていますが、自衛隊に現在配備されている戦闘ヘリ、観測ヘリ、救難捜索機などが無人機に置き換わる計画となっています。

空自捜索機や陸自戦闘ヘリを廃止、無人機で代替へ…防衛予算効率化 読売新聞 2022/12/09


輸送用ヘリはもちろん残るので、自衛隊からヘリコプターが全てなくなるわけでは有りません。ただ、前線に出る有人のヘリはなくなりますし、更に遭難や監視系の固定翼機についても無人機に置き換わりそうです。

この置き換えはこれから進んでいくものですので、置き換わり先の無人機がすべて決定しているわけではありません。ただ、すでにいくつか導入済みの無人機もあります。今回はそちらを整理してみましょう。

スキャンイーグル2

陸上自衛隊が導入している無人偵察機がスキャンイーグル2です。以下のスペックはWikipediaからの引用です。(無印スキャンイーグルの性能かも)

  • 全長:1.55m(電子光学センサー装備時)
  • 全幅:3.11m
  • 自重:13.1kg
  • 最大離陸重量:22kg
  • エンジン:3W 2サイクル単気筒エンジン(1.5馬力)×1
  • 最大速度:148km/h
  • 上昇限度:5,944m(最大)/4,572m(常用)
  • 航続時間:24時間+
  • ペイロード:3.4kg
  • 価格:1機あたり2億5000万円

RQ-4B グローバルホーク

航空自衛隊が2021年より導入を開始した無人航空機がRQ-4 グローバルホークです。正確にはブロック30なのですが、実はこの機種はアメリカ空軍では2022年に全機退役し、後継機が稼働しています。3機導入されています。以下のスペックはWikipediaからの引用です。(RQ-4Aの仕様なので、大型化されたRQ-4Bはもう少し性能が良い可能性があります。)

  • 全長:13.52m
  • 全幅:35.42m
  • 全高:4.64m
  • 空虚重量:6,710kg
  • 最大離陸重量:12,111kg
  • ペイロード:907.2kg
  • エンジン:ロールスロイス製AE3007Hターボファン×1
  • エンジン推力:37kN
  • 巡航速度:343kt
  • 実用上昇限度:19,800m
  • フェリー航続距離: 22,779 km
  • 滞空時間:36時間
  • 価格:3機で386億円億円(1機あたり128億円)

RA MQ-9B シーガーディアン

自衛隊ではなく海上保安庁が導入した無人航空機。現在3機体制で運用されています。海上保安庁ではシーガーディアンで取得した情報を自衛隊にも連携しています。以下のスペックはWikipediaからの引用です。(シーガーディアンの元になったMQ-9 リーパーのスペックと思われる。)

  • 製作: ジェネラル・アトミックス
  • 操縦員(遠隔操作): 2名(パイロット1名、センサー員1名)
  • エンジン: ハネウェル TPE331-10Tターボプロップエンジン、出力950 SHP(712 kW)
  • 最大燃料搭載量: 1,815 kg (4,000 lb)
  • 長さ: 11 m (36 ft)
  • 翼幅: 20 m (66 ft)
  • 空虚重量: 2,223 kg (4,900 lb)
  • 最大離陸重量: 4,760 kg (10,500 lb)
  • 最高高度: 15,200m (50,000 ft)
  • 運用高度: 7,600m (25,000 ft)
  • 滞空時間: 14〜28時間
  • 航続距離: 5,926 km (3,200 nmi, 3,682 mi)
  • ペイロード: 3,750 lb (1,700 kg)
  • ハードポイント:6つ
  • 最高速度: 482 km/h (300 mph, 260 knots)
  • 巡航速度: 276-313 km/h (172-195 mph, 150-170 knots)
  • レーダー: AN/APY-8 Lynx II
  • センサー: MTS-B
  • 価格:1332万5,000USドル(海上保安庁は諸々40億円の契約)


ざっと書き出してみましたが、グローバルホークとシーガーディアンの価格差が結構ありますね。両方ともかなりの価格ですが、それでも有人機に比べると安いのかもしれません。ずっと飛べますし。

スキャンイーグルを導入している陸上自衛隊については今後国産無人機メーカーのフジ・インバック製無人機の導入が予定されています。

国防需要を狙う「固定翼型無人機」、滞空40時間を目指す ニュースイッチ 2022年06月03日


日本は島国ですので、監視すべき海域、海岸沿いは非常に多いです。大型の無人機はコストの問題で数を揃えることが難しいので、ある程度の性能の小型機で数を揃え、常に各海域を監視しているくらいが良いのではないかと思います。(操縦士を増やす必要などの課題はありますが、そこは自律飛行の技術を駆使して頂ければと。)その方が海難事故などの初動対応の迅速化にも繋がりますし。そこにはフジ・インバックの無人機をぜひ活用して欲しいですね。もちろん、大型機や攻撃用無人機の方も国産化を図って欲しいと思います。無人機が増える分、国産の有人機が減るわけですし。今後の海上保安庁、自衛隊の導入無人航空機に注目ですね。

金曜日, 6月 02, 2023

無人ドローン レベル4飛行向け型式認証

 ちょうど昨日以下の記事を書いたのですが、

川崎重工の無人ヘリK-RACERは飛び立てるのか?

本日、無人ドローンのレベル4飛行向けの型式認定に関する記事がでました。

日本初のレベル4飛行を実現したACSLの型式認証プロジェクト ドローンジャーナル 2023年6月1日


無人航空機の飛行レベルはレベル1~4に分かれているのですが、レベル1,2が目視内飛行で、3からが目視外飛行となります。レベル3と4の違いは3は無人地域のみ可能で、4は有人地域(住宅地の上など)の飛行となります。従来レベル4は禁止されていましたが、2022年12月5日より解禁となりました。ただし、レベル4飛行を行うためには「第一種型式認証・第一種機体認証」が必要となります。正確にはドローン利用者が行う機体認証だけでも良いのですが、ドローンメーカーが型式認証を取得することで、機体認証の項目が省略される仕組みになっているため、実質的にはドローンメーカー側での型式認証が必須となっています。


そして、現時点でこのレベル4飛行のための型式認証を受けているのはACSL製のACSL式PF2-CAT3型のみとなります。

ACSL、日本初、レベル4対応の無人航空機の第一種型式認証書を国土交通省より取得 ACSL 2023.03.13

航空機の型式認定と比べてしまうとあれですが、ドローン開発としてはかなり大変そうですね。今回は費用が10億円程度かかったそうです。1000台出る機種であれば1台あたり100万円となりますが、100台しか売れなかれば1000万円となりドローンとしてはかなり高額にせざる得なくなります。そう考えると今後もレベル4対応のドローンは数から多くても十数機種ほどしかでなさそうですね。小規模ベンチャーではおいそれと手を出すことは難しそうです。

もう1つ気になるのは今回のモデルはバッテリーのみで稼働するタイプですが、空飛ぶ軽トラとも呼ばれるペイロード50kgで航続距離50km対応のモデルだとエンジン稼働のモデルになってきます。そうした場合、求められる安全基準がより高くなるため開発費用が更に高額になりそうです。まあ、元々大型のモデルは5000万円~数億レベルの価格になってきそうなので、10億+α程度のコスト感であれば大丈夫、となる可能性もあります。

川崎重工の無人ヘリK-RACERも型式認定が10億円くらいでできれば良し、という感じでしょうが、あちらはサイズ感が全く違うので難しいかもしれません。いや、有人地域を基本飛ばない想定なので、もしくは。今後の大型無人航空機の動向に引き続き注目ですね。

川崎重工の無人ヘリK-RACERは飛び立てるのか?

 最近は無人ドローンを物流に利用しようとする検証などが進んでいますが、無人ドローンの場合、最大離陸重量が150kg未満&運べる荷物(ペイロード)が50kg未満の機種が利用される場合が多いです。これはこのブログでも以前取り上げましたが、最大離陸重量が150kgを超えると無人機でも航空機扱いとなり、耐空証明などが必要で商用利用可能な機種を開発するハードルが一気に上るためです。

無人航空機(ドローンなど)の重量に関する制限事項

一方で、この最大離陸重量が150kg未満、という制限を超える無人機も開発中ではあります。それが川崎重工が開発する無人ヘリK-RACERです。この機体は200kgの荷物を運ぶことができます。

川重が無人ヘリに「Ninja H2R」のモンスターエンジン、山小屋に200kg 日経XTECH 2022.08.12

川崎重工としてはK-RACERを利用した物資運搬サービスを2026年に開始したいとしています。ただ、前述の通り航空機扱いになるので、ハードルが高い耐空証明が必要となります。この認定プロセスをなんとかならないか、という議論が規制改革推進会議が設置したスタートアップ・イノベーションWGで行われていました。

まず、第4回スタートアップ・イノベーションWG(令和4年11月29日)で課題定義され、

第4回 スタートアップ・イノベーションワーキング・グループ  議事次第

その後、第12回スタートアップ・イノベーションWG(令和5年4月21日)でフォローアップが行われています。

第12回 スタートアップ・イノベーションワーキング・グループ  議事次第

それぞれ議事録も公開されています。両方読みましたが、結構面白いです。

ざっくりまとめると、以下のような要望です。

  • 川崎重工としては無人ヘリを利用した山岳地域向けの輸送サービスを始めたい
  • 有人ヘリパイロット高齢化による人手不足解消のために必要なサービスである
  • ただ、市場規模は50億円程度である
  • 数百億円程度かかる航空機向け耐空証明取得が必要になると、事業として成り立たない
  • 従来の耐空証明取得は有人であることを前提にしているため、条件を緩和できないか
  • 無人なので墜落しても乗員が死亡/負傷することもないし、山岳地域だけしか飛ばないので墜落時の重大事故リスクも少ない(山火事等のリスクはある)

一方で国土交通省側も飛行するのであれば安全確認は必要であるというスタンスは崩しておらず、現時点では以下のようになっています。

  • EASA(欧州航空安全機関)が出している最大離陸重量が600kg未満の無人機に対する規制緩和案(まだ確定していない)などを参考に、必要な基準を国土交通省航空局と川崎重工で調整 ※K-RACERの最大離陸重量は650kgだけど
  • 今年度(令和5年度)内に川崎重工が耐空証明申請を出せるようなスケジュール感で勧めている(川崎重工としては本当は上期に出したいけど)

個人的には国交省側も比較的柔軟に対応している気がしますが、どうなのでしょうか?スケジュール感については、eVTOL関連で航空局が手一杯になっている可能性もありますね。

空を飛ぶものなので安全性は必要なのはもちろんではあるのですが、無人機なので有人機よりも事故発生率が高いのは妥協し、いかに重大事故にならないようにするか(例えば墜落しそうになったらパラシュートを利用して軟着陸するとか)を考える必要がありますよね。そうしないと価格が高くなりすぎて、物流サービスとして成り立たなくなってしまいます。

K-RACERは非常に楽しみにしているものの1つなので、早く実用化して欲しいです!気になるのは他のサービス、海外への展開計画がないのかです。まず国内で山岳での輸送サービスを開始することに注力しているのだとは思いますが、それ以外でも色々と活躍(災害時の対応、遭難者捜索など)できそうな気もしますし、海外展開も今であればできる気もします。後は自衛隊への提案がないのか、とかですかね。ちょっと航続距離100kmというのが短いかもしれませんが。

ちなみに川崎重工については、K-RACERを開発している航空宇宙カンパニーではなくカワサキモータースが開発しようとしている無人固定翼機の方も注目しています。

「Ninja H2R」エンジンベースの固定翼無人機、Kawasakiが防衛展で構想披露 日経XTECH 2023.03.24

無人航空機構想について カワサキモータース 2023年3月10日

こちらは更に大きい機体になるので認証を取るのが大変な気がしますが、ぜひ実用化して欲しいですね!

火曜日, 3月 28, 2023

無人航空機(ドローンなど)の重量に関する制限事項

 eVTOLがマイブームなのですが、色々と調べるうちにドローンの活用、課題も色々とあることが分かりました。今回は無人航空機の重量に関する制限事項をまとめてみます。


100g未満(小型無人機)

こちらは法律上は航空機ではなく、「小型無人機」です。小型無人機であり、航空機ではないため「航空法」の対象となりません。元々は200g未満だったのですが、2022年6月20日の航空法改正に伴い100g未満となりました。

航空法の対象ではありませんが、どこでも飛ばして良いというわけではなく、飛ばす場所の定められたルールを守ることが重要です。

この重さのドローンだと基本的にホビー用途になると考えられます。もちろん撮影等もできるモデルはありますが、性能が限られているため本格的な用途は難しいと考えられます。


100g以上(無人航空機)

2022年6月20日の航空法改正により、100g以上の無人航空機は登録が必要になりました。これは利用する個人、団体を登録するわけではなく、機体を登録する制度になります。従って従来趣味でラジコン飛行機を複数台持っていた人は全て登録する必要があり(飛ばす場合)、結構大変なことになったと思われます。

ドローンとしてのレンジはこのあたりからが多いのではないでしょうか。また、無人航空機に対する規制事項が航空法で定められています。

 全ての無人航空機の機能及び性能に関する規制 すぎな行政書士事務所

【具体的な機種】

Airpeak S1

  • 概要:SONY製空撮用ドローン
  • 製造元:SONY
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:約7.0kg
  • 最大ペイロード重量:約2.5kg
  • 最大飛行時間:約22分 ※ペイロード無しの場合
  • 最大速度:25m/s(90km/h)※ペイロード無しの場合
  • ホバリング限界高度:2,500m
  • 価格:110万円

AirTruck(エアートラック)

  • 概要:国産ドローンメーカーACSL製の物流用途向けドローン
  • 製造元:ACSL
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:25kg
  • 最大ペイロード重量:5㎏
  • 航続距離:20㎞ ※ペイロード3.5kg時と思われる。
  • 最大速度:10m/s(36km/h)
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:300万円

25kg以上(無人航空機)

最大離陸重量25kg以上(本体、バッテリー・燃料など、荷物を含め25kg以上離陸させる能力がある無人航空機)については、前述の規制に更に追加の規制があります。具体的には堅牢性、耐久性やフェールセーフ機能です。

最大離陸重量25kg以上の無人航空機の機能及び性能に関する規制 すぎな行政書士事務所

【具体的な機種】

FAZER R G2(衛星通信仕様)

  • 概要:ヤマハ発動機の大型無人ヘリ
  • 製造元:ヤマハ発動機
  • 動力:エンジン(レギュラーエンジン)
  • 最大離陸重量:110g(120kgのモデル有)
  • 最大ペイロード重量:33kg(50kgのモデル有)
  • 航続距離:90km
  • 最高速度:72km/h
  • ホバリング限界高度:2,800m
  • 価格:不明(レンタル/業務委託のみ 2017年4月〜)

Hybrid Drone i-Gryphon

  • 概要:ロケット開発などを手掛けるIHIエアロスペースが開発中の大型ドローン
  • 製造元:IHIエアロスペース
  • 動力:エンジン(ハイオクガソリン)
  • 最大離陸重量:149kg
  • 最大ペイロード重量:47kg
  • 航続距離:50km
  • 巡航速度:60km/h
  • ホバリング限界高度:3000m
  • 価格:不明(開発中)

SkyLift

  • 概要:eVTOLを開発している国内ベンチャーSKYDRIVE開発の運搬用ドローン
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:85kg?
  • 最大ペイロード重量:30kg
  • 航続距離:2km(1km往復の運用)
  • 巡航速度:36km/h(10m/s)
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:不明

150kg以上(無人航空機)

最大離陸重量が150kg以上を超えると、今度は航空法ではなく航空機製造事業法の規制対象になります。航空機製造事業法では航空機の製造、修理を行う事業、設備が許可制となり、航空検査技術者による確認も行われます。ということで、製造、運用についてかなりハードルが上がるわけですね。そのため、物流用ドローンなども基本的に150kg未満を目安に開発されています。

なお、元々は100kg以上だったのですが、平成25年度に農業用無人ヘリなどの活用推進のため150kg以上に緩和されました。また、本規制については既に規制緩和が多数要望されており、今後見直しが行われる可能性があります。

【具体的な機種】

K-RACER-X2

  • 概要:川崎重工が開発中の無人ヘリ/2026年に量産予定
  • 製造元:川崎重工(川崎重工業航空宇宙システムカンパニー)
  • 動力:エンジン
  • 最大離陸重量:650kg
  • 最大ペイロード重量:200kg
  • 航続距離:100km程度
  • 巡航速度:不明
  • ホバリング限界高度:3,100m
  • 価格:不明(開発中)

EH216(Logistic)

  • 概要:EHang開発のeVOLT「EH216」の物流輸送用版
  • 製造元:億航智能(EHang)
  • 動力:バッテリー(電力)
  • 最大離陸重量:不明
  • 最大ペイロード重量:250kg
  • 航続距離:30km ※設計飛行距離
  • 最高速度:130km/h
  • ホバリング限界高度:不明
  • 価格:約4,800万円


(参考資料)

無人航空機を巡る状況と航空機製造事業法の制度について 2023年1月 製造産業局航空機武器宇宙産業課