日曜日, 7月 09, 2023

eVTOL開発の国内ベンチャー企業「HIEN Aero Technologies」

 以前「eTVOLの主なメーカー」という記事を書き、国内ベンチャーを含めeVTOLのメーカーを紹介しました。国内企業でeVTOLの有人テスト飛行を成功し、販売を計画しているのは、今のところSkyDriveteTra aviationの2社です。なお、teTra aviationは現在一人乗りのeVTOLのみとなっています。
一方で、まだ有人テスト飛行までたどり着いてはいませんが、eVTOLの開発を進めている国内のベンチャー企業はいくつかあります。今回はそのうちの1社である「HIEN Aero Technologies」を取り上げたいと思います。

正式名称は「HIEN Aero Technologies株式会社」で、2021年に設立した東京都小金井市に拠点を持つ新しい企業です。法政大学初のベンチャー企業で、同社の代表取締役である御法川学氏は法政大学理工学部機械工学科の教授でもあります。法政大学って、こういう学科もあるんですね。

同社が開発を進めているeVTOLは以下の特徴があります。
  • バッテリーのみではなく、ガスタービン発電を利用したシリーズハイブリッド方式とすることで長い航続距離を確保する
  • マルチコプタータイプではなく、リフト&クルーズタイプ
この2つの特徴はホンダが進めているeVTOLと同じなんですよね。しかも、同社は最終的にHIEN 6という6人乗りのeVTOLを2030年に市場投入することを目標としていますが、このスケジュール感もホンダのeVTOLの計画と同じです。ただ、ホンダの場合は2025年に事業化するか判断、となっているため、まだどうなるかは分かりません。
ちなみに、2030年にeVTOLの市場投入を目指しているベンチャーはもう1社神戸のスカイリンクテクノロジーズがあります。こちらも同じハイブリッド方式ですが、タイプはベクトル推進(ティルトローター機)です。

今回HIEN Aero Technologiesを取り上げたのは、いつの間にかホームページがリニューアルされ、今後の開発する機体、マイルストーンが明確に公表されているからです。今後開発が予定されている機体について、紹介します。

ガスタービンハイブリッド長距離大型UAV
  • 寸法:5000 x 3200 x 900 mm
  • 最大離陸重量:90kg
  • ペイロード:25kg
  • 最大速度:180km/h以上
  • 飛行時間:60分程度
  • 航続距離:150km以上
  • 給電能力:20kWh
  • 燃料:灯油(Jet-A1 / B)
  • デリバリー目標:2023年?
こちらは有人のeVTOLではなく、VTOL型固定翼ドローンとなります。昨年開催された「Japan Drone 2022」では2023年4月にデリバリー予定、とされていましたが、まだデリバリー開始とはなっていなそうなので、現時点で開発中、という感じでしょうか。

先日本ブログで「VTOL型固定翼ドローンのメーカー及びモデル」という記事を書きましたが、ペイロード25kgというのは以前の記事で取り上げたどのドローンよりもペイロードを持っており、航続距離150km以上、最大速度180km/h以上とマルチコプター型、バッテリー式のドローンよりも高い性能を持つため、製品化したらそれなりに活躍の場がありそうです。最大離陸重量90kgというのも所謂ドローンの範囲(150kg未満)に収まっているので、そこも良いですね。

2人乗りパーソナルeVTOL
  • 寸法:6000 x 9000 x 2500 mm
  • 最大離陸重量:600kg
  • ペイロード:150kg
  • 最大速度:180km/h以上
  • 航続距離:180km以上
  • 給電能力:50kWh
  • 燃料:灯油(Jet-A1 / B)
  • デモフライト目標:2025年
HIEN Dr-Oneの次は2人乗りの有人eVOLです。仕組みなどはほぼ変わらず、人が乗れるくらい大型化した、という感じですね。こちらは2025年の大阪万博でのデモフライトを目標に設定しています。あと2年しかありませんので、頑張って無人でデモフライト、という感じでしょうか。
こちらのモデルは正式に型式証明を取得して製品化を目指す、というよりも、後述する6人乗り開発のためのステップ、という位置づけだと考えられます。ただ、「川崎重工の無人ヘリK-RACERは飛び立てるのか?」でも取り上げていますが、最大離陸重量600kg以下の無人航空機向けに新たな型式証明の制度が制定されそうなので、これを無人機として活用する、というのも手かもしれません。

6人乗りコマーシャルeVTOL
  • 寸法:10000 x 16000 x 3200 mm
  • 最大離陸重量:2000kg
  • ペイロード:500kg
  • 最大速度:180km/h以上
  • 航続距離:180km以上
  • 給電能力:400kWh
  • 燃料:灯油(Jet-A1 / B)
  • デリバリー目標:2030年
HIEN Aero Technologiesが最終的に目標としているのが、このHIEN 6のデリバリーです。これはHIEN 2を更に大型化し、6人乗りとしたモデルです。最高速度、航続距離は一旦HIEN 2と同じ記載になっていますが、少なくとも航続距離はもっと長くすることを目標にしていると考えられます。もうすぐFAAの型式証明を取得しそうな「Joby Aviation S4」がバッテリーのみで5人乗り航続距離が240km程度なので、流石にそれは超えないと、という感じです。

コンセプトのeVTOL
  • 寸法:?
  • 最大離陸重量:?
  • ペイロード:1000kg
  • 最大速度:?
  • 航続距離:?
  • 給電能力:?
  • 燃料:灯油(Jet-A1 / B)
最後はコンセプトeVTOLです。結構eVTOLのベンチャー企業はこのようなコンセプトを提示しており、その企業の方向性が分かります。例えば国内で最もデリバリー開始に近いeVTOLベンチャーであるSKYDRIVEのコンセプトeVTOL「SD-XX CONCEPT」は2人乗りとなっています。これは多くの場所で離着陸可能な小型eVTOLを提供していく、というSKYDRIVE社の方針を感じさせますね。一方でこの「HIEN X」はペイロード1トン、10人乗りということで、より大型なeVTOLを開発、提供していく、という方針を感じさせます。個人的にはある程度のペイロードが必要なのでは?と思っている方なので、良いと思います!

ということで、今回はeVTOL開発に取り組むHIEN Aero Technologies社を紹介しました。ヘリコプター、固定翼機とも航空機は新規参入が難しく、世界的にも企業数が多くない業界です。特に日本はメーカーとして存在感はあまりありません。一方でeVTOLは新しいジャンルの航空機なので、これから恐らくこれから2030年代半ばにかけて様々なモデルが登場し、その後メーカーが統廃合されていくと予想されます(航空機メーカーの歴史的に)。1社でも多くの国内ベンチャーに有人eVTOLのリリースまでたどり着いて欲しいと思っているので、HIEN Aero Technologies社にも頑張って頂きたいと思います!大阪万博でデモフライトをするようであれば、ぜひ見に行きたいですね。

最後に、HIEN Aero Technologies社のPVです。

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