金曜日, 6月 02, 2023

川崎重工の無人ヘリK-RACERは飛び立てるのか?

 最近は無人ドローンを物流に利用しようとする検証などが進んでいますが、無人ドローンの場合、最大離陸重量が150kg未満&運べる荷物(ペイロード)が50kg未満の機種が利用される場合が多いです。これはこのブログでも以前取り上げましたが、最大離陸重量が150kgを超えると無人機でも航空機扱いとなり、耐空証明などが必要で商用利用可能な機種を開発するハードルが一気に上るためです。

無人航空機(ドローンなど)の重量に関する制限事項

一方で、この最大離陸重量が150kg未満、という制限を超える無人機も開発中ではあります。それが川崎重工が開発する無人ヘリK-RACERです。この機体は200kgの荷物を運ぶことができます。

川重が無人ヘリに「Ninja H2R」のモンスターエンジン、山小屋に200kg 日経XTECH 2022.08.12

川崎重工としてはK-RACERを利用した物資運搬サービスを2026年に開始したいとしています。ただ、前述の通り航空機扱いになるので、ハードルが高い耐空証明が必要となります。この認定プロセスをなんとかならないか、という議論が規制改革推進会議が設置したスタートアップ・イノベーションWGで行われていました。

まず、第4回スタートアップ・イノベーションWG(令和4年11月29日)で課題定義され、

第4回 スタートアップ・イノベーションワーキング・グループ  議事次第

その後、第12回スタートアップ・イノベーションWG(令和5年4月21日)でフォローアップが行われています。

第12回 スタートアップ・イノベーションワーキング・グループ  議事次第

それぞれ議事録も公開されています。両方読みましたが、結構面白いです。

ざっくりまとめると、以下のような要望です。

  • 川崎重工としては無人ヘリを利用した山岳地域向けの輸送サービスを始めたい
  • 有人ヘリパイロット高齢化による人手不足解消のために必要なサービスである
  • ただ、市場規模は50億円程度である
  • 数百億円程度かかる航空機向け耐空証明取得が必要になると、事業として成り立たない
  • 従来の耐空証明取得は有人であることを前提にしているため、条件を緩和できないか
  • 無人なので墜落しても乗員が死亡/負傷することもないし、山岳地域だけしか飛ばないので墜落時の重大事故リスクも少ない(山火事等のリスクはある)

一方で国土交通省側も飛行するのであれば安全確認は必要であるというスタンスは崩しておらず、現時点では以下のようになっています。

  • EASA(欧州航空安全機関)が出している最大離陸重量が600kg未満の無人機に対する規制緩和案(まだ確定していない)などを参考に、必要な基準を国土交通省航空局と川崎重工で調整 ※K-RACERの最大離陸重量は650kgだけど
  • 今年度(令和5年度)内に川崎重工が耐空証明申請を出せるようなスケジュール感で勧めている(川崎重工としては本当は上期に出したいけど)

個人的には国交省側も比較的柔軟に対応している気がしますが、どうなのでしょうか?スケジュール感については、eVTOL関連で航空局が手一杯になっている可能性もありますね。

空を飛ぶものなので安全性は必要なのはもちろんではあるのですが、無人機なので有人機よりも事故発生率が高いのは妥協し、いかに重大事故にならないようにするか(例えば墜落しそうになったらパラシュートを利用して軟着陸するとか)を考える必要がありますよね。そうしないと価格が高くなりすぎて、物流サービスとして成り立たなくなってしまいます。

K-RACERは非常に楽しみにしているものの1つなので、早く実用化して欲しいです!気になるのは他のサービス、海外への展開計画がないのかです。まず国内で山岳での輸送サービスを開始することに注力しているのだとは思いますが、それ以外でも色々と活躍(災害時の対応、遭難者捜索など)できそうな気もしますし、海外展開も今であればできる気もします。後は自衛隊への提案がないのか、とかですかね。ちょっと航続距離100kmというのが短いかもしれませんが。

ちなみに川崎重工については、K-RACERを開発している航空宇宙カンパニーではなくカワサキモータースが開発しようとしている無人固定翼機の方も注目しています。

「Ninja H2R」エンジンベースの固定翼無人機、Kawasakiが防衛展で構想披露 日経XTECH 2023.03.24

無人航空機構想について カワサキモータース 2023年3月10日

こちらは更に大きい機体になるので認証を取るのが大変な気がしますが、ぜひ実用化して欲しいですね!

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