ラベル IaaS の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル IaaS の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

日曜日, 7月 27, 2025

〖2025年7月版〗国産クラウド(IaaS)最新動向まとめ

 2020年1月版・2019年1月版で国産クラウド(IaaS)をまとめてから5年近くが経ちました。この間に各社のサービス統廃合や新規参入、政府のガバメントクラウド整備など大きな動きがありました。2025年7月時点の国産クラウド動向を振り返り、主要サービスをカテゴリー別に整理します。対象は国内企業が自社の設備とブランドで提供するIaaSに限定し、ハイパースケーラーのリセールサービスは除外します。

国産クラウドを取り巻く環境

2023~2025年にかけて、日本政府はガバメントクラウドの整備を進め、ISMAP(情報システムセキュリティ管理評価制度)に登録されたクラウドのみを調達する方針を示しました。経済安保の観点からデータ主権を守る国産クラウドの重要性が増し、円建て価格や日本法準拠、国内サポートといった特徴を持つサービスが再評価されていますcloud.sakura.ad.jp。また、2024年4月には富士通クラウドテクノロジーズの「ニフクラ」が「FJcloud‑V」に統合されるなどブランド再編も進みましたfujitsu.com

〖通信事業者系〗

NTTコミュニケーションズ/ドコモビジネス – Smart Data Platform(SDPF)

旧「Enterprise Cloud」をベースに再編された SDPF は、データ利活用に必要な機能をワンストップで提供する次世代プラットフォームです。クラウド/サーバー機能はISMAPで求められるマルウェア対策や暗号化機能などの高いセキュリティ要件を満たしntt.com、2021年にISMAPクラウドサービスリストに登録されました。サービスメニューにはポータルによる管理機能、オンデマンド型ベアメタルサーバーや仮想サーバー、ブロック/ファイルストレージ、ファイアウォール、イメージ管理などが含まれていますntt.com。NTTはISO 27001やISO 27017を取得しntt.com、今後もサービス強化と対象リージョン拡大を図るとしていますntt.com

KDDI – KCPS(KDDI Cloud Platform Service)

KDDIのクラウド基盤は、共有型の「バリュー」と専有型の「プレミアム」で構成されています。バリューでは12種類のvCPU/メモリ構成から選択でき、プレミアムでは16 vCPU/64 GBメモリの物理サーバーを専有で利用できる他、ストレージを複数ノードに分散する「Extra Availability」オプションを提供しますbiz.kddi.com。同サービスはSOC1・SOC2 Type2を継続取得し、ISMAP登録(認証番号 C21‑0010‑2)も行っておりbiz.kddi.com、公共案件の調達要件にも対応しています。

BIGLOBE – BIGLOBEクラウドホスティング

BIGLOBEのIaaSは国内データセンターで運営される純国産クラウドで、VMware仮想化による高品質なサーバーを提供します。サーバーやストレージは5分程度で追加可能で、プライベートLAN・ファイアウォール・WAF・VPNなどの機能を備え、データ転送量は無料ですjpn.nec.com。事業者向けサービスとしてSLA 99.99 %を保証し、ISO/IEC 27001・Pマーク・PCI DSS認証を取得したデータセンターで運用されていますjpn.nec.com

ソフトバンク – ホワイトクラウド ASPIRE

ソフトバンクの自社クラウドはVMware vSphereを基盤とし、ソフトバンクの信頼性の高いネットワークとデータセンターを組み合わせたIaaSです。稼働率99.999 %のSLAを掲げ、ISMAPへは2022年6月に登録されています。また、2023年10月にはVMwareの主権クラウドプログラム(Sovereign Cloud)の認定を受けましたsoftbank.jp

IIJ – IIJ GIOインフラストラクチャーP2

IIJ GIO P2は、仮想サーバーとベアメタルサーバーを柔軟に組み合わせ、公私のリソースを混在させたハイブリッド構成を実現するIaaSです。VMware環境をそのまま移行できるホステッドプライベートクラウドとパブリックリソースを提供し、システム特性に合わせて最適な組み合わせが可能だと説明されていますiij.ad.jp。昨年からは新リージョンやGPUなどのオプションが強化されています。

〖国内SIer系〗

CTC – CUVIC mc2

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)のCUVIC mc2は、基幹システム向けの高信頼・高性能なIaaSです。SAP ERP/S 4HANA用途を意識し、必要なIT基盤を実利用分で課金する従量制を採用しています。利用企業の中でコアシステムに採用される例が多く、一般的なパブリッククラウドでは不足しがちな安定性と堅牢性を提供しますctc-g.co.jp

NEC – NEC Cloud IaaS

NECは2014年に自社開発の国産クラウド「NEC Cloud IaaS」を提供開始し、2020年に刷新しました。政府や企業のDXを支える基盤として、複数のリージョンで高信頼なサービスを提供し、ISMAPに対応するため認証取得を強化しています。資料では多要素認証やアクセス制御、環境分離、脆弱性管理などを備え、政府・自治体向け案件でも採用が進んでいるとしていますjpn.nec.com

日立 – エンタープライズクラウドサービス/ComiComiCloud

日立製作所は複数のIaaSラインアップを提供しています。エンタープライズクラウドサービスとその後継「G2」は、ISO 27017に基づくクラウドセキュリティ認証(ISMSクラウドセキュリティ認証)を取得しており、IaaS/PaaSの主力サービスとして登録されていますhitachi.co.jp。さらに、日立は従量課金型プライベートクラウド「ComiComiCloud」のマネージドサービスを拡充し、オンプレミスやパブリッククラウドを統合管理するハイブリッドクラウド運用サービスを2023年に開始しましたhitachi.co.jp。ComiComiCloudは顧客指定の場所に日立資産を設置して専有環境を構築し、シンプルな従量課金と標準サービスで基幹システムの運用を支援するのが特長ですhitachi.co.jp

富士通 – FJcloud‑V(旧ニフクラ)

富士通クラウドテクノロジーズが提供していた「ニフクラ」は2024年4月に「FJcloud‑V」に統合されましたfujitsu.com。FJcloud‑VはVMware vSphereをベースにした仮想化環境を提供し、仮想サーバーやネットワーク、オブジェクトストレージなどを自由に構成できます。またオンプレミスのVMware環境からの移行を容易にする機能も提供しますvalue-domain.com。ラインアップとしては仮想サーバーのほか、物理専有リソースを提供するFJcloud‑baremetalもあり、企業の用途に応じた選択が可能です。

〖データセンター事業者〗

さくらインターネット – さくらのクラウド

さくらインターネットのクラウドは「日本で一番わかりやすいクラウド」を掲げ、使いやすさ・連携性・シンプルな料金体系に重点を置いていますjaspanet.or.jp。GUIやAPIに加え地図ビューでリソース配置を可視化する管理画面や2要素認証・権限管理を備えjaspanet.or.jp、専用サーバやハウジング、VPS、AWS接続など他サービスと組み合わせる柔軟な構成が可能ですjaspanet.or.jp。料金は時間単位・日単位・月額で上限があり、データ転送量は無料jaspanet.or.jp。東京第1・第2、石狩第1・第2の4ゾーンを持ちjaspanet.or.jp、石狩データセンターは寒冷地の特徴を活かした省エネと低災害リスクで知られますjaspanet.or.jp。さくらのクラウドはISMAP登録済みでjaspanet.or.jp、バックボーン1.85 Tbps・1ホストあたり10 Gbpsのネットワークや冗長化構成により、月間SLA 99.95 %と自動フェイルオーバーを実現していますjaspanet.or.jp。2023年にはデジタル庁のガバメントクラウド対象として採択され、要件充足に向けた開発が進んでいます。

IDCフロンティア – IDCFクラウド

IDCFクラウドは国内15ゾーンを持つパブリッククラウドで、24時間365日サポート、99.999 %のSLAを提供しています。インスタンスは高性能なCPU/メモリ構成と独自開発のストレージ基盤を備え、専有ハードウェアやマネージドデータベース、ロードバランサー、コンテナ基盤など多様なサービスを提供していますidcf.jp。2024年2月にはメモリ内キャッシュ機能「CacheDB」を追加するなど、サービスの拡充を続けていますidcf.jp。IDCフロンティアはコロケーションや大手クラウドとの閉域接続を提供しており、ハイブリッド/マルチクラウド構成を支援していますidcf.jp

GMOクラウド – ALTUS(アルタス)ほか

GMOグローバルサイン・ホールディングスのクラウドサービスには、初心者向けクラウドサーバー「ALTUS by GMO」があります。Pleskでコマンド不要の操作ができ、電話サポートや0円からの低廉な料金、無制限のデータ転送を特徴としていますgmo.jp。さらに専用ハイパーバイザーによる「GMOクラウド Private」は、標準・バリューの2シリーズで企業向けの高セキュリティなプライベートクラウドを提供し、冗長構成や専用線接続、スケールアップに対応しますgmo.jp

NTTPC – WebARENA VPSクラウド

NTTPCコミュニケーションズが提供するWebARENA VPSクラウドは、オープンソースの国産クラウドコントローラー「Wakame‑vdc」を採用し、一つのコントロールパネルで複数インスタンスを一括管理できますweb.arena.ne.jp。インスタンスの起動や停止、バックアップやロードバランサー設定、セキュリティグループ管理などをGUIで実行できるほか、契約情報管理機能も用意されていますweb.arena.ne.jp。2024年にはGPU対応のIndigo GPUや高速回線を備えたIndigo Proも登場し、幅広い用途に応えています。

新規サービス

近年、生成AIブームに伴いGPUクラウド需要が急増しています。GMOインターネットグループは「GMO GPUクラウド」を立ち上げ、2024年発売のNVIDIA H200 GPUと国内初導入の高速ネットワーク「NVIDIA Spectrum‑X」、DDN AIストレージを組み合わせた高速学習環境を提供しています。サイトでは生成AIや機械学習向けに国内最速クラスのGPUクラウドをうたっており、TOP500ランキングで38.06 PFLOPSを記録し世界37位・国内6位となった性能を紹介していますgpucloud.gmo。また、GMOインターネットは2025年7月にVPSサービス「ConoHa VPS」をAIエージェントと連携するMCP(Model Context Protocol)対応にアップデートし、日本語で生成AIと対話しながらサーバー操作ができる機能を国内クラウド事業者として初めて公開しましたinternet.gmo。自然言語で「4コアのサーバーを作って」と依頼するとAIが自動的にVPSを構築するなど、AI時代の新しいクラウド運用手法を提案していますinternet.gmo

〖その他〗

旧記事で触れた楽天クラウドはその後動きが少なく、2025年7月時点では公式サイトへのアクセスも難しくなっています。NTT Comの「Cloudn」は2020年末でサービス終了し、SDPFへ統合されましたkuniyon.blogspot.com。国産クラウド市場は今後も統廃合と新規参入が続きそうです。

終わりに

2025年現在、国産クラウドはガバメントクラウドをはじめ公共・金融・製造など高度なセキュリティと法規制への対応が求められる領域で存在感を高めています。各サービスはISMAPやISO 27017認証を取得し、仮想サーバーに留まらずGPUやベアメタル、AI連携など多様化が進んでいます。ハイパースケーラーと比べてサービス範囲が狭いものの、円建て価格や日本語サポート、国内データセンターといった利点は大きく、用途に応じた使い分けが重要です。今後も政府のクラウド調達政策や経済安全保障の動向、新技術への対応によって国産クラウドの姿は変化していくでしょう。

水曜日, 9月 28, 2022

オンプレとIaaSのコスト比較(低スペックサーバ)2022年版

 ちょっと最近信じられないくらい円安が進んでいますよね。
年初1ドル110円台だったのに、145円まで到達し、150円も見えてきています。

こうなってくると気になるのがクラウドコストです。というのも、AWS、Azureなどの外資系クラウドは料金が基本ドルで、毎月為替レート換算で日本円で請求されるという仕組みだからです。

つまり、ここまで極端に円安が進んでしまうと、AWS、Azureについては実質値上げになってしまいます。一方で国産クラウドは日本円が基本なので、今のところは円安の影響は受けていません。将来的にはサーバーなどのクラウドを構成する機器の値上げや、ライセンスの値上げを受ける可能性はありますが、今のところは大丈夫ですね。

円安が進んだ現時点ではどうなるか、再度比較してみたいと思います。

まず、オンプレサーバーを試算してみます。前回同様、富士通製サーバーで試算します。

【オンプレサーバーの見積】
前回はディスクが500GBですが、SATAの場合は最低が1TBのようなので、今回はすべて1TBで試算します。
  • PRIMERGY TX1310 M5 
  • OS:Windows Server 2022 Standard
  • CPU:Pentium Gold G6405 プロセッサー (4.1GHz/2コア/4MB)×1
  • メモリ:8GB
  • ディスク:1TB×2(RAID1)
  • UPS(Powerchute含む)
  • サポートパック×5年(本体/UPS)
合計金額:711,810円

前回から、10万ほど価格が上がっています。細かい条件の違いはありそうですが、若干値上げもあるのかもしれません。

【IaaSサーバ見積】
IaaSについても前回同様、AWS、Azure、ニフクラで見積もってみます。

AWS
  • Windows t3a.medium(2vcp/4GBメモリ) $49.20/月
  • 汎用SSD(gp3) 1000GB $98.30/月
合計金額:$147.50/月×60ヶ月=$8,850(5年間費用)
※1ドル145円換算だと1,283,250円(5年間費用)

なお、3年リザーブドの場合は1,106,727円(5年費用)となります。
前回より結構上がっているのですが、原因はgp3の方を選択しているためですね。ただ、こちらのほうが今はおすすめになっています。

Azure
  • Windows B2S(2vcp/4GBメモリ) $45.55/月
  • Standard Disk 1024GB $41.01/月
合計金額:$86.56/月×60ヶ月=$5,193.6(5年間費用)
※AWSと同様に1ドル145円換算だと753,072円(5年間費用)

なお、インスタンス費用を3年リザーブドにすると、537,573円(5年間費用)となります。

ニフクラ
  • c-small4(1vcp/4GBメモリ) 6,000円/月
  • Windows OS 3,200円/月/1vCPU
  • 標準フラッシュディスク 1,500円/100GB/月×10=15,000円
合計金額:24,200円/月×60ヶ月=1,452,000円(5年間費用)


ということで、5年間総額での比較です。

オンプレサーバ   711,810円
AWS       1,283,250円:180%(3年RIだと1,106,727円:155%)
Azure       753,072円:106%(3年RIだと537,573円:76%)
ニフクラ       1,452,000円:204%
※IaaS費用に記載のパーセントはオンプレ費用比

やはり為替の影響でオンプレと比較してもAWS、Azureの方が全然安いよね、という状態ではなくなりました。もちろん、データセンター費用、電気代、運用費などを考慮するとクラウドのほうがメリットが大きいと考えます。

ただ、今回はディスクサイズを大きくして比較したため、クラウド同士の比較があまり正確ではありません。Azureは一番安いディスクですし、AWSは悪くないディスクで見積もっているのでAWSと比較してAzureが安い結果になってしまったので見積条件の違いもあります。その点、ご留意ください。

しかしまあ、ここから為替がどう動くのかは分かりませんが、更に円安が進むようであれば、結構厳しい気がします。クラウドの費用変動はクラウド利用のリスクの1つになりそうですね。

木曜日, 5月 28, 2020

ニフクラ 新しい増設ディスクをリリース

ニフクラがが新しい増設ディスクをリリースすると発表しました。


リリースされるのは「高速フラッシュドライブ」と「標準フラッシュドライブ」の2種類で、新しくリリースする、というよりも既存のディスクサービスの置き換えのようです。(本ラインナップリリース後、既存ラインナップは新規に配備できなくなる。)
プレスは出ましたが、実際に使えるようになるのは7月末のようです。

元々のニフクラのディスクのラインナップは以下の3つでした。
【従来の増設ディスク】
標準ディスク:2,000円/100GB/月
高速ディスク:5,000円/100GB/月
フラッシュドライブ:24,000円/100GB/月

それが、以下のように変わります。
【新たな増設ディスク】
標準フラッシュドライブ:1,500円/100GB/月
高速フラッシュドライブ:4,500円/100GB/月

性能がどこまで上がるかは分かりませんが、実質値下げですね。自分の予想では標準は性能があまり変わらず、高速は性能が上がると思います。高速フラッシュドライブは、フラッシュドライブの後継でもあるわけですからね。

値下げ幅についてですが、標準はまあ25%下がったので良いと思います。が、高速ディスクは10%しか下がっていません。正直まだまだ高いな、と思うとことです。感覚的には高速が3,000円/100GB/月くらいがバランスが良かったのではないでしょうか?

少し他のサービスと価格を比較してみます。
---
【Enterprise Cloud(NTTコミュニケーションズ)】
データボリューム:1,300円/100GB/月
IO性能確保(2IOPS/GB):4,200円/100GB/月
IO性能確保(4IOPS/GB):7,000円/100GB/月
※ディスクサイズが大きくなるとディスカウントされる

【さくらのクラウド(さくらインターネット)】
標準プラン:2,200円/100GB/月
SSDプラン:3,850円/100GB/月

【Microsoft Azure】
Standard HDD:659.46円/128GB/月(5.15円/GB/月)
Standard SSD:1,075.20円/128GB/月(8.4円/GB/月)
Premium SSD:2,539.04円/128GB/月(19.84円/GB/月)
※Standard HDD、Standard SSDは更にトランザクション費用がかかる
※Premium SSDはディスクサイズが大きくなるとディスカウントされる
※東日本リージョンの価格

【AWS】
Cold HDD (sc1) ボリューム:330円/100GB/月
スループット最適化 HDD (st1) ボリューム:594円/100GB/月
汎用 SSD (gp2) ボリューム:1,320円/100GB/月
プロビジョンド IOPS SSD (io1) ボリューム:1,562円/100GB/月
※プロビジョンド IOPS SSD (io1) ボリュームは追加でIOに対するかかる(IOが多いと結構かかる)
※東京リージョンの価格
※1ドル110円で試算
---

こうして比較してみると、国産クラウド同士で似たような価格設定になっていることが分かりますね。性能面の比較はできていないので価格だけの比較になってしまいますが。
一方、メジャークラウドは国産クラウドと比較すると価格が半分から3分の1程度になります。メジャークラウドの安価なディスクは本当に性能が悪いため、こちらも比較が難しいところではありますが、やはり価格インパクトはメジャークラウドの圧勝ですね。

さて、話が脱線しましたが、今回の話はニフクラの新しい増設ディスクです。実際に使えるようになるまでまだ暫く時間がかかりますが、オールフラッシュ化されるということで、どこまで性能が出るか今から楽しみです。価格も下がりますからね。

金曜日, 1月 10, 2020

【2020年1月版】国産クラウド(IaaS)一覧

遂に、2020年代がやってきましたね!年月の流れるのはあっという間です。

昨年、以下の記事を公開しました。
【2019年1月版】国産クラウド(IaaS)一覧

2019年中もいくつか動きがあり、状況が少し変わってきていますので、2020年版として一覧を更新したいと思います。
なお、2019年中の国産クラウドに関する動きは、このブログでも少し取り上げています。
ガートナー「 日本におけるクラウドIaaSのマジック・クアドラント」2019年5月版
NTT Com「Cloudn」を2020年末に提供終了へ

リスト対象としているのは、IaaSのみです。また、各社が他のクラウド(AWSやAzureなど)を再販しているサービスについては、含めていません。
この一覧は国産クラウドの中でもガートナーに取り上げられるもの、よく目に付くものを取り上げています。全ての国産クラウドをリスト化しているものではない旨、ご了承ください。

【通信事業者系】
・NTT コミニュケーションズ
 Enterprise Cloud
・KDDI
 KDDI クラウドプラットフォームサービス
 BIGLOBEクラウドホスティング
・ソフトバンク
 ホワイトクラウド ASPIRE
・インターネットイニシアティブ
 IIJ GIOインフラストラクチャーP2

NTTコミニュケーションズのEnterprise Cloudは国産クラウドの中でもそれなりにシェアがあると思います。エンハンスやメジャークラウドとの連携も力を入れているようです。
KDDIのクラウドについては以前はよく利用ユーザに遭遇したのですが、最近減りましたね。
ソフトバンクの自社クラウドであるホワイトクラウドについては、ソフトバンク自体がGCPとかAlibaba Cloudに注力しているのであまり力を入れていないのかと思っていましたが、最近も結構競合するので、これはこれで力を入れているのかも知れません。

【国内SIer系】
・伊藤忠テクノソリューションズ
 CUVICmc2
・NEC
 NEC Cloud IaaS
・日立製作所
 エンタープライズクラウドサービス
・富士通
 FUJITSU Cloud Service for OSS
 FUJITSU Cloud Service for VMware
・富士通クラウドテクノロジーズ
 ニフクラ

この中でCTC、NEC、富士通のクラウドについては「 日本におけるクラウドIaaSのマジック・クアドラント」2019年5月版に登場してくるので、国産クラウドの代表格扱いですね。大手のユーザを抱えていると推測されますので、国産クラウドの中でも規模が大きいと推測されます。CUVICmc2はSAP基盤としての利用を押していますね。個人的にはニフクラのGUIが好きなので、頑張って頂きたいと思っています。

【データセンター事業者】
・さくらインターネット
 さくらのクラウド
・IDCフロンティア
 IDCFクラウド
・GMOクラウド
 GMOクラウド ALTUS アルタス

データセンター事業者のクラウドは、引き続き各社力を入れているように見えます。IDCFクラウドについてはソフトバンクグループ内でのテコ入れがそろそろ入るのかな、と思っていましたが、現時点では少なくとも外からは特に動きはなさそうです。

【その他】
・楽天
 楽天クラウド IaaS

昨年はネタとして取り上げた楽天クラウドですが、2019年にリニューアルされました。楽天モバイル(キャリアの方)の仮想化のノウハウを活用し、クラウドサービスを強化したようです。

【終了予定のサービス】
・NTT コミニュケーションズ
 Cloudn

Cloudnは2020年12月31日を持ってサービス終了となることが発表されています。詳細は本ブログ内のこちらの記事をご参照ください。

木曜日, 12月 05, 2019

自治体向けIaaS「Jip-Base」の障害により、50自治体でシステム障害発生

今週はラスベガスでAWS re:Invent 2019が開催されており、AWS関連の新機能、新サービスが発表されています。が、こちらはまだ明日まで続きますので、終わったら別記事に纏めたいと思います。

今回取り上げるのはNTTデータ子会社である日本電子計算が運営する自治体向けIaaS「Jip-Base」で発生している障害です。12月4日の午前中から発生しており、本日も結局復旧していません。明日で障害発生3日目になります。
以下は日本電子計算のニュースリリースです。
 12月4日(水)10時56分頃から当社がサービスを提供する自治体専用IaaSサービス「Jip-Base」について障害が発生しており、同サービス上で稼働しているシステムの一部がご利用いただけない状況が続いております。ご迷惑をおかけしているお客様と主な影響範囲の一覧はこちらです。
 本障害は、ストレージに付随するファームウェアの故障が原因であると特定いたしました。現在、復旧方法の検証を行っておりますが、本日中の復旧は困難な状況で、ファームウェア故障起因のため、復旧に時間を要する可能性がございます。よって、引き続き復旧作業を継続し、復旧見通しが判明し次第、本HPにて随時お知らせしてまいります。
 なお、本障害は外部からの攻撃などによるものではなく、情報流出/情報漏洩は一切ございません。
 ご利用のお客様、また本障害の影響がある自治体の住民の皆様には多大なるご迷惑とご不便をおかけしており大変申し訳ございません。
自治体専用IaaSシステム「Jip-Base」の障害について 日本電子計算 2019/12/05

ストレージのファームウエアに関する障害だそうです。怖いですね。インフラ屋(最近はクラウドばかりですが)としては、こういった話を聞くと他人事だとは思えません。対応されている方々の心中をお察しします。お疲れ様です。

まあ、自分もNetAppのストレージがディスク1本死んだだけで停止して、その後のディスクチェックのために3日間くらいオンラインにならなかったことがあります。最近はディスクサイズが大きくなっているためか、こういうときに動くディスクチェックが本当に終わらないんですよね。。。しかし、こうなると待つしかないし、いつ終わるか分からないし、もう開き直るしかないですよね(笑)ちなみにその時RAIDグループが停止したのはファーム不具合でした。

さて、こういった障害が発生すると、やはりシステムを集約するのは良くないのではないか、という話になりがちですが、そうではない、ということを繰り返し述べておく必要があるかと思います。こういった障害に備えつつ、対策を事前に打つ。それがクラウドだとオンプレと比較して容易に実現できるようになっているわけです。まあ、今回障害が発生している「Jip-Base」のような従来仮想基盤の延長のようなタイプだと難しいかもしれませんが、こういったものも、他のクラウドと組み合わせて利用するべきなんです。発注する側も受注する側も、そろそろインフラに対する意識改革する(無敵のサーバを目指すのではなく、程々のサービスを組合せて前提で強くするクラウド的な考え方を持つ)必要があるかと思います。しかしまあ、自治体がこういうの一番遅いんですけどね。

---
2019/12/10追記
現時点でもまだ復旧していないようです。これでもう1週間ですから、かなり長期間に渡る重大障害になっています。
以下は12月9日時点のプレスからの抜粋です。
 本障害発生後、IaaSサービス「Jip-Base」の全面復旧を目指して全力を挙げて作業を進めてきました。ストレージのファームウェア不具合が引き起こしたハードウェアの故障は修復したものの、その後の動作確認において各種データへのアクセス処理が正しく動作しない事象が判明し、現時点でもその解消に至っておりません。そのため、当初計画の大幅な見直しが必要であると判断しています。
 現在、「Jip-Base」のサービス復旧計画の再策定を行っており、現時点で全面復旧の目途をお知らせすることができません。全力を挙げて事態の収拾に努めると共に、計画を策定次第、速やかにお知らせいたします。
自治体専用IaaSサービス「Jip-Base」障害についてのお詫び(2019年12月9日時点) 日本電子計算

ハード復旧はしたけどデータへアクセスできない、というのはどういう状況ですかね?色々と予想はできますが、vSANなどのソフトウエア型のストレージ仮想化製品、もしくは重複排除をガンガンかけるタイプのストレージ装置、といったところでしょうか。vSANなどだとメンテナンス時もきちんと手順を守らないと、ストレージクラスタが一式飛んだりしますからね。。。(勿論手順を守れという話ではあるのですが。)まあ、従来型のストレージ装置でも、同様のことが発生する可能性はあります。かなり昔ですが、IBMの装置で一部領域が読み取りはできるけど書き込みができない状況になりエンジニアに来てもらいましたが、「うーん、ボリュームフォーマットすれば直ります」と言われたことがありました。「いや、直るかもしれないけど、データ消えるよね!?」というやり取りをした、今となっては懐かしい思い出です(笑)

今回の障害を受けて、自治体のクラウドに対する考え方が変わるかもしれません。クラウド化を進めるという大方針は政府の後押しもあるため、崩れることはないとは思いますが。引き続き、続報に注目したいと思います。

---
2019/12/10更に追記
問題になっているストレージ装置ですが、DELL EMCだそうです。報道が出ていました。
 2019年12月4日に発生した50自治体のシステム障害について2019年12月10日、不具合を起こした日本電子計算がIaaS「Jip-Base」で利用していたのは米デルテクノロジーズ(Dell Technologies)のストレージ装置「Dell EMC Unity 500」であることが分かった。
 日本電子計算によると、このストレージ装置の特定のバージョンのファームウエアを使い、さらに高速に読み書きするための並列処理機能を使う条件がそろったときに不具合が発生したと見ている。不具合を解消するためにストレージメーカーからの修正ファームウエアを適用したが、12月10日午前11時時点で復旧には至っていない。
50自治体システム障害続報、不具合は米デルのストレージで発生 日経 xTECH 2019/12/10
 EMCジャパンは、12月4日に同社ストレージ装置に故障が発生したことを認めたうえで、「障害発生後から日本電子計算と復旧対応を行ってきた。ファームウエアを修正するなどして12月6日午後10時15分にストレージの修復作業は完了し、日本電子計算へ納品した。現在は日本電子計算で業務復旧作業中であり、当社も復旧へ向け全力で協力している」と述べた。
 これに対して日本電子計算は12月10日、「12月6日にストレージ装置のファームウエアの修正は完了したが、いまだに読み書きできないデータがあるのも事実で、復旧に至っていない。その原因箇所がストレージ装置を含めシステムのどこなのか、さらにその内容も調査中で、現状は特定できていない」とコメントした。
復旧中の50自治体システム障害、ストレージメーカーがコメント 日経 xTECH 2019/12/10

ストレージ装置としては復旧したが、データとして読み込めてません、ということですね。ここからはもう当事者でないと詳細が分からない世界であるのでなんとも言えませんが...最終手段としてはバックアップからの復旧ですかね。バックアップがないことはないと思いますので。

しかしまあ、ストレージというのは恐ろしい世界です。

---
2019/12/21追記
少し経ってしまいましたが、16日に日本電子計算による記者会見がありました。
プレスも出ています。
「Jip-Base」の障害における復旧状況のご報告 2019年12月16日

様々なニュースサイトでも取り上げられています。
例えば、
33自治体で「一部データが復旧不能」に――日本電子計算のIaaS障害、いまだに復旧見通し立たず ITmedia 2019年12月16日
 日本電子計算は9日以降、ストレージやバックアップデータから仮想OSの情報や業務データの復旧作業を行っている。同社の山田英司社長は、16日の段階で「(仮想OSのうち)70%はIaaSとして復旧したが、15%は復旧不可能な状態にある」と明かす。残りの15%は、現在もバックデータからデータが復旧できるか確認している段階だという。
 15%(約200個)の仮想OSが復旧できない状態にあるのは、日本電子計算によるバックアップが正常に行われていなかったからだという。一部でバックアップが正常に行われていなかった理由について、Jip-Baseを統括する神尾拓朗部長(公共事業部基盤サービス統括部)は「監視システムに不具合があったため」と、ストレージのファームウェアとは別に原因があったことを明かした。
 これにより、33の自治体で今も一部のデータが復旧できていない。これらの仮想OSについては復旧を諦めず、利用事業者と連携してできる限り復旧作業を行うとした。
15%が約200台(仮想OS)ということは、今回の障害の被害にあったのは全部で約1350台くらいと言うわけで、そのうち200台は復旧不可能、200台は復旧可能か調査中ということですね。しかし、IaaS側のバックアップが正常に動いていなかった、それは監視システムの不具合ですと言うのはまあ聞く話ではありますが、ひどい話ですよね。

クラウドの機能やサービス内でのバックアップを行っていて、しかしそれがきちんと動作していませんでした、というリスクに対応するとなると、やはり利用しているクラウドサービスとは別の仕組みでバックアップを取得しないとダメですね、となるわけです。最近クラウド型のバックアップサービスも幾つか出てきてはいますが、そういったものが流行るかもしれませんね。特に自治体などでは今回の障害を踏まえて、バックアップについての要件が細かく指定されるようになるかと思います。

プレスによると障害対策本部はNTTデータを含めて200名体制だそうです。12月4日に障害が発生して、まあ1ヶ月はフルで対応する必要があるかとは思いますので、最低でも200人月動いているわけです。計算しやすいように1人月100万だとすると、人件費だけでも2億円以上はかかっているわけです。それ以外にも賠償や今後のサービス提供への影響を考慮すると、とてつもない損害ですね。。。NTTデータグループなので会社がなくなることはないとは思いますが。

まだ対応が終息していないと思いますので先の話かとは思いますが、今回の障害についての振り返りなどは見てみたいと思います。全ては無理でしょうが、可能な範囲で情報が公開されることを期待しています。

---
2020/2/15追記

1月10日に復旧情報についてのプレスが出ていました。
「Jip-Base」の障害における復旧状況のご報告(第3報)  日本電子計算株式会社 2020/01/30
 2019年12月4日に発生した自治体専用IaaSサービス「Jip-Base」の障害により、ご利用の自治体の皆様および本障害の影響がある自治体の住民の皆様、その他関係者の皆様に多大なるご迷惑とご不便をおかけし、深くお詫び申し上げます。
IaaSサービス「Jip-Base」の本日時点の復旧状況について以下のとおりご報告いたします。 
 今回の障害で影響を受けた全1,318の仮想OSのうち、98.1%がIaaSサービスとして復旧を完了いたしました。
 また、1.4%が復旧作業中であり、バックアップデータからの復旧、新たなご利用環境の構築などを行っております。
 なお、「バックアップデータが特定できないためIaaSサービスとして自社のみでの復旧が困難なもの」については、12月25日時点で4%とご報告いたしましたが、新たに発見できたバックアップデータから復旧したものや新たなご利用環境を構築することで復旧できたものなどあり、現在は0.5%まで減少しております。今後はサービス復旧に向けたデータ確認および作業調整をお客様と個別に実施し、復旧を進めてまいります。
1月時点でなお20台弱のサーバが復旧中というステータスだったんですね。障害の影響が出た自治体については、非常に大きな業務影響が出たと推測されます。

役員人事についてのプレスもいくつか出ているようですし、もう少ししたら今回の障害の総括みたいなものが出るかも知れませんね。

金曜日, 11月 08, 2019

ニフクラ Oracle DBを稼働させることができるニフクラOVMの提供を開始

ニフクラでOracle Databaseを稼働することができる、OVMという環境の提供が開始されました。
OVM ニフクラ

以前より何度か本ブログでもOracle Databaseをクラウド環境に持ち込むことの難しさを取り上げています。
クラウド環境でOracle Databaseを利用するには

取り敢えず現状Oracle Databaseをクラウド上で動かすには、Oracle Cloud(OCI)を利用するか、許可されたクラウドサービスであるAWS、Azureを利用する、といった方法が基本になります。それ以外に、クラウド事業者が独自に対応させているOracle Database用の環境を利用する、という方法も実はあり、国産クラウドだと幾つかそういった環境を提供しているところがあります。

ニフクラも以前はやっていたのですが、色々あってほぼ新規はない状態でした。が、今回新たにOracle Database専用の環境の提供を始めたようです。
恐らく仮想基盤をOracle Linuxで作っているので、オラクル社も文句は言えないですよね?ということだと思われます。

本環境の良い点、悪い点をざっと纏めておきます。(個人的な所感です。)

【良い点】

  • 4vcpuまでSE2であれば1プロセッサ分のライセンスで良い(AWS/Azureと同じ)
  • 11gR2から19cまで対応している(ただし、OSはOracle Linuxのみ)
  • RAC構成を組むことができる(AWS/AzureはRACを組むことができない)

【悪い点】

  • OSがOracle LinuxとWindows Server 2012/2012 R2しか選べない(今更WinSv2012はないので、基本Oracle Linuxになる)
  • SLA対象外
  • メンテナンスで停止することがある(RAC構成を組めば止まらない)
  • サーバ操作が申請制(ホスティングみたいな運用)
  • スペックが低いと割高(CPU少なめ、メモリ多めだとまあまあ?)

ということで、OSがOracle Linuxという部分がネックではありますが、そこが問題なければ検討の余地はあるかと思います。AWS、Azureと違ってRACを組むことができるのはメリットですね。Oracle DBライセンスを含めると、かなり高額になるとは思いますが。
ただ、結構費用がかかりますよね。スペックが変動する可能性がないのであれば、もうOracle DB部分はホスティングとかでいいんじゃない?という気もします。

本当に、オラクルがVMwareとかHype-V環境で自由にOracle Databaseを使って良いよ、ライセンスは仮想サーバに紐づくよ、と言ってくれるだけでみんな幸せになれるんですけどね。。。まあ、オラクルによるOracle Databaseを人質にしたOracle Cloud(OCI)への囲い込み作戦が絶賛継続中ですので、そんなのはオラクルが倒産しかけない限りはないでしょうけどね(哀)

日曜日, 10月 27, 2019

米国防総省のクラウド契約、マイクロソフトに決定

米国防総省は25日、総額100億ドル規模のクラウド契約先をマイクロソフトに決定したと発表しました。

米国防クラウド大型案件、AmazonでなくMicrosoft受注 日経新聞 2019/10/26
【シリコンバレー=佐藤浩実】米国防総省は25日、新たなクラウドサービスの契約を米マイクロソフトと結ぶと発表した。契約額は最大で100億ドル(約1兆円)規模にのぼる見込みだ。米政府機関で最大のクラウド調達となる今回の案件をめぐっては米IT(情報技術)各社が競争を繰り広げ、トランプ大統領も選定プロセスに介入していた。
国防総省がマイクロソフトと契約を結んだのは、契約期間が10年にわたる「JEDI」と呼ぶプロジェクト。クラウドを活用した最新のITで、職員の業務や作戦遂行を支える。同省のダナ・ディーシー最高情報責任者(CIO)は今回のクラウド契約が「(国防戦略において)重要なステップになる」と述べた。
この「JEDI」プロジェクトですが、元々今年の8月頃には結果が発表される予定でした。しかし、オラクルが連邦裁判所に訴えたり、ロビー活動を行うなどして決定を妨害したため、発表が延期となっていました。

オラクル控訴で米国防省1兆円規模のJEDIクラウド入札勝者発表は延期 techcrunch 2019年8月27日
賞金が100億ドル(約1兆580億円)の場合Oracle(オラクル)の執念深さは見上げたものだ。米国防省が計画しているJEDIクラウドの調達プロセスについて、1年以上にわたってOracleは考えられるかぎりの法的手段を使って抗議を続けてきた 。しかしそのつどプロセスに問題があることの立証に失敗している。先月もOracleの訴えを連邦裁判所は棄却したが、それで諦めるOracleではなかった。
Oracleは米国を代表するコンピューティングサービスの1つだが、自分たちの利益が不当に脅かされていると感じれば泣き寝入りする会社ではない。特に連邦政府の調達が100億ドル規模とあればなおさらだ。米国時間8月26日に発表された訴訟は連邦請求裁判所(Federal Claims Court)の上級裁判官、Eric Bruggink(エリック・ブルッギンク)判事の判決に対する控訴だ。今回、Oracleの主張は1社の総取りとなるようなJEDIの調達プロセスそのものが違法だとしている。
 (中略)
トランプ大統領は先月、マーク・T・エスパー国防長官に「調達プロセスが不当にAWSに有利だ」という主張を再度調べるよう命じた。その調査は現在続いている。国防省は4月にAmazonとMicrosoftの2社をファイナリストとして発表した。8月末までに勝者を指名するはずだったが、抗議、訴訟、調査が続いているためまだ決定できない状況だ。

今回の入札は最終的にAmazon(AWS)かマイクロソフト(Azure)の2社だけが候補に残っていました。(Oracle、IBMは要件を満たせず、Googleは辞退)
多くの予想ではAWSに決まるだろうと思われていましたが、いや、正確に言うと入札仕様書を作ったのが元AWSの社員という話もあり、AWSありきの入札と思われていました。(来月そんなことはなかった、という報告書がデルようですが。)しかし、最終的にはAzureに決まりましたね。正直びっくりです。

AWSでもAzureでもどちらでも対応可能だとは思いましたが、最終的にAzureになったのは政治的な圧力があったことが主要な要因でしょう。なんと言ってもトランプ大統領が大嫌いなワシントンポストは、Amazon CEOのジェフ・ベゾスの傘下ですから。国防総省としては、本当はAWSが良かったけれどホワイトハウス側がうるさくてなかなか決まらず、このままプロジェクトが遅れるくらいだったらAzureで行こう、と考えたのでは?と勝手に推測したりしています。

まあ何にせよ、大きな問題がなければ今後10年間の米国防総省のインフラ基盤はAzureになるわけです。次の10年のAIなどに関する技術革新はこれまでと比べ物にならないと推測されますが、米軍のIT技術革新はマイクロソフトの技術力に委ねられる事になったわけですね。また、Iaasを中心としたクラウドに関してはAWSが業界首位でしたが、今回の決定を踏まえて、Azureがどこまでその差を詰めていくのか、また他のユーザ、プレイヤーがどう動くのかに注目です。

(ご参考)
トランプ氏、国防総省のクラウド契約に介入か 前長官スタッフが内幕本 CNN 2019.10.27
米国防総省クラウド入札の行方 2018/9/20
※以前この入札について取り上げた本ブログ内の記事です。