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土曜日, 7月 04, 2026

南海トラフ巨大地震はITシステムをどう襲うか──2025年新想定で読み解くクラウド・通信・BCPの防災設計

2025年3月31日、内閣府の南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループが約13年ぶりに被害想定を全面改定した。最大クラスの地震が発生した場合、直接死は最大29万8000人、経済被害は約292兆円に達するという、日本社会がこれまで経験したことのない規模の災害想定である。

本稿では、この新想定を踏まえ、データセンター・クラウド基盤、通信インフラ、企業のBCP、政府系システムという4つの切り口から、南海トラフ巨大地震がITシステムに与える影響を整理する。エンジニア・IT企画担当者が自組織の防災設計を見直す際の参考になれば幸いである。

1. 2025年新被害想定の要点

新想定の最大の特徴は、2012〜2013年の前回想定から死者数(前回32万3000人→今回29万8000人、約1割減)が若干改善した一方で、経済被害額(前回約220兆円→今回約292兆円)は建設費高騰や被害評価手法の高精度化により大幅に増加した点である。また今回初めて、避難生活に伴う体調悪化等で生じる「災害関連死」を試算し、2万6000〜5万2000人という数字が示された。これは直接死とは別枠のカウントであり、両者を合算した報道も見られるため注意が必要である。

項目 2012〜2013年想定(前回) 2025年3月新想定
死者数(直接死・最大) 約32万3000人 約29万8000人
災害関連死 試算なし 2万6000〜5万2000人(今回初試算)
経済被害額 約220兆3000億円 約292兆3000億円
震度7の市町村数 143市町村 149市町村
停電(最大) 最大約2950万軒
断水(最大) 最大約3690万人

なお、南海トラフ地震の30年以内発生確率については、2025年1月時点で「80%程度」とされていたが、その後、政府の地震調査委員会が不確実性を考慮した見直しを行い、2025年9月には「60〜90%程度以上」(算出方法によっては「20〜50%」という幅も存在)という表現に改められている。ブログや資料で「80%」という数字を引用する際は、この見直しの経緯を併記するのが望ましい。

2. データセンター・クラウド基盤への影響

2-1. 東京圏・大阪圏への一極集中という構造的リスク

総務省・経済産業省の有識者会合資料によれば、国内データセンターはサーバー面積ベースで約150万平方メートル(東京ドーム約30個分)存在するが、その8割強が東京圏・大阪圏に集中しており、この傾向は今後も続く見込みとされている。資料によって関東6割強・関西2割強程度という内訳も示されており、合計すると8〜9割が東京・大阪の2大都市圏に偏っている状況である。

この一極集中の背景には、インターネットサービスプロバイダーが相互接続を行うIX(インターネットエクスチェンジ)拠点が東京・大手町と大阪・堂島に集中しているという事情がある。IX接続数は関東が7割前後、関西が2割前後を占めるとされ、通信の遅延(レイテンシ)を抑えるためにデータセンターもこの2拠点周辺に立地する構造が続いてきた。

ここで重要なのは、南海トラフの想定震源域が静岡から九州にかけての太平洋沿岸に広がっており、大阪圏はこの震源域にきわめて近いという点である。新想定でも大阪府内の広い範囲で震度6弱以上、沿岸部では津波被害が想定されている。つまり「東京と大阪の2拠点に分散していればBCP的に安全」という従来の発想は、南海トラフ地震に関しては必ずしも成立しない。東京は首都直下地震、大阪は南海トラフ地震という異なる災害リスクにそれぞれ晒されているが、南海トラフが「全割れ」パターンで発生した場合、大阪圏のリスクは東京圏よりも直接的に高くなる可能性がある。

2-2. 主要クラウド事業者のリージョン構成

事業者 国内リージョン構成 備考
AWS 東京・大阪 ガバメントクラウドでも東京・大阪に限定
Microsoft Azure 東日本(東京・埼玉)・西日本(大阪) ガバメントクラウド認定
Google Cloud 東京・大阪 ガバメントクラウド認定
Oracle Cloud(OCI) 東京・大阪 ガバメントクラウド認定
FJcloud-V(富士通) 東日本4リージョン・西日本2リージョン 北米リージョン(us-east-1)は2025年9月30日にサービス提供終了、現在は国内6リージョン構成
さくらインターネット 石狩(北海道)・東京 2026年3月27日にガバメントクラウド正式認定。国産クラウドとして唯一かつ5番目の認定事業者

見ての通り、政府認定クラウドはAWS・Azure・Google Cloud・OCIの4社に加え、2026年3月27日にさくらインターネットの「さくらのクラウド」が正式認定を受け、5社体制となった。国産クラウドとしては唯一の存在であり、外資系4社が軒並み東京・大阪の2拠点構成であるのに対し、さくらインターネットは石狩(北海道)と東京という組み合わせを取っている点が構造的に異なる。

外資系4クラウドの東京・大阪2拠点構成は、通信遅延やデータ主権要件を満たす現実的な選択ではあるが、前述の通り大阪が南海トラフの震源域に近接している以上、「東京・大阪の2リージョン運用=広域災害対策として十分」とは言い切れない構造である。その意味で、震源域から遠い石狩を含むさくらインターネットの構成は、南海トラフ地震という単一災害シナリオに対する耐性という観点では、外資系4社の東京・大阪構成よりもむしろ有利に働く可能性がある点は付記しておきたい(ただし、石狩・東京の組み合わせは首都直下地震と北海道地震という別の複合リスクを内包する点には留意が必要である)。

2-3. ガバメントクラウドの地理分散要件

この課題は政府側も認識しており、デジタル庁が公表しているガバメントクラウド調達仕様書(令和8年度募集分)には、データセンターは地理的に離れた日本国内の複数の地域(例えば、関東と関西、北海道と関東、関西と九州など)に設置するなど、大規模地震や電力供給障害を想定した災害対策を講じることという要件が明記されている。「関東と関西」だけでなく「北海道と関東」「関西と九州」という組み合わせも例示されている点は重要で、南海トラフの震源域から離れた北海道・九州を含めた分散が政府調達レベルでは想定され始めていることを示している。

実際の事例として、ガバメントクラウド先行事業に採択された神戸市では、東京リージョンと大阪リージョンの間でDR環境を構築した例が報告されている。ただし、これも本質的には「東京・大阪の2点間分散」であり、南海トラフの全割れシナリオに対する耐性という観点では、北海道・九州など震源域から十分離れた第三のリージョンを組み合わせる設計が今後より重要になると考えられる。

3. 通信インフラへの影響

3-1. 海底ケーブル陸揚局の太平洋側集中

総務省資料によれば、国際海底ケーブルの陸揚局は約5割が関東(房総半島・北茨城)、約3割が関西(志摩半島)に集中している。志摩半島は三重県、まさに南海トラフの想定震源域の直上に位置する。南海トラフ地震で志摩半島周辺の陸揚局が被災した場合、国際通信の分岐点としての機能が損なわれるリスクがあり、国内のインターネット接続全体への波及も懸念される。政府はこのリスクを踏まえ、国際海底ケーブルの多ルート化や陸揚局の分散を「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」の一環として進めている。

3-2. 過去の大規模災害から見える通信インフラの限界

東日本大震災(2011年)では、非常用電源の枯渇等により通信各社合計で約2万9000の基地局が停波した。復旧には約1カ月半を要し、4月末時点でようやく福島第一原発周辺の対応困難エリアを除きほぼ復旧した。音声通話については輻輳対策としてNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの主要3社が最大70〜95%の通信規制を実施している。

北海道胆振東部地震(2018年)では、日本初となる全域停電(ブラックアウト)が発生し、約6500基地局が停波、停電は最大295万戸に及んだ。北海道電力の全域停電は約64時間後まで続いた。この際、さくらインターネットの石狩データセンターは非常用発電機で稼働を継続したものの、商用電源喪失を検知して非常用電源へ切り替える制御回路が正常に作動せず、一部ゾーンのサーバーが約5時間停止するというトラブルも発生している。自家発電設備を備えていても、切替機構そのものの信頼性検証(実負荷試験等)が欠かせないことを示す実例といえる。

両震災に共通する教訓は、①非常用電源の燃料備蓄量(東日本大震災当時は基地局の電源容量が不足し長時間停電に耐えられなかった)、②電源切替機構の信頼性、③通信規制による輻輳回避と業務影響の両立、の3点に集約される。NECや富士通のデータセンターが胆振東部地震で72時間分の燃料備蓄により無停止運用を実現した実績は、南海トラフ地震のような広域・長期停電(新想定では電柱被害による停電復旧に1〜2週間を要すると想定)に対しては、72時間備蓄でも不十分となり得ることを示唆している。燃料の追加供給契約や自治体・自衛隊との連携も含めた計画が必要である。

4. 企業のBCP・事業継続への影響

新想定では、停電の復旧について、需給バランスに起因するものは数日で復旧する一方、電柱等の設備被害による停電は復旧までに約1〜2週間を要するとされている。断水についても、東海3県で復旧率95%に達するまで約8週間かかるとの想定である。IT部門がBCPを検討する上では、「停電=数日で復旧する」という楽観的な前提ではなく、地域によっては1〜2週間規模の長期停電・断水を前提とした計画が必要になる。

また、南海トラフ沿岸には製造業・小売業が集積しており、新想定でも生産・サービス低下に伴う被害は45兆4000億円と見積もられている。サプライチェーンの寸断は、直接被災していない地域の企業にとっても、部材調達・物流の停止という形でIT基盤以外の側面からも事業継続に影響を与える点に留意したい。

5. 政府系システムへの影響

政府は2025年度末までに地方自治体の基幹システムをガバメントクラウドへ移行する方針を掲げてきたが、令和7年12月末時点で標準化対象約3万4592システムのうち特定移行支援システムに該当する見込みは約26%にとどまっており、移行は依然として進行中の段階にある。南海トラフ地震が今後30年以内に高い確率で発生し得ることを踏まえると、移行完了前の過渡期における自治体システムの災害耐性(オンプレミス環境の耐震性、ガバメントクラウドへの接続経路の冗長性等)も論点となる。

ガバメントクラウドの調達仕様書に明記された地理分散要件(前述)は、今後の自治体システム設計における重要な指針になる。特に、東京・大阪の2点間DRだけでなく、震源域から離れた北海道・九州を組み合わせた構成が推奨される方向性がうかがえる。

6. IT視点での対策の方向性

  • 3拠点以上への地理分散:東京・大阪の2リージョン運用に加え、震源域から離れた北海道・九州リージョンを組み合わせた3-2-1的なバックアップ設計を検討する。
  • 長期停電を前提とした電源設計:72時間の自家発電備蓄を基本としつつ、新想定が示す1〜2週間規模の停電復旧期間を踏まえ、追加燃料供給契約や複数系統からの調達を確保する。
  • 電源切替機構の実負荷試験:胆振東部地震の教訓として、UPS・自家発電への自動切替回路そのものの定期的な実負荷試験を行う。
  • RPO/RTOの数値化と定期的な検証:「クラウドだから大丈夫」という前提を避け、復旧目標時点(RPO)・目標時間(RTO)を具体的な数値で定義し、実際のフェイルオーバー訓練で検証する。
  • 通信手段の多重化:衛星通信(Starlink等)や複数キャリア回線の併用により、特定地域の基地局・海底ケーブル陸揚局の被災に備える。

まとめ

2025年の新被害想定は、死者数こそ微減したものの、経済被害額の増加や災害関連死の新規試算など、南海トラフ巨大地震の深刻さを改めて示すものとなった。ITシステムの観点で特に注意すべきは、国内データセンターの8割強、そして政府認定クラウドのうち外資系4社の国内リージョンが東京・大阪の2拠点に集中している一方、大阪が南海トラフの震源域にきわめて近いという構造的な脆弱性である。2026年3月に正式認定された国産唯一のさくらインターネットが石狩・東京という異なる組み合わせを取っている点は、分散の選択肢として注目に値する。ガバメントクラウドの調達仕様に見られるように、政府側でも北海道・九州を含めた分散の重要性が認識され始めている。「東京・大阪2拠点分散=十分な災害対策」という従来の常識を見直し、震源域から十分離れた第三・第四の拠点を組み込んだ設計へと移行することが、今後のIT防災における重要な論点になるだろう。

参考文献・出典

  • 内閣府 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ「南海トラフ巨大地震 最大クラス地震における被害想定について」(2025年3月31日)
  • 内閣府 中央防災会議「南海トラフ巨大地震対策について(報告書)」(令和7年3月)
  • 総務省・経済産業省「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」事務局説明資料(2024年5月)
  • 内閣官房 GX実現に向けた専門家ワーキンググループ(第8回)「データセンター等のデジタルインフラ整備の現状と課題について」(2024年10月)
  • デジタル庁「デジタル庁におけるガバメントクラウド等の整備のためのクラウドサービスの提供-令和8年度募集-調達仕様書」
  • 総務省北海道総合通信局「平成30年北海道胆振東部地震・ブラックアウト 通信・放送の被害状況と当局の対応」(2019年1月)
  • 参議院 総務委員会調査室「東日本大震災における情報通信分野の主な取組」
  • さくらインターネット「石狩データセンター10周年-挑戦の軌跡-」
  • 日経クロステック「データセンターと通信への影響、北海道地震で生かされた経験」
  • さくらインターネット株式会社「令和5年度および令和8年度 ガバメントクラウドサービス提供事業者に採択」(2026年3月27日)
  • ITmedia NEWS「さくらインターネットのクラウドサービス、ガバメントクラウド正式認定 技術要件満たす」(2026年3月27日)
  • FJcloud-V「北米リージョン(us-east-1)の提供終了について」

火曜日, 5月 26, 2026

【2026年5月版】クラウド環境でOracle Databaseを利用するには

以前、クラウド環境でのOracle Database利用についてまとめた記事(2018年9月)を書きました。 それからかなりの時間が経ち、状況が大きく変わったので、2026年5月時点の最新情報に更新します。

まず前提として、Oracle Database(以下、Oracle)を冗長化された仮想環境で利用することのハードルの高さは変わっていません。 OracleのライセンスカウントはSoft Partitioning(VMware、Hyper-Vなど)の場合、Oracleがインストールされた仮想マシンが稼働する可能性のある物理サーバ全台分のプロセッサに対してライセンスが必要です。 HCI(ハイパーコンバージドインフラ)の普及でクラスタが1つのリソースとして管理されるようになった現在、この問題はさらに深刻化しています。

Soft PartitioningとHard Partitioningの違いについては以下のOracleパーティショニング・ポリシー(最終更新2022年2月)を参照してください。
Oracle Server Partitioning Policy(PDF)

ということで、冗長化された仮想環境上のOracleライセンス問題はオンプレミスでも変わらず厄介ですが、2024〜2026年にかけてクラウド側の選択肢が劇的に広がりました。 ここではその最新状況を整理します。 なお、ここで記載している内容は2026年5月時点のものです。特にライセンスの考え方は変わることがあるため、必ず購入元にご確認をお願いします。


1.Oracleが承認したクラウド環境(AWS・Azure・GCP)でのライセンス

OracleはAWS・Azure・Google Cloud Platform(GCP)を「承認済みクラウド環境(Authorized Cloud Environments)」として公式に認めており、仮想マシン上でのOracle利用についてvCPUベースのライセンスカウントルールが適用されます。
Licensing Oracle Software in the Cloud Computing Environment(Oracle公式PDF、2024年6月12日版)

最大の変化:2024年6月12日にGCPが正式追加
2018年時点ではAWSとAzureの2社だけでしたが、2024年6月12日付のポリシー改訂でGoogle Cloud Platformが正式に承認済みクラウドに追加されました。 これにより、AWS・Azure・GCPの3社が横並びで同一のライセンスカウントルールの対象となっています。

承認済みクラウド3社共通のライセンスカウントルール(Enterprise Edition)は以下の通りです。

  • マルチスレッディング(ハイパースレッディング)が有効の場合:2 vCPU = 1 Processor License
  • マルチスレッディングが無効の場合:1 vCPU = 1 Processor License
  • Oracle Processor Core Factor Table(コア係数表)は適用されない
  • カウント対象はインスタンスタイプの最大vCPU数(実際の使用コア数ではない)

Standard Edition 2については、4 vCPU以下のインスタンスが1ソケット(1 Processor License)扱いとなり、4 vCPU超は4 vCPU単位で切り上げてソケット数を計算します。

なお、上記のポリシーPDF末尾には「This document is for educational purposes only and provides guidelines regarding Oracle's policies... It may not be incorporated into any contract」と明記されています。あくまでガイドラインであり、実際の契約はOracle Master Agreement(OMA)等が優先します。


2.Oracle Database@AWS(2025年7月GA・東京2025年12月GA)

2025年最大のトピックの一つがOracle Database@AWSの正式提供開始です。 これはAWSのデータセンター内にOracle Cloud Infrastructure(OCI)のExadataハードウェアを物理設置し、AWSのネットワークと接続してOCIのマネージドサービスとして提供するサービスです。

  • 2025年7月8日:US East(N.Virginia)・US West(Oregon)の2リージョンでGA
  • 2025年12月22日:東京(AP-Northeast-1)・Ohio(US-East-2)でGA
  • 2025年12月23日:Frankfurt(EU-Central-1)でGA、計5リージョン
  • 2026年4月8日:Dublin・London・Mumbai・Hyderabad・Seoulが追加され計12リージョンに拡大(うち東京・Sydney・Canadaは2AZ対応)

提供サービスはOCI Exadata Database Service、Oracle Autonomous AI Database on Dedicated Infrastructure、Oracle Autonomous Recovery Serviceの3種類です。 RACもそのまま利用でき、Oracle AI Database 26aiにも対応しています。 Amazon S3・Bedrock・SageMaker・Redshiftとのゼロ-ETL連携も可能で、AWS Marketplaceから購入でき、AWSのコミットメント(EDP)消化にも充当できます。 BYOL・Oracle Support Rewardsも適用可能です。

なお従来のAmazon RDS for Oracleは引き続き提供されています。 RDS for OracleはフルマネージドでSE2のLicense Included(EEはBYOLのみ)を選べる唯一のサービスですが、対応バージョンは19cおよび21cのみです(2026年5月時点)。 26ai/23aiは未対応で、マネージドサービスで最新バージョンを利用したい場合はOracle Database@AWSのAutonomous Databaseが選択肢となります。 また、RDS Custom for Oracleでは2025年7月にMulti-AZサポートが追加され、ベアメタルインスタンス対応も拡充されています。


3.Oracle Database@Azure(2025年2月日本GA・ISMAP対応)

Oracle Database@AzureはOracleとMicrosoftが2023年9月に発表したサービスで、AzureのデータセンターにOCI Exadataを物理設置してOracle側がフルマネージドで運用します。

  • 2023年12月13日:US East(East US)で初GA
  • 2025年2月13日日本(Japan East)で国内初GA
  • 2025年中:Japan West(大阪)もDR用途で追加
  • 2025年10月時点:28リージョンで提供(AI World 2025発表)、その後11月に31リージョンへ拡大

日本における重要な進展として、ISMAP(政府向けクラウドサービス安全性評価制度)への対応が2025年中に完了しました。 また、Azure Key Vault統合・Microsoft Sentinel/Purview連携・Microsoft Fabric Open Mirroringも提供されており、エンタープライズおよび公共・金融向けの実績も生まれています。 たとえば2025年10月には、日本オラクルがネオファースト生命保険(第一生命グループ、保有契約件数100万件超)が保険契約管理システムのデータベース基盤にOracle Database@Azure(Exadata Database Service)を採用したと公表しています。

利用可能なサービスはExadata Database Service、Autonomous Database、Base Database Service(19c/26ai選択可)、GoldenGate、Oracle Exadata Database Service on Exascale Infrastructure(ExaDB-XS)などです。 Azure Marketplaceから購入でき、Azureのコミット(MACC)消化が可能です。


4.Oracle Database@Google Cloud(2025年6月東京GA)

OracleとGoogleは2019年に相互接続の連携を発表していましたが、2024年6月に大幅に提携を拡張し、Google CloudのデータセンターにOCI Exadataを物理設置するOracle Database@Google Cloudを発表。同年9月9日にAshburn・Salt Lake City・London・Frankfurtの4リージョンでGAしました。

  • 2025年6月13日東京(Asia-Northeast 1)で国内初GA
  • 2026年2月:大阪(Asia-Northeast 2)でExadata Database ServiceがGA
  • 2026年4月22日時点:15リージョンで提供(東京・大阪含む)

提供サービスはExadata Database Service、Autonomous AI Database、Base Database Service(26ai対応)、Exadata Database Service on Exascale Infrastructure(ExaDB-XS)、Oracle AI Lakehouse(Apache Iceberg対応)などです。 Google Cloud Marketplace経由での購入・パートナー販売が可能で、Google Cloudのコミット消化にも充当できます。 Gemini・Vertex AIとOracle DBの統合(同一データセンター内)が最大の特徴であり、AI活用を検討する企業にとって大きなメリットとなります。

なお2025年6月時点では東京リージョンのみGAで大阪は未対応だったため、DR構成が必要な場合はOCI大阪リージョン+FastConnect構成との組み合わせが現実的でした。現在は大阪も対応済みです。


5.Oracle Cloud Infrastructure(OCI)を利用する

Oracle DBを利用するうえで、ライセンスコストの構造的優位があるのがOCIです。 OCI東京リージョン(ap-tokyo-1)は2019年4月30日に開設、大阪リージョン(ap-osaka-1)は2020年12月に開設され、日本国内に2拠点の本番・DR構成が可能です。 Oracleは2024年4月に「今後10年間で日本のクラウド・AIインフラに80億ドル以上を投資する」と発表しており、引き続き日本での投資を強化しています。

BYOLのライセンス計算(OCI vs. AWS/Azure/GCP の差)

環境 1 Processor Licenseで使えるvCPU/OCPU コア係数表
AWS・Azure・GCP(HT有効) 2 vCPU = 1 Processor License 適用なし
OCI 2 OCPU = 1 Processor License(EE)
4 OCPU = 1 Processor License(SE2)
適用なし
(OCI独自の有利なルール)

OCIではOCPU(1 OCPU = 2 vCPU相当)単位で課金するため、同じProcessor License数でAWS/Azure/GCPの2倍のvCPU相当の処理能力が得られます。 さらにOracle Support Rewards(OCI利用料金1ドルあたり0.25〜0.33ドルをオンプレのOracleサポート費から控除)により、TCO面でOCIが構造的に有利です。

OCI上のデータベースサービスとしては、Autonomous Database(サーバーレス)、Base Database Service(19c/26ai)、Exadata Database Service、Exadata Database Service on Exascale Infrastructureなどが揃っています。 RAC構成も組め、高可用性が必要な大規模Oracleもカバーできます。


6.国産ソブリンクラウド(Oracle Alloyベース)

Oracleは「Oracle Alloy」というプログラムを通じて、パートナー企業が自社のデータセンターにOCI相当の環境を構築・提供できる仕組みを整備しています。 日本では以下の4社がOracle Alloyを採用したソブリンクラウドを提供・計画しています。

  • NRI(野村総合研究所)atlax2024年4月16日に日本国内で初めてOracle Alloyが稼働開始した事業者。東京・大阪の自社DCの2拠点にOracle Alloyを導入し、OCI IaaS・PaaSのフルサービスと100以上のOCIサービスを提供。以前から自社DCにOCI Dedicated Regionを導入し、金融SaaS(BESTWAY・T-STAR・THE STAR等)の基盤として実績があったことが背景にある。マネージドサービス「atlax」との組み合わせにより、金融・小売などの顧客のマルチクラウド環境をトータルで運営・監視できるのが特徴。2025年2月にはセキュリティサービス・AI実行環境の提供も拡充。
  • 富士通クラウドサービス powered by Oracle Alloy:2025年4月14日に国内提供開始。富士通DCからOCI相当の150以上のサービスを提供。経済安全保障推進法の基幹インフラ事業者向けの主権クラウドとして位置づけ。なお旧「FJcloud-O」上のDB powered by Oracle Cloudは2024年に新規申込終了。
  • NTTデータ OpenCanvas:Oracle Alloyベースのソブリンクラウドを、東日本リージョンから段階的に展開予定。
  • SoftBank Cloud PF Type A:2025年10月に発表、Oracle AlloyとGPU環境を組み合わせた国内ソブリンクラウド。

これらのサービスは、クラウドへの移行を希望しつつもデータ主権・セキュリティ要件が厳しい公共・金融・医療分野の企業にとって、現実的な選択肢となっています。 特にNRIは日本国内のOracle Alloy第一号として2024年4月に稼働開始しており、金融業界を中心に最も実績が豊富です。


7.Oracle AI Database 26ai(2026年1月オンプレGA済み)

2024年5月にOracle Database 23aiがGAとなり、AI Vector Search・JSON Relational Duality・Raft Replication・SQL Firewall・Select AIなどAI時代向けの300超の新機能が搭載されました。 そして2025年10月14日、Las Vegasで開催されたOracle AI World 2025にてLarry Ellison会長がOracle AI Database 26aiを発表。23aiをさらに進化させたAIネイティブDBとして、名称・バージョン番号が改められました。

26aiの仕組みとしては、Oracle Database 23aiに「October 2025 Release Update(バージョン23.26.0)」を適用するだけで移行でき、データベースのアップグレードやアプリケーションの再認定は不要です。 AI Vector Search・Unified Hybrid Vector Search・Agenticフレームワーク統合・AI Lakehouse(Apache Iceberg対応)などの機能が追加料金なしで利用できます。

クラウドおよびオンプレミスの提供状況

  • OCI(Autonomous DB、Base DB、Exadata等)、Oracle Database@Azure・AWS・Google Cloud:提供中
  • Oracle Exadata、Oracle Database Appliance(ODA):提供中
  • 汎用オンプレミス(Linux x86-64):2026年1月27日GA済み(バージョン23.26.1、EEのみ。SE2は2026年内の他プラットフォームリリースと同様に順次対応予定)

長らく「次のLTSリリース(23ai/26ai)はいつオンプレで使えるのか」が注目されていましたが、2026年1月27日にLinux x86-64向けEEが正式提供されたことで、オンプレ環境でも最新のAI機能(Vector Search、Select AI等)が利用できるようになりました。 19cからの移行先として、オンプレ継続企業にとっても大きな選択肢が加わったと言えます。

なお26aiはLong-Term Supportリリースで、Premier Supportは2031年12月31日まで(23aiと同一のサポート期間を継承)です。


8.その他:オンプレとのハイブリッド・ハウジング構成

高可用性・高信頼性が求められ、すぐにはクラウド移行が難しいOracle環境については、Oracle部分だけオンプレ(データセンターのハウジングやホスティング)に残しつつ、他のシステムはクラウド化するハイブリッド構成も依然として有効です。 具体的なオプションとしては以下があります。

  • OCI Exadata Cloud@Customer:顧客のDCにExadataハードウェアを設置し、OCIのマネージドサービスとして運用。ハイブリッドクラウドの中でも最もOracleとの親和性が高い。
  • OCI Compute Cloud@Customer / Dedicated Region:OCIを顧客DC内で動かす別オプション。
  • 専用線接続(Oracle FastConnect / AWS Direct Connect / Azure ExpressRoute):オンプレOracle環境とクラウドを低遅延・高帯域で接続。

また、さくらのクラウドなどOracleの承認済みクラウドに含まれない国産クラウドのIaaS上でOracleを稼働させることは、ライセンス的にはSoft Partitioning扱い(物理サーバ全台分のライセンスが必要)となるため、コスト面で現実的ではありません。 さくらインターネット自身も公式に「Oracle Database直接利用不可、専用サーバPHYまたはOCI経由でのマルチクラウド構成を推奨」と案内しています。


まとめ(2026年5月時点)

2018年の記事執筆時からの最大の変化は、Oracle DatabaseがAWS・Azure・GCP(Google Cloud)すべてのメジャークラウド上で、「Oracle社がフルマネージドで運用するExadataサービス」として利用できるようになったことです。 以前はハイパースケーラー上でのOracle利用はライセンスカウントの煩雑さとRAC不可という制限がありましたが、Oracle Database@系のサービスを使えばRACも使えてライセンスもBYOL・Support Rewardsが適用されます。

各クラウドの選択ポイントを整理すると:

  • AWSをメインに使っている企業:Oracle Database@AWSが東京GAで選択肢に。AWSのコミット消化も可能。
  • Azureをメインに使っている企業:Oracle Database@AzureがJapan EastでISMAP対応済み。公共・金融・医療向けに最も実績あり。
  • Google CloudやGemini AIと組み合わせたい企業:Oracle Database@Google Cloudが東京・大阪両リージョン対応済み。
  • TCOを最大化したい企業(OracleライセンスをBYOLで活用):OCI直接か富士通Alloyなどの国産ソブリンクラウドがライセンス効率で有利。
  • 小〜中規模でフルマネージドをリーズナブルに:Amazon RDS for Oracle(SE2 License Included)が依然として唯一の選択肢。ただし対応は19c/21cのみ。
  • オンプレ継続だが23ai/26aiの機能を使いたい:2026年1月27日に26aiオンプレ版(Linux x86-64 EE)がGA済み。ExadataやODAは不要。

Oracleのライセンスポリシーは変わりやすく、また各ポリシー文書は「non-contractual(契約書ではない)」と明示されています。 移行や新規導入の判断にあたっては、必ず最新のOracle公式ドキュメントおよびOracle営業・販売店に確認することをお勧めします。

最後になりますが、Oracleがある環境のクラウド化を進める一番わかりやすい方法が「Oracleをやめる」であることは2018年から変わっていません。 ただ、DBの移行は大変な作業ですし、特にストアドプロシージャが多い環境やOracleを前提としたパッケージ製品では容易ではありません。 そんな環境でも、上記のようにOracle Database@系サービスやOCIを活用することでクラウドのメリットを享受する選択肢が格段に広がっています。 この記事が少しでも参考になれば幸いです。

金曜日, 11月 08, 2019

ニフクラ Oracle DBを稼働させることができるニフクラOVMの提供を開始

ニフクラでOracle Databaseを稼働することができる、OVMという環境の提供が開始されました。
OVM ニフクラ

以前より何度か本ブログでもOracle Databaseをクラウド環境に持ち込むことの難しさを取り上げています。
クラウド環境でOracle Databaseを利用するには

取り敢えず現状Oracle Databaseをクラウド上で動かすには、Oracle Cloud(OCI)を利用するか、許可されたクラウドサービスであるAWS、Azureを利用する、といった方法が基本になります。それ以外に、クラウド事業者が独自に対応させているOracle Database用の環境を利用する、という方法も実はあり、国産クラウドだと幾つかそういった環境を提供しているところがあります。

ニフクラも以前はやっていたのですが、色々あってほぼ新規はない状態でした。が、今回新たにOracle Database専用の環境の提供を始めたようです。
恐らく仮想基盤をOracle Linuxで作っているので、オラクル社も文句は言えないですよね?ということだと思われます。

本環境の良い点、悪い点をざっと纏めておきます。(個人的な所感です。)

【良い点】

  • 4vcpuまでSE2であれば1プロセッサ分のライセンスで良い(AWS/Azureと同じ)
  • 11gR2から19cまで対応している(ただし、OSはOracle Linuxのみ)
  • RAC構成を組むことができる(AWS/AzureはRACを組むことができない)

【悪い点】

  • OSがOracle LinuxとWindows Server 2012/2012 R2しか選べない(今更WinSv2012はないので、基本Oracle Linuxになる)
  • SLA対象外
  • メンテナンスで停止することがある(RAC構成を組めば止まらない)
  • サーバ操作が申請制(ホスティングみたいな運用)
  • スペックが低いと割高(CPU少なめ、メモリ多めだとまあまあ?)

ということで、OSがOracle Linuxという部分がネックではありますが、そこが問題なければ検討の余地はあるかと思います。AWS、Azureと違ってRACを組むことができるのはメリットですね。Oracle DBライセンスを含めると、かなり高額になるとは思いますが。
ただ、結構費用がかかりますよね。スペックが変動する可能性がないのであれば、もうOracle DB部分はホスティングとかでいいんじゃない?という気もします。

本当に、オラクルがVMwareとかHype-V環境で自由にOracle Databaseを使って良いよ、ライセンスは仮想サーバに紐づくよ、と言ってくれるだけでみんな幸せになれるんですけどね。。。まあ、オラクルによるOracle Databaseを人質にしたOracle Cloud(OCI)への囲い込み作戦が絶賛継続中ですので、そんなのはオラクルが倒産しかけない限りはないでしょうけどね(哀)

火曜日, 9月 17, 2019

[Oracle OpenWorld 2019]Oracle Cloudに関する発表色々

現在サンフランシスコで開催されている「Oracle OpenWorld 2019」にて、Oracle Cloudに関する興味深い発表がいくつかありました。

1つ目
[速報]Oracle CloudがSQL ServerやWindows Serverをサポート。Azureとの相互接続も欧州とアジアへ拡大。Oracle OpenWorld 2019 Publickey 2019年9月17日

早ければ来年にも、日本国内でOracle CloudとAzureの相互接続が実現しそうです。先日東京で開催された「Modern Cloud Day Tokyo」でもこれに関して年内になにか発表できれば、という話だったので、正式に発表されるのも意外と近いかもしれません。

Oracle Cloudイベント『Modern Cloud Day Tokyo』が開催されていました  8月 12, 2019

2つ目
[速報]OracleとVMwareが提携。VMware環境でのOracleをサポート開始。「Oracle Cloud VMware Solution」も発表。Oracle OpenWorld 2019 Publickey 2019年9月17日

これはOracleがVMware環境上でのOracle Databaseの動作を正式サポートする、という発表と、Oracle Cloud上でVMware Cloud Foundationを利用したVMware環境を利用できるようにする、という2つの発表です。前者についてはまだサポートしてなかったのかよ!という話ですが、後者は興味深いですね。これでAWS、Azure、GCPに続き、Oracle Cloud環境でもVMwareを利用できるようになります。まだ正式にサービスを開始しているのはAWSくらいですが、このクラウド時代にこれだけ存在感を残しているVMwareは凄いと思います。自社クラウドを捨てた戦略が正しかったのかもしれません。VMware Cloud Foundationを利用したクラウド環境でのVMware利用については、別途記事にしようと思っています。(ずっと思っているけれど、出来ていない...)

3つ目
[速報]Oracle Cloudを期限なく無料で使える「Always Free」発表。1GBのVM2つ、Autonomous Database 2つなど提供。Oracle OpenWorld 2019 Publickey 2019年9月17日

仕事抜きにすると、これが一番興味深いかもしれません。無期限無料でVMが利用できるのはGCPくらいですが、それでも1台でメモリ600MB、ディスク30GBです。AWS,AzureについてはVMの無期限無料枠はありません。そこをメモリ1GBのサーバ2台まで、ディスクも合計100GBを無期限無料枠というのは大盤振る舞いと言えるのではないでしょうか。更に、他のクラウドでは永久無料枠にないRDB(20GB)も2つ利用できます。凄いですね!
ただ、Oracleなのでいつサービスを止めたり仕様を変えたりするかわからない、というリスクは伴います。細かい情報は分からないのですが、利用できるようになったとしても暫くは開発環境にでも使わせて頂ければ、という感じでしょうか。

4つ目
[速報]Oracle Autonomous Linuxリリース。ダウンタイムなしで自律的にパッチ適用、チューニング実行、RHELと100%互換など。Oracle OpenWorld 2019 Publickey 2019年9月17日

Oracleは以前からAutonomous Databaseで運用の自動化を謳っていましたが、今度はOSの運用自動化ツールを提供するようです。なんか凄い気はしますが、OSってユーザが色々弄れてしまうので、本当にどこまでできるのかな?というのが気になるところです。仕事で本番環境にすぐに利用する気は起きないですが、個人的には興味深いですね。コンテナが流行っている状況ではありますが、まだまだサーバOSをそのまま利用している環境はたくさんあります。こういった技術が広がると、サーバOSの位置づけ自体がまた変わるかもしれませんね。

土曜日, 6月 15, 2019

マイクロソフト、オラクルがMicrosoft AzureとOracle Cloudの相互接続サービスを発表

先週のニュースですが、マイクロソフトとオラクルがMicrosoft AzureとOracle Cloudを相互に接続して利用できるようにすると発表しました。

マイクロソフトとオラクル Microsoft Azure と Oracle Cloud の相互接続を発表 日本マイクロソフトJapan News Center 2019年6月10日
Microsoft and Oracle to Interconnect Microsoft Azure and Oracle Cloud Oracle Jun 5, 2019

まずは米国(Azureで言うところのUS Eastリージョン)からサービスがスタートし、その後、他のリージョンにも広げていく計画のようです。
両社はクラウドの相互接続に関連して、次の協業を明らかにした。 
  • AzureとOracle Cloudにまたがる統合的なアイデンティティ/アクセス管理(IAM)。これにより、シングルサインオンと、ユーザープロビジョニングの自動化が図れるという。また、Oracleのアプリケーションが、AzureのActive Directoryをアイデンティティプロバイダーとして利用できる機能を、早期プレビューとして提供開始したという。 
  • Oracle Cloudで動作するOracleのデータベース(RAC、Exadata、Autonomous Database)と、Azure上で動くカスタムアプリケーションあるいはOracleのパッケージアプリケーション(JD Edwards EnterpriseOne、E-Business Suite、PeopleSoft、Oracle Retail、Hyperion)の組み合わせに対するサポートの提供。これらのOracleアプリケーションは、Oracle Cloud上のOracleデータベースとの組み合わせを前提としたAzure上での動作について、Azure側から認証されることになるという。
MicrosoftとOracle、AzureとOracle Cloudを相互接続 @IT 2019年06月06日

ということなので、WEB/APサーバ、もしくはAppServiceなどで構築したフロントはAzureに配置、データベースはOracle Cloud内の各DBaaSを利用するという構成がサポートありで作れるようになるわけです。これは一定のニーズがあると思います。相互接続がどのくらいのネットワークになるのか、特にレイテンシーがどうなるかが気になるところではありますが、まずは米国での展開の状況を見つつ、情報収集をしたいと思います。

Oracle Cloudについてはこのブログでも何度か取り上げています。
クラウド環境でOracle Databaseを利用するには
2018-19年クラウド動向所感まとめ
Oracle Cloud日本リージョン開設!&Oracle社に対する不満

Oracle Cloudは他のメジャークラウドと比較するとOracle Databaseくらいしか強みがなかったので、このAzureとの提携は良い判断だとは思います。Oracle側から見るとデータベースも後からAzure側に持っていかれるリスクもあるわけです。しかし、プラットフォームとしてのクラウドについては勝負がつきつつあるので、手遅れになる前に決断をしたのでしょうね。この辺り、米国の企業は凄いですよね。日本企業だとまだ現状維持で行けると判断し、対応を始めた頃には手遅れになっていることが多い気がします。

一方でマイクロソフトは最近自社のサービスのみに囚われないで、サービスの拡充を進めています。
Microsoft、Azure環境上でVMware基盤を構築できる「Azure VMware Solutions」を発表!
今回のOracle Cloudとの提携もその一環でしょう。

Oracleにしてもマイクロソフトにしても、シャアトップのAWSへの対抗策としての提携、という側面も大きいと思います。シェアトップのAWSに2位のマイクロソフトがどこまで追いつけるのか、そこにどれだけOracleが関われるのかというのが今後のクラウドプラットフォームレースの注目ポイントですね。

1点懸念としては、こうなってくるとOracleがOracle CloudのIaaS部分の開発に力を入れなくなると考えられます。(そういうところも決断が早いので。)そのため、日本でも早めに相互接続を実現して欲しいですね!

日曜日, 5月 19, 2019

Oracle Cloud日本リージョン開設!&Oracle社に対する不満

予定通りOracle日本リージョン(東京リージョン)が開設しました。

 日本オラクルは2019年5月8日、Oracle Cloudの東京リージョンを開設し、提供を開始したと発表した。同社が開発した「Generation 2 Cloud」(以下、Gen2 Cloud)で構築され、自律型データベース「Oracle Autonomous Database」などのサービスを利用できる。
このニュースは複数媒体が取り上げていますので、ご紹介しておきます。

大阪リージョンも6ヶ月以内(ということは少なくとも年内)に開設予定です。これも予定通りですね。これで国内だけでDR環境を構築できるようになりました。

しかしまあ、個人的にはもうあまりOracleとは関わり合いにはなりたくないので、積極的には使いたくないですね。富士通Oracle Cloud環境も残念な事になりそうですし、某所から入手したOracle自慢のOracle Autonomous Databaseの性能検証結果もなんか安定してなさそうだし、オンプレ版Oracle Databaseのライセンスについても19cからSE RACが廃止され、既存のSE RACユーザは今後EEに上げるかRACを諦めるかの選択を迫られます。

なんかもう信用出来ないですよ。確かにクラウド時代の生き残り戦略を考えると、オンプレOracleを自社のOracle Cloud環境に無理にでも引っ張ってくるというのが良い選択肢な気もします。しかし、それはOracle側の都合だけで、ユーザ側は選択肢を狭められメリットがありません。例えOracle Cloudを次期基盤に選択したユーザでさえ、その次の次はOracleを避けようとするでしょう。Oracleに自社基盤を振り回されるリスクがありますからね。ましてや、Oracle Cloudを選択しないユーザはOracle Databaseすら避けると思います。

少し前にこんな記事がありました。
OracleのCEOマーク・ハード氏が、同社の自立型データベース「Oracle Database 18c」の導入メリットを語った。同製品を導入すれば、「必要な管理者はゼロになる」という。
これは勿論Oracle寄りの記事なので、Oracle Databaseの自律が進んでOracle管理者が失業する、という話を取り上げています。しかし、最近自分はOracle Databaseのシェアが減り、仕事がなくなってOracle管理者が失業すると思うようになってきました。

後半はずっとOracleに対する不満になってしまいましたが、まあ今はそんな気分なので記録としてこのままにしておきます(笑)

土曜日, 9月 01, 2018

クラウド環境でOracle Databaseを利用するには

以前、一度IaaS環境でのOracle利用について纏めました。
【クラウドサービス動向その3】IaaS環境上でOracleを利用するには 2016年10月24日

それからかなり時間も立ったので、再度最新の状況について整理しておきたいと思います。

まず前提として、Oracle Database(以下、Oracle)を冗長化された仮想環境で利用することはなかなかハードルが高いです。というのも、Oracleのライセンスカウントは基本的に物理プロセッサにかかるため、冗長化された仮想環境の場合、Oracleがインストールされている仮想マシンが稼働する可能性のある全ての仮想ホスト(物理サーバ/プロセッサ)に対してライセンスの購入が必要になります。

サーバー仮想化ソフトウェア( Oracle VM 、VMware、Hyper-Vなど)を使用した場合のライセンスカウントはどのようになりますか? 日本オラクル 製品価格/ライセンス情報 FAQ
Q.サーバー仮想化ソフトウェア( Oracle VM 、VMware、Hyper-Vなど)を使用した場合のライセンスカウントはどのようになりますか? 
A.VMware、Hyper-VなどはSoft Partitioningの分類となり、Oracle製品がインストールされる(又は稼働する)物理サーバーに搭載されている全ての物理プロセッサがライセンスカウントの対象となります。
※Oracle製品がインストールされる(又は稼働する)仮想マシン(VM)の数は、必要ライセンス数には関係ありません。
 この稼働する可能性のある仮想ホストというのが厄介です。例えば、5台の仮想ホストがそれぞれ2プロセッサ搭載しているとします。この仮想ホスト5台でクラスタを組んだ場合、1台でもOracleをインストールした仮想マシンが配置されると、5台✕2プロセッサ分のライセンスを購入する必要があります。これはSE2の場合で、EEだとコア数で計算するので更に高額になります。ただ、これはまあ分かります。(納得はいきませんが)

では、このOracleライセンス問題があるので、仮想ホスト5台ではなく2台と3台でクラスタ構成にし、仮想ホスト2台の方でOracle仮想マシンを稼働させた場合はどうでしょうか?この場合、2台✕2プロセッサライセンスで良い気がしますよね?ところがどっこい、例えばこの仮想ホスト5台が1セットのストレージで接続されていたりすると、HA以外の方法、例えばVMwareの場合はStorage vmotion等々で移動することできるよね、ということでやはり5台✕2プロセッサ分必要になるのです。ただ、これはOracle側の承認のさじ加減もかなりあるのですが、正直最近はとても厳しいです。段々と主流になりつつあるHCIなどは更に構成が1つとして見なされる可能性が高いと思われます。

ということで、そもそも冗長化された仮想環境でOracleを利用することが難しくなっています。なお、このルールはSoft Partitioning(VMware、Hyper-Vなど)に適用され、、Hard Partitionin(Oracle VM Server、SAN Boot構成など)には適用されません。
Oracle社の俺様ルールな気もしますが、そうなっています。

Soft PartitioningとHard Partitioningの違いは以下の資料をご参照下さい。
Oracle Partitioning Policy

ここまでの説明で、冗長化された仮想基盤の塊であるクラウド環境でOracleを利用することのハードルの高さをご理解頂けたのではないでしょうか。では、ここから本題のクラウド環境でOracleを利用する方法を纏めていきます。
なお、ここで記載している事項は2018年9月1日現在の内容となります。特にライセンスの考え方については変わることがあるので、必ず購入元にご確認をお願いします。

1.Oracleが承認したクラウド環境(AWS、Azure)を利用する

クラウドに関わっている方であればご存知かとは思いますが、超メジャークラウドであるAWSとAzureについてはOracleを仮想マシン上で利用することが可能です。AWSに至っては、DBのマネージドサービスであるRDSでOracleも提供しています。
なぜこの2つのクラウドがOracleを利用することが出来るのかというと、Oracle社が認めているからです。

クラウド・コンピューティング環境における Oracle ソフトウェアのライセンス Oracle
本資料は、以下のベンダーが提供するクラウド・コンピューティング環境に適用されます:
Amazon Web Services  Amazon Elastic Compute Cloud (EC2), Amazon Relational Database Service (RDS)
Microsoft Azure Platform
(以下、これらを「承認されたクラウド環境」と表記します)
本ポリシーは、これらのOracle製品プログラムに適用されます。
承認されたクラウド環境におけるOracleプログラムのライセンス許諾の際には、以下のようにカウントする必要があります。
  •  Amazon EC2 and RDS  ハイパースレッディングが有効の場合 2 vCPU = 1 Processor,ハイパースレッディングが無効の場合 1 vCPU = 1 Processor
  • Microsoft Azure  ハイパースレッディングが有効の場合 2 vCPU = 1 Processor,ハイパースレッディングが無効の場合 1 vCPU = 1 Processor
なお、承認されたクラウド環境において Oracle Processor ライセンスをカウントする場合、Oracle Processor Core Factor Table は適用されません。 
製品名称にStandard Edition One、Standard Edition 2もしくはStandard Editionが付くプログラムが許諾される場合、インスタンスのサイズに基づく価格設定がなされます。承認されたクラウド環境のインスタンスが4 Amazon vCPU以下の場合、もしくは、4 Azure vCPU以下の場合は、1ソケット、すなわち1 Processorとしてカウントされます。承認されたクラウド環境のインスタンスが4 Amazon vCPUもしくは4 Azure vCPUを超える場合は、Amazon vCPU数もしくはAzure vCPU数を4で割り、小数点以下を切上げてソケット数を計算します。
ハイパースレッディングが有効かどうかは、仮想マシンのインスタンスタイプによって異なりますので、確認が必要です。例えば、Azureの場合はDSv2までは無効でしたが、DSv3からハイパースレッディングが有効になりました。

このようにAWS、Azure環境上ではOracleを利用することが可能です。ライセンスの数え方が変わったり、AzureのOracleライセンス込みのイメージが急遽停止になったりなど色々騒ぎになったこともありましたが、現在はこの様になっています。ただ、RACなど一部の機能は利用できないため、大規模なOracle環境、高可用性が必要なOracle環境を動かすのはあまりオススメしません。

2.Oracle Cloudを利用する

Oracle社としての大本命は、Oracle社のクラウドサービスであるOracle Cloud環境でOracleを利用してもらうことでしょう。Oracle Cloud環境ではIaaS上でも勿論Oracleライセンスを持ち込み利用することができますし、Oracleのマネージドサービス(DBaaS)を利用することも可能です。Oracle CloudのDBaaSであるDatabase Cloud Serviceでは、なんとRAC構成も組むことができます(割高ですが)。更に以前このブログでも取り上げましたが、Autonomous Database Cloudという自動化されたOracleも提供されています。

【クラウドサービス動向その5】Oracle Innovation Summit Tokyo 2018に行ってきました①

Oracle Cloudで提供されるDBaaSであれば信頼性もパフォーマンスもでそうなので、大きなDBも動かせると思われます。(まだ大きい構成は触っていないので、思われますという表現ですが。。。)これまでは日本国内では富士通環境で提供されている第1世代のOracle Cloudだけしか利用できませんでしたが、近々Oracle社が提供する第2世代が利用できるリージョンが国内でオープンします。そうなると、Oracleを多く利用しているユーザのクラウド化の向き先が変わるかもしれません。

少し余談ですが、Oracle Cloud IaaS環境でのOracleライセンスの数え方はAWS、Azureとは変わります。

Oracle Processor Core Factor Table 補足資料 Oracle

Oracle Cloud 上で稼働する Oracle ライセンスについて:
Oracle Cloud 上に永久ライセンス、もしくは期限付きライセンスを持ち込み、インストールする場合
例: Oracle Java Cloud Service 上にインストール/稼働する Oracle SOA Suite for Oracle Middleware ライセンス(Oracle Cloud ドキュメント上で認定されたプログラムリスト参照)
Oracle Cloud 上での使用を満たす数量の契約ライセンスが必要です。
具体的には、Processor ライセンスは以下の比率で Oracle Cloud に持ち込むことが可能です。
- 1 Processor ライセンスあたり 2 OCPU 上で当該プログラム使用可能 (1 Processor:2 OCPU)Named User Plus(NUP) ライセンスを Oracle Cloud に持ち込む場合、Cloud でプログラムを使用するために十分な数の NUPライセンスが必要です。つまり、実際のユーザー数か、Processor ごとの最少ユーザー数の、どちらか多い方の数量の NUP ライセンスが必要です。
- 1 Processor あたりの最少ユーザー数が 25 のプログラムの場合、2 OCPU ごとに 25 NUP ライセンスが必要
- 1 Processor あたりの最少ユーザー数が 10 のプログラムの場合、2 OCPU ごとに 10 NUP ライセンスが必要 
契約ライセンス名称に Standard Edition One, Standard Edition 2、もしくは、Standard Edition が含まれる場合(WebCenter Enterprise Capture Standard Edition、Java SE Support, Java SE Advanced、Java SE Suite 各製品を除く) 、 Oracle Compute Units(OCPU)上におけるライセンスは以下比率が適用されます。
- Processor ライセンスはソケットとしてカウントしているとみなし、1 Processor ライセンスあたり 4 OCPU 上で当該プログラム使用可能(1 Processor: 4 OCPU)
1 Sever あたりの最少ユーザー数が 10 NUP ライセンスである Standard Edition 2 の NUP 最少ユーザー数については、a) 実際に使用しているユーザー数 b) 8 OCPU ごとに最少ユーザー数 10 NUP ライセンス のどちらか多い方の数量の NUPライセンスが必要です。また、インスタンスが 8 OCPU を下回る場合も、最少ユーザー数は 10 NUP が必要です。
1OCPU=2vCPU(ハイパースレッディング有効)なので、AWS、Azureの半額ということになりますね。なんかずるい気もしますが、各社自分たちの強みを生かして自社クラウドへの囲い込みを行っている流れなので、仕方がないのかもしれません。

3.Oracle部分だけハウジング、もしくはホスティングにする

最後の方法としてはOracle部分はクラウドではなく、データセンタに置いておく、という作戦です。クラウド環境でOracleを利用するには、というタイトルと反する方法な気もしますが、これはこれで有効な方法です。というのも、国産クラウドの多くはクラウド環境を提供しているデータセンタでハウジングやホスティングも提供しており、構内接続をすることで容易にハイブリッドクラウド環境を利用できるようにしています。勿論、AWS、Azureも専用線接続サービスを提供しているので、ネットワーク通信費用を度外視すればこれらのサービスとの組み合わせでも実現可能です。

Oracle Cloudで大きなDBを構築できるとご紹介したものの、だ新しいサービスであるため、高可用性や高信頼性が求められる環境をいきなり実績のないサービスに移行できるのか、という課題があります。その場合、一旦DBに関しては従来型の物理Oracleでというのも検討する価値はあるかと思います。

ちなみに、Oracleを持ち込むことができないGoogle Cloud Platform(GCP)ですが、アクセンチュアのOracleサービスにGCP環境を接続させることで、Oracleが利用できるようになるよ、というサービスを始めます。これも似た考え方ですよね。

GCPでOracleが実行可能に、Googleが発表した「3つのハイブリッドクラウド」 TECH.ASCII.jp 2018年08月06日

最後になりますが、Oracleがある環境のクラウド化を進める一番わかり易い方法はOracleをやめる、ということなのかもしれません。Oracleは高コストですし、ライセンスの考え方が変わるリスクもありますからね。しかし、DBを変えるのはかなり大変な作業です。特にOracleの場合はたくさんのストアドプロシージャが組み込まれていたりして、簡単に変えられないことも多いかと思います。また、Oracleを利用する前提のパッケージもたくさんあります。そんな環境でも、ぜひクラウドのメリットを享受するため、クラウド化を勧めて頂ければと思いますし、この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。

日曜日, 7月 29, 2018

【クラウドサービス動向その6】Oracle Innovation Summit Tokyo 2018に行ってきました②

Oracle Innovation Summit Tokyo 2018に参加した所感を纏めておきます。

1.Oracle Autonomous Database Cloud
Oracleの最大の強みであり、最も力を入れているOracle Database、そのある意味究極の姿がOracle Autonomous Database Cloudなのかもしれません。まだ、Oracle Database In-Memoryに対応していないなど、機能が不足している部分はありますが、中級DBA程度の自動チューニングというのはなかなか魅力的だと思います。
Oracle Database CloudでRAC構成を取る場合、Extreme Performanceを選択する必要があります。これが結構高くて(月額150千円~)、正直オンプレで構成を組んだほうが全然安いんですよね。でも、Autonomous Database Cloudはそれよりか少し高いくらい(月額168千円~)で利用できるので、AutonomousのAutonomousっぷり次第ですが、お金をかけられるシステムであれば、価値を見出すことはできるかなとは思います。
パッチのオンラインでの自動適用については勝手に当たることがリスクと捉えることもできますが、今の時代適用しないことも大きなリスクなので、どう考えるかですよね。まあ、自分は当てたほうが良いと思う派です。本当にミッションクリティカルな環境を取り扱っている方々には悩ましい問題かとは思いますが。。。

上記で書いたことと逆のことを今度は書きますが、Oracle Databaseを利用しているのは予算をたくさん使えるシステムだけではありません。自分はコストを抑えられるStandard Editionの環境(月額24千円~)に関わることが多いのですが、そういったところにAutonomous技術の恩恵が受けれないのは残念な気もします。例えばどの程度やってくれるのかわかりませんが、Azure Database Serviceも自動チューニング機能がありますし、今後自律機能は商用Database、クラウドDatabase Serviceにとって当たり前の機能になっていく気がします。今後、Oracle Database Cloud Service自体がどうなっていくのか、気になるとことです。

2.Enterprise Cloud
Enterprise Cloudといっても、NTTコムのクラウドサービスのことではありません。企業向けのクラウド、という意味合いです。
今回参加したセッションの中で「我々はエンタープライズを知っている。エンタープライズに対応できるクラウドを提供できるのは我々だけだ。」というメッセージが何度か出てきました。これはまあ、AWSやGCPを意識しての発言ですね。
Oracleは実際、長く企業の基幹システムで利用されてきましたし、実際オンプレ環境で多くのOracle Databaseが稼働しています。なので、エンタープライズを知っているというのは、その通りでしょう。
実際Oracle Cloudは企業向け工夫を幾つかしています。例えば、月額定額の課金体系を用意していたり、ディスクもIOPSについては課金されなかったり、インターネット向けのネットワーク通信も10TB/月間まで無料です。まあ、日本企業の商習慣もあっている良い作戦だと思います。
でもこれって、国内クラウドがAWS、Azure、GCPに対抗するためにやっていることと、全く同じなんですよね。Oracle Cloudの国内リージョンが開設されたとき(近々開設されると思いますが)、国内クラウド陣営はより一層厳しい戦いを強いられるようになると思います。

3.富士通の存在
今回びっくりしたのは、全く富士通の存在感がなかったことです。一応スポンサーにはなっているんですけどね。富士通は富士通センター内にOracle Cloud環境を用意し、既にサービス提供を行っています。

国内データセンターからオラクルのパブリッククラウドサービスを提供開始、エンタープライズ・システムのクラウド化を推進 2017年4月20日 富士通株式会社

その後、2018年2月14日にOracleは独自に国内リージョンを開設すると発表しました。

 Oracle Cloudは、2016年から富士通の国内データセンターからも提供されてきた。新設データセンターと富士通データセンターそれぞれの位置付けについてオーバーマイヤー氏は、「新設データセンターは日本市場の顧客からの期待に応え開設するもの」と繰り返したうえで、「今後も(富士通と)協力しながら両立していくことは間違いない」と語った。

「Oracle Cloud」日本国内へのデータセンター新設計画を発表 2018年02月15日 ASCII.jp

Oracleのパートナーは富士通以外にもたくさん存在するわけで、Oracleのクラウド拡大戦略を考慮すれば独自国内リージョン開設は当然の流れではあります。今後富士通センターのOracle Cloudの位置付けがどうなるのか気になるところですが、まだ決まっていない、といったところでしょうか。富士通自身もクラウド全体の見直しを行ったばかりですし、まだまだ検討中なのかもしれません。
でも流石にOracle Cloud国内リージョン開設までには発表されると思いますので、動向に引き続き注目しておきたいと思います。

土曜日, 7月 28, 2018

【クラウドサービス動向その5】Oracle Innovation Summit Tokyo 2018に行ってきました①

久しぶりの投稿です。

最近はクラウド関連の仕事しかしていないのですが、その関連?ということで「Oracle Innovation Summit Tokyo 2018」に行ってきました。Oracle Cloudとはなっていませんが、基本的にOracle Cloudについてのイベントとなっていました。

Oracle Innovation Summit Tokyo 2018

基調講演を聞いたので、ちょっと纏めておきます。

【シッダールタ・アガルワル氏】
ちょっと言いにくい名前のアガルワル氏はOracle Cloud全体の話をしてくれました。特にAutonomous関連の話が多かったですが、チャットボットなども簡単に作れるよ、というデモがありました。デモはチャットボットの動作です。
どこまでOracle Cloudの機能でどの程度作り込みが必要なのかが分からなかったので、なんとも言えませんが、自分がイメージしているOracleっぽくないサービスの紹介だったので、面白かったですね。あとデモは英語だったので、日本語対応などはどうなるのでしょうか。
あとはAutonomousの話で、レガシーシステムをRPAを入れて自動化に組み込んだという海外事例の話がありました。Oracleの言っているAutonomousはクラウドサービスだけでなくて、ビジネスプロセス全体の自動化だよ、ということですよね。

【マリア・コルガン氏】
コルガン氏はひたすらAutonomous Database Cloudの話でした。まあ、Oracleの一番の売りですし、今回はこの話が聞きたかったので参加したみたいなところもあります。
AWS、Azure、なぜかMariaDB、PostgreSQLまで持ち出して、他のサービスとの優位性を話していました。こうやって躊躇なく競合他社と比較してくるのがOracleっぽいですよね。

【ローレント・ジル氏】
ジル氏は5ヶ月前にOracleに起業した会社を買収され、Oracleに参加したそうです。ジル氏の話はすべてOracle Cloud Infrastructure(OCI)に関連するものでした。AWSもAzureもGCPも良いものだからどうぞ使ってください、でもOracle Cloudも良いので使ってみてください。という自分的にはOracleらしからぬスタンスのセッションだったという印象です。スーツではなく、Tシャツでしたし。話の半分が既に国内に存在しているEdge Servicesについてでしたが、OCI自体もVery Very Very Soonに国内で提供されるとのことです。
実際にパフォーマンステスト結果などのスライドもありましたが、日本リージョンでのテスト結果とのことでしたので、まあ年内とかに開設されるんでしょう。

午後のセッションもいくつか聞いてきました。Oracleと繋がりの強いSIerは既に色々検証しているようで、その率直な感想が面白かったです。第一世代は酷かったよとか。使ってるんだけど(笑)
あとはNTTデータ先端技術のセッションは色々面白かったですね。AWSから人材を引き抜いているから、AWSのデザインパターンが適用できるという話もためになりました。

ちょっと長くなったので、一旦ここまでで区切っておきます。

月曜日, 10月 24, 2016

【クラウドサービス動向その3】IaaS環境上でOracleを利用するには

最近はIaaS上で基幹システムを動かしたい、という話が増えてきました。そういった場合、課題になるのがデータベースです。データベースがOSSのMySQLやPostgresだったら全く問題ないのですが、基幹システムだと商用DB、たとえばMS SQL、そしてOracleを使っていることが多いのです。MS SQLの場合、SPLAで利用するか、SA権付きで購入の上、ライセンスモビリティを利用してIaaS上にライセンスを持ち込む、とったことが出来ます。しかし、Oracleに関してはちょっと厄介です。

まず、Oracle社がOracleを利用して良いよ、と明言しているクラウドがあります。それは、AWSとAzureです。
※AWSの場合、マネージドサービスであるRDSでOracleを利用する、という方法もあります。

クラウド・コンピューティング環境における Oracle ソフトウェアのライセンス
日本オラクル株式会社

この資料には、以下の記述があります。
本資料は、以下のベンダーが提供するクラウド・コンピューティング環境に適用されます:
Amazon Web Services – Amazon Elastic Compute Cloud (EC2), Amazon Simple Storage Service (S3) 、
Microsoft Windows Azure Platform
(以下、これらを「承認されたクラウド環境」と表記します)
つまり、AWSとAzure以外のクラウドに関しては、基本的にはOralceを動かすことを承認していないよ、ということになります。ではそれ以外のクラウドでOracleを利用したい場合はどのようになるのでしょうか?OracleのFAQに、以下の記載があります。
Q.他社のクラウド・サービスに、ライセンス持ち込み(BYOL: Bring Your Own License)でオラクル製品を使う場合、必要なライセンス数はどうなりますか?
A.クラウド・サービスにオラクル製品を導入して使用する場合も、原則としてオラクル製品がインストールされる、または稼働する物理サーバーにライセンスが必要となります。
クラウド・サービスが仮想化環境である場合、必要ライセンス数等は仮想化環境にオラクル製品を導入する場合と同様です。
ただし、オラクル社にて承認されたクラウド・サービスについては、クラウド環境のインスタンスに割り当てられたバーチャル・コアを物理コアと同等に換算し、ライセンス数を計算します。
詳細は「クラウド・コンピューティング環境における Oracle ソフトウェアのライセンス」をご参照下さい。
Q.Oracle Database Standard Edition 2 のライセンスを他社のクラウド・サービスに持ち込むことは可能ですか?
A.Oracle Database Standard Edition 2 は、2 CPUソケットまでのサーバーに導入可能なライセンスです。
クラウド環境であっても、Oracle Database Standard Edition 2の導入先が2 CPUソケットの物理サーバーであれば、Oracle Database Standard Edition 2を導入可能です。
なお、他社クラウド・サービスにオラクル製品を導入して使用する場合も、原則としてオラクル製品がインストールされる、または稼働する物理サーバーにライセンスが必要となります。
クラウド・サービスが仮想化環境である場合、必要ライセンス数等は仮想化環境にオラクル製品を導入する場合と同様です。
ただし、オラクル社にて承認されたクラウド・サービスにOracle Database Standard Edition 2 のライセンスを持ち込む場合(BYOL)は、クラウド環境のインスタンスに割り当てられたバーチャル・コアを物理コアと同等に換算し、ライセンス数を計算します。
また、承認されたクラウド・サービスでは、Oracle Database Standard Edition 2 は 8 バーチャル・コアまでのインスタンスにのみ導入できます。 
ここで登場する承認されたクラウドサービス、というのはAWSとAzureのことです。つまり、それ以外のクラウドサービスでは、Oracleが稼働する可能性がある物理サーバの全てのソケット数分ライセンスを購入しろ、と言っているわけです。パブリッククラウドは物理サーバをたくさん並べてユーザから見えなくしているわけで、そんな購入の仕方は不可能なわけです。正直、これだけ仮想化やクラウドが普及している現代で、物理ソケット数にライセンスが紐づく、という方法しか提供していないのは、時代錯誤といっても良いのではないでしょうか?

なお、AWSとAzure以外のクラウド環境でも、一部のクラウド環境についてはOracle社と個別の契約を結び、Oracleを利用できるようにしているようです。ただ、この契約も米国Oracleの意向で変わってしまったという話もあり、Oracle部分はベアメタルや専用仮想サーバなどで逃げていることも多いようです。

本当に最近のOracleライセンスは変更が多くて、最近だとSE1の廃止、及びSE2による実質大幅値上がりがありました。
日本オラクルが1月30日にデータベース(DB)ソフト「Oracle Database」のライセンス体系を変更した。中小規模システム向けで安価な「Standard Edition One(SE1)」を廃止。「Standard Edition(SE)」のライセンス内容を変更した「Standard Edition 2(SE2)」に一本化した。
同社は2月29日に、旧ライセンスであるSE1とSEの販売を終了。3月1日からSE2と大規模システム向けの「Enterprise Edition(EE)」だけを販売する。
SEユーザーにとっての問題は料金ではなく、利用できる最大CPUソケット数が減る点だ。SEのライセンス価格はSE2と同じ210万円(同)。SEからSE2への移行に追加料金は不要で、保守料も変わらない。
 しかし、SE2では最大CPUソケット数がSEの4から2に減る。「仮想化したり、RACを使ったシステムでは最大CPUソケット数が規定を超える可能性がある」と、パートナーであるアシストのデータベース技術本部ビジネス推進部の岸和田隆部長は懸念する。
日本オラクルがDBライセンスを変更、費用増迫られる中小規模システムも
ITPro 2016年2月29日

これ以外にも、Azureで提供されているOracleライセンス付きイメージVMを突然停止させたりもしています。
休み明けにメールを確認すると、2016年05月02日にAzure Teamから以下のタイトルのメールが来ていた。
『ご対応のお願い: 2016年5月31日に、Azure はライセンスが含まれているOracle VMのサポートを終了します』
メールによると2016年5月30日までにVMの使用を中止するか、適切なライセンスを取得する必要があるという。なお、適切にライセンスを取得した旨を連絡しない場合、通知なしにVMを停止する場合もあるという。この件はMicrosoft及びOracleのサイトにはまだ掲載されていないようだ。
対応までに一ヶ月も無いというのは、あんまりではなかろうか…
MicrosoftがAzureにおけるライセンス込みOracle VMサポートの終了を通達
スラド 2016年5月11日

これは、Oracleライセンス付きのVMイメージが使えなくなった、という話なので、AzureにOracleライセンスを持ち込めなくなったというわけではありません。しかし、Oracleの横暴さが分かるエピソードではないでしょうか?

あまりOracle批判ばかりしても仕方がないのですが、最後に1つ。先日の「Oracle OpenWorld 2016」の講演の中で、AWSを批判して以下のような発言がありました。
Ellison氏の批判は続く。RedshiftやAurora、そしてNoSQLデータベース「Amazon DynamoDB」はAWSでしか稼働しないことに対して、Oracle DBのほかに「Oracle MySQL」「Oracle NoSQL」がオンプレミスやOracle Cloudはもちろん、「Micrsoft Azure」やAWSでも稼働することを挙げた。このことからAWSを「IBMメインフレームよりも閉鎖的」と言い表している。
 「IBMメインフレームの互換機を富士通や日立、Amdahlが開発していた。MVS(IBMメインフレームOSの一つ)やCICS(トランザクション処理用ミドルウェア)、IMS(データ管理システム)などはメインフレーム互換機でも稼働していた。AuroraやRedshift、DynamoDBはAWSでしか動かない」
AWSのデータベースは「IBMメインフレームより閉鎖的」:オラクルCTO
ZDN絵tJapan 2016年09月21日

これは、もう何を言っているんだ?という感じですね。確かに、Auroraなども独自機能部分を使って作り込んでしまうと互換性は減りますが、(少なくと現時点では)MySQL互換のDBなので、MySQLに戻すことはそこまで大変ではないと思います。一方で、Oracleはクラウドだろうがオンプレだろうが確かに『Oracleが許可している環境』であればどこでも動きますが、許可を頂く必要があるわけです。そして、その許可、使用料については全てOracle社が握っているわけです。

私も昔はOracleもよく触っていましたし、今もやっぱりRDBといえばOracleなイメージがあります。シェアも高いですからね。しかし、ここ数年のOracleは、顧客の過去の資産(プログラム、ノウハウ、データ)を人質にとり、収益を上げているだけな企業に思えます。なんか感じ悪いですね。まあ、そこでの収益をクラウドに突っ込もうとしているのかも知れませんが。。。

米国は分かりませんが、日本はかなりパッケージソフト文化だと思います。その場合、ユーザ企業がどのDBを利用するかは、どのパッケージを利用するかに大きく依存します。パッケージがDBにOracleを利用している、ということが弱みになるのであれば、パッケージ開発元もDBを変えてくるのではないか、と思います。それが進んだとき、Oracleは大きくシェアを落とすのではないでしょうか?そうしたら、SE1復活ですかね(笑)それか、もうExadata中心で行くとか。

Oracle Cloudの話も一緒に纏めようかと思っていたのですが、長くなったので一旦ここで切りますね。次回はOracle Cloudの話にしましょう。