火曜日, 7月 11, 2023

大阪・関西万博で飛行予定のeVTOL4機種と現在の状況

 2025年に開催する大阪・関西万博(以下大阪万博)では目玉の1つとしてeVTOLの飛行が計画されており、今年の2月に運行事業者が決定しました。今回は2025年に運行を予定しているeVTOLの現在の開発状況と今後の予定を整理しておきます。


まず、万博で飛行する予定のeVTOLは以下の4つの機種となります。
  • Joby S4(運行事業者:ANA及びJoby Aviation)
  • VoloCity(運行事業者:JAL)
  • VX4(運行事業者:丸紅)
  • SD-05(運行事業者:SkyDrive)

それぞれ、解説していきます。
なお、紹介している仕様は開発中のものとなり、最終的に変わる可能性があります。

Joby S4(Joby Aviation S4)
Joby S4は米国Joby Aviation社が開発する、ベクトル推進タイプのeVTOLです。Joby Aviationにはトヨタが多額の出資をしており、現在外部筆頭株主となっており、取締役も出しています。先日、FAAよりJoby S4の量産初号機の飛行テスト許可を取得しており、現在最も型式証明取得に近いeVTOLです。今のところ2024年に米空軍での運用を開始、2025年に商業運航を開始する予定です。


主な仕様
  • パイロット:パイロット1名
  • 乗客数: 4名
  • 最高速度: 200 マイル/時 (322 km/h)
  • 航続距離: 150 マイル (241.4 km)
  • タイプ:ベクトル推進
  • 電源: リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物バッテリー
  • 翼幅: 35 フィート (10.7 m)
  • 長さ: 24 フィート (7.3 メートル)
  • 最大離陸重量: 4,000 ポンド (1,815 kg)
ベクトル推進(ティルトローター)タイプのeVTOLのため、バッテリーのみの割に最高速度が速く、航続距離がそれなりに長いモデルです。価格は現時点で不明ですが、本モデルがeVTOLとして世に出る最初期の機種となりますので、価格を含め本モデルのスペックが今後登場するeVTOLとの比較のベースラインになると考えます。



VoloCityはドイツVolocopter社が開発する、マルチコプタータイプのeVTOLです。Joby S4が固定翼を持つベクトル推進、リフト&クルーズタイプのeVTOLの代表だとすると、VoloCityはマルチコプタータイプのeVTOLの代表です。今のところ2024年夏、パリオリンピックに合わせてパリで商業運航を開始する計画となっています。


主な仕様
  • 乗組員: 1名
  • 乗客数: 1名
  • 最高速度: 110 km/h
  • 航続距離: 35 km
  • プロペラ:18個
  • モーター:18個 Brushless DC electric motor (BLDC)
  • 電源: リチウムイオンバッテリー
  • ペイロード:200kg
  • 最大離陸重量:900 kg
マルチコプタータイプのため、速度、航続距離ともに控えめです。この航続距離30km程度というのが、バッテリーのみを動力とするマルチコプター型のeVTOLでは多くなっています。VoloCityの特徴の1つに9つのバッテリーパックを5分程度で載せ替えることが可能となっている、という点があります。充電が速くできます、というモデルは多いですが、このバッテリーを素早く載せ替えることで運航回転数を上げる、というアプローチをしているeVTOLは意外と他にない気がします。
ペイロード的に2名しか乗ることができないため、パイロット1名、乗客1名となってしまっているのがネックですね。パイロットレス運航(遠隔操作を含む)が実現化しないと、なかなか普及は難しそうです。むしろVoloCityを荷物運搬用にしたVoloDroneの方が売れるかもしれません。
Joby S4と同様に、VoloCityは商業運航を始める最初期のモデルとなると思いますので、価格を含め、このモデルの仕様がマルチコプタータイプeVTOLのベースラインになると考えられます。



VX4は英国Vertical Aerospace社が開発する、ベクトル推進タイプのeVTOLです。元々2022年に商業運航を計画していましたが、2021年には2024年の開始目標となっています。その後情報を見つけることが出来ませんでしたが、少なくとも万博が開催される2025年には商業運航開始を目標としていると考えられます。

主な仕様
  • パイロット:1 名
  • 乗客:4 名
  • 巡航速度:241 km/h
  • 最大速度:320 km/h
  • 航続距離:160 km以上
  • ペイロード: 450 kg
  • プロペラ: 8 基(前方プロペラ x4、後方プロペラ x4)
  • 電気モーター: 8 基
ベクトル推進タイプであること、乗員数がパイロット含め5名であることなど、Joby S4とかなりスペックが近いモデルです。最高速度はJoby S4と同じですが、航続距離は短くなっています。価格やその他事項を含め、Joby S4との差別化が実現できるかが、今後の成功可否を分けるポイントになると考えます。



国内ベンチャーであるSkyDrive社が開発する、マルチコプタータイプのeVTOLです。このeVTOLについては本ブログでも何度か取り上げています。

元々2025年に型式証明を取得する予定でしたが、2025年の万博は機体ごとの耐空証明で飛ばし、2026年の型式証明取得を目標としています。

主な仕様
  • パイロット:1名
  • 乗員:2名
  • 最大巡航速度:100km(対気速度)
  • 航続距離:約15km
  • 電源:バッテリー
  • 駆動方式:12基のモーター・ローター
  • 主要構造素材:複合材(CFRP)やアルミ合金など
  • 最大離陸重量:1,400kg
マルチコプタータイプですので比較対象はVoloCityとなります。元々パイロット含め2名でしたが、3名に仕様変更したため、そこはVoloCityと比較し優位性があります。ただ、なんといっても航続距離が短いことがネックになりそうです。往復を考えると片道5km程度しか飛ばすことが出来ませんので、現在のスペックでは使い所が限られそうです。航続距離が30-50km程度になれば、活躍の場が増えそうなのですが。

※動画は3人乗りに見直し前のデザインとなっています。

今回、2025年に開催される大阪万博で飛行予定のeVTOLをまとめましたが、こうやって整理してみると、リフト&クルーズタイプのeVTOLが無いですね。リフト&クルーズタイプを開発しているベンチャーも多いのですが、最初に型式証明を取得するのはBeta Technologiesあたりでしょうか。国内もホンダが開発を検討しているeVTOLはリフト&クルーズタイプですし、先日取り上げた国内ベンチャーであるHIEN Aero Technologiesが開発しているのも同タイプですね。

大阪万博で飛行予定のeVTOLは現在開発されている中では先頭を走り、最初に商業運航を行うことを目指している機種たちになります。この先頭集団が2024年、2025年のスタートを現在目指していますので、大阪万博が開催される2025年のタイミングがeVTOL元年になりそうですね。

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