ここ数回、無人ヘリ、大型ドローンを始めとする無人航空機を取り上げています。川崎重工の無人ヘリK-RACERがその代表例ですが、このモデルは現在山岳地帯での荷物輸送を想定して開発が進められています。一方で、日本は島国ですので離島が数多くあります。こういった離島向けに物流サービスを提供するにはどの程度の航続距離が必要なのかを少し考えてみたいと思います。
離島と言っても様々な地域に様々な島があるのですが、ここでは一旦東京都の伊豆諸島をベースに考えてみます。伊豆諸島は空港がある島もあるのですが、ヘリポートのみの島も多くあります。これらの島を毎日ヘリコプターで運行しているのが、東京愛らんどシャトルです。
東京愛らんどシャトルの1日の運行路線は以下のとおりです。
- 八丈島→青ヶ島
- 青ヶ島→八丈島
- 八丈島→御蔵島
- 御蔵島→三宅島
- 三宅島→大 島
- 大 島→利 島
- 利 島→大 島
- 大 島→三宅島
- 三宅島→御蔵島
- 御蔵島→八丈島
こちらをベースに各路線の飛行距離を確認してみます。
そうすると、以下のようになります。
- 八丈島→青ヶ島:70km
- 八丈島→御蔵島:88km
- 御蔵島→三宅島:24km
- 三宅島→大 島:78km
- 大 島→利 島:26km
片道100kmを超えることはない、という感じですね。ということで、航続距離が100kmあれば対応できそうな気もします。ただ、八丈島や大島、三宅島のように空港があり、ある程度設備が整っている島であれば良いのですが、それ以外はヘリポートのみなので、恐らく燃料補給が難しいと考えます。そうなると、100kmを往復できる航続距離200kmは必要になるのではないでしょうか。そうなると、現在開発中のK-RACERを始めとして、無人航空機は航続距離100kmのものが多いので、足りないですね。
最大離陸重量150kg未満の大型ドローンで最近話題になるペイロード50kg/航続距離50kmではないですが、K-RACERなど最大離陸重量600kg程度の無人航空機はペイロード200kg/航続距離200kmを目指せると思うんですよね。例えば有人ヘリではありますが小型ヘリのRobinson R22は最大離陸重量600kg強ですが、ペイロード233kg/航続距離324kmです。無人機になると遠隔操作用の装置やセンサー、カメラなどを搭載する必要があるため、その分本体重量が重くなるなどの課題はあります。しかし、1975年から販売が開始されているR22と比較すると技術も進んでいるわけなので、なんとかなる気がするんですけどね。
なお、離島は伊豆諸島以外にも数多くあります。例えば長崎の五島列島や瀬戸内海の島々です。これらの島々の中にはもっと距離が近いものもありますので、そういったところには航続距離100kmで十分かもしれません。航空機、特に費用対効果を求められるK-RACERのような無人航空機については、あまりオーバースペックになってもダメですし、一方でスペックが足りないのももっとダメです。将来を見越した正確な利用用途(ターゲット)の設定、これが腕の見せどころになるのかもしれません。
脱線しますが、参考で他の色々な島への距離を紹介しておきます。
東京都内→父島:986km
小笠原諸島の父島へは現在、船舶(おがさわら丸)で24時間かけて行く方法しかありません。都内からだと約1000km離れており、更に空港もありません。以前より空港の計画はあるのですが、なかなか実現しませんね。eVTOLなどの垂直離着陸機が普及すれば、と思わなくもないですが、航続距離1000kmはなかなかハードルが高そうです。民間向けオスプレイことAW609を就航させる、という話(案)もあるようです。
沖縄本島→波照間島:453km
沖縄本島→石垣島:400km
石垣島についてはすでに空路もあるのですが、~500km程度の距離なのでハイブリット方式のeVTOLが実用化されると、新たな旅客、無人機での空輸が行われるかもしれません。特に魅力的な観光地ですので、ニーズはありそうです。
石垣島→尖閣諸島:172km
こちらは民間のニーズではないのですが、防衛のニーズが高まっている地域です。石垣島を拠点にして尖閣諸島まで作戦行動範囲とするためには少なくとも500km程度の航続距離が必要だと考えますので、無人ヘリよりもハイブリット方式のeVTOLの方が活躍しそうです。小規模&迅速に補給するニーズはあると思うんですよね。
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