月曜日, 4月 17, 2023

eVTOLに必要なもの

 自分はeVTOLについてかなりポジティブに捉えているのですが、世間では結構批判的な意見が多いですね。その中でもなるほど、と思う意見も結構あります。

こちらの方の記事などは根拠がしっかりあり、分かりやすいですね。

有人ドローンに未来はあるのか(前編)

有人ドローンに未来はあるのか(後編)


結局のところ、垂直離着陸機としてはヘリコプターという歴史の長いものがあるわけで、それに対してはっきりとしたメリットがないと意味がないよ、という話です。eVTOLの特徴として電動(モーターを利用する)、自律飛行というものがありますが、別にこれらはヘリコプターでやれば良いわけですし。


ということで、eVTOLに必要なものを少し考えてみます。eVTOLにも種類があるので、以下の記事を参考にマルチコプター型とリフト&クルーズ/ベクトル推進の2パターンに分けて考えてみました。

Vol.1 新たなモビリティ「空飛ぶクルマ」の定義と将来像 ドローンジャーナル 2022年5月27日


マルチコプター

マルチコプタータイプは、ホビー用などの無人ドローンを大きくしたような作りのものです。比較的作りやすいということで、ベンチャー企業はこのタイプが多い気がします。ヘリコプターと同様に固定翼機と比較すると速度が遅いなど、飛行特性はヘリコプターとほぼ同じとなります。つまり、ヘリコプターで良いじゃない?なんでeVTOLなの?という疑問に真っ向からさらされるタイプです。

このタイプで必要なヘリコプターとの差別化ポイントは、静粛性経済性の2つになるのではないかと思います。

上空を飛んでいるヘリは結構うるさいですよね。ヘリコプターの騒音の原因はいくつかあるようですが、ローター関連が騒音の要因のようです。(当たり前か。)

機内騒音の低減(5)ヘリコプターとプロペラ機の騒音の実態とは マイナビニュース 2019/12/10

マルチコプターをはじめとするeVTOLは、ヘリコプターと比較し静粛性に優れていると言われています。実際のところまだあまり飛んでもいないので実態は分からない、というのが正直なところです。ただ、実際に静粛性に優れているのであればメリットは複数あります。例えは離発着場をヘリコプターと比較して柔軟に設置できる(騒音の考慮が減る)、夜間飛行時の苦情が減る(夜間飛行はまだその他にも課題がありますが)、などです。

経済性については複雑なヘリコプターのローターと比較し、モーターでシンプルに動かすマルチコプターは作りやすく、点検、部品交換費用などのランニングコストも下がると言われています。ただ、ヘリコプターも歴史がある乗り物なので、既に結構コストが落ちているんですよね。例えば以下のヘリコプター価格情報を参考にすると、

タービン単発ヘリコプター機種別価格比較表

2〜4人乗りで5千万円〜8千万円、4〜6人乗りで1億〜4億といったところでしょうか。マルチコプタータイプは2人乗りが多いので、初物価格ということを考えても上限の1.5倍の1.2億円くらいまでが上限価格になるのではないでしょうか。更にそこから価格を落としていく必要があると考えます。そう考えると、EH216は2人乗りで5千万円弱なので、良い線をいっているのかもしれません。中国製なのでFAAなどが認定許可証を出すか不明ですが。ランニングコストについては航空機のランニングコストは保守コストよりも定期点検、保管、保険などが占める割合のほうが高いようなので、正直メリットを出せるかは分かりません。


リフト&クルーズ/ベクトル推進

こちらはマルチコプター型と比較すると固定翼機があるなど、単純なマルチコプター型の無人ドローンとは違いがあります。これらのタイプのヘリコプターとの差別化ポイントは静粛性飛行速度だと考えます。

静粛性についてはマルチコプタータイプと同じ話なので割愛しますが、こちらのタイプのポイントは飛行速度ですね。ヘリコプターは大型や軍用を除くと概ね150〜250km/hの速度です。一方でベクトル推進(固定翼があるタイプなど)は300km/h以上の速度を出すものが多く、そのあたりが差別化ポイントになるかなと考えています。結局、こちらのタイプのeVTOLはオスプレイのようなティルトローター機の小型版のような機種も多いですからね。

ということで、こちらのタイプは経済性はそこまで求められないかなとは考えています。もちろん、ヘリコプターと比較してあまりに価格が乖離すると話にならないとは思いますが。こちらのタイプは4人~6人乗りが多いので、上限価格は4億円の1.5倍、6億円までになると思います。


ということでここまで色々と書きましたが、なんかマルチコプタータイプの未来は暗い気がします。リフト&クルーズ/ベクトル推進の方は価格、航続距離がこなれてきたら流行る気がします。航空機は開発にも購入、維持にも多額の費用がかかるため、やはり価格勝負のようなものを複数企業が開発、販売するのは難しいと考えます。マルチコプタータイプはグローバルで精々2,3社、リフト&クルーズ/ベクトル推進の方は複数社から出るものの、こちらのタイプは元々開発するのも大変なので、やはりeVTOLを手掛けているベンチャー企業は今後5年以内にかなり淘汰される気がしますね。

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