2026年7月12日に公開したGPT-4/GPT-4oを基準点に主要AIモデルの勢力図を比較した記事のフォローアップです。7月の結論は「GPT-4o基準は各社の最下位ティアまでほぼクリアする」でした。それから約4か月、各社は世代交代と大幅な値下げを進め、基準点だったGPT-4/GPT-4oそのものもAPIから消えつつあります。
本稿は元記事と同じ5カテゴリ(フロンティア各社、その他の欧米勢、中国勢、ローカルLLM、日本勢)で最新状況を整理し、特にローカルLLMと国産モデルが今どの水準にあるのかを掘り下げます。結論を先に書くと、「特定の独立評価でGPT-4oを大きく上回る低価格・小型モデルが複数ある」という点は11月時点でも成り立ちます。ただし、「すべての下位モデルが全面的にGPT-4o超え」「家庭用GPU上の量子化版でも同じ性能が実証済み」とまでは言えません。
1. 結論:基準は「足切り」から「床」へ
- 独立計測でもGPT-4o超えが確認できる低価格・小型モデルがある。Vals AIのGPQA Diamondでは、GPT-4o(2024-11-20版)の53.79%に対し、Gemini 3.5 Flash-Liteが83.84%、Qwen3.8-27Bが88.89%でした。
- 一方で、従来の比較軸(MMLU・GPQA)はほぼ使われなくなった。最新の最下位ティアほどGPQAやMMLUが公表されておらず、Vals AIも「性能が飽和した」としてGPQAを新モデルで計測しなくなっています。公式値でGPT-4o超えを示せるモデルは、むしろ減りました。
- 基準点が現役ではなくなる。OpenAIは初代GPT-4とGPT-4o初版をAPIから削除済みで、残るGPT-4o系も2027年1月14日に削除予定です。
- ローカルLLMでは、24GB GPU 1枚で動く27BクラスがGPT-4oのGPQAを大きく上回る。ただし、独立計測の値と手元の量子化版の性能は別の話です(第7章)。
- 国産モデルは、日本語の一部指標でGPT-4oを上回る。NIIのLLM-jp-4.1は日本語MT-Benchで3サイズともGPT-4oを上回りましたが、別の日本語指標では下回っています。指標次第で勝敗が分かれるというのが実態です(第8章)。
2. 基準点(GPT-4/GPT-4o)の現在地
2-1. 基準値
基準値は7月記事のものを踏襲します。GPT-4oは、OpenAI公式値でMMLU 88.7%、GPQA Diamond 53.6%、MATH 76.6%、HumanEval 90.2%です。第三者のVals AIでも、GPT-4o(2024-11-20版)のGPQA Diamondは53.79%でした。「GPT-4o相当」はGPQA Diamond 50〜54%前後の帯として扱います。
2-2. 2026年にGPT-4系はどう扱われたか
ChatGPTでは、2026年2月13日にGPT-4o、GPT-4.1、GPT-4.1 mini、o4-miniが選択肢から外れました(OpenAI Help Center)。APIの廃止日程は、OpenAIのDeprecationsページに次のとおり載っています。
| 対象モデル | 廃止日(shutdown) | 通知日 | 推奨される後継 |
|---|---|---|---|
| chatgpt-4o-latest | 2026/2/17 | 2025/11/18 | gpt-5.1-chat-latest |
| gpt-4(gpt-4-0613ほか)、gpt-4o-2024-05-13 | 2026/10/23(廃止済み) | 2026/4/22 | gpt-5.6-sol |
| gpt-4.1-nano | 2026/10/23(廃止済み) | 2026/4/22 | gpt-5.6-luna |
| gpt-3.5-turbo | 2026/10/23(廃止済み) | 2026/4/22 | gpt-5.6-terra |
| gpt-4o-2024-08-06/2024-11-20、gpt-4o-mini、gpt-4.1、gpt-4.1-mini | 2027/1/14(予定) | 2026/10/14 | gpt-6-luna |
出典:OpenAI API Deprecations(2026年11月取得)。ファインチューニング済みモデルの扱いなど細目はページを参照。
注目点は2つあります。第一に、2027年1月14日削除の群は、通知(2026年10月14日)から約3か月しかありません。移行に余裕のある日程ではありません。第二に、OpenAIはGPT-4oの推奨後継に最下位ティアのgpt-6-lunaを指定しました。ベンダー自身が「最下位ティアでGPT-4oの役割を置き換えられる」と見ていることを示します。ただし、後継指定は業務品質・互換性・対応モダリティが全面的に同等だという保証ではありません。移行時は自社データでの確認が必要です。
Azure OpenAIについては、Microsoftの廃止表で、対象となるGPT-4oの稼働中ベースモデル推論の廃止日が2027年1月14日と記載されています。Regional Standardなど提供形態によっては別の条件があり、OpenAI直API(初版は2026年10月23日)とは日程が異なります。利用中のデプロイ形態ごとに確認してください。
3. 比較表:最下位・低価格ティアはGPT-4oを超えているか
「GPT-4o超えの根拠」は3段階で示します。強は、独立計測(Vals AI、Epoch AIなど)でGPT-4oの帯を明確に超える値があるもの。中は、公式値だけ、または間接的な指標・世代関係からの推定にとどまるもの。弱は、確認できなかったものです。
| モデル(提供元) | 発表 | 価格(入力 / 出力) | 主要ベンチ値(区分) | GPT-4o超えの根拠 |
|---|---|---|---|---|
| GPT-6 Luna(OpenAI) | 2026/9/22 | 0.10 / 0.50 | GPQA Diamond 約90.5%(Epoch AIの評価データ)。OpenAIはGPQA・MMLUを公表していない | 強(独立計測)。GPT-4oの推奨後継 |
| Claude Haiku 5.5(Anthropic) | 2026/10/7 | 0.10 / 0.50(入力10万トークン以下)。超過時は0.50 / 2.50 | GPQA Diamond 約89.7%(Epoch AI)。SWE-bench Pro 64.8%、OSWorld 2.1 72.4%(Anthropic公表) | 強(独立計測) |
| Gemini 3.5 Flash-Lite(Google) | 2026/7/21 | 0.30 / 2.50 | GPQA Diamond 83.84%(Vals AI) | 強(独立計測) |
| Gemini 3.8 Flash(Google) | 2026/9/2 | 0.75 / 3.75(2026年末まで)、2027年から1.50 / 7.50 | GPQA等の値は確認できなかった | 中(世代・ティアからの推定) |
| Grok 4.7(xAI) | 2026/9/21 | 2 / 6 | Terminal-Bench 4.0 37.6%(xAI公表)。MMLU・GPQA系は確認できなかった | 中 |
| DeepSeek V4.1 Flash(DeepSeek) | 2026/9/10(10/17更新) | 0.30 / 1.20(ピーク時、集計サイト値) | DeepSWE v1.1 77.0(DeepSeek自社値)。MITライセンス | 中 |
| Qwen3.8-27B(Alibaba) | 2026/8 | オープンウェイト(Apache 2.0) | GPQA Diamond 89.2(Qwen公式)、88.89%(Vals AI) | 強(公式+独立計測) |
| Mistral Large 4(Mistral AI) | 2026/10/6プレビュー、10/29重み公開 | 0.70 / 2.10(Mistral公式価格) | 自社主張のみ(Terminal-Bench 4.0でGLM-5.3と同等) | 中 |
| Nova 2 Lite(Amazon) | 既存 | 0.30〜0.33 / 2.50〜2.75(集計で割れる) | 確認できなかった | 弱 |
出典:Vals AI、Epoch AI、各社公式発表・価格ページ、集計サイト(2026年11月取得)。価格・ベンチ値は取得時点のもので、各社の改定で変わります。
表から読み取れることが3点あります。最下位ティアの単価は、GPT-6 LunaとHaiku 5.5が揃って0.10 / 0.50ドルまで下がりました。7月記事ではHaiku 4.5が1 / 5ドル、GPT-5.6 Lunaが1 / 6ドルでしたから、約10分の1です。Gemini 3.5 Flash-Liteは0.30 / 2.50ドルで、単価では最安ではありません。「Googleが最安」という7月までの見方は、最新世代では当てはまらなくなりました。そして「強」と評価できるのは、独立計測の値が公開されているモデルに限られます。
独立計測の値(Vals AI、GPQA Diamond)を並べると、次のようになります。
出典:Vals AI GPQAベンチマーク(2026年9月1日更新)。バーは最大値(88.89%)を100%とした相対比で、0%起点の絶対比ではありません。
4. フロンティア各社
4-1. OpenAI
- 7月に「GPT-6/Astraの有無」が焦点でしたが、9月に答えが出ました。GPT-6 Astraは9月上旬に公開され、9月22日にGPT-6 SolとLuna、9月29日(DevDay)にGPT-6.1 Sol、10月26日にGPT-6.1 Terra(1 / 5ドル)が続きました。
- 価格は、Astraが10 / 50ドル、Solが2 / 10ドル、Lunaが0.10 / 0.50ドルです(OpenAI公式価格ページを引用した複数の解説記事による)。
- GPT-5.6 Lunaは、7月記事では1 / 6ドルでした。OpenAIの変更履歴では7月30日に約80%の値下げがあり、0.20 / 1.20ドルになっています。GPT-6 Lunaの0.10 / 0.50ドルは、その半額です。
- Artificial Analysisの現行比較(Intelligence Index v5.0.1)では、GPT-6 Lunaが28、GPT-5.6 Lunaが24です。指数は版が変わると値も変わるため、版を明記して読む必要があります。
- オープンウェイトのgpt-oss系は、7月以降に新モデルが出たことを確認できませんでした。
4-2. Anthropic
| モデル | 発表日 | 価格(入力 / 出力) | 備考 |
|---|---|---|---|
| Fable 5.1(同一モデルの限定版がMythos 5.1) | 2026/9/1 | 10 / 50 | Fable 5から価格は据え置き |
| Opus 5.5 | 2026/9/22 | 4 / 20 | 7/24のOpus 5(5 / 25)から値下げ |
| Sonnet 5.5 | 2026/9/28 | 2 / 10 | Sonnet 5の導入価格終了後の定価は、資料により2 / 10と3 / 15で割れ、確定できなかった |
| Haiku 5.5 | 2026/10/7 | 0.10 / 0.50(入力10万トークン以下) | Haiku 4.5(1 / 5)の約10分の1。10万トークンを超えるとリクエスト全体が0.50 / 2.50になる |
出典:Anthropic公式発表、価格まとめ(2026年11月取得)。
Haiku 5.5には「価格の崖」があります。長い入力を渡すと、リクエスト全体の単価が5倍になります。長文処理では、見かけの最安単価がそのまま使えません。
4-3. Google
- 7月21日にGemini 3.6 Flash(1.50 / 7.50ドル)とGemini 3.5 Flash-Lite(0.30 / 2.50ドル)、9月2日にGemini 3.8 Flashが登場しました。3.8 Flashの価格は、Googleの文書で2026年末まで0.75 / 3.75ドル、2027年から1.50 / 7.50ドルとされています。
- 7月時点で「パートナーとテスト中」だったGemini 3.5 Proは、一般提供を確認できませんでした。代わりにGemini 4 Argonが9月30日に発表され、10月13日に一般提供されています(導入価格2 / 10ドル、11月30日以降は4 / 20ドルと報じられています)。
- Gemini 4 Carbonは10月28日に発表され、まずサイバー防御担当者向けとされました。LMArenaのText部門では1528で首位との集計があります(集計サイトによる10月28日付データ)。
- Gemma 4(12B/26B-A4B/31B)が引き続き現行で、後継は確認できませんでした。
4-4. xAI・Meta
- xAI:Grok 4.6(8月12日)、Grok 4.7(9月21日、2 / 6ドル)と更新されました。Grok 5は未リリースです。低価格ティアはGrok 4.1 Fastのままで、新しい軽量モデルは確認できませんでした。
- Meta:Muse Spark 1.3(9月2日)を出しました。小型のオープンウェイトMuse Glimmer(8月10日)、大型のMuse Wonder(10月)に続き、Muse Spark Open(10月15日)を公開しています。Muse Spark Openは816B総/42B活性のMoEで、コンテキストは100万トークン、ライセンスはMuse Model Licenseです。
- 7月記事で触れたMeta自社ハーネス値とVals AI値の乖離は、その後解消したかを確認できませんでした。
5. その他の欧米勢
- Mistral AI:Mistral Large 4(約1兆パラメータ)を10月6日にプレビュー公開し、10月29日に重みを公開しました。公式API価格は0.70 / 2.10ドルです。「GLM-5.3と同等の性能で、タスクあたりのトークンが47%少ない」というMistralの主張は自社値です。非中国のオープンモデルという「主権」の訴求を前面に出しています。
- Microsoft:MAIモデル群について、7月以降に新モデルや価格が公表されたことは確認できませんでした。
- Amazon:現行はNova 2 Lite、Nova 2 Sonic、プレビュー段階のNova 2 Pro(1.375 / 11ドル)です。re:Invent(11月30日〜12月4日)で新フラッグシップが出るという見方がありますが、これは予測で確定情報ではありません。
- NVIDIA:Nemotron 3.5 Lightning(8月11日、30B-A3B、コンテキスト100万トークン、日本語を公式サポート)とNemotron 3.5 Bolt(10月15日、74B総/9B活性の視覚言語モデル)を出しています。
- IBM:Granite 4.2(8月25日、8Bと30B、Apache 2.0、日本語を公式サポート)を出しました。
- Apple:独自LLMの新しい動きは確認できませんでした。
6. 中国勢
7〜10月に、DeepSeek、Qwen、Moonshot、Z.ai、Xiaomi、MiniMaxが相次いで新しいフラッグシップを出しました。多くは重みを公開し、価格は米国勢を大きく下回ります。
| 提供元 | 主なモデルと時期 | 重み・ライセンス | 備考 |
|---|---|---|---|
| DeepSeek | V4.1 Flash(9/10、10/17更新)。V4 Proは継続 | MIT。V4.1 Flashは552B総/8〜16B活性 | V4.1 Proは名前のみ予告で時期未定 |
| Alibaba(Qwen) | Qwen3.8-Max(クラウド版8/3、重みは8/12)、Qwen3.8-27B | Max:独自ライセンス(2.4T総/95B活性)。27B:Apache 2.0 | Qwen 4は「学習中」で時期未定 |
| Moonshot(Kimi) | Kimi K3(7/16、重み7/27)、K3.1 Pro(10月、2 / 10ドル) | K3:独自のKimi K3 License(2.8T総/104B活性)。K3.1 Proも公式リポジトリに重みあり(96分割、計1.56TB) | 大企業やMaaS事業者には追加の義務がある |
| Z.ai(GLM) | GLM-5.3(753B)、GLM-5.3-Flash | GLM-5.3-Flash:MIT | 公式Terminal-Bench 4.0で41.8%、オープンウェイト最上位 |
| MiniMax | M3.1 Flash | 発表の4日後に重みを公開 | ― |
| その他 | Xiaomi MiMo-V2.6-Pro、StepFun Step 5 Preview、Tencent Hy4 Preview、Baiduの小型Ernie | MiMo:MIT、Hy4:Apache 2.0 | ByteDance Seed/Doubaoの新しい動きは確認できなかった |
出典:各社公式発表、Hugging Face(Moonshot公式リポジトリ)、解説記事(2026年11月取得)。
独立評価の状況
- Artificial AnalysisのIntelligence Index v5では、オープンウェイト最上位のKimi K3.1 Proが46、クローズドの最上位Opus 5.5が59で、13ポイントの差があります。
- LMArena Textでオープンウェイト最上位は、Kimi K3(Max)の19位(419件中、11月6日時点)でした。
- Tolokaは、Kimi K3が5回の試行で安定して完了できたエージェントタスクは13.3%(pass^5)にとどまったと報告しています。ベンチマークの高さと、繰り返し実行したときの安定性は別物です。
- 日本語のNejumi Leaderboard 4(8月更新)では、Qwen3.8-2.4T-A95Bが総合0.860で全体3位、オープンウェイトでは首位です(Qualitegの9月1日付分析経由の二次情報)。日本語でも大型の中国系オープンモデルが強い構図が続いています。
- ライセンスは必ず確認してください。Kimi K3 LicenseとQwen3.8-Maxのライセンスには、売上規模などの閾値に応じた義務があります。
なお、7月記事で触れたMiniMax M3の非公式Arena Elo(約1450)は、今回確認できませんでした。日本・アジアでの具体的な採用件数も確認できていません。
7. ローカルLLM:家庭用GPU 1枚の水準はどこまで来たか
7-1. 現在の本命:Qwen3.8-27B
Alibabaが2026年8月にApache 2.0で公開した27BのDenseモデルです。公式値はGPQA Diamond 89.2、LiveCodeBench v6 90.3、SWE-bench Pro 61.7、Terminal-Bench 2.1 73.0で、いずれも前世代のQwen3.6-27Bを上回ります(GPQAは87.8→89.2)。GPQA Diamondは、GPT-4oの53.6%(OpenAI公式)に対し、Qwen公式89.2、Vals AI計測88.89%と、30ポイント以上の差です。
ただし、この数字を「手元のPCで同じ性能が出る」と読むには、3つの注意点があります。
- 独立計測と手元の量子化版は別の話。Vals AIの値は、開発元の提供する環境で測ったものです。24GB GPUに載せる4bit量子化版(GGUFなど)で同じスコアが出ることを示すものではありません。
- 「考える量」が桁違い。Vals AIのページでは、Qwen3.8-27Bの平均トークン数は16.51k、レイテンシは約116秒でした。GPT-4o(2024-11-20)は1.76k、約15秒です。トークン数は約9倍で、正答率の高さは長い思考と引き換えです。対話用途の応答速度とは別に考える必要があります。
- GPQAは知識を要する推論の指標で、エージェント性能の指標ではない。大型のオープンモデルでさえ、Artificial Analysisの総合指数ではクローズドの最上位から13ポイント離れています(第6章)。27Bクラスの総合力がフロンティアに並ぶとは言えません。
7-2. 動かす環境と候補モデル
| 環境 | メモリの目安 | 候補モデル | 備考 |
|---|---|---|---|
| RTX 3090/4090(24GB VRAM)、24GBのMac | Qwen3.8-27Bの4bit量子化で約16〜17GB | Qwen3.8-27B、Gemma 4 26B-A4B/31B、Nemotron 3.5 Lightning 30B-A3B、Granite 4.2 30B、LLM-jp-4.1(32B-A3B/33B) | 各モデルとも量子化の方式・設定で品質が変わる |
| RTX 5090(32GB VRAM) | 同上。コンテキストに余裕 | Qwen3.8-27Bほか上記 | 128Kコンテキストまで実用的との第三者報告 |
| 128GB以上の統合メモリ(Mac Studio、Ryzen AI Max系) | 100GB超 | Qwen3.8-Flash-Next(125B/6B活性)、GPT-OSS Swallow 120B、Muse Spark Open(Mac Studio 2台構成とされる) | 9月にMac Studioの新世代が出たと報じられている |
出典:各社モデルカード、第三者ベンチマーク記事、9to5Mac(2026年11月取得)。
第三者の実測では、RTX 3090で約40、RTX 4090で約87、RTX 5090で約75 tok/s(マルチトークン予測を有効にすると最大約144 tok/s)という報告があります。ただし測定条件(コンテキスト長、量子化、推論エンジン)が揃っていないため、序列は参考程度にとどめてください。7月記事で例に挙げたPhi-4(14B)とQwen2.5-Coder-32Bは、いまでは旧世代です。Phi系の新モデルは確認できませんでした。
7-3. セキュリティ上の注意:Ollama「Bleeding Llama」
ローカルLLMの運用で見落としやすいのが、ツール側の脆弱性です。OllamaのCVE-2026-7482(通称Bleeding Llama、CVSS 9.1)は、GGUFモデルの読み込み処理に起因するヒープ領域の範囲外読み出しで、認証なしの攻撃者が3回のAPI呼び出しでプロセスのメモリ内容(会話、APIキー、環境変数など)を取り出せる可能性があります。Cyera Researchが2026年2月2日にOllamaへ報告し、CVEは5月1日に公開、Cyeraの技術公表は5月5日です。0.17.1より前のバージョンが影響を受けます。公開状態のOllamaサーバーは、Cyeraの推計で約30万台とされます(公開サーバー数の推計は調査により異なります)。対策は、バージョンを0.17.1以降に上げることと、ポート11434を認証なしでインターネットに公開しないことです。
7-4. ローカルLLMの水準の見方
整理すると、「24GB GPU 1枚で、GPQAのような知識推論の独立計測でGPT-4oを30ポイント以上上回るモデルが動く」ところまで来ています。一方、実際の業務品質は、量子化の種類、コンテキスト長、思考トークンの量、対象タスクで変わります。「ローカルならGPT-4oの代替になる」は、自社タスクで評価して初めて言える結論です。
8. 日本勢:国産モデルはGPT-4oの水準に届いたか
8-1. デジタル庁「源内」の進展
デジタル庁の公表資料を整理した解説記事(2026年10月21日時点)によると、源内の試用LLMは、3月6日に応募15件から7件が選定され、その後2社が辞退して、5月に次の5社が契約しました。7月記事は選定時点(3月)の7件を紹介しており、5月の契約状況は反映できていませんでした。
- 契約済み:NTTデータ(tsuzumi 2)、ソフトバンク(Sarashina3 mini。選定時のSarashina2 miniから差し替え)、NEC(cotomi v3)、富士通(Takane 32B)、PFN(PLaMo 2.0 Prime)
- 契約一覧に名前がないのは、KDDI・ELYZA(Llama-3.1-ELYZA-JP-70B)とカスタマークラウド(CC Gov-LLM)です。辞退理由は公表されていません。
- tsuzumi 2、Takane 32B、PLaMo 2.0 Primeの3モデルは7月から「さくらのクラウド」で動き、既存の海外モデルとのブラインドA/B評価を9〜11月に複数回行う計画です。
- 10月20日に「エージェントチャット」の提供が始まりました。2027年度向けの公募は2026年11月に始まる予定で、評価テストは50問から300問・35項目に増え、tool use(外部ツール呼び出し)の説明が必須になります。2027年4月からは有償利用に移ります。
8-2. 各モデルの最新動向とGPT-4oとの比較根拠
| モデル(提供元) | 最新動向 | GPT-4oとの比較根拠 |
|---|---|---|
| LLM-jp-4.1(NII) | 9/28公開。8B、32B-A3B(MoE)、33Bの3サイズ。チューニング済みモデル(thinking版)、GGUF量子化版、SFT・DPOデータを公開 | NIIがGPT-4oと同一表で比較(8-3参照)。指標により勝敗が分かれる |
| PLaMo(PFN) | PLaMo 3.0 Primeは6/22に正式提供。10/27にPLaMo 3.1 Primeの提供が始まった(PFN発表) | 7月記事で紹介した2.2 Primeは、自社ベンチJasterでGPT-4o miniを上回ると自社報告。3.x系でGPT-4oと直接比べた公式値は確認できなかった |
| tsuzumi 2(NTT) | 30B、フルスクラッチ、GPU 1枚で推論可能。8/26にオンプレミス提供を発表 | NTTは「GPT-4oと同等以上の日本語理解能力」を掲げる(自社評価)。NTT自身が全方位でChatGPTを上回るわけではないとも明言 |
| Takane 32B(富士通、Cohereと共同開発) | 源内で契約・稼働 | GPT-4oと直接比べた公式値は確認できなかった |
| Sarashina3 mini(ソフトバンク)、cotomi v3(NEC) | 源内で契約 | GPT-4oと直接比べた公式値は確認できなかった |
出典:NII公式ブログ、PFN発表、NTT発表、デジタル庁公表資料の解説記事(2026年11月取得)。
ELYZA、Stockmark、Rakuten AI、KARAKURI、GENIAC第4期については、7月以降の新しい動きを今回確認できませんでした。
8-3. LLM-jp-4.1とGPT-4oの比較(NII公式)
NIIのブログは、GPT-4o(gpt-4o-2024-08-06)とLLM-jp-4.1の各サイズを、LLMによる評価(llm-jp-judge)の4指標で比較しています。LLM-jp-4.1は推論の強度(reasoning effort)をmediumにして評価されています。
| 指標 | GPT-4o | LLM-jp-4.1 8B | 32B-A3B | 33B |
|---|---|---|---|---|
| MT-Bench(日本語) | 7.29 | 7.58 | 7.69 | 7.76 |
| MT-Bench(英語) | 7.69 | 7.67 | 7.85 | 7.98 |
| AnswerCarefully(日本語の安全性) | 4.00 | 3.92 | 3.91 | 4.08 |
| llm-jp-instructions(日本語の質問応答) | 4.07 | 3.67 | 3.79 | 3.83 |
出典:NII LLM-jp-4.1公式ブログ(2026年9月28日)。太字はGPT-4oを上回った値。評価はLLMによる採点で、GPT-4oも同じ条件の評価対象です。
読み方としては、日本語MT-Benchでは3サイズすべてがGPT-4oを上回り、英語MT-Benchでは32B-A3Bと33Bが上回りました。一方、llm-jp-instructionsでは3サイズすべてが下回っています。「国産がGPT-4oに追いついた」とも「届かない」とも一括りにはできず、指標と用途で勝敗が分かれるという結論になります。なお、LLM-jp-4.1は学習データまで公開しており、中身を検証できる点では他のモデルと性格が異なります。
8-4. 日本語総合ベンチマークでの位置(Nejumi Leaderboard 4)
Nejumi Leaderboard 4(8月更新、Qualitegの9月1日付分析経由の二次情報)では、首位のClaude Opus 5が総合0.872でした。国産・日本語強化モデルの上位は次のとおりです。このリーダーボードにGPT-4oは載っておらず、直接の比較はできません。
出典:Nejumi Leaderboard 4(8月更新)をQualitegが9月1日に分析した記事経由。バーは最大値(0.872)を100%とした相対比です。
国産・日本語強化モデルの最上位は0.691で、首位との差は約0.18あります。日本語の指示追従などでGPT-4oの水準に届いていても、現行フロンティアとの間にはまだ距離があるというのが、7月記事と同じ見立てです。各モデルのベースモデルの出自(フルスクラッチか派生か)は、個別に確認する必要があります。
9. 評価環境の変化:GPT-4o基準にまだ意味はあるか
- 飽和:GPQA Diamondは27Bのローカルモデルで89%、上位モデルでは95%前後にまで達しました。MMLUは主要ベンダーの発表からほぼ消えています。Vals AIは、GPQAを「性能が飽和した」として新モデルでは実行しなくなり、過去の結果をアーカイブとして残しています。
- 新しい物差し:発表の主役は、DeepSWE v1.1、Terminal-Bench 4.0、SWE-bench Pro、OSWorld 2.1、HLE、AutomationBench、GDPval-AAなどのエージェント系に移りました。横断指標はVals IndexとArtificial Analysis Intelligence Index(10月27日にv5へ改定)です。METRのタスクホライズンの最新値は確認できませんでした。
- 自社値と独立値のずれ:Haiku 5.5のTerminal-Bench 4.0は、Anthropic公表39.2%、Artificial Analysis 33%、Vals AI 36.4%でした。Kimi K3は、ベンチマークの高さに対して反復実行の安定性が低いことが示されています。
- LMArena:Textの頂点は約1528(集計サイトによる10月28日付データ)に達しました。7月記事のGPT-4o(約1287)と並べたくなりますが、Arenaのスコアは集計時点と手法の改定でずれるため、単純な差として比べるべきではありません。
結論として、GPT-4o基準は「最低限の汎用知能があるか」を確かめる足切りとしては、今も読者に分かりやすい物差しです。ただし、2026年11月にモデルを選ぶ根拠にはなりません。選定は、エージェント系ベンチマークの結果と、自社データでの評価で行うべきです。
10. 7月記事の答え合わせ
| 7月記事の記述 | 11月時点 | 判定 |
|---|---|---|
| GPT-4o基準は各社の最下位ティアまでほぼクリア | 独立計測でも裏付けが増えた。ただし最新モデルの多くはGPQA・MMLUが公表・計測されておらず、一括りの断定は弱めるべき | 成立(表現は要調整) |
| GPT-5.6 Luna 1 / 6ドル、Haiku 4.5 1 / 5ドル | GPT-5.6 Lunaは7/30に約80%値下げ。9/22のGPT-6 Lunaは0.10 / 0.50ドル。Haiku 5.5も0.10 / 0.50ドル | 要更新 |
| GPT-4.1 nanoはGPT-4o未満、GPT-4.1 miniが同等以上 | gpt-4.1-nanoは10/23に削除。GPT-4.1 miniも2027/1/14に削除予定 | 要更新 |
| Gemini 3.1 Flash-Lite(0.25ドル)、Gemini 3.5 Proはテスト中 | Gemini 3.5 Flash-Lite(0.30 / 2.50ドル)が現行。3.5 Proの一般提供は確認できず、Gemini 4 Argon/Carbonが登場 | 要更新 |
| Grok 4.5、Muse Spark 1.1、Mistral Large 3 | Grok 4.7、Muse Spark 1.3(Open/Wonderも)、Mistral Large 4に世代交代 | 要更新 |
| DeepSeek V4 Pro、Qwen 3.7 Max、Kimi K2.6、GLM-5.2 | DeepSeek V4.1 Flash、Qwen3.8(重みも公開)、Kimi K3/K3.1 Pro、GLM-5.3に更新 | 要更新 |
| ローカルはPhi-4、Qwen2.5-Coder-32B、Qwen3.6-27B | Qwen3.8-27Bが現行の本命。Phi-4とQwen2.5-Coderは旧世代 | 要更新 |
| 源内は7モデルを選定 | 3/6の選定7件は事実。その後2社が辞退し、5月に5社が契約 | 状況が進展 |
| PLaMo 2.2 Prime | 7月時点でPLaMo 3.0 Prime(6/22正式提供)が最新だった。10/27にPLaMo 3.1 Primeの提供が始まった | 7月時点で古かった |
| 国産とGPT-4oの直接比較データは乏しい | NIIがLLM-jp-4.1とGPT-4oを同一表で比較。指標により勝敗が分かれる | 一部解消 |
| MiniMax M3の非公式Arena Elo約1450、Meta自社ハーネス値の乖離 | 今回確認できなかった | 未確定 |
判定は筆者によるもので、「要更新」は記述が誤りというより、時間の経過で古くなったものを含みます。
11. 実務での使い分け:階層戦略の更新版
「下位ティアを既定にし、難しいタスクだけ上位へ振り分ける」という階層戦略は、引き続き定石です。中身を更新します。
- まずGPT-4o/GPT-4.1系の移行を済ませる。期限はOpenAI直APIで2027年1月14日です(初版は2026年10月23日に廃止済み)。後継として指定されているのはgpt-6-lunaで、品質が足りない処理だけをGPT-6.1 Terra(1 / 5ドル)やSol(2 / 10ドル)に上げます。
- 既定(下位ティア):分類・抽出・要約・ルーティングには、GPT-6 Luna、Claude Haiku 5.5、DeepSeek V4.1 Flashが候補です。長い入力にはHaiku 5.5の「10万トークンの崖」に注意し、Gemini 3.5 Flash-Liteなども比較します。
- 中位:Claude Sonnet 5.5、GPT-6.1 Sol/Terra、Gemini 3.6/3.8 Flash、Grok 4.7。
- 難しいタスクだけ上位:Claude Opus 5.5、GPT-6 Astra、Gemini 4 Argon。トークン単価ではなくタスク単価で比べてください。思考トークンが多いモデルは、単価が安くてもタスクあたりの費用が膨らみます(Qwen3.8-27Bの平均トークン数はGPT-4oの約9倍でした)。
- データを外に出せない場合:Qwen3.8-27B(Apache 2.0、24GB GPU)、国産のLLM-jp-4.1、欧州製のMistral Large 4が候補です。ローカルに置く場合は、Ollamaなど周辺ツールの脆弱性管理と、非公開運用が前提になります。
- 行政案件:源内の2027年度公募と、tool use対応の要件を追ってください。
- 評価は自社データで:ベンダーの発表値と第三者値の間には、数ポイントのずれが普通にあります。重要な業務では、移行前に自社データで評価してください。
12. まとめ
- 7月の結論は、「特定の独立評価でGPT-4oを大きく上回る低価格・小型モデルがある」という形で11月も成り立ちます。最安ティアの単価は約10分の1まで下がりました。
- ただし、最新モデルの多くはGPQA・MMLUが公表されておらず、独立計測も止まりつつあります。「全面的に上」という断定は避けるべきです。
- 基準点のGPT-4oは、2027年1月14日にAPIから消えます。GPT-4o基準は「歴史的な参照値」に変わりつつあります。
- ローカルLLMは、24GB GPU 1枚でGPQAの独立計測値がGPT-4oを大きく上回る水準です。ただし量子化版の品質、応答速度、エージェント性能は別に確かめる必要があります。
- 国産モデルは、日本語MT-BenchなどでGPT-4oを上回る例が出た一方、別の指標では下回り、現行フロンティアとはまだ差があります。
13. 数値の扱いについて
- OpenAIの廃止日程、NIIのLLM-jp-4.1比較、Vals AIのGPQA値は、公式ページで直接確認できる情報です。
- GPT-6 LunaとHaiku 5.5のGPQAはEpoch AIの評価データによる値で、各社の公式発表ではありません。Fable 5.1やGPT-6 AstraのGPQA値などは、裏付けが取れなかったため記載していません。
- 価格や一部のベンチマーク値は、公式価格ページを引用した解説記事・集計サイト経由です。Gemini 4 Argonの導入価格、DeepSeek V4.1 Flashの価格、Nova 2 Liteの価格(0.30 / 2.50ドルと0.33 / 2.75ドルで割れる)などが該当します。
- Sonnet 5の導入価格終了後の定価は、資料により2 / 10ドルと3 / 15ドルで割れ、確定できませんでした。
- PLaMo 3.1 Primeの提供開始(10月27日)はPFNの発表に基づきます。源内の契約状況は、デジタル庁の公表資料を整理した解説記事(2026年10月21日時点)に基づきます。
- Artificial Analysisの指数は版(v5.0.1など)で値が変わります。LMArenaのスコアは集計時点で基準がずれます。
- 確認できなかった項目:GPT-4o基準値の再取得、Microsoft MAIの新モデル、Gemini 3.5 Proの一般提供、gpt-oss後継、ByteDance・Baiduの詳細、ELYZA・Stockmark・Rakuten AI・KARAKURI・GENIAC第4期の最新動向、METRの最新値、国産モデル各社のGPT-4oとの直接比較(NIIを除く)。
- ベンチマークは実利用感を完全には代表しません。重要な判断には、自社データでの再検証をお勧めします。
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