月曜日, 8月 10, 2026

自動運転の現在地、2026年8月版——Waymo・Teslaは踊り場、日本はティアフォー上場

自動運転はまだ「実証実験の技術」なのか、それとも「回っているビジネス」なのか。この境界線が2026年に入って急速にはっきりしてきました。米Waymoは2月に160億ドルを調達して企業価値1,260億ドルに達し、週50万回超の有料乗車を捌くようになりました。米Amazon傘下Zooxは本日8月10日、Las Vegasで初の有料サービスを開始します。日本でも自動運転OS「Autoware」を手がけるティアフォーが7月22日に東証グロース市場へ上場し、トヨタが資本参加するなど、資金と実装の両面で動きが加速しています。

一方で、8月に入って見えてきたのは「拡大は続くが、成長カーブは踊り場に入りつつある」という別の顔です。WaymoはQ1(3月時点)で週50万回に到達した後、7月22日のQ2決算でも同じ「50万回超」という表現にとどまり、四半期を通じた伸びはほぼ横ばいでした。Teslaも展開都市こそ7都市に増えましたが、有料走行距離の四半期増分はQ1・Q2でほぼ同じ約90万マイルです。情報が錯綜しやすい分野でもあり、企業の目標値と実績値が混同されがちなため、本稿は主要な数値・日付を一次情報(各社発表、NHTSA・国交省等の公的資料、Reuters・Bloomberg・CNBC等の一次報道)で照合したうえでまとめています。

結論を先に書くと、無人商用サービスとして実際にスケールしているのはWaymoと中国勢(Baidu Apollo Go等)のみという構図は変わっていません。Teslaはカメラのみのアプローチで7都市に展開エリアを広げましたが、実働台数と稼働率の低さは解消されていません。日本は東京・横浜で複数陣営が助走を続ける一方、地方の先行事例だった永平寺町の運休は8月時点でも解消していません。

本稿には各社の目標値・市場予測など将来に関する記述が含まれます。これらは各社・調査機関による見通しであり、確定した実績ではありません。特にTeslaの展開時期については過去に複数回未達の実績があるため、宣言と実績を区別して記載しています。

1. Waymo:拡大は続くが、Q2は「横ばい」

Alphabet傘下のWaymoは2026年2月、160億ドルの資金調達を発表し、企業価値は1,260億ドル(post-money)に達しました。Dragoneer Investment Group、DST Global、Sequoia Capitalが主導し、Alphabetが引き続き筆頭株主です。2024年10月のシリーズCラウンド(5.6億ドル調達、評価額450億ドル)からわずか1年強で評価額が2.8倍になった計算になります。

運行実績は2026年3月26日時点で米国10都市で週50万回を突破し、7月8日にはSan Diego・Las Vegas・Tampa・Denverの4都市を追加しました。ただし7月22日のQ2決算でAlphabetが用いた表現は3月時点と同じ「週50万回超」で、四半期を通じた伸びはほぼ横ばいだったことになります。共同CEOのTekedra Mawakana氏は年内に週100万回への到達を目標として掲げていますが、独立系分析(FutureSearch、2026年8月6日更新)ではこのQ2の足踏みを反映し、年末時点の中央値予測を77.5万回から76.5万回へ下方修正しています。フリート規模は約3,700台です。

2026年5月には新型車両「Ojai(オーハイ)」の投入も始まりました。中国Geely傘下Zeekrが製造した車体にWaymoの第6世代システムを搭載したもので、5月28日からSan Francisco・Los Angeles・Phoenixで無料試乗を開始し、7月29日にPhoenixで初の有料サービスに移行しています(カリフォルニア州では新型車両への課金にCPUCの追加承認が必要なため、有料化はアリゾナ州が先行しました)。米国のロボタクシーの主力車両が中国メーカー製という点は、サプライチェーンの観点からも今後の論点になりそうです。なお5月末には、工事帯での走行に課題があるとして一部都市で高速道路サービスを一時停止しており、再開時期は明示されていません。

安全面では2025年に複数のリコールが発生しています。5月には低速でのゲート・チェーンへの衝突を理由に1,212台、その後高速道路の工事帯進入を理由に約3,900台、12月にはスクールバスの追い越し違反を理由に3,067台のソフトウェア・リコールを実施しました。スクールバスの件は、テキサス州オースティンとジョージア州アトランタの学区がそれぞれ19件・6件の違反を確認したことを受けたもので、NHTSAが調査に着手した経緯があります。負傷者は報告されていません。

もう一つの弱点は非常時対応です。2025年12月20日、サンフランシスコで大規模停電が発生した際、信号が消えた交差点でWaymo車両が1,500回以上立ち往生し、64台をレッカー移動で回収する事態になりました。2026年7月4日の独立記念日花火大会でも渋滞でバッテリーが枯渇し、複数台がレッカーされています。同年7月18日の別の停電では、事前にサービスを約1時間停止する対応を取り、教訓が生かされつつあることも報じられています。サンフランシスコ市議会はこの問題を巡って公聴会を開き、救急対応部隊への負担について懸念を表明しました。

日本については、日本交通・GOとの戦略的提携(2024年12月発表)に基づき、2025年4月から東京都心7区(港・新宿・渋谷・千代田・中央・品川・江東)で公道走行を開始しています。2026年3月27日の東京メディア説明会では、トヨタ自動車との自動運転車両の共同開発を模索していることも明らかにされ、最高製品責任者のパニグラヒ氏は「東京でのローンチは数カ月以内に実現し得る」と発言しました。ただし8月時点で無人サービスの正式な開始時期は公表されておらず、訓練を受けた日本交通の乗務員が同乗する形での走行が続いています。

2. Tesla:都市は7つに増えたが、車両は増えていない

Teslaは2025年6月にオースティンでロボタクシーを開始しました。当初はModel Yに安全要員を同乗させる形態で、Muskは年末までにオースティン500台・ベイエリア1,000台超という目標を掲げていましたが、実際の稼働台数はオースティン約42台、ベイエリア約130台にとどまり、大半が安全要員付きでした。

2026年に入ってからは都市展開が加速しました。4月にDallas・Houston、7月3日にMiami、7月21日にはOrlando・Tampaが加わり、8月時点でテキサス・フロリダ2州とベイエリア(カリフォルニア州、安全要員付き)を合わせた7市場で展開しています。フロリダ州が自動運転車に州単位の一括ライセンスを発給しているため、都市ごとの許認可を経ずに短期間で3都市(Miami・Orlando・Tampa、7月3日から21日までの18日間)を追加できた経緯があります。

しかし車両規模はほぼ増えていません。7月22日時点の無人(安全要員なし)車両は全展開都市を合計しても約21台(Austin約17台、Dallas約4台)で、Orlando・Tampaの車両数は公表されていません。Q2決算でTeslaは「有料ロボタクシー走行距離が累計240万マイルに達した」という累積グラフを示しましたが、これを四半期ごとに分解すると、Q2の増加分は約90万マイルでQ1とほぼ同じであり、伸び率は横ばいだったことになります。稼働率についても、2026年2月時点の調査でオースティンでの稼働率(サービス提供時間の割合)はわずか19%、事故率は人間ドライバーの約4倍と報じられています。

Q2決算では、ロボタクシー車両のソフトウェアが最新版「FSD v15」に移行したことも明らかにされました。ハンドルもペダルも持たない専用車両Cybercabもオースティンで公道試験が始まっており(7月11日確認)、米運輸省がハンドル・ペダルなしの自動運転専用車に対するブレーキペダル要件の撤廃を提案するなど、規制面での追い風も出ています。ただしMuskは、車両の本格増強はFSD v15による安全性向上を見極めてからとしており、実質的な拡大は2026年末〜2027年初頭にずれ込む可能性が引き続き指摘されています。NHTSAはカメラのみに依存する設計の妥当性を含め、FSDの調査範囲を拡大しています。

3. 中国勢:許認可は再開、海外展開も継続

中国はロボタクシーの台数・累計乗車回数で世界最大規模です。Baidu Apollo Go(蘿蔔快跑)は2026年2月時点で累計乗車2,000万回超、武漢だけで完全無人車1,000台超を運行し、20都市超(海外はアブダビ・ドバイ・スイス)で展開していました。

しかし2026年3月31日夜、武漢でApollo Go車両100台超がクラウド障害により一斉に停止し、乗客が最大2時間車内に取り残される事態が発生しました。救援を求める車内の緊急ボタンやカスタマーサポートが機能しなかったとの報道もあります。これを受けて中国当局は4月29日、全国で新規の自動運転許認可(フリート増強・新規実証・新規都市展開)を凍結しました。Baiduの武漢での運行は調査終了まで停止され、Pony.ai・WeRideなど他社の既存フリートは通常運行を継続しましたが、両社の株価は発表直後にそれぞれ5.5%・4.7%下落しています。凍結は業界横断の安全審査完了を経て、6月末に審査が完了し、7月下旬から一部都市で許認可の発給が段階的に再開されています。

国内の凍結期間中も、海外展開は止まっていません。WeRideは7月9日、Uberとの提携でスイスにおける商用ロボタクシーサービスを開始したと報じられています。Pony.aiも2026年末までに1,700台超から3,500台への拡大計画を維持していると説明していました。

市販車のレベル3についても中国は前進しています。2025年12月15日、工業情報化部(MIIT)は一般乗用車として初めてレベル3の型式認可を発給しました。対象は長安汽車のDeepal SL03(重慶、渋滞時の単一車線走行で最高時速50km)とBAICのArcfox Alpha S(北京、高速道路の単一車線走行で最高時速80km)の2車種です。この認可リストにTeslaの車種は含まれていません。

4. Zoox・Wayve:新しい参入パターン

Amazon傘下Zooxは、ハンドルもペダルも持たない専用設計車両でLas Vegas・San Francisco・Austin・Miamiで無料の試験サービスを続けてきましたが、7月30日にNHTSAから商用運行の暫定適用除外(年間最大2,500台、2年間)を取得し、本日8月10日からLas Vegasで有料サービスを開始します。料金はUberの「コンフォート」クラス相当を想定しているとされています。同社は過去にソフトウェアのリコールを複数回実施しており、直近では緊急車両現場での煙検知に関する不具合で2026年7月に対応を行っています。

車両ではなく自動運転ソフトウェアそのものをライセンス提供する事業モデルとして注目されるのが英Wayveです。2026年2月25日、シリーズDで12億ドルを調達し(Uberのマイルストーン型追加出資を含むラウンド総額は15億ドル)、企業価値は86億ドル(post-money)に達しました。主導したのはEclipse、Balderton、SoftBank Vision Fund 2で、Microsoft・NVIDIAに加え、Mercedes-Benz・日産・Stellantisという自動車メーカー3社が新規に出資しています。創業以来の累計調達額はこのラウンドを含めて約28億ドルです。

Wayveの技術的な特徴は、高精細地図に依存せず単一のニューラルネットワークでカメラ映像から運転操作を直接生成する「エンドツーエンド」方式です。日産・Uberとの3社協業では、WayveのAI Driverを搭載した日産リーフを使い、2026年後半に東京で試験運行を開始する計画が3月12日に発表されており、NVIDIA DRIVE Hyperion搭載のプロトタイプ車両も同月のNVIDIA GTCで公開されました。8月時点で試験運行の具体的な開始日は未公表ですが、計画自体に遅れは報じられていません。

事業者 展開状況 規模の実績 直近の動き
Waymo 米国10都市超で商用無人運行 週50万回超(3月〜7月時点、横ばい)/車両約3,700台 新型車両Ojai投入、Phoenixで7月29日に有料化
Tesla 米7都市(TX3・FL3・CA1) 無人車両約21台(7月時点)/稼働率19% FSD v15移行、Cybercab公道試験開始
Baidu Apollo Go 中国20都市超+中東・欧州 累計乗車2,000万回超(2月時点) 武漢事故で許認可凍結(4月)→再開(7月)
Zoox Las Vegasで商用開始 年間最大2,500台の適用除外を取得 本日8月10日に有料サービス開始

5. 日本の現在地:ティアフォー上場と東京・横浜の助走

政府は「自動運転移動サービス」について、2025年度目途で50カ所程度、2027年度までに100カ所以上での実現を目標に掲げています(国交省資料)。この目標達成は容易ではなく、業界筋の見立てでも2025年度中の実現は二桁台にとどまる可能性が指摘されています。

国内初のレベル4事例だった福井県永平寺町の「ZEN drive」は、2026年4月1日以降当面の間運休となったまま、8月時点でも再開のめどは立っていません。町の発表によれば、車両・システムの保証と保守の期間が2026年3月末で満了することに加え、共同開発したメーカーの一部がレベル4プロジェクトから撤退したことが理由です。2023年5月の運行開始から約3年、事故によるものではなく「支える体制が続かなかった」という運用面の課題が表面化した形で、レベル4を地方で持続させることの難しさを示す事例といえます。

対照的に大きく動いたのが、自動運転OS「Autoware」を主導するティアフォーです。7月22日、東証グロース市場に上場しました(証券コード593A)。想定時価総額は約700億円で、2024〜2025年にいすゞ自動車・スズキ・JR東海・三菱商事から株式2,000円で調達した際の評価額(約921億円)を下回るダウンラウンドとなりました。2025年9月期の売上高は前期比65.6%増の64.1億円である一方、純損失は約48億円に達しており、黒字化には時間を要する段階です。上場に先立つ6月には、トヨタ自動車の投資子会社が1%・約10億円を出資したことも明らかになっています。同社はお台場エリアでのレベル4タクシー実証を続けています。

日産は横浜のみなとみらい・関内エリアで実証を重ねており、2025年11月27日〜2026年1月30日には安全要員同乗の車両5台による実証を実施しました。2027年度をめどに、3〜4市町村で遠隔監視型のレベル4サービス開始を目指すロードマップを描いています。Uber・Wayveとの3社協業では、WayveのAI Driverを搭載した日産リーフを使い、2026年後半に東京で試験運行を開始する計画です。Waymoは日本交通・GOとの提携で東京都心7区の走行データを蓄積中で、3月の説明会ではトヨタとの車両共同開発の模索にも言及しています。

6. 市場規模の見通し

Goldman Sachs Researchは、世界のロボタクシー市場が2035年に約4,150億ドルに達すると予測しています。米国市場だけで2030年に190億ドル(従来予測の70億ドルから上方修正)、2035年に480億ドルとしています。世界の商用フリートは2024年時点の約7,000台から2035年には約600万台に拡大すると見込まれ、垂直統合型事業者の粗利益率は30〜50%、10年間の累計粗利益は約4,400億ドルに達する可能性があるとしています。マイルあたりの総コストは2035年までに米国で1ドルを下回り、遠隔監視員1人あたりの車両比率も現状の6対1から26対1へ改善すると予測されています。自動運転トラック市場については、2028年に米国で人間運転よりコストが安くなり、2035年の世界市場規模は560億ドルに達するとの見立てです。

これらはあくまで予測であり、確定した数字ではありません。Waymo自身の週100万回目標がQ2の足踏みを受けて独立系分析で下方修正された点からも分かる通り、業界の目標値と第三者による実績見通しには常に一定の乖離があることを踏まえて読む必要があります。

まとめ

2026年度も中盤に差し掛かり、業界全体の輪郭がより鮮明になりました。無人商用サービスとして実際に回っているのはWaymoと中国勢のみという構図は変わっていませんが、その両者もQ2にかけて成長ペースの踊り場を経験しています。Waymoは新型車両Ojaiの投入と高速道路サービスの一時停止が同時に進み、規模拡大と品質担保のバランスに苦心する様子がうかがえます。Teslaは展開都市を7つに増やしたものの、車両規模と走行距離の伸びは実質的に横ばいで、宣言と実績の差は縮まっていません。中国は許認可が再開に転じた一方、海外展開(WeRideのスイス進出等)は国内の混乱の最中も止まりませんでした。

日本については、ティアフォーの上場という資本市場での一つの区切りがあった一方、永平寺町の運休は8月時点でも解消していません。東京・横浜では日産・Uber・Wayve連合とWaymoが2026年後半から2027年度にかけての実装を目指しており、この秋以降の動きが日本のレベル4普及ペースを左右する局面になりそうです。技術実証の成功と、それを長期的に支える体制づくりが別問題であることは、永平寺町とティアフォーという対照的な2つの事例が改めて示しています。

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