以前、クラウド環境でのOracle Database利用についてまとめた記事(2018年9月)を書きました。 それからかなりの時間が経ち、状況が大きく変わったので、2026年5月時点の最新情報に更新します。
まず前提として、Oracle Database(以下、Oracle)を冗長化された仮想環境で利用することのハードルの高さは変わっていません。 OracleのライセンスカウントはSoft Partitioning(VMware、Hyper-Vなど)の場合、Oracleがインストールされた仮想マシンが稼働する可能性のある物理サーバ全台分のプロセッサに対してライセンスが必要です。 HCI(ハイパーコンバージドインフラ)の普及でクラスタが1つのリソースとして管理されるようになった現在、この問題はさらに深刻化しています。
Soft PartitioningとHard Partitioningの違いについては以下のOracleパーティショニング・ポリシー(最終更新2022年2月)を参照してください。
Oracle Server Partitioning Policy(PDF)
ということで、冗長化された仮想環境上のOracleライセンス問題はオンプレミスでも変わらず厄介ですが、2024〜2026年にかけてクラウド側の選択肢が劇的に広がりました。 ここではその最新状況を整理します。 なお、ここで記載している内容は2026年5月時点のものです。特にライセンスの考え方は変わることがあるため、必ず購入元にご確認をお願いします。
1.Oracleが承認したクラウド環境(AWS・Azure・GCP)でのライセンス
OracleはAWS・Azure・Google Cloud Platform(GCP)を「承認済みクラウド環境(Authorized Cloud Environments)」として公式に認めており、仮想マシン上でのOracle利用についてvCPUベースのライセンスカウントルールが適用されます。
Licensing Oracle Software in the Cloud Computing Environment(Oracle公式PDF、2024年6月12日版)
最大の変化:2024年6月12日にGCPが正式追加
2018年時点ではAWSとAzureの2社だけでしたが、2024年6月12日付のポリシー改訂でGoogle Cloud Platformが正式に承認済みクラウドに追加されました。
これにより、AWS・Azure・GCPの3社が横並びで同一のライセンスカウントルールの対象となっています。
承認済みクラウド3社共通のライセンスカウントルール(Enterprise Edition)は以下の通りです。
- マルチスレッディング(ハイパースレッディング)が有効の場合:2 vCPU = 1 Processor License
- マルチスレッディングが無効の場合:1 vCPU = 1 Processor License
- Oracle Processor Core Factor Table(コア係数表)は適用されない
- カウント対象はインスタンスタイプの最大vCPU数(実際の使用コア数ではない)
Standard Edition 2については、4 vCPU以下のインスタンスが1ソケット(1 Processor License)扱いとなり、4 vCPU超は4 vCPU単位で切り上げてソケット数を計算します。
なお、上記のポリシーPDF末尾には「This document is for educational purposes only and provides guidelines regarding Oracle's policies... It may not be incorporated into any contract」と明記されています。あくまでガイドラインであり、実際の契約はOracle Master Agreement(OMA)等が優先します。
2.Oracle Database@AWS(2025年7月GA・東京2025年12月GA)
2025年最大のトピックの一つがOracle Database@AWSの正式提供開始です。 これはAWSのデータセンター内にOracle Cloud Infrastructure(OCI)のExadataハードウェアを物理設置し、AWSのネットワークと接続してOCIのマネージドサービスとして提供するサービスです。
- 2025年7月8日:US East(N.Virginia)・US West(Oregon)の2リージョンでGA
- 2025年12月22日:東京(AP-Northeast-1)・Ohio(US-East-2)でGA
- 2025年12月23日:Frankfurt(EU-Central-1)でGA、計5リージョン
- 2026年4月8日:Dublin・London・Mumbai・Hyderabad・Seoulが追加され計12リージョンに拡大(うち東京・Sydney・Canadaは2AZ対応)
提供サービスはOCI Exadata Database Service、Oracle Autonomous AI Database on Dedicated Infrastructure、Oracle Autonomous Recovery Serviceの3種類です。 RACもそのまま利用でき、Oracle AI Database 26aiにも対応しています。 Amazon S3・Bedrock・SageMaker・Redshiftとのゼロ-ETL連携も可能で、AWS Marketplaceから購入でき、AWSのコミットメント(EDP)消化にも充当できます。 BYOL・Oracle Support Rewardsも適用可能です。
なお従来のAmazon RDS for Oracleは引き続き提供されています。 RDS for OracleはフルマネージドでSE2のLicense Included(EEはBYOLのみ)を選べる唯一のサービスですが、対応バージョンは19cおよび21cのみです(2026年5月時点)。 26ai/23aiは未対応で、マネージドサービスで最新バージョンを利用したい場合はOracle Database@AWSのAutonomous Databaseが選択肢となります。 また、RDS Custom for Oracleでは2025年7月にMulti-AZサポートが追加され、ベアメタルインスタンス対応も拡充されています。
3.Oracle Database@Azure(2025年2月日本GA・ISMAP対応)
Oracle Database@AzureはOracleとMicrosoftが2023年9月に発表したサービスで、AzureのデータセンターにOCI Exadataを物理設置してOracle側がフルマネージドで運用します。
- 2023年12月13日:US East(East US)で初GA
- 2025年2月13日:日本(Japan East)で国内初GA
- 2025年中:Japan West(大阪)もDR用途で追加
- 2025年10月時点:28リージョンで提供(AI World 2025発表)、その後11月に31リージョンへ拡大
日本における重要な進展として、ISMAP(政府向けクラウドサービス安全性評価制度)への対応が2025年中に完了しました。 また、Azure Key Vault統合・Microsoft Sentinel/Purview連携・Microsoft Fabric Open Mirroringも提供されており、エンタープライズおよび公共・金融向けの実績も生まれています。 たとえば2025年10月には、日本オラクルがネオファースト生命保険(第一生命グループ、保有契約件数100万件超)が保険契約管理システムのデータベース基盤にOracle Database@Azure(Exadata Database Service)を採用したと公表しています。
利用可能なサービスはExadata Database Service、Autonomous Database、Base Database Service(19c/26ai選択可)、GoldenGate、Oracle Exadata Database Service on Exascale Infrastructure(ExaDB-XS)などです。 Azure Marketplaceから購入でき、Azureのコミット(MACC)消化が可能です。
4.Oracle Database@Google Cloud(2025年6月東京GA)
OracleとGoogleは2019年に相互接続の連携を発表していましたが、2024年6月に大幅に提携を拡張し、Google CloudのデータセンターにOCI Exadataを物理設置するOracle Database@Google Cloudを発表。同年9月9日にAshburn・Salt Lake City・London・Frankfurtの4リージョンでGAしました。
- 2025年6月13日:東京(Asia-Northeast 1)で国内初GA
- 2026年2月:大阪(Asia-Northeast 2)でExadata Database ServiceがGA
- 2026年4月22日時点:15リージョンで提供(東京・大阪含む)
提供サービスはExadata Database Service、Autonomous AI Database、Base Database Service(26ai対応)、Exadata Database Service on Exascale Infrastructure(ExaDB-XS)、Oracle AI Lakehouse(Apache Iceberg対応)などです。 Google Cloud Marketplace経由での購入・パートナー販売が可能で、Google Cloudのコミット消化にも充当できます。 Gemini・Vertex AIとOracle DBの統合(同一データセンター内)が最大の特徴であり、AI活用を検討する企業にとって大きなメリットとなります。
なお2025年6月時点では東京リージョンのみGAで大阪は未対応だったため、DR構成が必要な場合はOCI大阪リージョン+FastConnect構成との組み合わせが現実的でした。現在は大阪も対応済みです。
5.Oracle Cloud Infrastructure(OCI)を利用する
Oracle DBを利用するうえで、ライセンスコストの構造的優位があるのがOCIです。 OCI東京リージョン(ap-tokyo-1)は2019年4月30日に開設、大阪リージョン(ap-osaka-1)は2020年12月に開設され、日本国内に2拠点の本番・DR構成が可能です。 Oracleは2024年4月に「今後10年間で日本のクラウド・AIインフラに80億ドル以上を投資する」と発表しており、引き続き日本での投資を強化しています。
BYOLのライセンス計算(OCI vs. AWS/Azure/GCP の差)
| 環境 | 1 Processor Licenseで使えるvCPU/OCPU | コア係数表 |
|---|---|---|
| AWS・Azure・GCP(HT有効) | 2 vCPU = 1 Processor License | 適用なし |
| OCI | 2 OCPU = 1 Processor License(EE) 4 OCPU = 1 Processor License(SE2) |
適用なし (OCI独自の有利なルール) |
OCIではOCPU(1 OCPU = 2 vCPU相当)単位で課金するため、同じProcessor License数でAWS/Azure/GCPの2倍のvCPU相当の処理能力が得られます。 さらにOracle Support Rewards(OCI利用料金1ドルあたり0.25〜0.33ドルをオンプレのOracleサポート費から控除)により、TCO面でOCIが構造的に有利です。
OCI上のデータベースサービスとしては、Autonomous Database(サーバーレス)、Base Database Service(19c/26ai)、Exadata Database Service、Exadata Database Service on Exascale Infrastructureなどが揃っています。 RAC構成も組め、高可用性が必要な大規模Oracleもカバーできます。
6.国産ソブリンクラウド(Oracle Alloyベース)
Oracleは「Oracle Alloy」というプログラムを通じて、パートナー企業が自社のデータセンターにOCI相当の環境を構築・提供できる仕組みを整備しています。 日本では以下の4社がOracle Alloyを採用したソブリンクラウドを提供・計画しています。
- NRI(野村総合研究所)atlax:2024年4月16日に日本国内で初めてOracle Alloyが稼働開始した事業者。東京・大阪の自社DCの2拠点にOracle Alloyを導入し、OCI IaaS・PaaSのフルサービスと100以上のOCIサービスを提供。以前から自社DCにOCI Dedicated Regionを導入し、金融SaaS(BESTWAY・T-STAR・THE STAR等)の基盤として実績があったことが背景にある。マネージドサービス「atlax」との組み合わせにより、金融・小売などの顧客のマルチクラウド環境をトータルで運営・監視できるのが特徴。2025年2月にはセキュリティサービス・AI実行環境の提供も拡充。
- 富士通クラウドサービス powered by Oracle Alloy:2025年4月14日に国内提供開始。富士通DCからOCI相当の150以上のサービスを提供。経済安全保障推進法の基幹インフラ事業者向けの主権クラウドとして位置づけ。なお旧「FJcloud-O」上のDB powered by Oracle Cloudは2024年に新規申込終了。
- NTTデータ OpenCanvas:Oracle Alloyベースのソブリンクラウドを、東日本リージョンから段階的に展開予定。
- SoftBank Cloud PF Type A:2025年10月に発表、Oracle AlloyとGPU環境を組み合わせた国内ソブリンクラウド。
これらのサービスは、クラウドへの移行を希望しつつもデータ主権・セキュリティ要件が厳しい公共・金融・医療分野の企業にとって、現実的な選択肢となっています。 特にNRIは日本国内のOracle Alloy第一号として2024年4月に稼働開始しており、金融業界を中心に最も実績が豊富です。
7.Oracle AI Database 26ai(2026年1月オンプレGA済み)
2024年5月にOracle Database 23aiがGAとなり、AI Vector Search・JSON Relational Duality・Raft Replication・SQL Firewall・Select AIなどAI時代向けの300超の新機能が搭載されました。 そして2025年10月14日、Las Vegasで開催されたOracle AI World 2025にてLarry Ellison会長がOracle AI Database 26aiを発表。23aiをさらに進化させたAIネイティブDBとして、名称・バージョン番号が改められました。
26aiの仕組みとしては、Oracle Database 23aiに「October 2025 Release Update(バージョン23.26.0)」を適用するだけで移行でき、データベースのアップグレードやアプリケーションの再認定は不要です。 AI Vector Search・Unified Hybrid Vector Search・Agenticフレームワーク統合・AI Lakehouse(Apache Iceberg対応)などの機能が追加料金なしで利用できます。
クラウドおよびオンプレミスの提供状況
- OCI(Autonomous DB、Base DB、Exadata等)、Oracle Database@Azure・AWS・Google Cloud:提供中
- Oracle Exadata、Oracle Database Appliance(ODA):提供中
- 汎用オンプレミス(Linux x86-64):2026年1月27日GA済み(バージョン23.26.1、EEのみ。SE2は2026年内の他プラットフォームリリースと同様に順次対応予定)
長らく「次のLTSリリース(23ai/26ai)はいつオンプレで使えるのか」が注目されていましたが、2026年1月27日にLinux x86-64向けEEが正式提供されたことで、オンプレ環境でも最新のAI機能(Vector Search、Select AI等)が利用できるようになりました。 19cからの移行先として、オンプレ継続企業にとっても大きな選択肢が加わったと言えます。
なお26aiはLong-Term Supportリリースで、Premier Supportは2031年12月31日まで(23aiと同一のサポート期間を継承)です。
8.その他:オンプレとのハイブリッド・ハウジング構成
高可用性・高信頼性が求められ、すぐにはクラウド移行が難しいOracle環境については、Oracle部分だけオンプレ(データセンターのハウジングやホスティング)に残しつつ、他のシステムはクラウド化するハイブリッド構成も依然として有効です。 具体的なオプションとしては以下があります。
- OCI Exadata Cloud@Customer:顧客のDCにExadataハードウェアを設置し、OCIのマネージドサービスとして運用。ハイブリッドクラウドの中でも最もOracleとの親和性が高い。
- OCI Compute Cloud@Customer / Dedicated Region:OCIを顧客DC内で動かす別オプション。
- 専用線接続(Oracle FastConnect / AWS Direct Connect / Azure ExpressRoute):オンプレOracle環境とクラウドを低遅延・高帯域で接続。
また、さくらのクラウドなどOracleの承認済みクラウドに含まれない国産クラウドのIaaS上でOracleを稼働させることは、ライセンス的にはSoft Partitioning扱い(物理サーバ全台分のライセンスが必要)となるため、コスト面で現実的ではありません。 さくらインターネット自身も公式に「Oracle Database直接利用不可、専用サーバPHYまたはOCI経由でのマルチクラウド構成を推奨」と案内しています。
まとめ(2026年5月時点)
2018年の記事執筆時からの最大の変化は、Oracle DatabaseがAWS・Azure・GCP(Google Cloud)すべてのメジャークラウド上で、「Oracle社がフルマネージドで運用するExadataサービス」として利用できるようになったことです。 以前はハイパースケーラー上でのOracle利用はライセンスカウントの煩雑さとRAC不可という制限がありましたが、Oracle Database@系のサービスを使えばRACも使えてライセンスもBYOL・Support Rewardsが適用されます。
各クラウドの選択ポイントを整理すると:
- AWSをメインに使っている企業:Oracle Database@AWSが東京GAで選択肢に。AWSのコミット消化も可能。
- Azureをメインに使っている企業:Oracle Database@AzureがJapan EastでISMAP対応済み。公共・金融・医療向けに最も実績あり。
- Google CloudやGemini AIと組み合わせたい企業:Oracle Database@Google Cloudが東京・大阪両リージョン対応済み。
- TCOを最大化したい企業(OracleライセンスをBYOLで活用):OCI直接か富士通Alloyなどの国産ソブリンクラウドがライセンス効率で有利。
- 小〜中規模でフルマネージドをリーズナブルに:Amazon RDS for Oracle(SE2 License Included)が依然として唯一の選択肢。ただし対応は19c/21cのみ。
- オンプレ継続だが23ai/26aiの機能を使いたい:2026年1月27日に26aiオンプレ版(Linux x86-64 EE)がGA済み。ExadataやODAは不要。
Oracleのライセンスポリシーは変わりやすく、また各ポリシー文書は「non-contractual(契約書ではない)」と明示されています。 移行や新規導入の判断にあたっては、必ず最新のOracle公式ドキュメントおよびOracle営業・販売店に確認することをお勧めします。
最後になりますが、Oracleがある環境のクラウド化を進める一番わかりやすい方法が「Oracleをやめる」であることは2018年から変わっていません。 ただ、DBの移行は大変な作業ですし、特にストアドプロシージャが多い環境やOracleを前提としたパッケージ製品では容易ではありません。 そんな環境でも、上記のようにOracle Database@系サービスやOCIを活用することでクラウドのメリットを享受する選択肢が格段に広がっています。 この記事が少しでも参考になれば幸いです。
0 件のコメント:
コメントを投稿