1. 序論:2025年、日本のAIは「実験」から「物理的実存」へ
2025年は、日本のAI産業史において分水嶺となる年として記憶されるであろう。2023年に始まった生成AI(Generative AI)の爆発的な普及、そして2024年の企業内実証実験(PoC)の乱立と一部の幻滅を経て、2025年の日本市場は「実利」と「物理性」を追求する新たなフェーズへと突入した。
本報告書は、2025年現在における日本国内の主要AIベンチャー企業の動向を網羅的に調査し、その技術的特異点、資金調達環境、そして社会実装の進捗を詳らかにするものである。さらに、2026年以降の短期的な展望から2030年を見据えた長期的な産業構造の変化までを、収集された膨大なデータに基づき分析する。
1.1 マクロトレンド:「ソブリンAI」と「フィジカルAI」
2025年の市場を俯瞰した際、際立つトレンドは二点に集約される。
第一に、「ソブリンAI(Sovereign AI)」の確立である。OpenAIやGoogleといった米国メガテック企業のモデルに依存するリスク(APIの価格変動、データプライバシー、文化的バイアス)への懸念から、日本独自のデータ、商習慣、言語文化に根ざした基盤モデルを構築しようとする動きが、政府の支援(GENIACプロジェクト等)と相まって結実し始めた1。Sakana AIやThird Intelligenceといった企業は、単なる「日本語対応」を超え、計算資源の効率化やエッジ展開といった日本独自の制約条件を「強み」に変える技術戦略を採用している。
第二に、「フィジカルAI(Physical AI)」への巨額投資である。バーチャル空間でのチャットボットや画像生成にとどまらず、AIがロボットの身体を借りて物理世界に介入し、労働力不足という日本の慢性的課題を直接解決しようとする動きである。ソフトバンクグループによるABBロボティクス事業の買収や、Turingによる完全自動運転の公道実証の成功は、このトレンドを象徴する出来事である3。
1.2 本報告書の構成
本報告書は以下の構成で展開する。
第2章: 日本発の「知能」を創る基盤モデル企業の詳細分析(Sakana AI, Third Intelligence等)。
第3章: 「人工超知能(ASI)」を目指すソフトバンクグループの全貌とインフラ戦略。
第4章: 移動の概念を覆す自動運転とモビリティ革命(Turing)。
第5章: 現場を救うロボティクスと産業DX(Mujin, Rapyuta, Telexistence)。
第6章: 産業特化型AIとデータエコシステム(Ubie, FastLabel)。
第7章: 2026年以降の市場展望と将来予測。
2. 日本発「ソブリンAI」の旗手たち:基盤モデルと新興勢力の台頭
2025年の国内スタートアップ資金調達ランキングにおいて、上位を占めたのは「日本独自の脳」を作る企業群であった。これは、投資マネーがアプリケーション層(既存モデルを使ったサービス)から、インフラ・モデル層(技術そのものの開発)へと回帰していることを示唆している。
2.1 Sakana AI:進化計算によるパラダイムシフト
東京を拠点とするSakana AIは、2025年時点で日本のディープテック・エコシステムの頂点に位置する存在となった。シリーズBラウンドで約200億円を調達し、国内AIスタートアップとしてトップの資金力を誇る1。
2.1.1 技術の中核:「進化的モデルマージ」とM2N2
Sakana AIの差別化要因は、Google出身の創業者らが提唱する「進化的モデルマージ(Evolutionary Model Merge)」にある。従来のAI開発(特にLLM)は「スケーリング則」に支配されており、性能向上には指数関数的な計算リソースとデータ量の増大が必要不可欠であった。しかし、資源小国である日本において、米国勢と同じ土俵で勝負することは戦略的に不利である。
Sakana AIのアプローチは、生物の進化を模倣する。
多様な親モデルの選定: 既存の異なる機能を持つ小規模モデル(数学が得意なモデル、日本語が得意なモデルなど)を用意する。
交配と変異: 独自のアルゴリズムを用いて、これらのモデルのレイヤーを混合(マージ)させる。
淘汰と選択: 生成された数多くの子モデルを評価し、優秀な個体のみを残して次世代の親とする5。
このプロセスを数百世代繰り返すことで、ゼロから学習させる(プレトレーニング)ことなく、特定のタスクに極めて高い性能を持つモデルを、低コストかつ短期間で生成することに成功した。2025年には、この技術をさらに発展させた「M2N2(Many-to-Many Neural Networks)」アーキテクチャを実装し、複数の小規模モデルが連携して単一の大規模モデルを凌駕する性能を発揮している6。
2.1.2 科学的発見の自動化:「AI Scientist」
2025年、Sakana AIは研究開発のプロセスそのものをAI化する「AI Scientist」プロジェクトで世界を驚かせた。
自律研究サイクル: アイデア出し → 実験コードの実装 → 実行 → 結果の可視化 → 論文執筆 → 査読という、従来人間が行ってきた研究プロセス全体をAIエージェントが自律的に実行する。
AI Scientist-v2: 2025年後半にリリースされたバージョン2(v2)では、生成された論文が実際にトップカンファレンスの査読基準をクリアするレベルに達したとされる6。
「AIがAIを改良する」ループ: 最も恐るべきは、AI Scientistが自身のアーキテクチャを改善する提案を行い始めた点にある。これはシンギュラリティ(技術的特異点)への具体的な道筋を示唆するものであり、日本がこの技術を保有することの地政学的意義は極めて大きい。
2.1.3 社会実装と製品展開
技術的な先進性だけでなく、2025年は商用化の年でもあった。
GMO AIRとの提携: 2025年10月より、GMOインターネットグループのAI研究機関「GMO AIR」と共同で、日本語特化型LLMの開発を開始した7。具体的には、コールセンター業務における複雑な日本語のニュアンス理解や、LINEを通じた顧客対応の自動化など、日本の商習慣に密着した領域での実装が進んでいる。
製品ローンチ: 2025年内に初の商用AI製品を市場投入しており、研究機関からプロダクトカンパニーへの脱皮を図っている5。
2.2 Third Intelligence:AGI(汎用人工知能)への最短距離
Sakana AIに次ぐ注目株として2025年に急浮上したのが、株式会社Third Intelligenceである。
2.2.1 異例のスピードと資金調達
2025年3月の設立からわずか8ヶ月足らずで、シード/アーリーステージとしては異例の80億円を調達し、資金調達ランキングで2位につけた1。この事実は、投資家たちが「次のSakana AI」あるいは「ポストLLM」の技術を渇望していることを如実に表している。
2.2.2 「遍在型AGI」というコンセプト
Third Intelligenceが掲げるビジョンは「遍在型AGI(Ubiquitous AGI)」である1。
中央集権からの脱却: 現在の主流である、巨大なデータセンターに知能を集約させるアプローチではなく、ユーザーのデバイスや現場環境(エッジ)ごとにAIが存在し、その場の文脈に合わせてリアルタイムに進化するモデルを目指している。
松尾研のエコシステム: 代表の石橋準也氏をはじめ、東京大学松尾豊研究室(松尾研)の出身者が中心となっており、日本のAIアカデミアの知見が結集されている10。約40名の精鋭エンジニアによる内製化体制を敷き、外部技術への依存を排した「純国産AGI」の開発を進めている点は、経済安全保障の観点からも重要視されている。
2.3 GENIACプロジェクトと国家戦略
これらスタートアップの躍進の背景には、経済産業省・NEDOによる支援プログラム「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)」の存在がある。
2025年7月に開催された成果報告会では、計算資源の提供を受けた企業群が、単なる日本語LLMの構築にとどまらず、製造業の設計支援や創薬プロセスへの応用など、具体的なビジネス価値を生み出し始めていることが確認された2。
3. ソフトバンクグループの「ASI」戦略:フィジカルAIへの巨額投資
2025年、ソフトバンクグループ(SBG)は、長らく続いた「守り」の姿勢(Vision Fundでの損失回収と財務改善)から完全に転じ、孫正義会長が掲げる「人工超知能(ASI: Artificial Super Intelligence)」の実現に向けた、総額数兆円規模の攻撃的な投資活動を再開した。その戦略は明確に、「デジタル(脳)」と「フィジカル(身体・インフラ)」の完全な垂直統合を目指すものである。
3.1 「ASI」に向けたインフラの掌握:DigitalBridge買収
2025年12月、SBGは米国のデジタルインフラ投資会社DigitalBridge Groupを約40億ドル(約6,250億円)で買収することで合意した11。
3.1.1 買収の戦略的意義
なぜSBGはAIモデル企業ではなく、インフラ企業を買収したのか。答えは「電力と場所」にある。
AIのボトルネック解消: 孫正義氏は「ASIの実現には、現在の数万倍の計算能力と、それを支える電力・インフラが必要になる」と予見している。DigitalBridgeは、世界中にデータセンター、セルタワー(携帯基地局)、光ファイバー網を保有しており、特にデータセンター部門のVantage Data Centersは北米で最大級の拡張計画を持つ12。
Stargateプロジェクトとの連携: この買収は、OpenAI、Oracleと共同で進めている5,000億ドル規模のAIスーパーコンピュータ計画「Stargate」の基盤を固めるものである。AIモデル(OpenAI)、クラウド(Oracle/Microsoft)、そして物理インフラ(DigitalBridge/SBG)という巨大な供給網を完成させようとしている11。
3.1.2 日本国内への影響
DigitalBridgeのポートフォリオには、日本のインフラシェアリング企業であるJTOWERも含まれている(※JTOWERは2024年にDigitalBridgeにより買収・非公開化された経緯がある)。SBGによるDigitalBridgeの買収は、間接的に日本の通信インフラの一部をSBGが掌握することを意味し、5G/6G展開や国内エッジAI基盤の構築においてもSBGが主導権を握る可能性が高い13。
3.2 身体性の獲得:ABBロボティクス事業の買収
さらに世界を震撼させたのが、スイスの重電大手ABBからのロボティクス事業の買収発表である。買収額は約53.75億ドル(約8,200億円)に上る4。
3.2.1 「フィジカルAI」の完成形
ABBは、FANUC(日本)、YASKAWA(日本)、KUKA(ドイツ/中国)と並ぶ産業用ロボットの世界4大メーカーの一角である。
脳と身体の結合: 孫氏は「次はフィジカルAI」と明言している。OpenAIの推論能力(脳)を、ABBの精密なロボットアーム(身体)に実装することで、従来は自動化が不可能だった複雑な作業(不定形物の把持、柔軟な組み立て、家事代行など)を可能にする狙いがある14。
産業構造の変革: これまでの産業用ロボットは、厳密なティーチング(プログラム)が必要であった。しかし、ASIを搭載したロボットは、人間のように「見て、考えて、動く」ことができる。SBGはこの技術を、自社の投資先である物流倉庫や、日本国内の労働力不足解消ソリューションとして展開するロードマップを描いている。
3.3 OpenAIへの追加出資とエコシステム
SBGは2025年4月、OpenAIへの追加出資(最大100億ドルの枠組みの一部)を実行し、ASI開発におけるパートナーシップを盤石なものにした15。
これにより、SBGは以下のエコシステムを完成させた。
最先端の脳: OpenAI
動脈(インフラ): DigitalBridge, Arm
身体(ロボット): ABB Robotics
社会実装(日本): ソフトバンク株式会社(通信キャリア)によるBtoB展開
4. モビリティと自律移動:End-to-End AIの衝撃
自動運転領域では、従来の技術アプローチを根本から覆す「End-to-End(E2E)AI」の実用化が2025年のハイライトとなった。
4.1 Turing:完全自動運転「Tokyo30」の達成
「We Overtake Tesla(テスラを追い越す)」をミッションに掲げる日本のスタートアップTuringは、2025年に技術的なブレイクスルーを果たした。
4.1.1 Tokyo30の実証と技術的意義
2025年12月に開催された「Turing AI Day 2025」において、同社は東京都内の公道を30分間、人間の介入一切なしで走行するプロジェクト「Tokyo30」の成功を発表した3。
なぜ東京での30分が凄いのか: 東京の道路環境は、狭い道、路駐車両、飛び出し、複雑な交差点など、世界的に見ても難易度が極めて高い。高速道路での自動運転とは異なり、予測不能な事象が連続する環境での30分間完全自律走行は、技術レベルが実用域(人間のドライバー並み)に近づいていることを証明するものである。
4.1.2 End-to-EndモデルとVLM
Turingの強みは、従来の「認知・判断・制御」というモジュールごとの開発を廃止し、カメラ映像を入力、ハンドル操作を出力とする単一の巨大なニューラルネットワーク(E2Eモデル)を採用している点にある。
VLM(Vision-Language Model)の統合: さらに、2025年モデルでは視覚情報と言語モデルを統合したVLMベースの運転AIを導入した16。これにより、「前方の自転車がふらついているから、距離をとって追い越そう」といった、人間的な文脈理解に基づいた運転が可能になった。
LLMオンボードの可能性: Turingは、ChatGPTのようなLLMを車載チップで直接動かし、運転の意思決定を行わせるアプローチをとっている。これは、ルールベースでは記述しきれない無限の交通状況に対応するための唯一の解とされている。
4.1.3 資金調達と独自チップ開発
TuringはシリーズAファーストクローズを含め、累計で152億7,000万円規模の資金調達を実施している1。この豊富な資金を元手に、ソフトウェアだけでなく、完全自動運転に特化した専用半導体(NPU)の自社設計にも着手しており、テスラ同様の垂直統合モデルを志向している。
5. 現場を救うロボティクスと産業DX:フィジカルAIの社会実装
2025年は、AIがPCの中から飛び出し、物流倉庫や工場の現場(エッジ)で物理的な作業を担う「現場実装元年」としての側面も強い。少子高齢化による労働力不足はもはや「課題」ではなく「危機」となっており、ロボット導入はコスト削減ではなく事業継続(BCP)のための必須投資となっている。
5.1 Mujin:知能化ロボットプラットフォームの覇者
産業用ロボットの知能化コントローラを開発するMujinは、2025年にその技術をさらに進化させた。
MujinOSとデジタルツイン: 2025年11月の国際ロボット展において、Mujinは「MujinOS」によるデジタルツイン環境と実機の完全同期を披露した17。
導入の壁を破壊: 従来、ロボット導入には専門家による長期間のティーチング(動作教示)が必要であった。Mujinの新技術は、デジタル空間上で構築した生産ラインの設定をそのまま現実にコピーできるため、導入期間を劇的に短縮する。
混載・バラ積みへの対応: 多品種少量生産や、EC物流における多種多様な商品のピッキングにおいて、センサーとAIがリアルタイムに軌道を生成する技術は、他社の追随を許さないレベルにある。
グローバル展開: トヨタ自動車、ファーストリテイリングといった国内大手だけでなく、北米や中国市場での導入も加速しており、日本のロボット技術輸出の急先鋒となっている18。
5.2 Rapyuta Robotics:群制御と物流自動化
Rapyuta Roboticsは、クラウドロボティクス基盤「rapyuta.io」を活用し、複数のロボットを協調させる群制御技術で物流業界を変革している。
受賞と評価: 2025年12月、その革新性が評価され「グッドカンパニー大賞(イノベーション事業化推進賞)」を受賞した19。これはスタートアップとしては異例の快挙である。
自動フォークリフト(AFL)の普及: トラックドライバー不足と並び深刻なフォークリフト運転手不足に対し、既存の倉庫インフラを変更せずに導入できる自動フォークリフトを展開。2025年7月には総武物流などで本格稼働を開始した19。
立体空間の支配(ASRS): 平面移動のロボット(AMR)に加え、空間を有効活用する自動倉庫システム(ASRS)も展開し、アルプス物流などに導入されている20。
5.3 Telexistence:遠隔操作とAIのハイブリッド
コンビニエンスストアでの商品陳列ロボットなどで知られるTelexistenceも、2025年に新たな展開を見せている。Attunedの導入事例レポートによれば、組織モチベーションの維持とAI開発の融合が進められており、遠隔操作(人間)から自律動作(AI)への移行率を高めることで、運営コストのさらなる低減を目指している21。
6. 産業特化型AIとデータエコシステム
物理的なロボットだけでなく、特定の産業ドメインに特化した「Vertical AI」や、AI開発を支えるデータ基盤企業も堅実な成長を遂げている。
6.1 Ubie:医療AIプラットフォームの確立
医療AIベンチャーのUbieは、2025年時点で累計資金調達額が180億円を突破した22。
生活者と医療の接続: 同社の「ユビー」は、患者が症状を入力すると適切な受診先を案内するサービスだが、2025年には日本郵政グループやNTTドコモとの資本業務提携を通じて、全国規模の社会インフラとしての地位を固めつつある。
巨大な顧客基盤との連携: ドコモの1億ユーザー超のdアカウント基盤や、郵便局のネットワークと連携することで、地方の高齢者を含めた「医療アクセスの格差是正」に取り組んでいる。これは、AIが単なる技術ではなく、社会課題解決の実手段として機能し始めた好例である。
6.2 FastLabel:AI開発の「足回り」を支える
高品質な教師データなしに高性能なAIは生まれない。アノテーション(データへのタグ付け)プラットフォームを提供するFastLabelは、2025年にシリーズBで11.5億円を調達し、累計調達額は約21.5億円となった23。
AIPaaSへの進化: 単なる作業代行ツールから、AI開発プロセス全体を支援する「AIPaaS(AI Platform as a Service)」へと進化。Panasonicなどの大手製造業が、自社製品にAIを組み込む際のデータ基盤として採用している24。
生成AI時代のデータ戦略: 生成AIの学習には、Web上の大量データだけでなく、専門家による高品質なフィードバックデータ(RLHF用データなど)が不可欠であり、FastLabelの役割は重要性を増している。
7. 将来展望(2026年〜2030年):AIエージェントと物理世界の融合
最後に、収集されたデータと現在のトレンドに基づき、2026年以降の日本AI市場の展望を予測する。
7.1 2026年の展望:AIエージェントの実用化と「幻滅期」の克服
ガートナージャパンの2025年ハイプ・サイクルにおいて、生成AIは「過度な期待のピーク期」を過ぎ、「幻滅期」を経て実用段階へ向かう位置にある25。
2026年には、単一のAIではなく、営業AI、法務AI、経理AIといった複数の専門特化型エージェントが連携して業務を行う「マルチエージェントシステム」が、大企業を中心に導入され始めるだろう。
7.2 中長期展望(〜2030年):エネルギーと主権
2030年に向けて、AI産業は以下の2つの制約条件と戦うことになる。
7.2.1 エネルギーの壁とインフラ再編
AIモデルの大規模化(ソフトバンクのASI構想など)は、天文学的な電力を消費する。
データセンターの地方分散: 電力を求めて、データセンターは北海道や九州など、再生可能エネルギーが豊富な地域へ分散する。
独自チップの重要性: Sakana AIの効率的モデルや、Turing/Rapidus(※文脈的推論)のような低消費電力チップの開発は、経済合理性だけでなくエネルギー安全保障の観点から必須となる。
7.2.2 「ソブリンAI」の地政学
日本は「AI輸入国」から脱却できるか。2025年のSakana AIやThird Intelligenceの躍進は、その可能性を示した。
輸出産業化: 日本が強い「ロボティクス(身体)」「アニメ・コンテンツ(データ)」「材料科学」の領域とAIを組み合わせたソリューションは、2030年頃には自動車産業に次ぐ外貨獲得手段となり得る。特に、少子高齢化先進国としての「自動化ノウハウ」は、これから高齢化を迎える中国や欧州に対して強力な輸出品となる。
7.3 結論
2025年の日本AI市場は、ソフトバンクグループのような「巨艦」がインフラと世界最先端の知能を抑えにかかる一方で、Sakana AIやTuringのような「快速艇」が独自の技術航路で世界を驚かせるという、極めてダイナミックな構造にある。
「生成AIブーム」は終わったのではない。形を変え、実体(身体)を持ち、社会インフラとして定着するための「産業革命」の本番が始まったのである。日本企業にとって2026年は、AIを「使う」側から、AIと共に「動く(物理的に)」側へと進化できるかの、正念場となるだろう。
引用元一覧
5 Sakana AI 最新動向 2025, GESHER
6 Sakana AI 最新動向 2025, Arpable
3 Turing 自動運転 2025 完全自動運転, Impress Watch
28 Turing 自動運転 2025 完全自動運転, EVsmartブログ
29 ソフトバンク AI投資 2025 日本, ヘッドウォータース
11 ソフトバンク AI投資 2025 日本, Arab News
15 OpenAIへの追加出資に関するお知らせ, ソフトバンクグループ
1 日本 AIスタートアップ 資金調達ランキング 2025, Startup DB
16 Turing AI Day 2025 発表内容, Turing Note
5 Sakana AI 2025年 製品発表, GESHER
7 Sakana AI 2025年 製品発表, AIsmiley
4 ソフトバンク AI ロボティクス 2025年 買収, M&Aセンター
14 ソフトバンク AI ロボティクス 2025年 買収, AIsmiley
12 ソフトバンク AI ロボティクス 2025年 買収, ニコニコニュース
30 ABB Ltdのロボティクス事業の買収に関するお知らせ, ソフトバンクグループ
13 ソフトバンク AI ロボティクス 2025年 買収, ケータイWatch
8 Third Intelligence AI 資金調達 80億円 概要, Startup DB
9 Third Intelligence AI 資金調達 80億円 概要, PR TIMES
10 Third Intelligence AI 資金調達 80億円 概要, Third Intelligence
17 Mujin ロボット 2025年 ニュース, Mujin
18 Mujin ロボット 2025年 ニュース, Mujin
31 Mujin ロボット 2025年 ニュース, Impress Watch
21 Telexistence ロボット 2025年 導入事例, Attuned
19 Rapyuta Robotics 2025年 物流ロボット, Rapyuta Robotics
20 Rapyuta Robotics 2025年 物流ロボット, Rapyuta Robotics
2 GENIAC プロジェクト 2025年 成果報告, 経済産業省
1 日本 AIスタートアップ 資金調達ランキング 2025 3位, Startup DB
25 ガートナー ジャパン 生成AI ハイプサイクル 2025, コールセンタージャパン
32 ガートナー ジャパン 生成AI ハイプサイクル 2025, クラウドデザイン研究所
26 ガートナー ジャパン 生成AI ハイプサイクル 2025, Gartner
33 ガートナー ジャパン 生成AI ハイプサイクル 2025, Gartner
22 Ubie 2025年 資金調達 ニュース, 東京新聞
23 FastLabel 2025年 シリーズB 調達, PR TIMES
24 FastLabel 2025年 シリーズB 調達, FastLabel
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引用文献
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社会実装が続々登場! GENIAC第 2期採択事業者成果報告会を開催しました! - 経済産業省, 12月 30, 2025にアクセス、 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/geniac/geniac_magazine/resultsreport_2.html
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ソフトバンク、ABBロボット事業を買収:AI時代の「実体知能」へ踏み出す - 台日併購中心, 12月 30, 2025にアクセス、 https://www.tj-ma.com/article_d.php?lang=jp&tb=5&id=4095
SAKANA AI、2025年にAI製品デビュー予定 | ゲシェルタイムズ - GESHER TIMES, 12月 30, 2025にアクセス、 https://times.gesher.co.jp/article/sakana-ai-supported-by-nvidia-plans-its-first-ai-product-launch-in-2025
Sakana AI徹底解説:M2N2とソブリンAI戦略【2025年最新】 - Arpable, 12月 30, 2025にアクセス、 https://arpable.com/artificial-intelligence/sakana-ai-innovative-ai-technology/
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新たな知能の創出とAGIの実現を目指すAI研究開発を行うThird Intelligence 、創業8カ月で80億円を調達!個人宅向け家具・インテリアのシェアリングサービスを提供するクラス - STARTUP DB ENTERPRISE, 12月 30, 2025にアクセス、 https://lp.startup-db.com/media/articles/20251110-1114
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Third Intelligenceが初のラウンドで80億円の資金調達を実施し、 独自AI開発を軸とした「遍在型AGI(汎用人工知能)」の確立へ 〜 三菱UFJ銀行、三井住友銀行、SBIグループ、博報堂DYベンチャーズが資本参画 〜, 12月 30, 2025にアクセス、 https://third-intelligence.com/news/003
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ソフトバンクグループ、ABBのロボティクス事業を約8,187億円で買収を発表 - AIsmiley, 12月 30, 2025にアクセス、 https://aismiley.co.jp/ai_news/softbak-abb-ltd-robotics/
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Turing AI DAY 2025(書き起こし記事) チューリング株式会社 |チューリポ, 12月 30, 2025にアクセス、 https://tur.ing/turipo/V92WBOTo
世界で急拡大中の“MujinOS”が創る「最新デジタルツイン工場・倉庫」を国際ロボット展で完全再現~製造・物流DXを加速するフィジカルAI最前線~ | 株式会社Mujin, 12月 30, 2025にアクセス、 https://www.mujin.co.jp/news/10275/
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Tag: 物流倉庫 - ラピュタロボティクス - Rapyuta Robotics, 12月 30, 2025にアクセス、 https://www.rapyuta-robotics.com/ja/tag/%E7%89%A9%E6%B5%81%E5%80%89%E5%BA%AB/
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ガートナージャパン、「日本におけるクラウドとAIのハイプ・サイクル:2025年」を発表, 12月 30, 2025にアクセス、 https://callcenter-japan.com/article/8183/1/
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AIエージェントの利用実態に関する法人アンケート調査を実施(2026年) マーケットデータのご紹介, 12月 30, 2025にアクセス、 https://www.yano.co.jp/press-release/more/press_id/3991
国産の完全自動運転実現に向けたチャレンジの進捗は? 「Turing AI Day 2025」で感じたエネルギーと可能性 | EVsmartブログ, 12月 30, 2025にアクセス、 https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/japanese-full-self-driving-challenge-progress-turing-ai-day-2025-energy-possibilities/
【2025年最新】日本の国産AI開発に1兆円投資!ソフトバンク主導で世界に挑む「フィジカルAI」戦略を徹底解説 - Zenn, 12月 30, 2025にアクセス、 https://zenn.dev/headwaters/articles/d0ea5ff9c25c21
ABB Ltdのロボティクス事業の買収に関するお知らせ | ソフトバンクグループ株式会社, 12月 30, 2025にアクセス、 https://group.softbank/news/press/20251008
フィジカルAIのMujinにNTTらが364億円 世界初のネイティブAI OS - Impress Watch, 12月 30, 2025にアクセス、 https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2068113.html
ガートナージャパンのハイプ・サイクル:2025年 - クラウドデザイン研究所, 12月 30, 2025にアクセス、 https://www.c-design-labo.com/2025/10/20/%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%97%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB%EF%BC%9A2025%E5%B9%B4/
Gartner、「日本におけるクラウドとAIのハイプ・サイクル:2025年」を発表 - ガートナージャパン, 12月 30, 2025にアクセス、 https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20250805-cloudai-hc
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