日曜日, 7月 26, 2026

【2026年7月版】eVTOL産業の最新地図 ―― Joby型式証明目前、EHangは商用化遅延で予想下方修正

2025年末にまとめた「2026年 電動垂直離着陸機(eVTOL)産業白書」では、大阪・関西万博を経て産業が「勝者と敗者を選別するフェーズ」に入ったこと、そして欧州勢(Volocopter、Lilium、Airbus)が相次いで脱落する一方、米国勢と中国・EHangが2026年の商用化に向けて前進する構図を描いた。それから7カ月が経過した2026年7月末時点で、この大枠の見立ては概ね現実化している。

最大の変化は、業界の重心が「開発競争」から「規制・量産競争」へ移ったことだ。米国ではJoby AviationがFAA型式証明の最終段階に入り、Archer Aviationが追走する。欧州では、破綻したVolocopterが中国資本(万豊グループ/Diamond Aircraft)の傘下に入り、Liliumは特許資産のみがArcherに買い取られるという、白書執筆時点では確定していなかった「淘汰の着地点」が明確になった。

一方で、白書の見立てが楽観に過ぎた部分もある。中国・EHangの商用運航は当初計画どおりには立ち上がっておらず、2026年4月には米SECへの年次報告書(Form 20-F)提出を「売上計上時期の見直し」を理由に延期し、大手証券会社が2026〜2028年の出荷・売上予想を大幅に引き下げる事態となった。「認証を先に取った者が商用化でも先行する」という単純な図式は、少なくとも収益化のスピードという点では成立していない。本稿は、これら2026年1月〜7月の動きをファクトチェックの上でまとめ、白書からの「差分」として整理したものである。

本稿に含まれる「2026年後半に商用運航開始」「2027年に型式証明取得」といった時期の見通しは、各社が公表時点で示した目標であり、確定した事実ではない。eVTOL業界はこれまでも型式証明の目標時期を繰り返し後ろ倒ししてきた実績があるため、実際の進捗は本稿執筆時点(2026年7月26日)の情報を上限として理解されたい。また、認証プロセスの段階呼称(Jobyの「5ステージ」、Archerの「4フェーズ」)は各社が自ら用いている表現であり、FAAの単一の公式区分に対応するものではない。

1. 米国:FAA型式証明「最終コーナー」に入ったJoby、可視化を待たれるArcher

Joby Aviationは2026年3月11日、FAA承認設計に基づく最初の実機「N547JX」の飛行試験を開始したと発表した。これはType Inspection Authorization(TIA)と呼ばれる、FAA試験パイロットが直接評価に入る最終段階を支える機体である。同社は2026年第1四半期の株主レターで「SR3監査を完了した。これは認証プロセスにおける4つの主要レビューのうち3番目で、最終段階に向けて試験データと結果がFAAの期待水準を満たすことを確認する長期先行項目である」と説明している。一部業界メディアは「ステージ4完了」という表現でこの進捗を報じているが、同社自身はこの呼称を用いておらず、本稿では同社の公表表現に従う。いずれにせよ、TIA試験そのものはまだ開始されておらず、FAAパイロットによる「for-credit」飛行試験は2026年後半に見込まれている段階だ。ロイターの取材に応じた専門家は、米国での最初のeVTOL型式証明は2027年より前には出ない可能性が高いとの見方を示している。

事業面での動きは活発だ。2026年4月にはニューヨーク市初となるeVTOLの地点間飛行(JFK空港からマンハッタンの3カ所のヘリポート)を実施。6月30日にはトヨタ自動車との製造アライアンス第一段階の開始を発表し、7月22日にはヴァージン・アトランティック航空との複数年契約を締結して英国での独占航空会社パートナーとした(デルタ航空がヴァージン・アトランティックに49%出資している関係を活用した提携である)。また、コアとなる電動プラットフォームにガスタービンを組み合わせた「タービン・エレクトリックVTOL」の初のトランジション飛行にも成功しており、最大離陸重量での148マイル飛行を記録している。2026年第1四半期末時点の現金・現金同等物・短期投資は25億ドル。

Archer Aviationは、FAAの4フェーズ型式証明プロセスのうちフェーズ3を業界で初めて完了したと2026年5月に発表し、フェーズ4(適合性の実証試験)に進んでいる。ただし技術面では課題が残る。Archerは2024年6月に無操縦(遠隔操縦)でのトランジション飛行には成功しているが、パイロットが搭乗した状態でのトランジション飛行は2026年7月時点でも公開実施していない。同社は2026年前半にパイロット搭乗でのVTOL飛行試験を開始しており、有人トランジションは2026年後半を予定するが、この「未達のマイルストーン」がJobyとの進捗差として市場の関心を集めている。7月20日には防衛企業Anduril Industriesと共同開発した自律VTOLプラットフォームを発表し、商用機「Halo」と防衛派生型「Thunder」を公開するなど、旅客事業以外への事業分散を進めている。2026年第1四半期末の流動性は約18億ドル。

両社に共通する追い風が、FAAが2026年3月9日に発表した「eVTOL統合パイロットプログラム(eIPP)」である。トランプ政権の大統領令に基づき、30件超の応募から8プロジェクト・26州が選定された。型式証明の完全取得前でも、管制官とやり取りしながら実際の国家空域で有償の貨物輸送等を行える点が特徴で、Archer・Joby・BETA Technologies・Wisk・Electra・Elroy Air・Reliable Robotics等が参加する。Jobyは自社の発表で「最大11州で型式証明取得前の早期運航を開始する機会を得た」としている。参加社数で最多となったのはBETA Technologiesで、8プログラム中7つに選定され、2026年7月にはUnited Therapeuticsと共同でバージニア州からメリーランド州への臓器輸送を想定した飛行試験を実施した。

2. 中国:認証では先行、しかし収益化は想定より遅れる

EHangは2026年3月12日の2025年通期決算発表で、「今月中にEH216-Sの商用運航を広州・合肥で開始する」と表明した。運航主体は2025年3月にCAAC(中国民用航空局)から運航者証明(OC)を取得した2社――広東EHang General Aviation(完全子会社)と、合肥市との合弁である合肥合翼航空――で、広州のEHang Future Cityと合肥の駱崗中央公園で有料の遊覧飛行サービスを提供する計画だった。複数の業界メディアは3月に有料運航が開始されたと報じているが、同社自身の2026年第1四半期発表(6月9日)における表現は「公衆向け商用運航に向けた進展を継続中」というもので、本格的な定常運航への移行が完了したとは述べていない。

財務面はむしろ厳しい。2026年第1四半期の売上高は2,570万人民元(370万米ドル)で前年同期比ほぼ横ばい、記録的だった前四半期(1億7,760万人民元)からは機体納入の減少により大幅に落ち込んだ。純損失は1億2,640万人民元。粗利率62.5%は維持しており、通期ガイダンス6億人民元も据え置いているが、CFOは第1四半期の売上の約40%が「空中メディア事業」(ドローンショー等)であったと説明しており、有人eVTOL事業が収益の柱になっているわけではない。加えて同社は2026年4月30日、2025年度のForm 20-F提出延期を届け出た。理由は「売上計上時期の見直し」で、2025年に計上した一部売上が後の期にずれる可能性を示唆するものだった(20-F自体は5月15日に提出済み)。この前後にUBSは投資判断をBuyからNeutralに引き下げ、2026〜2028年の出荷・売上予想を50〜70%削減、損益分岐点の到達時期を2029〜2030年へと後ろ倒しした。理由として挙げられたのが、eVTOL商用化の遅れと、広州・合肥の地方政府による認可への強い依存である。長距離型「VT35」は2025年10月発表・同年12月に合肥で公開実証飛行を実施し、CAACとの型式証明基準策定段階にあるが、こちらも商用化には時間を要する。

AutoFlightは、貨物用「V2000CG CarryAll」がCAACの型式証明・生産証明・耐空証明をすべて取得し、洋上石油プラットフォームへの飛行実績も積んでいる。有人用の「V2000EM Prosperity」は2026年5月時点で「コンプライアンス検証フェーズ」にあり、型式証明は未取得である。2025年10月にUAEのFalcon Aviation Servicesと貨物機15機・有人機35機の計50機の契約を結んでいるが、有人機はUAE当局(GCAA)側での認証取得も別途必要になるため、貨物機が先行する形になる。

XPeng傘下で「空飛ぶクルマ」を手がけてきたAeroHTは、2025年10月にドバイで開催したイベントで社名を「ARIDGE」(Air+Bridge)に変更した。地上を走る6輪の母艦から2人乗りeVTOLモジュールを分離させる「陸空母艦(Land Aircraft Carrier)」については、CAACが飛行体(コード名X3-F)の型式証明申請と機体の生産証明申請をいずれも受理しており、審査が進行中である(型式証明の取得は完了していない)。広州の量産工場は2025年9月末に完成し、年産1万機の能力を持つとされる。世界での予約受注は2026年前半時点で7,000件超、うち600機は中東の複数企業グループからの大口契約で、価格は200万人民元(約28万米ドル)を下回る水準とされている。納入開始は2026年、本格量産は2027年という計画が示されている。

政策面では、改正「中華人民共和国民用航空法」が2026年7月1日に施行され、低空経済に関する「発展促進」章が新設されるとともに、高度300メートル以下の空域を分類管理する規則が明確化された。無人航空機の実名登録・識別に関する強制国家標準も2026年5月1日に施行されている。低空経済は「十五五」規画で新興支柱産業の一つに位置づけられ、2026年7月25日に上海で閉幕した「国際低空経済博覧会」には過去最多となる452社が出展し、23件の世界初公開・42件の中国初公開があったと新華社が報じている。なお市場規模については、白書類によって「2023年に5,059.5億人民元、2026年に1兆人民元超え」とする試算と、「2025年時点で既に1.5兆人民元」とする試算が並存しており、算出範囲(無人機物流を含むか等)が異なるため単純比較はできない。

3. 欧州:淘汰の「着地点」が確定 — Volocopterは中国資本傘下、Liliumは特許のみ現存

白書執筆時点(2025年12月)では「投資家探索継続中」としていたVolocopterの行方は決着した。同社の資産は、ダイアモンド・エアクラフト・インダストリーズの中国側親会社である万豊(Wanfeng)グループに約1,000万〜1,100万ユーロ規模で売却された。2022年時点のピーク評価額と比較すると99%を超える下落である。Liliumについては、Mobile Uplift Corporationによる約2億ユーロの救済合意が資金未達で頓挫し、2025年2月の2度目の破産申請以降、再建は実現していない。2025年8月には別の投資家グループ(Ambitious Air Mobility Group)が資産買収による事業再開を模索したが交渉は難航し、最終的に同社が保有していた高電圧システム、バッテリー管理、フライトコントロール、ダクテッドファン推進などに関する特許ポートフォリオ(約300件)は、2025年10月にArcher Aviationが1,800万ユーロで競争入札を制して取得した。バッテリー工場は別のドイツ企業Vaeridionに売却されており、Lilium本体としての再建ではなく資産の切り売りという形で決着している。

英国のVertical Aerospaceは、これまで開発してきた実証機「VX4」を土台に、2025年12月、量産を前提とした新型機「Valo」を発表した。VX4は2026年4月14日に有人でのトランジション飛行に成功し、6月には2機目のVX4プロトタイプも初飛行するなど、実証プログラム自体は着実に進んでいる。しかし本命であるValoについては、当初「2028年に英国CAAとEASAの型式証明取得」としていた目標が、2026年7月13日の発表で「2029年」へとさらに後ろ倒しされた。同社は「新しい航空機クラスを既存の認証フレームワークで型式証明する厳格さを反映したもの」と説明しており、詳細設計審査(CDR)の完了目標は2026年末としている。Valoは認証キャンペーン用に7機が英国で製造される計画である。欧州勢の中では最後まで独立系として生き残っている企業だが、認証スケジュールの遅延という点では他の欧米勢と同じパターンをたどっている。

4. 日本:万博後の「地域実装」フェーズへ着実に移行

SkyDriveは2026年4月20日、JCAB(国土交通省航空局)から日本のeVTOL専業メーカーとして初めて「設計組織承認(ADO)」を取得したと発表した。同年5月8日には、大阪府・大阪市・大阪メトロ・Soracle・丸紅で構成する日本初のeVTOLバーティポート商用化コンソーシアムを発足させ、大阪港バーティポートの商用化に向けた官民ロードマップの議論を開始した。背景には、関西経済連合会が2026年3月25日に公表した「2035年までに大阪湾岸エリアで約100機のeVTOLが飛ぶ」というビジョンがある。さらに7月9日にはHondaJetやBell 429を運航するJapan Biz Aviation(JBZ)と商用運航体制構築に向けたMoUを締結し、7月13日には山口県の実証拠点で瀬戸内海遊覧を想定した実証飛行(最大速度86km/h、高度30m、遠隔・自律操縦)を実施した。7月のファーンボロー国際航空ショーでは、高精度機械加工部品の供給に関してイトーとの供給契約も締結している。累計受注は427機(プレオーダー354機、基本購入契約73機。うちドバイAeroGulf Servicesからの20機を含む)に達し、試作機の累計飛行回数は300回を超えた。商用運航開始の目標は2028年で変わっていない。

Hondaは2025年11月のドバイエアショーで、それまで非公開で進めていたハイブリッド型eVTOLの開発状況を初めて公にした。バッテリー単独ではなく、ガスタービン発電機とバッテリーを組み合わせたハイブリッド推進を採用しているのが特徴で、純電動機の2倍以上となる最大航続距離400kmを目標に掲げる。1/3スケールの実証機で400回超の飛行試験を積み重ね、ホバリングから巡航への遷移制御を検証済みとしており、2026年4月1日には米カリフォルニアの開発拠点で実機大の技術検証機による飛行試験を開始したと同社が公式に発表している(発表日は2026年5月12日)。事業化目標は2030年頃、型式証明取得は2030年代初頭を見込む。

5. バッテリー技術:研究室の記録と量産の距離

白書が指摘した「バッテリーがアキレス腱」という構図は、2026年7月時点でも本質的に変わっていない。eVTOL各社が現在要求するバッテリー性能は概ねエネルギー密度300Wh/kg・サイクル寿命500回程度とされ、自動車用EVバッテリー(250〜300Wh/kg)と大差ない水準にとどまる。

実機での成果として最もよく引用されるのが、EHangが2024年11月13日に発表した全固体電池搭載機の飛行試験である。深圳のInx Energy製(リチウム金属負極・酸化物セラミック電解質、公称エネルギー密度480Wh/kg)を搭載したEH216-Sが48分10秒の連続飛行を記録し、従来比60〜90%の飛行時間延長を確認したとしている。ただしこれは実証機での結果であり、同社が当時掲げた「2025年末までに全固体電池の認証・量産適用」という目標が達成されたことを示す公表は、2026年7月時点で確認できない。

研究レベルでは、清華大学の張強教授らのチームが2025年9月にNature誌へ発表した成果が注目された。フッ素化ポリエーテル系ポリマー電解質とリチウム過剰系マンガン層状酸化物正極、アノードフリー構造を組み合わせた準固体(quasi-solid-state)パウチセルで、重量エネルギー密度604Wh/kg・体積エネルギー密度1,027Wh/Lを達成したものである。ただし、これは「全固体リチウム硫黄電池」ではなく準固体系である点、実験室規模のセルであってパック実装時には数値が下がる点、500サイクル後の容量維持率が72.1%とされる点には注意が必要だ。CATLも2025年5月時点で自社の全固体電池が最大500Wh/kg相当を達成可能としているが、こちらは独立検証を経ていない自社評価である。

業界の大勢としては、2026年型の機体は「半固体電池」を過渡的な選択肢として採用し、本格的な全固体電池の商用量産は2028〜2030年頃という見立てが標準的である。バッテリーがeVTOLの航続距離とペイロードを規定している以上、この時期が実質的に「都市内シャトルから都市間移動へ」の転換点になる。

6. 主要企業ステータス比較(2026年7月26日時点)

企業名 本拠地 認証・許認可の現状 商用化の現状 2026年後半の焦点
Joby Aviation 米国 4大レビュー中3番目のSR3監査完了。TIA用適合機が飛行開始 未商用。eIPPで最大11州の早期運航に参加予定 FAAパイロットによるTIA試験開始、トヨタとの量産体制構築
Archer Aviation 米国 4フェーズ中フェーズ3完了、フェーズ4進行中 未商用。有人トランジション飛行は未公開(無操縦では2024年に達成) 有人トランジション飛行の実施、UAE/米国での早期運航
EHang 中国 EH216-SはTC/PC/AC/OC全取得済み。VT35は基準策定段階 広州・合肥で有料運航を開始したが定常運航への移行は進行中。売上の約40%は空中メディア事業 商用運航の定常化、VT35型式証明、海外展開(タイ等)
AutoFlight 中国 貨物機CarryAllはTC/PC/AC取得済み。旅客機Prosperityは検証段階 貨物機は洋上輸送に実績。旅客機は未商用 Prosperityの型式証明、UAEでの認証取得
ARIDGE(旧XPeng AeroHT) 中国 飛行体の型式証明・生産証明はいずれも申請受理・審査中(取得済みではない) 未商用。予約受注7,000件超、うち中東600機 型式証明取得、先行納入開始
SkyDrive 日本 JCAB設計組織承認(ADO)取得済み。型式証明は申請段階 未商用。累計受注427機、実証飛行を継続中 大阪港バーティポート商用化、量産体制整備
Honda 日本 型式証明取得目標は2030年代初頭。実機大検証機で飛行試験開始 未商用。事業化目標は2030年頃 実機大検証機の試験継続、設計の具体化
Vertical Aerospace 英国 VX4は有人トランジション達成。量産機Valoは型式証明目標を2029年に再延期 未商用 Valoの詳細設計審査(CDR)完了
Volocopter 独(中国資本傘下) 2024年末に破産申請。資産は万豊グループが取得 独立企業としては実質消滅 Diamond Aircraft傘下での技術活用の行方
Lilium 2025年2月に2度目の破産、事業継続を断念 企業としては消滅。特許約300件はArcherが取得 (再建の見込みなし)

7. 2026年後半〜2027年の展望

白書が示した「2026年は完成の年ではなく、長期的な社会実装へのスタートライン」という見立ては、2026年後半に向けてより具体的な形を取りつつある。米国はJoby・Archerともに、型式証明の完全取得より先にeIPPという「型式証明前の限定運航」制度を使って実績づくりを始めており、完全な型式証明の取得は2026年末から2027年以降にずれ込む可能性が高い。中国は認証取得という点では依然として世界最先進だが、EHangの事例が示すとおり、認証と収益化の間には想定以上の距離がある。地方政府の認可、バーティポート整備、運航要員の確保といった実務的な制約が積み上がるためだ。欧州は独立系としてはVertical Aerospaceのみが残り、そのValoも2029年目標への後退に直面している。

日本はSkyDriveが2028年の商用化目標に向けて、認証(ADO取得)・インフラ(大阪港バーティポート)・オペレーター提携(JBZ、東北エアサービス等)の3方向で着実に地歩を固めており、Hondaのハイブリッド路線が2030年前後にもう一つの選択肢を提示する構図になっている。派手さはないが、認証と実運用体制を並行して積み上げるアプローチは、拙速な商用化がむしろ信頼を損なう可能性があるこの分野では合理的な選択と言える。

まとめ

2025年末の白書で描いた「米中が先行し、欧州が淘汰される」という構図は、2026年7月時点でほぼそのまま実現している。変わったのは、淘汰の帰結が明確になった点(Volocopterは中国資本傘下、Liliumは特許のみ現存)と、米中それぞれの「型式証明前でも飛ばす」実務的な工夫(米国のeIPP、中国の運航者証明先行取得モデル)が実際に動き始めた点である。

同時に見えてきたのは、認証を取ることと事業として成立させることが別物だという現実だ。世界で唯一有人eVTOLの全証明を揃えたEHangが、商用化の遅れを理由に大幅な業績予想の下方修正を受けているという事実は、この産業の難所が技術でも規制でもなく「日々飛ばし続けられる運航体制と、それを支える需要」にあることを示している。バッテリー技術という根本的な制約が解消されない限り、この構造は当面大きくは変わらないだろう。

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